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灰原雄と外宇宙産生命

星クズの拉致、魔改造によって復活した灰原のことを聞いた様々な呪術界の人間達は、何とかその技術を自分の家の物に出来ないかと策を練り、色々な手段に出ていたがどれも失敗続きであった。

禪院は誘拐を企てこれに成功、お菓子あげるから着いておいでの言葉にまんまと騙された星クズは、京都のお屋敷にて監禁されるも、半日後には元気に灰原の元へ帰っていた。
お屋敷の中では何処に行ったと騒ぎになっていたが、そんなことは知る由も無い灰原なので、また勝手に何処か行ってダメでしょ!と自分の上位存在を躾ていた。一人と一匹の立場が逆転していることは誰も指摘しなかった、何ならそのまま飼い慣らせとも思っていた。

加茂は真正面からの交渉に出た、好きなだけ研究が出来る環境を約束するから家に来てくれないか、と。
1ヶ月前の地球来訪直後の星クズならば頷いただろう、早急に植民政策学の本と安楽死マニュアルを取り寄せるように指示していたはずだ。ちなみにどちらも禁書である。
しかし、地球に染まり早1ヶ月。ただの灰原にひっつく子供(心が)になり、まわりからは「連れ子」とまで言われる存在に成り下がってしまった宇宙人は、灰原や七海と離れたくないと言う理由と、今はテトリスに忙しいんだ…と言う二つの馬鹿馬鹿しい理由によって提案を却下した。加茂の秘蔵書物はテトリスに負けた。
断りの理由を聞いた時、七海は少しだけ父性が芽生えたとか芽生えなかったとか…。

五条は五条悟のせいで何をしても「やっ!」と言われる始末であった。あたし、このおうちいや!プイッ。
五条悟による日頃からの「やーい!お前んちー!宇宙のド・田舎ァー!」などのからかいを、星クズは表には出さないが、コイツのDNA根絶やしにしてやろうかと思ったりしていたため、五条さんとこの良い感じのおじ様に優しくされ、お話だけでも…と言われても「お前の所の若いオスをどうにかしてから話に来い」と門前払いしていた。
五条悟は誰にもどうにも出来ないため諦める他無かった、可哀想。

他のお家や呪詛師なんかもそうであった。
皆あの手この手で頑張ったが、最終的には怪電波をくらい眩しい物を気持ち良く感じるようになってヘロヘロ~としている隙に星クズは消えていた。
呪詛師に至ってはそのまま捕まる間抜けも増えたため、殆んどの者がこの件から手を引いた。


朝見掛けたきり見当たらなかった星クズが、昼過ぎに戻って来たのを知った七海は「ああ、またか」と思った。

「また誘拐されたのですか」
「違うぞ、私が地球上に固定化されてから35日が経過したが、この星の高等生物全般の特性から見られる異性に対する外的評価が…」
「分かりやすく」
「途中で飴貰った、美味しかったです」

七海はため息をつき、日に日に地球に馴染んでいく宇宙人のことで頭を悩ませた。最近胃も辛い。
灰原は自由な方針で育てるつもりらしく、星クズが任務を同行する予定の日に姿が見えなくても「時間になったら来るから大丈夫!」と謎の信頼を寄せていた。実際時間になれば現れるし、現場では大活躍している。この前は小型の爆弾を体内で生成し、口から吐き出してそれを呪霊に投げて瞬殺していた。
つまりは危険なのだ、とても。だから七海としてはもっとしっかり教育を施し管理するべきだと考えている。少なくとも遊びに行く時は事前に言わないと駄目だ、お母さんとの約束です。

「知らない人には?」
「ついていかない」
「遊びに行く時は?」
「ちゃんという」
「五条悟には?」
「ちかづかない」

よし、ちゃんと覚えているな。
七海はこれをここ一週間ずっと繰り返し毎日一回言わせていた、そのかいあって最近はわりと行動内容を事前に報告するようになってくれた。しっかり成長を感じる。

「貴方だって術師にカウントされてるんですから、しっかりして下さい」
「エンジョイはしている」
「話を聞け」

やっぱり駄目だ、教育の敗北を感じて七海は悲しくなった。
仕方ないのであとは灰原に任せようと星クズの手を引き灰原の元へ足を運ぶ。彼は今報告書を書いているはずだ。

教室の扉をガラガラと開けば灰原が居り、こちらに気付いて「あ、おかえり!」と眩しい笑顔で迎えてくれる。平和を感じる日常のヒトコマを大切に思いながら、七海はそれに言葉を返し、同じく星クズも人間の文化に習って「ただいま」と言った。

シャープペンシルを置き、手を広げて「おいで」のポーズをすれば、決まり事のように星クズは灰原の元へ行き腕の中へと収まる。膝に乗って、頭に頭を擦り寄せれば灰原の手が夜空を切り取ったかのような髪を撫でた。
七海も椅子を引き隣へ座る。

「灰原、貴方からも注意して下さい。また何も言わずに…」
「心配になるから、ちゃんと言ってから遊びに行くんだよ?」
「…了解した」

完璧に上下関係は覆っていた。
灰原の言葉に素直極まる反応を示す星クズを見て、七海は「飼い慣らされた犬だな」と思った。事実である。
一頻りワチャワチャと撫でくり回された星クズは灰原から離れ、立ち上がり、「書庫に行ってくる」と教室を後にした。残された二人は揃って「行ってらっしゃい」と見送り、各々の時間へと戻って行く。




廊下を歩き、書庫では無く女子トイレに向かった星クズは、蛇口から水を出しながら口を開き喉の奥へ指を突っ込んで「オエッ」と体内に入れていたソレを出した。

そらまめ程の小型のソレ……現在様々な任務で使用しては高頻度でそれなりの結果を残している物。
そう、これこそは偉大なる星より飛来した生命が生み出した化学兵器……窒素爆弾である。

星クズの体内にて1700度、110万気圧で圧縮し、ポリ窒素化させて作る理論上の爆弾。
核兵器を除いては、最高の破壊力を有すると言われているソレを対呪霊用に改良させてポイっとしているわけである。辺り一面焼け野原。更地職人とはコイツのこと。
ただの歩く破壊兵器。地球くんのことは興味があるけどぉ、それはそれって感じでぇ……つまりは、関心はあるが大切ではこれと言って無いのであった。クズの発想である。(知的欲求と使命を果たせれば)誰でも良かった…などと供述しており。
案外、五条や夏油と星クズはその辺の相性は良いのかもしれない。人間のクズ代表二人と、星のクズ代表一人、仲良くなれそう。

…話は戻り では、こちら…現代科学の力では製造不可能な窒素を元にした爆弾、詳しい原材料はなんぞや?という疑問に答えることとする。

それはこの日の朝まで遡る……。
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