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灰原雄と外宇宙産生命

灰原と星クズは強制的に各々何処かへ連れて行かれ、数日後に灰原だけが学校へ戻って来た。「また、今日からよろしく!」と明るい笑顔と共に言われて七海はちょっとだけ泣いた。自分の大事な友人がよく分からない宇宙人に改造された事実は記憶から消した。何も居なかった、いいね?


しかしそうは宇宙が許さない。


久々だから軽く身体を動かそうと仲良く訓練をしていれば、こちらへ駆けてくる人影が見えた。「おーい」と高いとも低いとも言えない声色で呼んでくるそれは、例の友人を大宇宙に拉致し、改造し、勝手に付いて来た星のクズであったので、七海は友人にこれ以上得体の知れない魔改造が施されてはなるまいと庇い出た。美しい友情風景である。

「上層部に連行されたはずの貴方がどうしてここに…!」
「それはだな、ハイバラユウの神経細胞・ニューロンが働く中枢神経である脳と脊髄に私と言う外部からの電波による刺激を送ることで140億個のニューロンが互いに連結し、複雑なネットワークを構築し…」
「分かりやすく言って?」
「会いたくて来ちゃった」

来ちゃった、だって会いたかったんだもん!
突然の理解不能行動は宇宙人の特権、理解しようとする方がおかしい。人生、時には諦めが必要だ。
灰原は「そっか!」と太陽のごとき笑顔で全てを受け入れた、元より彼はこの宇宙人を理解するつもりが無かった、なんかよく分からないけど凄いんだなって思いました。

「連れて行かれて何してたの?分かりやすく言って?」
「闇の力に封印されそうになってた」

何それ…ちょっと格好いい。
闇の力も封印も、灰原の中に眠る卒業したはずの中学2年生の心を揺さぶった。闇は中2のマストアイテム。七海は灰原がどんどん宇宙人の扱いが上手くなっていくことに引いていた。そんな……貴方、どれだけパワーアップして帰って来たんですか!?

一人と一匹は楽しそうにキャッキャウフフと再会を喜び合う。
星クズは灰原の傷跡を見て「金継ぎ」と笑っていたし、灰原も「一発芸になるね」と喜んでいた、間違っても喜ぶところでは無い。

そしてこの再会の裏で、大人達がとりあえずよく分からんし封印しとこ、と思っていた謎の生命体が勝手に消えたため呪術界は大慌てであった。
ほっといたら多分NASAに連れて行かれるので正直放っておいても良かったが、真面目に国を案じていたりいなかったりするお爺さんお婆さんやその部下は、草の根を掻き分けて探していたのであった。
だって宇宙人。話は通じるけど意味は分からない、拳銃を向けても「わあ!かっこいー!」と喜ぶ始末。完全にあこがれの地に観光に来た外国人旅行者テンション。木刀に喜んで「ニンジャ!」と叫ぶように、刀に向けて指差して「包丁!」と言っていた。これはサムライソードだよってえらい大人達は教えてあげた。
真面目に尋問している方からしたら馬鹿馬鹿しくなるほどの奴であったので、早々に忙しい現代日本を生きる大人達は各々他の仕事に戻り、宇宙人監視の目は緩んだ。


大慌てで捜索をする大人達を放って、星クズは灰原にくっつき「あー、落ち着く」と言っていた。故郷の香りがする…マンマ……。
七海が引き剥がそうと近寄れば何故か灰原を抱く腕とは反対の腕で抱き締められた。両手に花ならぬ、両手にDK。未成年に手を出しているが宇宙人に地球の法律は通じない。だから誰もコイツを取り締まれない。
灰原も楽しくなってきたのか、七海と星クズまとめて抱き締めて団子状態になった。団子三兄弟(異物混入)

「地球から遥か76億光年、太陽系を超えたさらに向こうにある、天文台でも観測が…」
「分かりやすくまとめて下さい」
「ホームシックになっちゃった、ムギュムギュして」
「お安い御用!」
「なんだコイツ…」

ハグっと星クズ、減ったハピネスをチャージしてトゥインクルさせてくれ。
七海も短時間の内に段々宇宙人の扱いが上手くなってきていた。
両側から男子高校生にサンドされ、ムギュムギュ……いや、ギチギチと押し潰された状態でも星クズは文句を言わなかった。言えなかった、だって灰原の胸板で顔が潰れて呼吸が出来ない。鼻が痛い。パイ圧で圧死することは本当にあったんだなあ…といらないエロスキルを身に付けながら、潰れていますよアピールで二人の身体をペチペチ叩く。

「あ、ごめんね」
「私の身体は多量の金と銀を含んでおり、内部構造は人間とは違っているがアミノ酸のグリシンが…」
「8文字以内で説明して下さい」
「優しくしてね」

も~!人間くんったらおっちょこちょいなんだから!
クソデカ主語は炎上の原因になると知らない星クズはプンプンとしながらそんなことを言う。
灰原はごめんね~!と星クズを抱き締め直し、よしよしと頭を撫でている。完璧犬扱いである、主人にちょっと間違って蹴られた犬が怒ったから宥める図と一緒であった。七海も段々宇宙人のことを喋る犬か何かに思えてきた、故郷を思って寂しがる感情に少し同情もした。

そんなこんなでワチャワチャ戯れていれば、教員に見つかり星クズは再度ドナドナされていった。
自分がこれからどうなるか理解していないのか、気にしていないのか、元気に手を大きく振って「またあとで」と言っている。
灰原と七海も手を振ってそれに答えると訓練に戻ることにした。

星クズは封印の儀式を受けた。
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