錆びた灯火
私が生まれてからずっと住む家は古い家だ。歴史について詳しくは知らないが家自体が古い、年期の入った作りをしている。そして『開かずの扉』なるものがあった。
幼い時から、「開けてはいけない」と親に厳しく言われている謎の部屋があり、開けようとしたところで鍵が掛かっているのか開かず、どうにも出来ないのですが…とにかく入ったことの無い部屋が存在した。
親に聞いても、祖母に聞いても、何故開けてはならないのか知らないらしく、不思議には思えど日常の不思議の一つとしてそれ以上踏みいることは無かった。
私は、所謂『見える人間』というやつで、物心ついた時から変な物がよく見えた。
嫌な気配を感じ取ったりだとか、妙な音が聞こえたりだとか、でもそれ以外には変わったところなんて無いはず。家族仲は普通だと思うし、友人関係に困っているわけでも無い、普通。普通の中学生。
普通じゃ無くなったのは日が落ちるのが早くなり、朝目を覚ますのが辛くなるような冬の日のことだった。
部屋の外から聞こえる騒がしさで目が覚めた私は、自室の扉へ手をかけようとした所でそれが慣れしたしんだ引き戸でないことに気付く。
よく部屋を見れば、いつもの慣れ親しんだ私の部屋では無かった。
両親の寝室でも、祖母の和室でも無い。ここは、どこだ?
焦ってドアノブを捻るが、いくらガチャガチャと動かしても、体当たりをしても、手で叩いて叫んでも、泣いても、扉は開かない。
開かないのだ、ずっと。
最初は数十分、待っていれば開くかな?と期待した。
それが数時間、焦りと不安、喉の乾きを覚えるようになる。
さらに数時間、不安はピークに達し、大声を出すなどして無駄に体力を使う。
一日が経過する、扉はまだ開かない。
空腹と尿意が限界だった、私は何故こんな思いをしなければならないのか、どうして誰も助けに来てくれないのか、外はいったいどうなっているのか。
二日が経過する、扉はまだ開かない。
部屋の中を探索する、ベッドと布団に枕、袋に入った食料などを見つけた。
そして、扉と反対の壁、天井付近に「ンバンモ」と書かれていることを発見する。これは一体何を表しているのか。
三日が経過した、扉が開く様子はない。
しかし、外から音がした。それを耳にした瞬間、頭の中がグチャグチャに掻き回されるような感じがし、鼻血が出た。
ガリガリガリガリと何かが削られる音がする、そして何かが近付く気配がする、嫌な気がした。
四日目、扉はまだ開かない。
外からまた音がした、そして何かが割れる音もした。
なんとなく、逃げた方が良い気がしたが…逃げられる場所なんて無い、もしここが『開かずの扉』の中だったのなら、ここが一番安全なのかもしれない。
五日目、扉は今日も開かない。
一つ、気付いたことがある。「ンバンモ」の並びを変えると「モンバン」になる、漢字に直せば「門番」だ。
開かない扉、門番、外から聞こえる恐ろしい音、そして私。まだ分からないが、この扉が開いてしまった時、私はきっと全てを理解する…予感がした。
六日目、扉の外の気配が近い。
私は改めて部屋の中を探索した、と言っても毎日一応見逃しが無いか見てはいたのだが、今日になって新しい発見があった。
ベッドと敷き布団の間に一つ、鍵があった。鍵、と表現して良いのか分からないが、私はこれを直感的に鍵だと感じた。
鍵穴は無い、もしかしたら外から使うのかもしれないと一瞬思ったが、あの扉にはサムターン(鍵内側のツマミ)らしき物が存在しない、ならばどう使ったら良いのか。分からないけど、時間が無いことだけは感じた。
それから、門番という字を書き直した。
親指の腹を食いちぎり、自分の血で、正しい並びで扉から見て『門』『番』と間を開けて書いた。どうして正しい並びに直したかと言うと、天井付近の作りが和室の物だったからだ。多分、鴨居か何かで襖や障子があったはず、この部屋がいつから存在する部屋か分からないが、「ンバンモ」という言葉を正しい並びで読める時代だとしたら、かなり古いはず。昔は日本語を横書きでも右から左に読んだから。
多分、明日扉が開く。
七日目。
扉がガタガタと鳴って軋んでいる。
部屋が地震のように揺れている。
外から吐き気すら感じる音が響いてくる。
おぞましい鳴き声だ、悲鳴のような怒声のような、そんなものを絶えず轟かせながらソレは扉を怖そうとしている。
恐らく、あと数分も持たない。
右手に持った鍵を握り締める。
『門』と『番』の間に立ち、時が来るのを待った。
使い方は、決めた。
恐らく、正しい使い方では無いだろうけれど、私は普通の中学生なので戦うことも、不思議なパワーでどうにかすることも残念ながら出来ない。
『門』というのだから、きっとこの壁にしか見えない先には何かがあるんだと思う。鴨居もあるし、多分そう。うっすらと気配もするのだ。
そして、鍵はそこへ行くための通行手形。
私には正しい使い方が分からない、壁に向かって捻ったりしても何も起きなかった。
外のアレに、鍵を渡してはならない、向こうへ行かせてはならないのだろう。
向こう側が何かは知らないけれど、私がどうなるかも分からないけれど。
とうとうドアがバキバキと音を立てて崩壊していく。
ドアノブが転がり落ちた。
部屋に日の光が差し込む、久方ぶりに外が見える。
外、と共に居たのは……ソレを認識する前に脳が拒んだ、ジトジトと室内を気持ちの悪い何かが侵食していくのが肌で分かる。
吐き気が酷い、頭の奥がガンガン響いて頭痛がする、空気が重く淀む、臭い、怖い、外が……外には何も無い、白かった。
白い世界が何処までも広がっていたのだ、平坦な世界になったものだ、この一週間で一体何が起きたのか。
瞬きの度に部屋の中にソレがゆっくり、ゆっくりと身を引き摺りながら入ってくる。
私へ手を伸ばしてくる、いや違う…私では無く、欲しいのは鍵だ。
なんでこんなことになったのだろうか、一週間前までの世界はどこへ消えたのだろうか、お父さんもお母さんもおばあちゃんも、学校も友達も、私の世界はどこへ消えたんだ。
何も無くなってしまったのだろうか、いきなりそんな事実を突きつけられたって何も思えない。
それよりも、目前に迫る危機の方へと意識は向かう。
生存本能か、ただの現実逃避か、それすら分からない。
しかし、私がしなければいけないことは分かっている。
私はコレを、この先へ行かせてはならない。
唯一残った人間だからとか、役目だとか、そういう正義に基づき働く感情では無い。本能がそうしろと叫ぶから、私は思考を停止することを拒み奮い立つ。
結局正解なんて分からなかった私には、こうするしか他に思い付かなかった。
鍵を口の中に放り込んで、鼻を摘まんで飲み込む。
震えながらも、化物に向かって私は言ってやった。
「ここから先は、通行止めだ」
恐怖を覆い隠すために不器用な笑顔を作り笑ってやれば、一瞬の間の後に、耳が痛む程の絶叫を上げたソレはこちらに這いずってくる。それに背を向け私は壁に両手をついた。
通行手形は私の内に、ならばあとは通行料金を払ってやれば良いのだ。払うものは決めていた、普通の人間に払えるものなんてそう多くは無い。
今の私には、私しか無い。
「コイツを通行料に、それで足りないのなら私を、なんだって払うから!!ここから先に行かせて!!!」
門の向こうへ私の声は届いたのか、迫り来る異形の怪が私の背に触れ、身体が凍りついたように感じた次の瞬間。
赤い光が私を飲み込む。
そうして足が宙に踊り、一気に酸素を失った、身体が熱くて燃え尽きそうだった。
手が、足が、端から失われていく。身体から感覚が消えていく。自己の損失を物理的に味わう。
上も下も分からない、浮いているのか落ちているのか、自分の身体がどうなっているのか正しく認識出来ない。暗くて熱い、でも寒い、指先が崩壊したような気がした。
後ろから悲鳴が聞こえたが、私の耳はすぐに別の音を捉える。
ピアノだ、こんな場所でピアノの音がする。
不協和音が鳴っている、デタラメでメチャクチャなピアノの音色のせいで耳が辛い、頭がイカれそうだ。
私は空気が吸えないのに、何かが息継ぎをするのを感じ取れた。
地面らしき物と足がくっつく、バランスを取っていられなくて無様に地平に倒れこんだ。だが、最早痛みは感じなかった。
瞳を無理矢理開けば、地平線いっぱい、一列に砂嵐の画面が映るテレビが並んでいる。
どこだ、ここは。
……曲が、ヒステリックなピアノの旋律が鳴り止む。否、ブツリと絶ち切られた。
それと同時に私の視界も砂嵐で覆われる、意識が瞬きの間に遠退いていく。
意識が完全に落ちる前に、私は赤い花を見た。
なにかを、誰かと話した気がするのだが、何も覚えていない。
これが、正しい選択だったのかは分からないが、私があの部屋の先に行き着いたことは確かだ。
整理されない情報が濁流のように脳内へ流れ込んでくる、あの世界の真実を、部屋に閉じ込められた理由を、ここがどこなのか。
頭が辛くて、眠ってしまおう、もう終わろうと思って身体から力を抜く。
しかし、一瞬の浮遊感の後、意識が急速に戻ったと思ったら、私は何処かの扉を開いた状態で、目の前には白い髪をした男が居たのだった。
以降、私は東京という都市の呪術を扱う学校で保護され、春からは生徒になった。
どうやら、私はこの世界とは違う世界から、何処かの場所を中間地点に流れ着いたらしい。
状況が理解出来ないままに月日は進み、私は呪術師の職と学生の地位を与えられ、呪いを払っている。
この身体には、得たいの知れない力が宿ってしまったらしい。
幼い時から、「開けてはいけない」と親に厳しく言われている謎の部屋があり、開けようとしたところで鍵が掛かっているのか開かず、どうにも出来ないのですが…とにかく入ったことの無い部屋が存在した。
親に聞いても、祖母に聞いても、何故開けてはならないのか知らないらしく、不思議には思えど日常の不思議の一つとしてそれ以上踏みいることは無かった。
私は、所謂『見える人間』というやつで、物心ついた時から変な物がよく見えた。
嫌な気配を感じ取ったりだとか、妙な音が聞こえたりだとか、でもそれ以外には変わったところなんて無いはず。家族仲は普通だと思うし、友人関係に困っているわけでも無い、普通。普通の中学生。
普通じゃ無くなったのは日が落ちるのが早くなり、朝目を覚ますのが辛くなるような冬の日のことだった。
部屋の外から聞こえる騒がしさで目が覚めた私は、自室の扉へ手をかけようとした所でそれが慣れしたしんだ引き戸でないことに気付く。
よく部屋を見れば、いつもの慣れ親しんだ私の部屋では無かった。
両親の寝室でも、祖母の和室でも無い。ここは、どこだ?
焦ってドアノブを捻るが、いくらガチャガチャと動かしても、体当たりをしても、手で叩いて叫んでも、泣いても、扉は開かない。
開かないのだ、ずっと。
最初は数十分、待っていれば開くかな?と期待した。
それが数時間、焦りと不安、喉の乾きを覚えるようになる。
さらに数時間、不安はピークに達し、大声を出すなどして無駄に体力を使う。
一日が経過する、扉はまだ開かない。
空腹と尿意が限界だった、私は何故こんな思いをしなければならないのか、どうして誰も助けに来てくれないのか、外はいったいどうなっているのか。
二日が経過する、扉はまだ開かない。
部屋の中を探索する、ベッドと布団に枕、袋に入った食料などを見つけた。
そして、扉と反対の壁、天井付近に「ンバンモ」と書かれていることを発見する。これは一体何を表しているのか。
三日が経過した、扉が開く様子はない。
しかし、外から音がした。それを耳にした瞬間、頭の中がグチャグチャに掻き回されるような感じがし、鼻血が出た。
ガリガリガリガリと何かが削られる音がする、そして何かが近付く気配がする、嫌な気がした。
四日目、扉はまだ開かない。
外からまた音がした、そして何かが割れる音もした。
なんとなく、逃げた方が良い気がしたが…逃げられる場所なんて無い、もしここが『開かずの扉』の中だったのなら、ここが一番安全なのかもしれない。
五日目、扉は今日も開かない。
一つ、気付いたことがある。「ンバンモ」の並びを変えると「モンバン」になる、漢字に直せば「門番」だ。
開かない扉、門番、外から聞こえる恐ろしい音、そして私。まだ分からないが、この扉が開いてしまった時、私はきっと全てを理解する…予感がした。
六日目、扉の外の気配が近い。
私は改めて部屋の中を探索した、と言っても毎日一応見逃しが無いか見てはいたのだが、今日になって新しい発見があった。
ベッドと敷き布団の間に一つ、鍵があった。鍵、と表現して良いのか分からないが、私はこれを直感的に鍵だと感じた。
鍵穴は無い、もしかしたら外から使うのかもしれないと一瞬思ったが、あの扉にはサムターン(鍵内側のツマミ)らしき物が存在しない、ならばどう使ったら良いのか。分からないけど、時間が無いことだけは感じた。
それから、門番という字を書き直した。
親指の腹を食いちぎり、自分の血で、正しい並びで扉から見て『門』『番』と間を開けて書いた。どうして正しい並びに直したかと言うと、天井付近の作りが和室の物だったからだ。多分、鴨居か何かで襖や障子があったはず、この部屋がいつから存在する部屋か分からないが、「ンバンモ」という言葉を正しい並びで読める時代だとしたら、かなり古いはず。昔は日本語を横書きでも右から左に読んだから。
多分、明日扉が開く。
七日目。
扉がガタガタと鳴って軋んでいる。
部屋が地震のように揺れている。
外から吐き気すら感じる音が響いてくる。
おぞましい鳴き声だ、悲鳴のような怒声のような、そんなものを絶えず轟かせながらソレは扉を怖そうとしている。
恐らく、あと数分も持たない。
右手に持った鍵を握り締める。
『門』と『番』の間に立ち、時が来るのを待った。
使い方は、決めた。
恐らく、正しい使い方では無いだろうけれど、私は普通の中学生なので戦うことも、不思議なパワーでどうにかすることも残念ながら出来ない。
『門』というのだから、きっとこの壁にしか見えない先には何かがあるんだと思う。鴨居もあるし、多分そう。うっすらと気配もするのだ。
そして、鍵はそこへ行くための通行手形。
私には正しい使い方が分からない、壁に向かって捻ったりしても何も起きなかった。
外のアレに、鍵を渡してはならない、向こうへ行かせてはならないのだろう。
向こう側が何かは知らないけれど、私がどうなるかも分からないけれど。
とうとうドアがバキバキと音を立てて崩壊していく。
ドアノブが転がり落ちた。
部屋に日の光が差し込む、久方ぶりに外が見える。
外、と共に居たのは……ソレを認識する前に脳が拒んだ、ジトジトと室内を気持ちの悪い何かが侵食していくのが肌で分かる。
吐き気が酷い、頭の奥がガンガン響いて頭痛がする、空気が重く淀む、臭い、怖い、外が……外には何も無い、白かった。
白い世界が何処までも広がっていたのだ、平坦な世界になったものだ、この一週間で一体何が起きたのか。
瞬きの度に部屋の中にソレがゆっくり、ゆっくりと身を引き摺りながら入ってくる。
私へ手を伸ばしてくる、いや違う…私では無く、欲しいのは鍵だ。
なんでこんなことになったのだろうか、一週間前までの世界はどこへ消えたのだろうか、お父さんもお母さんもおばあちゃんも、学校も友達も、私の世界はどこへ消えたんだ。
何も無くなってしまったのだろうか、いきなりそんな事実を突きつけられたって何も思えない。
それよりも、目前に迫る危機の方へと意識は向かう。
生存本能か、ただの現実逃避か、それすら分からない。
しかし、私がしなければいけないことは分かっている。
私はコレを、この先へ行かせてはならない。
唯一残った人間だからとか、役目だとか、そういう正義に基づき働く感情では無い。本能がそうしろと叫ぶから、私は思考を停止することを拒み奮い立つ。
結局正解なんて分からなかった私には、こうするしか他に思い付かなかった。
鍵を口の中に放り込んで、鼻を摘まんで飲み込む。
震えながらも、化物に向かって私は言ってやった。
「ここから先は、通行止めだ」
恐怖を覆い隠すために不器用な笑顔を作り笑ってやれば、一瞬の間の後に、耳が痛む程の絶叫を上げたソレはこちらに這いずってくる。それに背を向け私は壁に両手をついた。
通行手形は私の内に、ならばあとは通行料金を払ってやれば良いのだ。払うものは決めていた、普通の人間に払えるものなんてそう多くは無い。
今の私には、私しか無い。
「コイツを通行料に、それで足りないのなら私を、なんだって払うから!!ここから先に行かせて!!!」
門の向こうへ私の声は届いたのか、迫り来る異形の怪が私の背に触れ、身体が凍りついたように感じた次の瞬間。
赤い光が私を飲み込む。
そうして足が宙に踊り、一気に酸素を失った、身体が熱くて燃え尽きそうだった。
手が、足が、端から失われていく。身体から感覚が消えていく。自己の損失を物理的に味わう。
上も下も分からない、浮いているのか落ちているのか、自分の身体がどうなっているのか正しく認識出来ない。暗くて熱い、でも寒い、指先が崩壊したような気がした。
後ろから悲鳴が聞こえたが、私の耳はすぐに別の音を捉える。
ピアノだ、こんな場所でピアノの音がする。
不協和音が鳴っている、デタラメでメチャクチャなピアノの音色のせいで耳が辛い、頭がイカれそうだ。
私は空気が吸えないのに、何かが息継ぎをするのを感じ取れた。
地面らしき物と足がくっつく、バランスを取っていられなくて無様に地平に倒れこんだ。だが、最早痛みは感じなかった。
瞳を無理矢理開けば、地平線いっぱい、一列に砂嵐の画面が映るテレビが並んでいる。
どこだ、ここは。
……曲が、ヒステリックなピアノの旋律が鳴り止む。否、ブツリと絶ち切られた。
それと同時に私の視界も砂嵐で覆われる、意識が瞬きの間に遠退いていく。
意識が完全に落ちる前に、私は赤い花を見た。
なにかを、誰かと話した気がするのだが、何も覚えていない。
これが、正しい選択だったのかは分からないが、私があの部屋の先に行き着いたことは確かだ。
整理されない情報が濁流のように脳内へ流れ込んでくる、あの世界の真実を、部屋に閉じ込められた理由を、ここがどこなのか。
頭が辛くて、眠ってしまおう、もう終わろうと思って身体から力を抜く。
しかし、一瞬の浮遊感の後、意識が急速に戻ったと思ったら、私は何処かの扉を開いた状態で、目の前には白い髪をした男が居たのだった。
以降、私は東京という都市の呪術を扱う学校で保護され、春からは生徒になった。
どうやら、私はこの世界とは違う世界から、何処かの場所を中間地点に流れ着いたらしい。
状況が理解出来ないままに月日は進み、私は呪術師の職と学生の地位を与えられ、呪いを払っている。
この身体には、得たいの知れない力が宿ってしまったらしい。