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人生は怒りのデスロード

悲報、この世…やっぱりカスしか居なかった。


食べっぱなしで散らかったテーブル、脱ぎ捨てられた衣服達、こびり付いた煙草の匂いと換気されていない空気の淀み。
二日間留守にしていただけでねぐらにしている家の中がグッチャグッチャになっているのを見た時の私と言ったら、一周回って真顔で無となっていた。

なんこれ?
ゴミってのはゴミしか生み出せないのか?それって生きてる価値あるのかな?早く死んだ方が世のため人のためなんじゃない?ほら、時代は環境に優しくって方針なんだしさ、環境のために土に還って貰っていいっすか?私手伝いますよ、ロープと木炭どっちがいい?

リビングへ繋がる出入り口で部屋の惨状を棒立ちで眺めていれば、後ろから「悪いな、禪院が来てたんだ」と家主に声を掛けられた。
家主は私の隣をネクタイを緩めながら通り過ぎ、同じく部屋の荒れ果てた惨状に「食ったもんくらい片付けて欲しいもんだな」と溜め息混じりに笑った。

いや、何ワロてんねん。ワロてる場合じゃないだろ、こんな汚い場所でよく息してられんな。

「時雨さん…私、あの男の有効利用方法思い付きました。肥料として土に還してやりましょう」
「お前ほど禪院を嫌う女も珍しいよ」
「私は甚爾さんのことが特別に嫌いなんじゃなくて、やれることをわざとやらないカスゴミヒューマンが嫌いなの」

そんな話をしながら私は換気のために窓を開け、散乱する衣服を回収した。ウエェ…パンツ脱ぎっぱなしにすんよ、せめて洗濯機に入れるくらいは自分でしろ。あとこの家は時雨さんが善意で私を住まわせてくれている家であって、お前が勝手に入って飯食って風呂入って出てくホテルじゃねぇんだよ。それから私は使用人じゃない、覚えてろよカス…。


私は現在、呪詛師をメインに仕事の斡旋などをすることを生業としている仲介屋こと孔・時雨という男の元に居座っていた。
てっきり誘拐された後は売り飛ばされるのだと思っていたがそうでは無かったらしい、高専の戦力過多だとか、パワーバランスがどうこうとか、今は使える呪詛師も少ないから〜等などと説明され、私はその全てを聞き流した。
だってよく分からなかったから。パワーバランスとか言われてもなんのこっちゃだし、呪詛師のこともよく知らないし、派閥とかもっと分からない。
お外の事情はよく分からなかったが、それでも私が居ることが迷惑などでは無いらしいことは分かった。

それから、甚爾さんが禪院家の出身であることも知った。
そりゃまあご苦労さんって感じで軽く同情はした、甚爾さんに何があったかは知らないが、あの家から離れられて良かったな本当に。
そんな甚爾さんは定期的に私の様子を見に来たりする。
いや、私の様子を見に来るというよりは世話を焼かれに来ている。
全然微塵も甚爾さんのことは好きでは無いのだが、家主である時雨さんが「面倒見といてやれ」って言うので、居候中の身な私は渋々家主からの指示に従った。

そんなこんなで誘拐失踪事件から約半年、私は今日も元気にキレながら生きている。


「時雨さん、今度大きな仕事があるって話…もう甚爾さんにはしたのですか?」
「まだだ、来週する予定だが…それがどうかしたか?」
「…私は出なくていいの?」
「余程のことが無い限り出る幕は無いだろうな」

近々、ドデカい仕事があるらしい。
私も最近本当にちょこっとお使い程度の仕事を任されるようになったので、今回は出番があるかと聞いてみたが無いらしい。

そりゃ何よりだ、戦うのは嫌いじゃないが次の仕事では高専が関わってくるらしいからな、出来る限り身を潜めていたい。
万が一連れ戻されでもしたら人生チェックメイトだろうしな。

「なんだ、やる気でも出たのか?それとも禪院のこと心配してるのか?」
「どっちも違います!気色悪い勘違いすんじゃねぇ!!」
「そのキレ方だと照れ隠しみたいになってるぞ」
「誰がツンギレヒロインですか!!私はあの手の"でも可愛いとこもあるよね"で暴言を許されるキャラがこの世で一番嫌いなんだよ!」
「特大ブーメラン放ったな」

一緒にすんなあーーー!!!!

"可愛いから"とか"でも良いとこもある"とかで暴言や暴力を無かったことにしてヒロインとして扱う男も私は嫌いなんだよ!!テメェなんでずっと好きだった幼馴染み選ばねぇでポッと出の暴力女選ぶんだよ!!意味分かんねえ!!!

あんな奴等と私を一緒にするな…私の"キレ"は本物なんだよ…ファッションじゃねぇからな……。
あと別に禪院だか伏黒だか知らないが、甚爾という男のことはマジで一ミリも好きじゃないから。人間として尊敬出来る所の無いだらしのない奴なんてヘイト溜まるだけだわ。そもそも私から関わりに行くことなんて無いし、あっちが構ってくるだけだし。

もう知らん、どいつもこいつも勝手に戦ってろ。
私は祈るのとレンタルDVD見るのにに忙しいんだ。

私の日常を邪魔するなよ?
いいか、絶対に邪魔するなよ??




___




フラグ回収、日常撲滅。

誰が様式美をやれっつったよ、伝統なんて守るな木っ端微塵に破壊しろ。
時雨さんから連絡が来たと思ったら空港に来いとだけ言われた。絶対面倒臭い話だとは思ったが、行かなかったら行かなかったで面倒なことになると分かっていたので渋々向かった。
そしたら沖縄に飛ばされた。私は人生で初めて中指を立てた。

「悪いんだが沖縄行って呪術師をタラシこんで来てくれ」
「人のこと何だと思ってんだ…くたばれよ……なあ…」
「お前顔だけは可愛いからな、学生の一人や二人楽勝だろう。自信持って行って来い」
「お前の故郷を焼いてやる」

国歌斉唱、カスが代〜〜〜!!!

何で私が高専とかいう奴等のためにひと夏の恋♡を提供しなきゃなんねえんだよ、意味分かんねぇよくたばれよ。
そんで何でしっかり白ワンピと日傘用意されてんだよ、日焼けには気をつけろよじゃねぇんだよ、その前にもっと気を付けるべき問題があるだろ。高専と接触したら十中八九取っ捕まるだろ私、生きて帰れぬ戦ってか?わしゃ鉄砲玉か。

強引に搭乗口に突っ込まれ、問答無用で空の旅へ。
孔・時雨とかいう男、絶対いつかこの手で呪ってやるから覚えてろよ。


そういうわけで、めんそーれ沖縄。
奥歯をギリリと噛み締めながら、私は高専生徒一本釣り大会をすることになった。

やるからにゃあ気合入れてやってやるよ、あの堅物・神経質・男尊女卑・プライドヒマラヤレベルの養父すら手中に収めた私の媚びスキルを発揮してやらあ。

高専とか知らねぇけど、多分全員抱いたぜ!
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