だがしかしこの女、パンツを穿いていないのである。
狗巻くんに「おかかタックル」をされている。
おかかタックルとは、何故か最近不機嫌な狗巻くんが私を見掛けた際に「おかかー!」と言いながらタックルをしてくることを差す言葉だ。私は毎日3回は狗巻くんにタックルされている、彼は結構足が速いので、見掛けて「あっやべ」と思った時には「おかかー!」が聞こえている。凄い執念だ…。
「たらこぉ!」
「そうだね、ロックの定義って難しいよね」
「ツナ!おかかぁ!!」
「確かに、定義が無いのがロックかも」
「おかかぁ……」
ほほほ……全く何言ってるか分からん。
みんな狗巻くんのおにぎり語を理解してるけど、私には時々ニュアンスが分かる程度だ。でも何か理由はよく分からないけど可愛いよ、狗巻くんは毎回一生懸命私に話し掛けてくれる、必死に会話をしようとしてる姿がいじらしく愛らしいではないか。
可愛いからハグしちゃお、えいっ。
「狗巻くん、可愛いちゃんだねぇ」
「しゃ、しゃけぇ…」
「うんうん、TMRの正式バンド名は長すぎるよね」
「おかかぁ……」
狗巻くんを猫ちゃんのようにナデナデしながら抱き締めていれば、教室の扉が開いてゴジョティーがやって来た。くっつき合っている私達を見ての第一声は「不純異性交遊!?僕も混ぜて!」である。混ぜないよ、先生デカすぎるもん、デカくて暑苦しい人間成分はもう十分間に合っておりますので。一日の摂取量賄えてるんで。
「え~~仲間外れにしないで、おねがい?」と、わざわざアイマスクを外して宝石のような艶々おめめをパチクリしながら、キュルルンッとおねだりポーズまでする先生を私達は白けた顔で見つめた。
この人良い年なのに何やってんだろうね、恥ずかしく無いのかね。
「狗巻くんどうする?」
「おかか!」
「駄目だって、先生諦めて」
「冷たい……僕、泣いちゃいそう…」
勝手に泣いていろ、生徒の仲良しこよしを邪魔しないで欲しい。
「それより先生は先生のマブダチと仲良くしてよ、てか引き取って、部屋にあると邪魔で邪魔で……」
「あのさ、一応あんなでも僕の親友だからさ、粗大ゴミみたいな言い方やめてくれる?」
「そう言うなら早く仲直りして引き取ってよ、あの人意地でも私と寝るから寝苦しいんだよ」
「は?」
「ツナ?」
ツナって何を意味してるんだろうか。
狗巻くんが目を真ん丸く見開いて固まってしまった、ゴジョティーは頭を抱えてブツブツと何か言い始める。どしたどした、今更だぞ?だってあの人毎日私のこと抱き枕にするし、部屋に置いてある物勝手に使うし、買ってきたオヤツいつの間にか食べてるし……あれ、あの人…もしかして本当に邪魔なだけでは?
「あのさ、やっぱりアイツとの契約解除しない?」
「私じゃなくてプラスに言ってくださーい、契約管理はあっちの仕事だもん」
「え~~~めんどくさ…棘も何とか言ってくれない?」
「おかか……………」
狗巻くんめっちゃ元気無いじゃん、シオシオしてしまっている、狗巻くんもやっぱ嫌だよね、疲れて帰って来たら楽しみに買っておいたパイの実勝手に食べながらゲームしてゴロゴロしてるデカくて邪魔な人間が居たら…きっと風景を想像してしまったんだね、可哀想に。
早くゴジョティーに引き取って欲しい、ゴジョティーが当てにならないのなら最悪七海さんに押し付けるつもりだ、あの人なら「大人の責任」を盾にすれば、これでもかと物凄い嫌悪感剥き出しの顔をしながらも何とかしてくれるはずだ。
「先生は何であの人と仲直りしたくないの?」
「え?僕達仲良しだよ?」
「じゃあ何で引き取ってくれないの?」
「部屋にあると邪魔そうだから……」
「そっか……」
「高菜……」
それなら仕方無い。誰だって邪魔な物を部屋に置きたくないよね、だからと言って私の部屋に置かれても困るけどね。
あの人ほぼ無力化してるから、そろそろ何かさせてもいい気がするんだけど…うーん……。
私の任務に同行させてリハビリさせては駄目だろうか?私の目が届く範囲なら、絶対にコントロール出来るし。という提案を先生にする。
「うーん……」
「駄目なら代替案出してから反対してね」
「政治家みたいなこと言うじゃん」
「私のぴっぴきぴー演算によると~~あんまり暇にさせておくと、私を使って世界征服でもし出すと思うんだよねぇ」
「うわ、やりそう」
でしょ?だからやっぱりおんもに出してあげた方が良いと思う、室内犬だってたまには外に出してあげなきゃストレス溜まって自傷したりするし、健全な精神は健康的な生活から。沢山外の空気吸ってお日様浴びせてあげないと可哀想だ。
「引率に一人付けるなら許可しよう」
「しゃけ!しゃけ!」
「棘じゃ危ないかな、七海辺りにでも頼むよ」
「ツナマヨ……」
ああ、また狗巻くんが萎びてしまった。
可愛い狗巻くんの可愛い頭部を撫でくり回してあげる、よしよし、危ない橋を渡らなきゃならないのは私だけで十分だよ。世界一悪い蛇と共に生きる私にとって、至上最悪の呪詛師の一人や二人飼い慣らすことなど今更だ。
それに……。
「幸せになりたいと願う人を放っておくなんて良心が痛むよ」
「たらこ?」
「なんでも無いよ、狗巻くんは今日も可愛いねって話」
「しゃけ~」
なんてあざとい鮭なんだ……コイツ、自分の可愛さを分かっているな?いいよ、そゆとこ大好き。良い年した大人にあざと可愛いアピールされても腹立つだけだけど、狗巻くんなら許すよ、可愛いから。
誰もが幸せになりたいと願っている、あの人も幸せになりたいと願っていた。
だから私は手を差しのべるのだ、幸福を待つだけでは無く、自ら足掻き努力し、道を見出だそうと生きる命は美しい。
あの人の考えはお見通しだ、支配関係を逆転させて私を使ってあれやこれやしようとしているのだろう。宿願を抱いているからこそ、付け入る隙が無いかと私に従順な振りをしているだけだ。
だがそれで構わない、わざとらしく媚びて尻尾を振り続けていれば良い、私も貴方が愛想を振り撒く限りはちょっぴり頼り無い姿を見せてあげるから。
だから精々仏の掌の上で踊っていろ。
おかかタックルとは、何故か最近不機嫌な狗巻くんが私を見掛けた際に「おかかー!」と言いながらタックルをしてくることを差す言葉だ。私は毎日3回は狗巻くんにタックルされている、彼は結構足が速いので、見掛けて「あっやべ」と思った時には「おかかー!」が聞こえている。凄い執念だ…。
「たらこぉ!」
「そうだね、ロックの定義って難しいよね」
「ツナ!おかかぁ!!」
「確かに、定義が無いのがロックかも」
「おかかぁ……」
ほほほ……全く何言ってるか分からん。
みんな狗巻くんのおにぎり語を理解してるけど、私には時々ニュアンスが分かる程度だ。でも何か理由はよく分からないけど可愛いよ、狗巻くんは毎回一生懸命私に話し掛けてくれる、必死に会話をしようとしてる姿がいじらしく愛らしいではないか。
可愛いからハグしちゃお、えいっ。
「狗巻くん、可愛いちゃんだねぇ」
「しゃ、しゃけぇ…」
「うんうん、TMRの正式バンド名は長すぎるよね」
「おかかぁ……」
狗巻くんを猫ちゃんのようにナデナデしながら抱き締めていれば、教室の扉が開いてゴジョティーがやって来た。くっつき合っている私達を見ての第一声は「不純異性交遊!?僕も混ぜて!」である。混ぜないよ、先生デカすぎるもん、デカくて暑苦しい人間成分はもう十分間に合っておりますので。一日の摂取量賄えてるんで。
「え~~仲間外れにしないで、おねがい?」と、わざわざアイマスクを外して宝石のような艶々おめめをパチクリしながら、キュルルンッとおねだりポーズまでする先生を私達は白けた顔で見つめた。
この人良い年なのに何やってんだろうね、恥ずかしく無いのかね。
「狗巻くんどうする?」
「おかか!」
「駄目だって、先生諦めて」
「冷たい……僕、泣いちゃいそう…」
勝手に泣いていろ、生徒の仲良しこよしを邪魔しないで欲しい。
「それより先生は先生のマブダチと仲良くしてよ、てか引き取って、部屋にあると邪魔で邪魔で……」
「あのさ、一応あんなでも僕の親友だからさ、粗大ゴミみたいな言い方やめてくれる?」
「そう言うなら早く仲直りして引き取ってよ、あの人意地でも私と寝るから寝苦しいんだよ」
「は?」
「ツナ?」
ツナって何を意味してるんだろうか。
狗巻くんが目を真ん丸く見開いて固まってしまった、ゴジョティーは頭を抱えてブツブツと何か言い始める。どしたどした、今更だぞ?だってあの人毎日私のこと抱き枕にするし、部屋に置いてある物勝手に使うし、買ってきたオヤツいつの間にか食べてるし……あれ、あの人…もしかして本当に邪魔なだけでは?
「あのさ、やっぱりアイツとの契約解除しない?」
「私じゃなくてプラスに言ってくださーい、契約管理はあっちの仕事だもん」
「え~~~めんどくさ…棘も何とか言ってくれない?」
「おかか……………」
狗巻くんめっちゃ元気無いじゃん、シオシオしてしまっている、狗巻くんもやっぱ嫌だよね、疲れて帰って来たら楽しみに買っておいたパイの実勝手に食べながらゲームしてゴロゴロしてるデカくて邪魔な人間が居たら…きっと風景を想像してしまったんだね、可哀想に。
早くゴジョティーに引き取って欲しい、ゴジョティーが当てにならないのなら最悪七海さんに押し付けるつもりだ、あの人なら「大人の責任」を盾にすれば、これでもかと物凄い嫌悪感剥き出しの顔をしながらも何とかしてくれるはずだ。
「先生は何であの人と仲直りしたくないの?」
「え?僕達仲良しだよ?」
「じゃあ何で引き取ってくれないの?」
「部屋にあると邪魔そうだから……」
「そっか……」
「高菜……」
それなら仕方無い。誰だって邪魔な物を部屋に置きたくないよね、だからと言って私の部屋に置かれても困るけどね。
あの人ほぼ無力化してるから、そろそろ何かさせてもいい気がするんだけど…うーん……。
私の任務に同行させてリハビリさせては駄目だろうか?私の目が届く範囲なら、絶対にコントロール出来るし。という提案を先生にする。
「うーん……」
「駄目なら代替案出してから反対してね」
「政治家みたいなこと言うじゃん」
「私のぴっぴきぴー演算によると~~あんまり暇にさせておくと、私を使って世界征服でもし出すと思うんだよねぇ」
「うわ、やりそう」
でしょ?だからやっぱりおんもに出してあげた方が良いと思う、室内犬だってたまには外に出してあげなきゃストレス溜まって自傷したりするし、健全な精神は健康的な生活から。沢山外の空気吸ってお日様浴びせてあげないと可哀想だ。
「引率に一人付けるなら許可しよう」
「しゃけ!しゃけ!」
「棘じゃ危ないかな、七海辺りにでも頼むよ」
「ツナマヨ……」
ああ、また狗巻くんが萎びてしまった。
可愛い狗巻くんの可愛い頭部を撫でくり回してあげる、よしよし、危ない橋を渡らなきゃならないのは私だけで十分だよ。世界一悪い蛇と共に生きる私にとって、至上最悪の呪詛師の一人や二人飼い慣らすことなど今更だ。
それに……。
「幸せになりたいと願う人を放っておくなんて良心が痛むよ」
「たらこ?」
「なんでも無いよ、狗巻くんは今日も可愛いねって話」
「しゃけ~」
なんてあざとい鮭なんだ……コイツ、自分の可愛さを分かっているな?いいよ、そゆとこ大好き。良い年した大人にあざと可愛いアピールされても腹立つだけだけど、狗巻くんなら許すよ、可愛いから。
誰もが幸せになりたいと願っている、あの人も幸せになりたいと願っていた。
だから私は手を差しのべるのだ、幸福を待つだけでは無く、自ら足掻き努力し、道を見出だそうと生きる命は美しい。
あの人の考えはお見通しだ、支配関係を逆転させて私を使ってあれやこれやしようとしているのだろう。宿願を抱いているからこそ、付け入る隙が無いかと私に従順な振りをしているだけだ。
だがそれで構わない、わざとらしく媚びて尻尾を振り続けていれば良い、私も貴方が愛想を振り撒く限りはちょっぴり頼り無い姿を見せてあげるから。
だから精々仏の掌の上で踊っていろ。