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弟によって神格化されそうになっているのだが…

渡された資料を読み込む。

内容は、とある呪術師から奪われた呪具を、今の持ち主である呪詛師から奪い取ること…ふんふん、なるほど……?

「殺っちまっていいのか?」
「構わないが…お嬢ちゃんはどうする?」
「な、何が?」

相手の顔と特徴を覚え、頭の中でこんな感じの人間かな〜と全身図をイメージしている時にいきなり声を掛けられ、ビクリッと肩を揺らしてしまった。
だから、いきなり話し掛けないでってば…。

「呪詛師、殺せるか?」
「俺がやるっつってんだろ」

おぉ…何だか知らんが物騒な話をしているではないか。
呪具をぶん取れば良いだけなのに、なんで人を殺す話に…?というか、もしかして今更だけど、悪事の片棒担わされそうになってる?


公園にてセミの抜け殻を拾ったり、ネコジャラシをフワフワしたり、綺麗な石を眺めたりなどした私は、十分楽しい休日を送れたから帰ろうと思っていたが、なんと本番はそこからであった。

仕事現場を見せてやるから付いて来いと言われ、一度は「もうかえる」と断ったものの、あれやこれやとタクシーに乗せられ仕事現場とやらの近くまで来てしまった。
簡単な仕事だから大丈夫だ、お嬢ちゃんは見てればいいって言葉は嘘だったんですか、嘘だったんですね。ガッツリ巻き込まれてしまったが…はてさて、どうしたものやら。

「だが、実力は見ておきたいだろ」
「俺が知ってんだからいいんだよ」
「だったらそれを詳しく…」

あーだこーだ、あーだこーだ。

どうやら私に殺しをさせるかさせないかの議論をしているようだ。
術式が見たいだけなら他にも方法は幾らでもあるだろうに…。

というか、もう午後2時になる。
さっさとやることやって帰らないと、傑くんに怒られてしまう。
なので、話し合う二人に「もう行こうよ」と声を掛ければ、彼等は同時に振り向いて、私を見ながら溜息を溢した。
おい、人の顔見ながら溜息するなんて失礼だぞ。

「門限4時なの」
「早すぎじゃね?」
「傑くんが、4時には帰って来なさいって」
「お前の弟やっぱ可笑しいぞ」

それは………そうかもしれない、強く否定出来ない…。

「とにかく行こうよ、呪具ぶん取ろうよ」

甚爾さんの腕を掴み、ねぇーねぇーと引っ張りながら揺らす。甚爾さんはビクともしないが、もう一度溜息をついて「行くか」と言ってくれた。

「懐かれてるな」
「うるせぇなぁ」

舌打ちを一つしてから、甚爾さんは歩き出したので、私もその後ろを付いて行く。
振り返れば、孔さんがヒラヒラと手を振っていたので一応小さく振り返しておいた。
よく分からん人だが、わりと喋りやすいかもしれない。変なヒゲしてるけど。

私の歩くのが遅かったのか、甚爾さんが腕を掴んで引っ張ってきたので、ペチッと空いている手で掴んできた手を叩く。
甚爾さんは眉間にシワを寄せて手を離したので、その手を掴み握ってみせた。

「こうだよ、こう」
「別に手ぇ繋ぎたいわけじゃねぇよ」
「…今の私達、すごく友達っぽくない?」
「話聞け、アホタヌキ」

だからアホなタヌキは可愛いだろ。
全く、素直じゃないんだから…本当は嬉しい癖に、分かってんだぞヒモゴリラ。
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