ヴィーナスお願い
街行く同い年程の子達を眺める。
あの生クリームがたっぷり乗ったドリンクも、派手な色のアイスも、可愛い流行りのお菓子も、何もかも。
私にはもう縁のない遠い世界の物なのだと思った瞬間、込み上げてきた怒りに唇を小さく噛んだ。
理不尽だと思う。
こんなのって無いと思う。
だって私は普通に生きていただけの子供で、運が悪かったからって戦い方も知らないのに戦場に立たされて。
血も戦いも、痛みも死も、本当だったら知らなかったはずなのに。なのに、どうしてこんな風になってしまったのだろう。
辛いとは思わない、苦しいとも思わない。
多分、心まで血に染まってしまった化け物だから、そういうのは分からなくなってしまったのだろう。
けれど、時々無性に…普通の女の子が良かったなと思うのだ。
冬の終わり、春の目覚め。
季節は眠る私を置いて変わろうとしていた。
もう朝は来なくて良い、血も戦いも何もかも…夢の中までは追って来ない。
ならば微睡み続けよう。
辛い現実は幻想で歪めて終わりにしよう。
いち、にの、さんで、おやすみなさい。
………
彼女と初めて出会った時のことを思い出す。
座敷牢で飢えに苦しみ喘ぐその姿は惨め極まるもので、色の無い髪が印象に強かった。
それでも負けじとこちらを睨み付ける双眼には怒りと嘆きが閉じ込められており、私はその姿に内心とても狼狽えた。
彼女は一般人だった、ほんの2週間前まで。
不幸な事件により肉親を呪霊に殺され、彼女にも迫った魔の手はしかし、土壇場で発揮された悪足掻きのような術式によって奇跡的に命を繋ぐことに成功してみせた。
しかしその生存は間違いで、彼女はあの時正しく死ぬべきであったのだと、呪術界の上役達はそう断言した。
金星の歴史と因果を宿す呪われた血を啜った少女は、金星の名を冠した呪霊と一つになって生まれ変わった。
生前に持ち得た艷やかな黒髪は跡形も無く、桜色の小さな爪は獣の如き鋭さを見せ、燃ゆる烈火の黄金を携えた瞳には絶え間なく呪いが滲み続けた。
そんな彼女を、私は一瞬でも美しいと思ってしまった。
確かに死ぬべきだったのかもしれない。
その方が彼女にとっても我々にとっても良かったのかもしれない。
だが、もしも死んでしまっていたならば、この美しい化け物は誕生し得なかっただろう。
それは少しばかり惜しいと、私は思ってしまったのだ。
頼まれたからと言って私が面倒を見てやる義理など無かったはずなのに、いつの間にやら面倒を見てしまっていたのはきっと、あの日感じた美しさに囚われてしまっているからなのだろう。
あの血に飢えた醜くも美しい化け物が、自分の血を求め、自分に養われ、自分が居なければ腹を空かせて苦痛に喘ぐ。
その事実に、私はいつの間にか依存していた。
君を見失ってから三ヶ月が経つ。
私は今日もあの日見た金星の瞳を夢に見る。
夢の中の君は、ただの少女のように幸せそうに私の隣で笑っていた。
___
長い冬が老いて、花開く季節が訪れる。
あらゆる木々には新芽が芽吹き、若い緑が青い香りを漂わせながら風にそよぐ。
眠たげな甘さを包んだ春の陽気は思わず欠伸が出そうなもので、神経をふわりと緩ませた。
そんな春の中を、一組の男女は隣り合って歩いていた。
「いやぁ…まさかまさか、夢の中から潜伏場所を探し当てられた挙げ句に、迎えに来て起こされるとは…」
「私も驚いたよ、まさか君が木の中で眠っていたとはね。寝苦しくは無かったのか?」
「気にするとこそこなんだ…」
雲が棚引く空へ向かってグッと腕を伸ばして凝り固まった身体を解す寝起きの吸血種は、迎えに来た男の言葉に苦笑いを溢す。
文字通り血の通った関係である二人は、例えどれだけ離れていたとしても互いの居場所が分かっていた。
少女が夢の中で幻想の加茂を想えば、それは現実の加茂に夢として届き、少女の思いや願いを知る切っ掛けとなった。
血なんて飲みたくない、本当は普通の女の子で居たかった。
もう怒られるのは嫌、迷惑だって本当は掛けたくない、頑張った分褒められたい。
それが叶わないのならば眠りたい。都合の良い夢だけ見ていたい。
そんな願いを数ヶ月静かに受け止め続けた加茂は、そろそろ新年度が始まるからというだけの理由で眠る彼女を起こしに行った。
木や大地から得られる僅かな水分を糧に、洞の中ですやすやと眠る色の無くなった少女に「もう春だ」と声を掛ける。
「悪いが、君の願いを全て叶えてあげることは私には出来ない」
君がどんなに願っても、君はもう化け物で、ただの女の子ではいられない。
現実は君にとって辛いことばかりで、いつまでも何処までも心を蝕み、君の生を搾取するだろう。
それでも目を覚まして欲しい。
「どうしても辛いときは私が側に居よう、珈琲を淹れるくらいしか出来ないが…」
語り掛け、そっと肩に触れる。
自信の無い声で揺すり起こされる。
何処となく迷子の子供のような、寄る辺の無い頼りない声は微睡む少女の都合の良い幸せな夢に一筋の亀裂を入れた。
きっと眠っていた方が幸せで、起きたらまた化け物だ何だと指を差されながら血を啜る生活が待っている。
その毎日に救いは無く、例え戻れる方法が見つかっても死んだ母と日常は永遠に帰っては来ない。
それに、今更戻った所で普通に生きれるわけもなし。
けれど、加茂の言葉通り彼女はもう化け物で、獣で、ただの少女ではなかった。
だから目を覚ます、貪欲な吸血種として。
眠りを破られ、夢の中から追い出される。
他人に起こされること程腹立たしいことは無いなと眠い目を擦りながら思い、静かに自分を見下ろす男を吸血種は鼻を鳴らして笑ってやった。
加茂の言葉をその通りだ、とも思ったし、それでは足りないとも思った。
乾いた口内に唾液を広げ、冷たい喉に力を入れる。
開いた瞳の先で自分を見つめる男を健気な奴だと思いながら、自分の肩に乗る手を掴んで離した。
「残念だけど、与えられるだけじゃ意味が無いんだ」
パキリ、パキリ。
関節に溜まった空気を潰しながら指を鳴らし、肩を解し、今の自分を自覚する。
強く、ハッキリと、自分は血を欲する化け物だと認識する。
そうすればすぐに飢えがやって来て、牙がソワリと疼き出した。
彼女は言う、堕ちた人間としてではなく、獣としての狭義を。
「私は私の望むものを、自らの手で掴み勝ち取らねば気が済まない」
貪欲な獣(けだもの)なんでしょうね、結局は呪いだからかな。
君の血が欲しくて欲しくて堪らない癖に、その綺麗な首筋を掻っ切ってしまうのがとても恐ろしい。
それでも欲しくて欲しくて仕方が無いんだ、手に入れたくて苦しくなる。
捧げられるだけじゃ足りない、全部飲み込むまで満たされない。
だからきっと私はいずれ間違いを犯す。もしかしたら、君を八つ裂いて涙を流しながら血肉を貪る日が来るかもしれない。
もしも本当に、いつか私が獰猛な姿へと成れ果てた時…その時は、
「どうか醜い私をその瞳に映さないで、見捨ててくれ」
私にその尊く可愛らしい庇護(あい)は不要だ。
それは、いつかの未来で貴方が選んだ人のために取っておきなさい。
「これからも変わらず、適当に血を貢いでくれれば私は十分だよ」
獣に引かれた線は人間には簡単に飛び越せない。
それでも、加茂は彼女の言葉が本音を交えた強がりだと分かっていたので何も言わずに制服の襟首を寛げ、首筋を無言で曝け出した。
そんな加茂の行動を馬鹿だなコイツ思いながらも、そんな馬鹿に絆された私も同類かと観念して久方振りの食事を開始する。
皮膚を貫き溢れ出した温かな血を啜る。
新鮮で若々しい健康的な血は喉を潤すと同時に、心に伝って彼の思いを正しく彼女に認識させた。
恐ろしいとも思ったし、生き汚いとも思った。でもそれ以上に美しいと思った。
君は今もこれからも美しいのだろう、その美しさの糧は自分なのだろう。
ならば何も心配する必要など無い、私が美しいと思う限り…君は美しいままなのだから。
そんな感情が、認識が、強い想いが血を伝って心臓に行き渡り呪いに変わる。
愛が彼女を真っ赤に染め上げる。
自分の姿は全て夢、幻だ。
誰かの願いであり、私の祈りであり、君の愛で成り立つ幻想だ。
でもどうか、まだ目よ覚めないで。
別れの朝が来てしまうくらいならば、一生私は血に染まった夜で微睡み続けよう。
鮮血の赤に染まった彼女は己の在り方を諦めたように受け入れながら、「これは紛うことなき愛だなぁ」と小馬鹿にしたように笑った。
「死んだら餌にするし、死ななくても餌にするからね」
「どちらにせよ私は餌なんだな」
「恋人が良かったかな?それとも愛人?あ、妻でも嫁でも夫でも良いよ」
「何であれ、君を管理していられるのならそれで良い」
「言い方こわ…」
立派な執着に育っちまったもんだぜ…いや怖すぎ。
これだから友達も恋人も碌に居ない人間は、すぐに一つの関係に依存して…。
まあでも、可愛いので良しとしましょう。
こうして化け物は、一番可愛い人間に大切に大切に想われ続けることを怖がりながらも、色々なことを諦めて大人しく帰路についたのだった。
めでたし、めでたし。
いや、色々問題は山積みなのだけれども。
あの生クリームがたっぷり乗ったドリンクも、派手な色のアイスも、可愛い流行りのお菓子も、何もかも。
私にはもう縁のない遠い世界の物なのだと思った瞬間、込み上げてきた怒りに唇を小さく噛んだ。
理不尽だと思う。
こんなのって無いと思う。
だって私は普通に生きていただけの子供で、運が悪かったからって戦い方も知らないのに戦場に立たされて。
血も戦いも、痛みも死も、本当だったら知らなかったはずなのに。なのに、どうしてこんな風になってしまったのだろう。
辛いとは思わない、苦しいとも思わない。
多分、心まで血に染まってしまった化け物だから、そういうのは分からなくなってしまったのだろう。
けれど、時々無性に…普通の女の子が良かったなと思うのだ。
冬の終わり、春の目覚め。
季節は眠る私を置いて変わろうとしていた。
もう朝は来なくて良い、血も戦いも何もかも…夢の中までは追って来ない。
ならば微睡み続けよう。
辛い現実は幻想で歪めて終わりにしよう。
いち、にの、さんで、おやすみなさい。
………
彼女と初めて出会った時のことを思い出す。
座敷牢で飢えに苦しみ喘ぐその姿は惨め極まるもので、色の無い髪が印象に強かった。
それでも負けじとこちらを睨み付ける双眼には怒りと嘆きが閉じ込められており、私はその姿に内心とても狼狽えた。
彼女は一般人だった、ほんの2週間前まで。
不幸な事件により肉親を呪霊に殺され、彼女にも迫った魔の手はしかし、土壇場で発揮された悪足掻きのような術式によって奇跡的に命を繋ぐことに成功してみせた。
しかしその生存は間違いで、彼女はあの時正しく死ぬべきであったのだと、呪術界の上役達はそう断言した。
金星の歴史と因果を宿す呪われた血を啜った少女は、金星の名を冠した呪霊と一つになって生まれ変わった。
生前に持ち得た艷やかな黒髪は跡形も無く、桜色の小さな爪は獣の如き鋭さを見せ、燃ゆる烈火の黄金を携えた瞳には絶え間なく呪いが滲み続けた。
そんな彼女を、私は一瞬でも美しいと思ってしまった。
確かに死ぬべきだったのかもしれない。
その方が彼女にとっても我々にとっても良かったのかもしれない。
だが、もしも死んでしまっていたならば、この美しい化け物は誕生し得なかっただろう。
それは少しばかり惜しいと、私は思ってしまったのだ。
頼まれたからと言って私が面倒を見てやる義理など無かったはずなのに、いつの間にやら面倒を見てしまっていたのはきっと、あの日感じた美しさに囚われてしまっているからなのだろう。
あの血に飢えた醜くも美しい化け物が、自分の血を求め、自分に養われ、自分が居なければ腹を空かせて苦痛に喘ぐ。
その事実に、私はいつの間にか依存していた。
君を見失ってから三ヶ月が経つ。
私は今日もあの日見た金星の瞳を夢に見る。
夢の中の君は、ただの少女のように幸せそうに私の隣で笑っていた。
___
長い冬が老いて、花開く季節が訪れる。
あらゆる木々には新芽が芽吹き、若い緑が青い香りを漂わせながら風にそよぐ。
眠たげな甘さを包んだ春の陽気は思わず欠伸が出そうなもので、神経をふわりと緩ませた。
そんな春の中を、一組の男女は隣り合って歩いていた。
「いやぁ…まさかまさか、夢の中から潜伏場所を探し当てられた挙げ句に、迎えに来て起こされるとは…」
「私も驚いたよ、まさか君が木の中で眠っていたとはね。寝苦しくは無かったのか?」
「気にするとこそこなんだ…」
雲が棚引く空へ向かってグッと腕を伸ばして凝り固まった身体を解す寝起きの吸血種は、迎えに来た男の言葉に苦笑いを溢す。
文字通り血の通った関係である二人は、例えどれだけ離れていたとしても互いの居場所が分かっていた。
少女が夢の中で幻想の加茂を想えば、それは現実の加茂に夢として届き、少女の思いや願いを知る切っ掛けとなった。
血なんて飲みたくない、本当は普通の女の子で居たかった。
もう怒られるのは嫌、迷惑だって本当は掛けたくない、頑張った分褒められたい。
それが叶わないのならば眠りたい。都合の良い夢だけ見ていたい。
そんな願いを数ヶ月静かに受け止め続けた加茂は、そろそろ新年度が始まるからというだけの理由で眠る彼女を起こしに行った。
木や大地から得られる僅かな水分を糧に、洞の中ですやすやと眠る色の無くなった少女に「もう春だ」と声を掛ける。
「悪いが、君の願いを全て叶えてあげることは私には出来ない」
君がどんなに願っても、君はもう化け物で、ただの女の子ではいられない。
現実は君にとって辛いことばかりで、いつまでも何処までも心を蝕み、君の生を搾取するだろう。
それでも目を覚まして欲しい。
「どうしても辛いときは私が側に居よう、珈琲を淹れるくらいしか出来ないが…」
語り掛け、そっと肩に触れる。
自信の無い声で揺すり起こされる。
何処となく迷子の子供のような、寄る辺の無い頼りない声は微睡む少女の都合の良い幸せな夢に一筋の亀裂を入れた。
きっと眠っていた方が幸せで、起きたらまた化け物だ何だと指を差されながら血を啜る生活が待っている。
その毎日に救いは無く、例え戻れる方法が見つかっても死んだ母と日常は永遠に帰っては来ない。
それに、今更戻った所で普通に生きれるわけもなし。
けれど、加茂の言葉通り彼女はもう化け物で、獣で、ただの少女ではなかった。
だから目を覚ます、貪欲な吸血種として。
眠りを破られ、夢の中から追い出される。
他人に起こされること程腹立たしいことは無いなと眠い目を擦りながら思い、静かに自分を見下ろす男を吸血種は鼻を鳴らして笑ってやった。
加茂の言葉をその通りだ、とも思ったし、それでは足りないとも思った。
乾いた口内に唾液を広げ、冷たい喉に力を入れる。
開いた瞳の先で自分を見つめる男を健気な奴だと思いながら、自分の肩に乗る手を掴んで離した。
「残念だけど、与えられるだけじゃ意味が無いんだ」
パキリ、パキリ。
関節に溜まった空気を潰しながら指を鳴らし、肩を解し、今の自分を自覚する。
強く、ハッキリと、自分は血を欲する化け物だと認識する。
そうすればすぐに飢えがやって来て、牙がソワリと疼き出した。
彼女は言う、堕ちた人間としてではなく、獣としての狭義を。
「私は私の望むものを、自らの手で掴み勝ち取らねば気が済まない」
貪欲な獣(けだもの)なんでしょうね、結局は呪いだからかな。
君の血が欲しくて欲しくて堪らない癖に、その綺麗な首筋を掻っ切ってしまうのがとても恐ろしい。
それでも欲しくて欲しくて仕方が無いんだ、手に入れたくて苦しくなる。
捧げられるだけじゃ足りない、全部飲み込むまで満たされない。
だからきっと私はいずれ間違いを犯す。もしかしたら、君を八つ裂いて涙を流しながら血肉を貪る日が来るかもしれない。
もしも本当に、いつか私が獰猛な姿へと成れ果てた時…その時は、
「どうか醜い私をその瞳に映さないで、見捨ててくれ」
私にその尊く可愛らしい庇護(あい)は不要だ。
それは、いつかの未来で貴方が選んだ人のために取っておきなさい。
「これからも変わらず、適当に血を貢いでくれれば私は十分だよ」
獣に引かれた線は人間には簡単に飛び越せない。
それでも、加茂は彼女の言葉が本音を交えた強がりだと分かっていたので何も言わずに制服の襟首を寛げ、首筋を無言で曝け出した。
そんな加茂の行動を馬鹿だなコイツ思いながらも、そんな馬鹿に絆された私も同類かと観念して久方振りの食事を開始する。
皮膚を貫き溢れ出した温かな血を啜る。
新鮮で若々しい健康的な血は喉を潤すと同時に、心に伝って彼の思いを正しく彼女に認識させた。
恐ろしいとも思ったし、生き汚いとも思った。でもそれ以上に美しいと思った。
君は今もこれからも美しいのだろう、その美しさの糧は自分なのだろう。
ならば何も心配する必要など無い、私が美しいと思う限り…君は美しいままなのだから。
そんな感情が、認識が、強い想いが血を伝って心臓に行き渡り呪いに変わる。
愛が彼女を真っ赤に染め上げる。
自分の姿は全て夢、幻だ。
誰かの願いであり、私の祈りであり、君の愛で成り立つ幻想だ。
でもどうか、まだ目よ覚めないで。
別れの朝が来てしまうくらいならば、一生私は血に染まった夜で微睡み続けよう。
鮮血の赤に染まった彼女は己の在り方を諦めたように受け入れながら、「これは紛うことなき愛だなぁ」と小馬鹿にしたように笑った。
「死んだら餌にするし、死ななくても餌にするからね」
「どちらにせよ私は餌なんだな」
「恋人が良かったかな?それとも愛人?あ、妻でも嫁でも夫でも良いよ」
「何であれ、君を管理していられるのならそれで良い」
「言い方こわ…」
立派な執着に育っちまったもんだぜ…いや怖すぎ。
これだから友達も恋人も碌に居ない人間は、すぐに一つの関係に依存して…。
まあでも、可愛いので良しとしましょう。
こうして化け物は、一番可愛い人間に大切に大切に想われ続けることを怖がりながらも、色々なことを諦めて大人しく帰路についたのだった。
めでたし、めでたし。
いや、色々問題は山積みなのだけれども。