番外編
仲直りとまでは行かないがそれなりに許しあった我々は、夏油傑の提案によってさらに互いのことを良く知ろう…ということになった。
正直大きなお世話だとも思ったが、案外兄の方が乗り気だったため、優しくて美しい妹である私は広い心で付き合ってあげることにした。
他人を許し受け入れる私の何と可憐で優しきことか…こんなにも美しい心を持っているのだ、将来的には美を司る神々から愛されてしまうかもしれない。そうなれば目出度く神話の仲間入りだ。私が一等賞、讃えよ。
神話に名を刻むため、私はゆとりある心持ちで兄とその親友の会話を本を読みながら聞いてあげた。
「遊びにでも行ってきたらどうだい?映画でも水族館でも、新しい思い出を作って来ると良い」
「ォェッ…デートの定番じゃん、俺コイツとデートすんの?買い物長くなりそうだから嫌なんだけど」
「買い物くらい良いじゃないか、付き合ってあげれば」
「やだ、絶対ダルい」
あー言えばこー言う。まさにそんな感じの会話。
改めて思うが、夏油傑はよくもまあこんなどうしようもない、くだらない、クズで子供な男と仲良くしようと思えるな。
まるで親心のように寛大なその精神性は流石に美しいと認めざる負えない。君の草原のように広い心にあらん限りの喝采を。
私は一人、心の中で夏油くんに拍手と賛辞を贈る。
「じゃあ悟はどこか行きたい所があるのかい?」
「ねーよそんなん、あるわけねーじゃん。つーかさあ…お前も黙ってないで何か言えよ」
話題がいきなりこちらへ飛んできて、ページを捲る手を止めた。
開く筈だったページを開かぬまま、手作りの栞を挟んでからパタンと本を閉じる。
笑う月とタイトルの書かれた文庫本を机に置いて手を離し、その手を膝の上に指を組んでから乗せた。
ふむ。何か言えと改めて言われると何を言ったら良いものか。
デートのご提案ということなら、今さっき挙げられた選択肢はかなりベターだったと思う。それ以外で…となると、何があっただろうか?
プラネタリウム、動物園、最近なんかじゃ陶芸体験なんてものもあるが、別にこの男とやりに行きたいとは思わない。美しい物を生み出す時は、美しい気分でありたいものだ。
あと他にあるとすれば…ああ、一つあったか。
「遊園地とか?生憎、私は行ったことが無いから楽しいかは知らないけれど…」
「……俺も行ったことない」
「じゃあ行ってみる?」
私と二人で行って楽しいかどうかは疑問だが、人生経験の一つとして行くのは良いんじゃないだろうか。
本当はもっと多人数で行ったほうが楽しいのかもしれないが、休日を合わせるのも一苦労な環境だから仕方無い。
私の提案に少し悩んだ五条悟は、夏油くんの「行って来なよ」という一声に首を縦に振った。
というわけで、我々兄妹はもう少し仲良くなるために遊園地に行くこととなったのだった。
___
遊園地から帰宅した二人を見て、私は込み上げてくる笑いを堪えるのに必死だった。
似たような顔の男女が頭にカチューシャを付け、悟は手に風船を持ち、妹の方は胸にぬいぐるみを抱いていたからだ。
そして極め付けには何で買ったのか分からない、ハート型の楽しげなサングラスをしていた。
これだけ見れば十分に分かる。
二人はそれはもう楽しい時間を過ごしてきたのだろう。未だ興奮冷めぬと言った具合に、私の前ではしゃぎ続けていた。
「もう一回パレード見てから帰って来れば良かった…」
「まだ乗ってないアトラクションもあったのに、あ〜…もっと早く行けば良かった!」
「また行きたい、明日行きたい」
「よし、明日も行くか」
この時間に任務が終わるから、ここで待ち合わせれば3時間くらいなら遊べる。
よし行こう、そうしよう。明日はTシャツも買っちまおう。
そんな風に新しい思い出に盛り上がる彼等は、同じ笑顔を浮かべて肩を寄せ合っていた。
仲良きことは美しきかな。
今日の二人は一際美しい兄妹だった。
正直大きなお世話だとも思ったが、案外兄の方が乗り気だったため、優しくて美しい妹である私は広い心で付き合ってあげることにした。
他人を許し受け入れる私の何と可憐で優しきことか…こんなにも美しい心を持っているのだ、将来的には美を司る神々から愛されてしまうかもしれない。そうなれば目出度く神話の仲間入りだ。私が一等賞、讃えよ。
神話に名を刻むため、私はゆとりある心持ちで兄とその親友の会話を本を読みながら聞いてあげた。
「遊びにでも行ってきたらどうだい?映画でも水族館でも、新しい思い出を作って来ると良い」
「ォェッ…デートの定番じゃん、俺コイツとデートすんの?買い物長くなりそうだから嫌なんだけど」
「買い物くらい良いじゃないか、付き合ってあげれば」
「やだ、絶対ダルい」
あー言えばこー言う。まさにそんな感じの会話。
改めて思うが、夏油傑はよくもまあこんなどうしようもない、くだらない、クズで子供な男と仲良くしようと思えるな。
まるで親心のように寛大なその精神性は流石に美しいと認めざる負えない。君の草原のように広い心にあらん限りの喝采を。
私は一人、心の中で夏油くんに拍手と賛辞を贈る。
「じゃあ悟はどこか行きたい所があるのかい?」
「ねーよそんなん、あるわけねーじゃん。つーかさあ…お前も黙ってないで何か言えよ」
話題がいきなりこちらへ飛んできて、ページを捲る手を止めた。
開く筈だったページを開かぬまま、手作りの栞を挟んでからパタンと本を閉じる。
笑う月とタイトルの書かれた文庫本を机に置いて手を離し、その手を膝の上に指を組んでから乗せた。
ふむ。何か言えと改めて言われると何を言ったら良いものか。
デートのご提案ということなら、今さっき挙げられた選択肢はかなりベターだったと思う。それ以外で…となると、何があっただろうか?
プラネタリウム、動物園、最近なんかじゃ陶芸体験なんてものもあるが、別にこの男とやりに行きたいとは思わない。美しい物を生み出す時は、美しい気分でありたいものだ。
あと他にあるとすれば…ああ、一つあったか。
「遊園地とか?生憎、私は行ったことが無いから楽しいかは知らないけれど…」
「……俺も行ったことない」
「じゃあ行ってみる?」
私と二人で行って楽しいかどうかは疑問だが、人生経験の一つとして行くのは良いんじゃないだろうか。
本当はもっと多人数で行ったほうが楽しいのかもしれないが、休日を合わせるのも一苦労な環境だから仕方無い。
私の提案に少し悩んだ五条悟は、夏油くんの「行って来なよ」という一声に首を縦に振った。
というわけで、我々兄妹はもう少し仲良くなるために遊園地に行くこととなったのだった。
___
遊園地から帰宅した二人を見て、私は込み上げてくる笑いを堪えるのに必死だった。
似たような顔の男女が頭にカチューシャを付け、悟は手に風船を持ち、妹の方は胸にぬいぐるみを抱いていたからだ。
そして極め付けには何で買ったのか分からない、ハート型の楽しげなサングラスをしていた。
これだけ見れば十分に分かる。
二人はそれはもう楽しい時間を過ごしてきたのだろう。未だ興奮冷めぬと言った具合に、私の前ではしゃぎ続けていた。
「もう一回パレード見てから帰って来れば良かった…」
「まだ乗ってないアトラクションもあったのに、あ〜…もっと早く行けば良かった!」
「また行きたい、明日行きたい」
「よし、明日も行くか」
この時間に任務が終わるから、ここで待ち合わせれば3時間くらいなら遊べる。
よし行こう、そうしよう。明日はTシャツも買っちまおう。
そんな風に新しい思い出に盛り上がる彼等は、同じ笑顔を浮かべて肩を寄せ合っていた。
仲良きことは美しきかな。
今日の二人は一際美しい兄妹だった。
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