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番外編

休日にあたる曜日にも、支給された制服を着用していた星クズは、私服姿で団欒していた学生達に「オマエさあ…」と言う目で見られていた。
ペチコート付きの黒いワンピース型制服に白いエプロン、革靴を履き、荷物を入れたナップサックは灰原が小学生時代に家庭科で作った物だ。柄が恥ずかしくて今はもう彼には使えなかった。


「まず、衣類という物の必要性であるが、これについては生理的機能と心理的機能、それから社会的機能の3つの要因が満たされている条件が…」
「分かりやすく言って?」
「だってこれしか無いんだもん」

あらまあ、それは大変。
ご両親二人(灰原と七海)は顔を見合せ、夏油は「私があげたやつは?」と聞いた。はて、そんなものあったか…?

「着る物が無いの?夜とかは?」
「脱いで寝てる」
「可哀想に……」

夏油は服すらまともに持っていない哀れな星の子に悲しみを抱いた。気持ち的には親戚のおばちゃんである、可愛い姪っ子が服に困っている……私が買ってあげなくては。使命感に燃えた。

「どんなのものが着たい?」
「なんでもいい」

貢ぎがいの無い星であった。
仕方無く男三人寄り集まって考える、暇潰しには丁度良い着せ替え人形が手に入ったんだから遊ぶに決まっている。

やれ、ボックスプリーツで優等生らしさをだの、タイトスカートでシルエットを綺麗に見せようだの、トップスは綺麗なブラウスをだの……ちなみに言い合っているのは主に七海と夏油である、灰原はその辺りのことを七海のセンスを信頼して一任しているので、星クズに手遊びをしてあげていた、せっせっせーのよいよいよい。キャッキャッ。

「ですから、露出は最低限にすべきです。この子にはまだ早い」
「せっかくなんだから、短いスカートだって一枚くらい」
「許せるのはキュロットまでです」

保護者の意思は固く、厳しかった。
断固として譲らない姿勢を見せ、強固な態度で迎え打つ。子を守る親ってのは、時に相手の主義を否定してでも戦わなければならないのだ。ノー、ミニスカ ノー!

「またメスの服か、私はメスでは無いと言っているのに…」

ポツリと星クズが呟いた。
灰原が「嫌だった?」と聞けば首を振る、嫌なわけでは無い。ただちょっと恥ずかしいだけだ、まず容姿というものの大切さをイマイチ理解していない星クズは、己の容姿に対して一喜一憂する人間のことにたいして大変不思議な思いを抱いて、その度に言い表せない感情に悩まされた。
この悩みの名前を人は「照れ」と言う。

なので、照れる必要の無い服装。つまりは別に似合うような似合わなくも無いような…といった中途半端な服を着て感情を誤魔化そうとしていたわけである。

「似合う物を着るべきですよ」
「それは私も同意見」

保護者と叔母の意見が合致した。

星クズはそういう物なのか…と無理矢理自分を納得させて、彼等に判断を委ねた。衣類に特別興味は無い、どちらかと言えば香りなどの方が興味があった。

そんなわけで、色々と話合いの結果買いたい奴が買って、それを星クズに着せる方針に決定した。
一応過激な露出や妙なコスプレ衣装、その他保護者の検閲に引っかかる物は無し。
ちょっとしたファッションショーである、星クズは無表情で着せ替え人形の任務を全うした。

結果、優勝は飛び入り参加の家入硝子の手に渡った。

「クズとチェリーの趣味に負けるわけが無い」
「ちぇ……?」
「家入さん、うちの子に変な言葉を覚えさせないで頂きたい」

素敵に可愛く大変身を遂げた星クズは、灰原に「似合ってるよ!」と褒められて大満足であったとさ。
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