番外編
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ストバの新作が出たという情報がSNSから流れてきた、たまたま目に入っただけだが、何と無く頭に情報が残り飲みたいような…別にいいような……。と、言うことを禪院本家にて餅を焼いていたら思い出した。
私は現在、正方形に切った厚めの餅を火鉢でせっせと焼いている。仕事が早めに片付き暇をしていたところ、ご当主様が構って下さったのだ。いや別に嬉しいわけでは無いのだが、餅焼かされてるし。
菜箸で餅をひっくり返す、炭火の温かさが手の表面に伝わってくるのを感じながら口を開いた。
「ご当主様」
「焼けたか?」
「いえ、あの…ご当主様はフラペチーノを飲んだことありますか?」
仕事終わりで頭が上手く働いて無いせいか、思い付くままに聞いてしまった。
実際、返答は無い。しかし餅を焼くだけじゃどうにも暇なのだ、私はスマホを取り出し新作フラペチーノの画面を表示して膝立ちでズリズリと近付きそれをご当主様に見せる。
チラリと読んでいらした書物から視線を外し、スマホを見たご当主様は「オマエ、いつもこんな物を?」と言いたげな視線を向けて来られた。
「ご当主様、一緒にフラペチしません?」
「俺の年齢を考えてから物を言え」
「でも……見て、ほうじ茶フラペチーノ美味しそう、ダメ?」
スマホをご当主様に押し付けて私は餅焼き作業へと戻る。あ、ご当主様が早々に興味を無くして勝手にスマホを弄り出したわ、人のスマホを好き勝手に……流石ご当主様、私の人権を踏み倒すのがお上手だ、良いぞもっとやれ、もっと武器や物として扱って欲しい。餅焼き機でも何でも好きに扱ってください…私、その方が嬉しい。
自分の権利を委ねることは実に楽だ、余計な事を考えなくて良い分シンプルに生きられる…気がする。少なくとも、ご当主様の私への接し方に文句は無い、彼程正しく的確に私を扱える人は居ないだろう。だから、この人の側は安心する。お側に置いて下さるだけで承認欲求が満たされる。
「お餅焼けますよ」と声を掛けて、菜箸で持ち上げた焼き立ての餅に醤油を塗って差し出す。
スマホと交換するように手渡し、次いで箸も渡す。
自分の分も用意して口に運べば、表面が程よくカリカリに焼けており、中は柔らかく米の甘味と弾力が食欲を満たした。
いや、満たされたのは食欲だけでは無いか。
「飯も碌に炊けん奴が、火鉢の扱いだけは上手くなったものだな」
「……今度はエイヒレも用意しておきますね」
物だ武器だと言っておきながら、結局は私も人の道から外れることは出来ないため、こうして犬のように主に芸を褒めて貰わねば無意識に不満が募り、過食や苛立ちなどの欲求として表れるのだ。
そしてその事実をこの人は十分理解しているのだろう。
大して飲みたくも無いフラペチーノは諦めるから、どうか末永く私の手綱を握っていて欲しい。
貴方が手離さないでいてくれる事実があるのならば、私は禪院以外の全てを諦められるから。
どうか、お側に。
私は現在、正方形に切った厚めの餅を火鉢でせっせと焼いている。仕事が早めに片付き暇をしていたところ、ご当主様が構って下さったのだ。いや別に嬉しいわけでは無いのだが、餅焼かされてるし。
菜箸で餅をひっくり返す、炭火の温かさが手の表面に伝わってくるのを感じながら口を開いた。
「ご当主様」
「焼けたか?」
「いえ、あの…ご当主様はフラペチーノを飲んだことありますか?」
仕事終わりで頭が上手く働いて無いせいか、思い付くままに聞いてしまった。
実際、返答は無い。しかし餅を焼くだけじゃどうにも暇なのだ、私はスマホを取り出し新作フラペチーノの画面を表示して膝立ちでズリズリと近付きそれをご当主様に見せる。
チラリと読んでいらした書物から視線を外し、スマホを見たご当主様は「オマエ、いつもこんな物を?」と言いたげな視線を向けて来られた。
「ご当主様、一緒にフラペチしません?」
「俺の年齢を考えてから物を言え」
「でも……見て、ほうじ茶フラペチーノ美味しそう、ダメ?」
スマホをご当主様に押し付けて私は餅焼き作業へと戻る。あ、ご当主様が早々に興味を無くして勝手にスマホを弄り出したわ、人のスマホを好き勝手に……流石ご当主様、私の人権を踏み倒すのがお上手だ、良いぞもっとやれ、もっと武器や物として扱って欲しい。餅焼き機でも何でも好きに扱ってください…私、その方が嬉しい。
自分の権利を委ねることは実に楽だ、余計な事を考えなくて良い分シンプルに生きられる…気がする。少なくとも、ご当主様の私への接し方に文句は無い、彼程正しく的確に私を扱える人は居ないだろう。だから、この人の側は安心する。お側に置いて下さるだけで承認欲求が満たされる。
「お餅焼けますよ」と声を掛けて、菜箸で持ち上げた焼き立ての餅に醤油を塗って差し出す。
スマホと交換するように手渡し、次いで箸も渡す。
自分の分も用意して口に運べば、表面が程よくカリカリに焼けており、中は柔らかく米の甘味と弾力が食欲を満たした。
いや、満たされたのは食欲だけでは無いか。
「飯も碌に炊けん奴が、火鉢の扱いだけは上手くなったものだな」
「……今度はエイヒレも用意しておきますね」
物だ武器だと言っておきながら、結局は私も人の道から外れることは出来ないため、こうして犬のように主に芸を褒めて貰わねば無意識に不満が募り、過食や苛立ちなどの欲求として表れるのだ。
そしてその事実をこの人は十分理解しているのだろう。
大して飲みたくも無いフラペチーノは諦めるから、どうか末永く私の手綱を握っていて欲しい。
貴方が手離さないでいてくれる事実があるのならば、私は禪院以外の全てを諦められるから。
どうか、お側に。