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枯れ明かり

後に少女は誓う。
金の賭けられていない賭けは二度とやらないと。

数秒間無稽でアンリーゾナブルな旋律と共に深淵を駆けた先、小さな光を目にして足を踏み出せば、突然熱い湯の中にドボンッと落ちて服も靴も髪もびしょ濡れになった。
少女は咳き込みながら瞳を薄く開く。
鼻にお湯が入った、頭の裏が痛い。
熱気に満ちた空間は風呂場だろうか。手をつけば、人の肌のような感触がして驚いて咄嗟に手を引っ込めた。

視界いっぱいの肌色。視線を上に辿っていけば、筋の通った鼻と黒髪…ガチャ成功、いや…?あれ、髪が…長い。
驚きにより、見開かれた切れ長だろう形の瞳と視線が交じり合う。

たっぷり10秒互いに沈黙し、固まり合った。
先に動いたのは私だった、入浴中の記憶に無い男の上に居る状態はマズイ!年齢制限が!青少年保護法!条例違反!ポルノ!
ザバッと湯を跳ねさせ、立ち上がろうとして、しかし伸びて来た手に腕を素早く掴まれグイッと引かれる。肌色に向かって正面から飛び込むハメになった。
羞恥や驚きよりも先に風呂場で引っ張るな、危ないだろう!という危機意識が芽生える。
いや、危ないのは引っ張られた事だけでは無い、私は一体見知らぬ男に何をされているんだ。
とにかく離れようともがけば、背中に腕を回され抱き締められて…そして

「……スゥゥーーーーーーーーー………」
「ェ?」
「スゥゥーーーーーーーーー……」
「吸ってます?」

吸われている。
風呂に入っている長髪の全裸の男に、頭部を吸われていた。

ああ、安住の地は何処(いずこ)に……。
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