五条悟の姉で奴隷
揺
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禪院家は思いの外私に優しかった。
そこにどんな思惑があろうとも、彼等は私の実力と立場を理解し接してくれた。
特別一級術師、五条悟の姉、美しい女。
出過ぎた真似さえしなければ、彼等は私を遠巻きから眺めるだけで事を終える。
唯一絡んでくるのなんて、あの小キツネのような坊や一人くらいだ、あれはあれで可愛いのでまあ良しとしよう。
「揺ちゃんのこと、だぁれも迎えに来いひんね」
「そうだね」
「このままうちの女になるか?パパはよろこぶと思うで」
「そうかなぁ…」
あれから何日経ったのだろう、日付を確認していないせいで日付感覚が曖昧だ。
私は毎日毎日、タダ飯を食らって直哉くんの相手をし続けている。
ひらがなの書き取りをしながらお喋りをする直哉くんは小さくて可愛らしい。
見ていてキュンキュンする、小さい人間ってすんごく可愛い、どんな子でも。
「悟くんも来ぃひんし、はくじょーもんやな」
「…そんなことないよ」
悟様は、私の主は完璧な方だ、強く美しく、毎日私の帰りを待っていて下さった。
私が疲れを訴えれば、温かく小さな手で私の頬を撫でてくれる。
こんな、惨めな生命体の私にも愛情を与えて下さった唯一の方だ。
「でも、怖いの…」
「………は?泣いとんの?」
気付けば瞳から涙がポタポタと溢れていた。
頬を濡らし、顎を伝った雫が畳に落ちて吸われていく。
唖然と私を見つめる直哉くんの姿が涙でボヤケて、何もかも似ていないはずなのに、背格好だけで悟様にダブって思わず手を伸ばし、そっと抱き締め髪に鼻を寄せた。
他人の匂いがする。
子供の香りがする。
愛しい人ではない、違う匂いがする。
それでも似た温もりに安堵する。
この温度を精一杯愛したいと身体が訴えた。
もしかしたら、誰も迎えに来てくれないかもしれない。
帰っても、私の居場所は何処にも無いかもしれない。
悟様に幻滅されてしまったらどうしよう、この身の何もかもがあの方のために作られたのに、何にもなれなかったらどうしたら良いのだろうか。
私は怖い、死ぬのは怖くなんて無いのに、生きていくのが怖くてたまらなかった。
「揺ちゃん、俺、悟くんちゃうで」
「いいの」
「なにがいいんや…」
「私にだって、夢を見る権利くらいあるはずでしょう」
腕の中からは困ったような声が聞こえた。
それを無視して、私は黒い髪に頬を寄せ、小さな背を撫で続ける。
こんなに感情が昂ったことは今まで無い。
だから、涙の止め方も分からなかった。
思えば、私は産まれてから5年も経っていない命だ。
今までずっと、マニュアルに従って感情を制御して来たが、よくよく考えれば備わっている感情は、直哉くんよりも未発達な物のなのかもしれない。
育むことも忘れて、いや、育み方も知らずに今まで生きて来た。だから上手く涙を止められなかったし、爆発した不安に肩を震わせるはめになった。
とうとう私の様子が普段と違い過ぎることを不審に思った直哉くんは、私の腕から身を捩って部屋の外へと飛び出して行ってしまった。
「まっ………て、とは…言えないか…」
伸ばしかけた手を下ろし、項垂れる。
机から転がり落ちた鉛筆を元の場所へと戻して、机に額を押し付けた。
怖い、悲しい、不安だ、これからどうすればいいんだ……。
もし、もしも、行く宛が無くなったらどうしたら良いのだろう。
戦うことは出来る、回復力は凄く高いから盾にもなれる、人を殺めることに躊躇いは無いし、武器の扱いには慣れている。
悟様譲りの顔立ちは、一般人からしたら良い部類らしい。
何処でも寝れるし、何でも食べれる。
痛みにだって強い。
ただ、役割の無い人生には耐えられない。
誰かの用心棒にでも…それが駄目ならいっそ呪術師はやめて、他の道に…。
悟様に必要とされなくなった人生の先を考えるのが恐ろしいのに、考えることを止められない。そのせいでさらに不安が募っていく。
グスグス鼻を鳴らして泣きながら、そんなことを考え続けた。
どれくらい泣いていただろうか、泣き過ぎてズキズキと頭が痛くなって来た頃、いきなりバンッと襖が開く音がした。
咄嗟に顔を上げれば、そこには息を切らした直哉くんが目尻を釣り上げながら立っていた。
「いつまで泣いてるん?ええ加減鬱陶しいねん!」
「ご、ごめん…」
「……悟くんくるって、早う顔洗うてきぃや」
「ぇ、ど、どうして…」
腕をグイグイ引っ張られ部屋から連れ出される。
「揺ちゃんホンマ、かおだけやでええの」
「そ、そうですかね…」
「そうやで、そのかおあかんくなったらなんの取り柄もあらへんで」
「そんなに…」
だから顔を洗って来いということらしく、私は洗面所に突っ込まれた。
扉の外からは「犬臭いし、術式ヘボいし、オマケに尻軽ってさいあくやん」と愚痴が聞こえてくる。
そ、そんな……そんなに臭いか?今日はまだ一度も術式使ってないのに?
あとこの術式は確かに派手さは無いが便利で気に入ってるんだが、それから尻軽になんてなった覚えは無いし、そもそもそんな言葉何処で覚えて来ちゃったの直哉くん。
とりあえず指示通りに顔を洗って、洗面所の扉を開く。
視線を下げれば相変わらず不機嫌な雰囲気をビシビシぶつけてくる直哉くんが居た。
なんでこの子、こんなにキレているんだろうか。
「悟くんに恨まれたくないねん」
「はあ」
「わかったらちゃっちゃといえ帰れ」
「すみません…」
よく分からないままに謝ってしまった。
小さな子は可愛いけれど、可愛いだけにキレられると結構キツいものがある。
私はこの数日で直哉くんの人を見下すけれど、なんだかんだ言いながら懐いてくれる所にメロメロになってしまっているのに…不満が募ってしまう。
でも、そうか…悟様、来てくれるのか。
来て…くれ…………いやいやいやいや、主に出向かせるなんて奴隷の身分で何たる行い、恥どころの話では無い、万死に値してしまうのではなかろうか。
なんたる恥晒し、己が恥ずかしくてたまらない。
待っているなんて出来る訳がない、小さき我が主よ、今、参ります。
そこにどんな思惑があろうとも、彼等は私の実力と立場を理解し接してくれた。
特別一級術師、五条悟の姉、美しい女。
出過ぎた真似さえしなければ、彼等は私を遠巻きから眺めるだけで事を終える。
唯一絡んでくるのなんて、あの小キツネのような坊や一人くらいだ、あれはあれで可愛いのでまあ良しとしよう。
「揺ちゃんのこと、だぁれも迎えに来いひんね」
「そうだね」
「このままうちの女になるか?パパはよろこぶと思うで」
「そうかなぁ…」
あれから何日経ったのだろう、日付を確認していないせいで日付感覚が曖昧だ。
私は毎日毎日、タダ飯を食らって直哉くんの相手をし続けている。
ひらがなの書き取りをしながらお喋りをする直哉くんは小さくて可愛らしい。
見ていてキュンキュンする、小さい人間ってすんごく可愛い、どんな子でも。
「悟くんも来ぃひんし、はくじょーもんやな」
「…そんなことないよ」
悟様は、私の主は完璧な方だ、強く美しく、毎日私の帰りを待っていて下さった。
私が疲れを訴えれば、温かく小さな手で私の頬を撫でてくれる。
こんな、惨めな生命体の私にも愛情を与えて下さった唯一の方だ。
「でも、怖いの…」
「………は?泣いとんの?」
気付けば瞳から涙がポタポタと溢れていた。
頬を濡らし、顎を伝った雫が畳に落ちて吸われていく。
唖然と私を見つめる直哉くんの姿が涙でボヤケて、何もかも似ていないはずなのに、背格好だけで悟様にダブって思わず手を伸ばし、そっと抱き締め髪に鼻を寄せた。
他人の匂いがする。
子供の香りがする。
愛しい人ではない、違う匂いがする。
それでも似た温もりに安堵する。
この温度を精一杯愛したいと身体が訴えた。
もしかしたら、誰も迎えに来てくれないかもしれない。
帰っても、私の居場所は何処にも無いかもしれない。
悟様に幻滅されてしまったらどうしよう、この身の何もかもがあの方のために作られたのに、何にもなれなかったらどうしたら良いのだろうか。
私は怖い、死ぬのは怖くなんて無いのに、生きていくのが怖くてたまらなかった。
「揺ちゃん、俺、悟くんちゃうで」
「いいの」
「なにがいいんや…」
「私にだって、夢を見る権利くらいあるはずでしょう」
腕の中からは困ったような声が聞こえた。
それを無視して、私は黒い髪に頬を寄せ、小さな背を撫で続ける。
こんなに感情が昂ったことは今まで無い。
だから、涙の止め方も分からなかった。
思えば、私は産まれてから5年も経っていない命だ。
今までずっと、マニュアルに従って感情を制御して来たが、よくよく考えれば備わっている感情は、直哉くんよりも未発達な物のなのかもしれない。
育むことも忘れて、いや、育み方も知らずに今まで生きて来た。だから上手く涙を止められなかったし、爆発した不安に肩を震わせるはめになった。
とうとう私の様子が普段と違い過ぎることを不審に思った直哉くんは、私の腕から身を捩って部屋の外へと飛び出して行ってしまった。
「まっ………て、とは…言えないか…」
伸ばしかけた手を下ろし、項垂れる。
机から転がり落ちた鉛筆を元の場所へと戻して、机に額を押し付けた。
怖い、悲しい、不安だ、これからどうすればいいんだ……。
もし、もしも、行く宛が無くなったらどうしたら良いのだろう。
戦うことは出来る、回復力は凄く高いから盾にもなれる、人を殺めることに躊躇いは無いし、武器の扱いには慣れている。
悟様譲りの顔立ちは、一般人からしたら良い部類らしい。
何処でも寝れるし、何でも食べれる。
痛みにだって強い。
ただ、役割の無い人生には耐えられない。
誰かの用心棒にでも…それが駄目ならいっそ呪術師はやめて、他の道に…。
悟様に必要とされなくなった人生の先を考えるのが恐ろしいのに、考えることを止められない。そのせいでさらに不安が募っていく。
グスグス鼻を鳴らして泣きながら、そんなことを考え続けた。
どれくらい泣いていただろうか、泣き過ぎてズキズキと頭が痛くなって来た頃、いきなりバンッと襖が開く音がした。
咄嗟に顔を上げれば、そこには息を切らした直哉くんが目尻を釣り上げながら立っていた。
「いつまで泣いてるん?ええ加減鬱陶しいねん!」
「ご、ごめん…」
「……悟くんくるって、早う顔洗うてきぃや」
「ぇ、ど、どうして…」
腕をグイグイ引っ張られ部屋から連れ出される。
「揺ちゃんホンマ、かおだけやでええの」
「そ、そうですかね…」
「そうやで、そのかおあかんくなったらなんの取り柄もあらへんで」
「そんなに…」
だから顔を洗って来いということらしく、私は洗面所に突っ込まれた。
扉の外からは「犬臭いし、術式ヘボいし、オマケに尻軽ってさいあくやん」と愚痴が聞こえてくる。
そ、そんな……そんなに臭いか?今日はまだ一度も術式使ってないのに?
あとこの術式は確かに派手さは無いが便利で気に入ってるんだが、それから尻軽になんてなった覚えは無いし、そもそもそんな言葉何処で覚えて来ちゃったの直哉くん。
とりあえず指示通りに顔を洗って、洗面所の扉を開く。
視線を下げれば相変わらず不機嫌な雰囲気をビシビシぶつけてくる直哉くんが居た。
なんでこの子、こんなにキレているんだろうか。
「悟くんに恨まれたくないねん」
「はあ」
「わかったらちゃっちゃといえ帰れ」
「すみません…」
よく分からないままに謝ってしまった。
小さな子は可愛いけれど、可愛いだけにキレられると結構キツいものがある。
私はこの数日で直哉くんの人を見下すけれど、なんだかんだ言いながら懐いてくれる所にメロメロになってしまっているのに…不満が募ってしまう。
でも、そうか…悟様、来てくれるのか。
来て…くれ…………いやいやいやいや、主に出向かせるなんて奴隷の身分で何たる行い、恥どころの話では無い、万死に値してしまうのではなかろうか。
なんたる恥晒し、己が恥ずかしくてたまらない。
待っているなんて出来る訳がない、小さき我が主よ、今、参ります。