五条悟の姉で奴隷
揺
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「人を殺すことしか脳の無い贋作風情が」
「…すみません」
「悟様に色目を使いおって」
「…ごめんなさい」
悟とお風呂に入ったことがバレて、それについて叱られた。
服を脱がされ、背中に焼き付けられた文字に向かって鞭を振り下ろされる。
何度も
何度も
何度も
痛みはやがて熱さに変わり、焼かれた当時の記憶を思い出させる。
鞭で人を叩くなんて有り得ないと思うかもしれないけれど、私はこの家の偉い人達からしたら、人ではなく"奴隷"なので、文句は言わずに受け入れる他に選択肢は無かった。
振るわれた鞭が頭を掠め、思わず後頭部を守るように手を動かせば、後頭部目掛けて踵を振り下ろされた。
「…ッ」
「立場を弁えろ、奴隷が」
「ごめんなさい、すみません」
固い靴底でグリグリと頭を踏み付けられ、歯を食い縛りながら私は思う。
それでも、人間が愛しいと。
彼がこんなことをするのだって、全ては私が大好きな悟のためなのだ。
悟に悪い影響が出て欲しくないから、彼はこうして私を戒めている。
悟のため、全て悟のためなのだ。
私が奴隷として生きて、鞭を振るわれることも、この男が私に鞭を振るうのも、全ては悟の、あの小さき主の輝かしい将来のためなのだ。
だから受け入れる、痛みも熱も耐えられる。
あの、何よりも尊い主のためならば、私は
「お前の立場は?」
頭から足を離した男が前に回る。
そのまま髪を掴まれ、強制的に顔を挙げさせられた。
人間は愛しい。
悟のために感情を動かす人間は、愛しい。
全て悟のためだ、悟のためならば耐えられる。
背中の焼跡が酷く痛んだ。
汗か、涙か、何だか分からない物が頬を伝っていく。
痛くない、熱くない、苦しくない、人間は愛しい、悟のためなら耐えられる。
言い聞かせるように頭の中で何度も何度も繰り返す。
痛くない、痛くない、苦しくない、苦しくない、悟のため、悟のため、悟のため…。
「私は、五条悟様の、奴隷です」
私達は姉と弟なんかじゃない、主と奴隷だ。
奴隷だから鞭で打たれても文句は言えない、奴隷だから主と一緒に風呂になんて入っちゃいけない、奴隷だから主と一緒に寝ることは許されない。
奴隷だから主のために働く。
奴隷だから誰にも尊ばれることは無い。
奴隷だから背中に印を刻み付けられる。
私は奴隷だ、姉では無い、分かっている。
そんなこと、産まれた時から決められていたのだから今更何も言うことなど無い。
私が言えば満足したのか、男は私から手を離すと、舌打ちをした後に一度だけ私を踏んづけてから懲罰房を後にした。
灯りの消された懲罰房は暗く、冷たい。
背中の焼けたような痛みに奥歯を食い縛りながら耐え続ける。
ああ、でも良かった。
今日は前よりも早く終わってくれた、これならば手当てをしてから仕事に向かえる。
悟が居なくなればいいと思っている人間は思いの外沢山居るから、幾ら働いても減りやしない。
毎日毎日与えられている武器を片手に死体を作る、私が人を殺すことで悟が少しでも楽に生きられるのならば、それに越したことは無い。
そう、自分に言い聞かせる。
暗い懲罰房の中で、ひたすらに。
___
銃を正しく扱う上で、一番最初にやる訓練は「目隠し分解」という作業だ。
文字通り、目を隠した状態で銃を分解し、部品を並べ、そしてまた素早く組み立てる。
何でこんな訓練をするのかと言うと、暗い場所で敵が近くに居る状態で明かりをつけてしまったら、敵に居場所を知られてしまうからだ。
だから、暗闇でも銃器を扱えるようにしておかないといけない。
銃器は大きな物だったりすると、現場に原形のままで持ち込めなかったり、持ち運べないこともある。バラバラに分解し、バラバラに分けて持ち歩く必要もある。
だから、どんな状況下でも銃の組み立てが出来るようになる訓練からまずは始める。
ルーチンワークとして、AK-47の分解から組み立てまでを行う。
目隠しをした状態でストップウォッチを押し、素早く机の上に置いた銃に手を伸ばす。
スライド、バレル、ロッキングブロック、リコイルスプリングなどの部品を、フレームから分離し、一度手を離す。
もう一度手を伸ばして先程とは逆の手順で組み立て直す。
組み立て終え、ストップウォッチを押してタイマーを止め、目隠しを外した。
長くなった前髪の隙間からタイムを見る。
「48秒…」
まあまあ、うん、ボチボチだ。
これならばきっと、今日も問題無く仕事が行えるだろう、背中はヒリヒリと痛むけれど。
今日のターゲットは最近悟の周りをウロウロしている呪詛師だ、何でも彼は妻子持ちらしい。
可哀想だと哀れみの念を抱く一方で、冷めた頭の片隅では「だけど主に近付いたのだから仕方無い」と割り切る気持ちがあった。
スカートのウエスト部分に挟み込むような形で拳銃を一丁仕舞い、パーカで隠れるように背中へ刃物を隠す。
スカートの中にはスローワーナイフ(投げナイフ)を隠し、袖口にミニリボルバーを仕込んだ。
ミリタリーウォッチが正常に働いていることを確認し、暗視ゴーグルをポケットに突っ込んで部屋から出る。
まだ時間に余裕はあるが、行動を開始しよう。
家に居る誰も彼もが私を居ない者のように無視してすれ違う廊下を歩いて、玄関の方へと向かう。
靴を履く横で、煙のように現れた狼が背後へチラリと視線をやったのを視界の端で捉えた私は、靴紐を縛るために丸めた背をそのままに、背後に向かって声を掛ける。
「どうしたんですか、若様」
「……若様やめろって」
「すみませんね、今から仕事でして」
「……姉ちゃん」
不安と不満が入り交じる声色をした弟が、トテトテと軽い足音を立てながら近寄って来る。
靴紐を縛り終えた私は痛みなど感じさせないように背を正し、顔を上げると、振り返って微笑んで見せた。
「姉ちゃんは、俺の姉ちゃんで居てくれるよな?」
「勿論」
今更、何を不安に思う必要があるのだろうか、私は悟の姉だ。
姉と書いて奴隷と読むが、それでも貴方が望むならば姉で在り続ける。
「悟、こっちにおいで」
腕を広げて笑みを深めれば、吸い寄せられるように小さな体が腕の中へやって来た。繊細な物に触れるように、尊びながらその頭を撫でてやれば、甘える猫のように胸元へと頬を擦り寄せてくる。
擽るように喉から頬へ手を滑らせれば、先程の不安気な表情が幾らかマシになった気がした。
「可愛い悟、貴方が私を必要無いと判断するまでは、私はずっとずっと貴方の姉ですよ」
「姉ちゃんはずっと必要、ずっと俺の」
「はいはい、じゃあもうお仕事だから」
「ん、」
最後に強く抱き締めてから身を離す。
名残惜しげに服の裾からゆっくりと離れていく指先に苦笑をしながら、私は立ち上がって玄関の扉を開いた。
行ってきますの挨拶をして、屋敷の門へと向かう。
いつか、いつか。
悟が、私を必要無くなる日が来たとして、私はきっとそれに少しの寂しさは感じれど、他に思う所も無く受け入れて、そうしたらやっとその時奴隷の立場から開放されるのだろう。
その日が来て欲しいとも、来て欲しくないとも思わない。
ただ、弟の健やかな成長を願うばかりだ。
健やかに、何事も無く成長して、私の事なんてどうでも良くなればいい。
姉離れは自立への大きな一歩となるはずだ。
全てはあの、小さく尊き主のために。
あの子のためならば、私はどうなったって耐えられるのだから。
「…すみません」
「悟様に色目を使いおって」
「…ごめんなさい」
悟とお風呂に入ったことがバレて、それについて叱られた。
服を脱がされ、背中に焼き付けられた文字に向かって鞭を振り下ろされる。
何度も
何度も
何度も
痛みはやがて熱さに変わり、焼かれた当時の記憶を思い出させる。
鞭で人を叩くなんて有り得ないと思うかもしれないけれど、私はこの家の偉い人達からしたら、人ではなく"奴隷"なので、文句は言わずに受け入れる他に選択肢は無かった。
振るわれた鞭が頭を掠め、思わず後頭部を守るように手を動かせば、後頭部目掛けて踵を振り下ろされた。
「…ッ」
「立場を弁えろ、奴隷が」
「ごめんなさい、すみません」
固い靴底でグリグリと頭を踏み付けられ、歯を食い縛りながら私は思う。
それでも、人間が愛しいと。
彼がこんなことをするのだって、全ては私が大好きな悟のためなのだ。
悟に悪い影響が出て欲しくないから、彼はこうして私を戒めている。
悟のため、全て悟のためなのだ。
私が奴隷として生きて、鞭を振るわれることも、この男が私に鞭を振るうのも、全ては悟の、あの小さき主の輝かしい将来のためなのだ。
だから受け入れる、痛みも熱も耐えられる。
あの、何よりも尊い主のためならば、私は
「お前の立場は?」
頭から足を離した男が前に回る。
そのまま髪を掴まれ、強制的に顔を挙げさせられた。
人間は愛しい。
悟のために感情を動かす人間は、愛しい。
全て悟のためだ、悟のためならば耐えられる。
背中の焼跡が酷く痛んだ。
汗か、涙か、何だか分からない物が頬を伝っていく。
痛くない、熱くない、苦しくない、人間は愛しい、悟のためなら耐えられる。
言い聞かせるように頭の中で何度も何度も繰り返す。
痛くない、痛くない、苦しくない、苦しくない、悟のため、悟のため、悟のため…。
「私は、五条悟様の、奴隷です」
私達は姉と弟なんかじゃない、主と奴隷だ。
奴隷だから鞭で打たれても文句は言えない、奴隷だから主と一緒に風呂になんて入っちゃいけない、奴隷だから主と一緒に寝ることは許されない。
奴隷だから主のために働く。
奴隷だから誰にも尊ばれることは無い。
奴隷だから背中に印を刻み付けられる。
私は奴隷だ、姉では無い、分かっている。
そんなこと、産まれた時から決められていたのだから今更何も言うことなど無い。
私が言えば満足したのか、男は私から手を離すと、舌打ちをした後に一度だけ私を踏んづけてから懲罰房を後にした。
灯りの消された懲罰房は暗く、冷たい。
背中の焼けたような痛みに奥歯を食い縛りながら耐え続ける。
ああ、でも良かった。
今日は前よりも早く終わってくれた、これならば手当てをしてから仕事に向かえる。
悟が居なくなればいいと思っている人間は思いの外沢山居るから、幾ら働いても減りやしない。
毎日毎日与えられている武器を片手に死体を作る、私が人を殺すことで悟が少しでも楽に生きられるのならば、それに越したことは無い。
そう、自分に言い聞かせる。
暗い懲罰房の中で、ひたすらに。
___
銃を正しく扱う上で、一番最初にやる訓練は「目隠し分解」という作業だ。
文字通り、目を隠した状態で銃を分解し、部品を並べ、そしてまた素早く組み立てる。
何でこんな訓練をするのかと言うと、暗い場所で敵が近くに居る状態で明かりをつけてしまったら、敵に居場所を知られてしまうからだ。
だから、暗闇でも銃器を扱えるようにしておかないといけない。
銃器は大きな物だったりすると、現場に原形のままで持ち込めなかったり、持ち運べないこともある。バラバラに分解し、バラバラに分けて持ち歩く必要もある。
だから、どんな状況下でも銃の組み立てが出来るようになる訓練からまずは始める。
ルーチンワークとして、AK-47の分解から組み立てまでを行う。
目隠しをした状態でストップウォッチを押し、素早く机の上に置いた銃に手を伸ばす。
スライド、バレル、ロッキングブロック、リコイルスプリングなどの部品を、フレームから分離し、一度手を離す。
もう一度手を伸ばして先程とは逆の手順で組み立て直す。
組み立て終え、ストップウォッチを押してタイマーを止め、目隠しを外した。
長くなった前髪の隙間からタイムを見る。
「48秒…」
まあまあ、うん、ボチボチだ。
これならばきっと、今日も問題無く仕事が行えるだろう、背中はヒリヒリと痛むけれど。
今日のターゲットは最近悟の周りをウロウロしている呪詛師だ、何でも彼は妻子持ちらしい。
可哀想だと哀れみの念を抱く一方で、冷めた頭の片隅では「だけど主に近付いたのだから仕方無い」と割り切る気持ちがあった。
スカートのウエスト部分に挟み込むような形で拳銃を一丁仕舞い、パーカで隠れるように背中へ刃物を隠す。
スカートの中にはスローワーナイフ(投げナイフ)を隠し、袖口にミニリボルバーを仕込んだ。
ミリタリーウォッチが正常に働いていることを確認し、暗視ゴーグルをポケットに突っ込んで部屋から出る。
まだ時間に余裕はあるが、行動を開始しよう。
家に居る誰も彼もが私を居ない者のように無視してすれ違う廊下を歩いて、玄関の方へと向かう。
靴を履く横で、煙のように現れた狼が背後へチラリと視線をやったのを視界の端で捉えた私は、靴紐を縛るために丸めた背をそのままに、背後に向かって声を掛ける。
「どうしたんですか、若様」
「……若様やめろって」
「すみませんね、今から仕事でして」
「……姉ちゃん」
不安と不満が入り交じる声色をした弟が、トテトテと軽い足音を立てながら近寄って来る。
靴紐を縛り終えた私は痛みなど感じさせないように背を正し、顔を上げると、振り返って微笑んで見せた。
「姉ちゃんは、俺の姉ちゃんで居てくれるよな?」
「勿論」
今更、何を不安に思う必要があるのだろうか、私は悟の姉だ。
姉と書いて奴隷と読むが、それでも貴方が望むならば姉で在り続ける。
「悟、こっちにおいで」
腕を広げて笑みを深めれば、吸い寄せられるように小さな体が腕の中へやって来た。繊細な物に触れるように、尊びながらその頭を撫でてやれば、甘える猫のように胸元へと頬を擦り寄せてくる。
擽るように喉から頬へ手を滑らせれば、先程の不安気な表情が幾らかマシになった気がした。
「可愛い悟、貴方が私を必要無いと判断するまでは、私はずっとずっと貴方の姉ですよ」
「姉ちゃんはずっと必要、ずっと俺の」
「はいはい、じゃあもうお仕事だから」
「ん、」
最後に強く抱き締めてから身を離す。
名残惜しげに服の裾からゆっくりと離れていく指先に苦笑をしながら、私は立ち上がって玄関の扉を開いた。
行ってきますの挨拶をして、屋敷の門へと向かう。
いつか、いつか。
悟が、私を必要無くなる日が来たとして、私はきっとそれに少しの寂しさは感じれど、他に思う所も無く受け入れて、そうしたらやっとその時奴隷の立場から開放されるのだろう。
その日が来て欲しいとも、来て欲しくないとも思わない。
ただ、弟の健やかな成長を願うばかりだ。
健やかに、何事も無く成長して、私の事なんてどうでも良くなればいい。
姉離れは自立への大きな一歩となるはずだ。
全てはあの、小さく尊き主のために。
あの子のためならば、私はどうなったって耐えられるのだから。