番外編
夏油さんが再就職をしたので部屋から追い出そうと思っていたが、何やかんやと言いくるめられたり駄々を捏ねられるものだから未だに夏油さんは私の部屋に入り浸っている。
貴方、聞く所によれば娘さんが二人居るんですよね?今の貴方の姿を見たら娘さんが悲しみますよ?と情に訴えても失敗し、ゴジョティーに夏油さんの買い取りをしてないか聞いてもしてないとのことなので、諦めてベッドを少し大きい物にでもするかと思った次第である。
「このくらいかなあ…」
「もっと大きくてもいいんじゃないかな」
「部屋に入るかな…」
この人、私の行く先々に勝手に付いて来るが、本当に仕事してるのか?大丈夫?伊地知さんに負担かけてないよね?あの人見てて可哀想なくらい大変だからさ…。
ぽよんぽよんとベッドのスプリングを試してみたり、大きさを悩んだりしながら買い物を続ける。
やっぱりそこまで大きい物はいらない気がする、何なら二段ベッドとかでどうでしょうかね。
「ダメ、大きくて頑丈なのにしよう」
「何故…」
「これから先沢山使うことになるんだから、当たり前だろう」
待て、何だその口振りは、沢山使うってそりゃ当たり前だろう、毎日寝るんだから。何言ってるんだ。
「君ってさ、一周回って鈍いよね」
「これは…悪口を言われている!?」
「そこは分かるんだね、えらいえらい」
褒めるか貶すかどっちかにしろ!
ご機嫌な夏油さんは一旦放っておき、ベッドコーナーを見て回る。ダブルで7万…一番大きいのだと……14万…いや、やっぱりこれはどう頑張っても寮の部屋には入らない、ダブルが精一杯だろう。
「一番は、夏油さんがご家族の元に帰られるのが良い選択だと思うんだけど…」
「なに?私の家族に挨拶したいって?」
「……ガバガバ翻訳機通しちゃったの?」
是非紹介させて欲しいな、じゃないんですよ、やだよ、荷が重いわ。そもそも何て挨拶するの?私の支配者です、とか?気でも狂ったかと思われるよ絶対、私と夏油さんの関係なんて大したこと無い関係だ、恋愛感情で接することも肉体関係があるわけでも無い、夫婦やパートナー、ペアとも違う。強いて夏油さんの立ち位置に名前を付けるとするならば…。
「貴方は私の同行者であって、それ以下でも以上でも無いよ」
特等席で理想が叶う瞬間を見せると約束し、共に楽園回帰を果たす存在、そんな存在貴方だけで十分だ。だから貴方の家族を私が縛ることはしない。
私が溢す言葉にニコニコと微笑む夏油さんは随分嬉しそうだった、実際口に出して喜びを顕にしている。
「嬉しいよ、私を唯一無二の連れと認めてくれて」
「……ガバガバ翻訳」
「では無いね、君は自分で言っておいて分かっていないみたいだが、随分熱烈なことを言っているよ」
これが言論の自由か……解釈は人それぞれってことでね、仕方無いね。
好きに捉えていればいい、どうせ私はこれからも救済のためにしか貴方とは関わらない。救いの終末が訪れたら私達の関係も終わりだ、それまでは好きにしていてくれ。
何せこの世は愚行を重ねるためにあるのだ、貴方の愚かな戯言も、私の小さな悩みも、ベッドの大きさを選ぶために浪費されていく時間も、全て許されていること。
神が貴方を見捨てても、少なくとも、貴方の全てに私は許しを与えるだろう、何せ私は貴方の……。
「私って夏油さんのなんだ…?」
「飼い主、所有主、あと将来的には…」
「持ち主……あ、契約者とか?」
「話遮らないで?」
ごめんて、でもこういうのは自分でしっくり当てはまり納得いく言葉を見つけないと駄目だなんだ。
ま、全ての物事に名前や理由が必要なわけでは無い、悩むのもバカらしいから この話は一旦ここでおしまいにしよう。
私は結局横幅が160cmはあるベッドを買うことになった。
一部の本と本棚は高専に用意された夏油さんの部屋へと置かせて貰うことにし、何とか就寝スペースを広く出来たのだった。
一件落着、めでたしめでたし。
……あれ、そういえば…話は変わるが、夏油さんを新しい肉体にしたけれど、古い肉体の方ってどうしたんだっけ?
まあ、いっか!
貴方、聞く所によれば娘さんが二人居るんですよね?今の貴方の姿を見たら娘さんが悲しみますよ?と情に訴えても失敗し、ゴジョティーに夏油さんの買い取りをしてないか聞いてもしてないとのことなので、諦めてベッドを少し大きい物にでもするかと思った次第である。
「このくらいかなあ…」
「もっと大きくてもいいんじゃないかな」
「部屋に入るかな…」
この人、私の行く先々に勝手に付いて来るが、本当に仕事してるのか?大丈夫?伊地知さんに負担かけてないよね?あの人見てて可哀想なくらい大変だからさ…。
ぽよんぽよんとベッドのスプリングを試してみたり、大きさを悩んだりしながら買い物を続ける。
やっぱりそこまで大きい物はいらない気がする、何なら二段ベッドとかでどうでしょうかね。
「ダメ、大きくて頑丈なのにしよう」
「何故…」
「これから先沢山使うことになるんだから、当たり前だろう」
待て、何だその口振りは、沢山使うってそりゃ当たり前だろう、毎日寝るんだから。何言ってるんだ。
「君ってさ、一周回って鈍いよね」
「これは…悪口を言われている!?」
「そこは分かるんだね、えらいえらい」
褒めるか貶すかどっちかにしろ!
ご機嫌な夏油さんは一旦放っておき、ベッドコーナーを見て回る。ダブルで7万…一番大きいのだと……14万…いや、やっぱりこれはどう頑張っても寮の部屋には入らない、ダブルが精一杯だろう。
「一番は、夏油さんがご家族の元に帰られるのが良い選択だと思うんだけど…」
「なに?私の家族に挨拶したいって?」
「……ガバガバ翻訳機通しちゃったの?」
是非紹介させて欲しいな、じゃないんですよ、やだよ、荷が重いわ。そもそも何て挨拶するの?私の支配者です、とか?気でも狂ったかと思われるよ絶対、私と夏油さんの関係なんて大したこと無い関係だ、恋愛感情で接することも肉体関係があるわけでも無い、夫婦やパートナー、ペアとも違う。強いて夏油さんの立ち位置に名前を付けるとするならば…。
「貴方は私の同行者であって、それ以下でも以上でも無いよ」
特等席で理想が叶う瞬間を見せると約束し、共に楽園回帰を果たす存在、そんな存在貴方だけで十分だ。だから貴方の家族を私が縛ることはしない。
私が溢す言葉にニコニコと微笑む夏油さんは随分嬉しそうだった、実際口に出して喜びを顕にしている。
「嬉しいよ、私を唯一無二の連れと認めてくれて」
「……ガバガバ翻訳」
「では無いね、君は自分で言っておいて分かっていないみたいだが、随分熱烈なことを言っているよ」
これが言論の自由か……解釈は人それぞれってことでね、仕方無いね。
好きに捉えていればいい、どうせ私はこれからも救済のためにしか貴方とは関わらない。救いの終末が訪れたら私達の関係も終わりだ、それまでは好きにしていてくれ。
何せこの世は愚行を重ねるためにあるのだ、貴方の愚かな戯言も、私の小さな悩みも、ベッドの大きさを選ぶために浪費されていく時間も、全て許されていること。
神が貴方を見捨てても、少なくとも、貴方の全てに私は許しを与えるだろう、何せ私は貴方の……。
「私って夏油さんのなんだ…?」
「飼い主、所有主、あと将来的には…」
「持ち主……あ、契約者とか?」
「話遮らないで?」
ごめんて、でもこういうのは自分でしっくり当てはまり納得いく言葉を見つけないと駄目だなんだ。
ま、全ての物事に名前や理由が必要なわけでは無い、悩むのもバカらしいから この話は一旦ここでおしまいにしよう。
私は結局横幅が160cmはあるベッドを買うことになった。
一部の本と本棚は高専に用意された夏油さんの部屋へと置かせて貰うことにし、何とか就寝スペースを広く出来たのだった。
一件落着、めでたしめでたし。
……あれ、そういえば…話は変わるが、夏油さんを新しい肉体にしたけれど、古い肉体の方ってどうしたんだっけ?
まあ、いっか!
1/1ページ