弟によって神格化されそうになっているのだが…
労働とは尊いものであるって最初に言ったやつは私の前に出て来いよ、神として裁いてやる。
今日も今日とて研究室に籠もってひたすら呪具について調べ物をさせられている私は、発狂寸前だった。
あと1200秒で休憩時間…あと1140秒で休憩時間…と、秒刻みでひたすらに休憩時間を待つ姿はさぞかし病的だろう。まあ、この研究室にそんな私の姿を気にする人は居ないんだが。皆どっこいどっこいの限界人間労働施設であった。
そんなこんなでやって来た休憩時間、私はリュックサックを肩に引っ掛け研究室から素早く出た。
一刻も早くあの場から離れるためにとにかく歩く。
やってられるかまったく、チマチマチマチマ呪具のお手入れして、どんな呪いが籠もってるか調べ続けて、そんで調べた結果をとにかく書く、書く、書く。で、報告書として渡せばリテイク。ふざけるな、私の貴重な人生はこんなことをするためにあるんじゃない。
プンプンと肩をいからせながら歩き、お弁当を食べられそうな場所を探す。
今日は傑くんが握ってくれたクソデカおにぎりとレンコンのきんぴら、それから卵焼き。傑くん曰く、「今日も沢山愛情詰めておいたよ」とのこと。既製品のプリンと違って、弟の愛情ならば食べないわけにはいかない、姉として。
というわけで良い感じの日陰を見つけたのでここにしよう、と腰を下ろそうとした時であった。
側の窓ガラスがガラガラと音を立てて開き、そこから顔がニュニュッと出て来た。
いきなりのヒューマン登場にギョッとして固まる。野生動物あるある。友人曰く、我、たぬきであるゆえ…。
「お姉さん!こんにちわ!」
「コニ………コニチ、ワ……」
「今からお昼ですか?」
「ソ…ソデシュ………」
現れたのは夏の太陽に負けぬ弾ける笑顔を持つ男の子、灰原くんであった。
私の不自然な片言会話に彼は何もツッコまず、善性MAXな最強笑顔を浮かべながら私に「良かったら一緒に食べませんか?」と、これまた善性みなぎる声で聞いてきた。
た、頼む〜〜〜!助けてくれ〜!私を、今すぐ私を夜に帰してくれ、明る過ぎて蒸発する、目潰れる、頭痛になる、焼けて死ぬ、跡形もなくなる。
「ぁ……アノ…ワタシ…タワシ……」
「あ、もしかしてお弁当ですか?」
そうです、そうなんですよく気付きましたね、私はお弁当なので食堂は利用しないんですよだから放っておいて下さい。という意味を込めて首をブンブンカクカクと縦に振りまくる。赤ベコならぬ姉ベコ状態だ。
「じゃあ、食堂でお弁当食べるのはどうですか?七海も来るって!」
え……………え…?だ、だから………???
え、ごめんよ、お姉ちゃんちょっとよく分からないな。食堂を利用したくないから毎日なるべくお弁当を持参してるわけで。さらに言うと、何でそこで七海くん?七海くんが来るから何だと言うのか、別に会いたか無いぞ、むしろ出来る限り人とは関わりたくないんだが…。
固まる私に、「じゃあ、食堂で待ってますね!」と言って灰原くんは窓を締めて何処かへ行ってしまった。
唖然と立ち尽くす私。
まるで嵐にでも巻き込まれた気分だ。
人間、コミュニケーションが難しい。言葉が通じることと、会話が成立することはイコールでは無いのだな。また一つ賢くなれた、そう思えば良い経験だったな。
……………ともいかず、はてさてどうしたものか。
いや、だが待てよ?これはチャンスなのでは?
最近の私は労働の辛さにより疲弊した結果、弟にベタベタのグスグスに甘え切っている。これでは弟の自立心に悪い、いつまでも姉の世話を焼かせているのも駄目だ、ここは一発交友の輪を広げるべきなのかもしれない。
目指せ友達100人、そのためには私が一歩を踏み出さなければ。
よし、食堂…行ってみよう。
そんで、もし駄目だったらすぐに逃げよう。
今日も今日とて研究室に籠もってひたすら呪具について調べ物をさせられている私は、発狂寸前だった。
あと1200秒で休憩時間…あと1140秒で休憩時間…と、秒刻みでひたすらに休憩時間を待つ姿はさぞかし病的だろう。まあ、この研究室にそんな私の姿を気にする人は居ないんだが。皆どっこいどっこいの限界人間労働施設であった。
そんなこんなでやって来た休憩時間、私はリュックサックを肩に引っ掛け研究室から素早く出た。
一刻も早くあの場から離れるためにとにかく歩く。
やってられるかまったく、チマチマチマチマ呪具のお手入れして、どんな呪いが籠もってるか調べ続けて、そんで調べた結果をとにかく書く、書く、書く。で、報告書として渡せばリテイク。ふざけるな、私の貴重な人生はこんなことをするためにあるんじゃない。
プンプンと肩をいからせながら歩き、お弁当を食べられそうな場所を探す。
今日は傑くんが握ってくれたクソデカおにぎりとレンコンのきんぴら、それから卵焼き。傑くん曰く、「今日も沢山愛情詰めておいたよ」とのこと。既製品のプリンと違って、弟の愛情ならば食べないわけにはいかない、姉として。
というわけで良い感じの日陰を見つけたのでここにしよう、と腰を下ろそうとした時であった。
側の窓ガラスがガラガラと音を立てて開き、そこから顔がニュニュッと出て来た。
いきなりのヒューマン登場にギョッとして固まる。野生動物あるある。友人曰く、我、たぬきであるゆえ…。
「お姉さん!こんにちわ!」
「コニ………コニチ、ワ……」
「今からお昼ですか?」
「ソ…ソデシュ………」
現れたのは夏の太陽に負けぬ弾ける笑顔を持つ男の子、灰原くんであった。
私の不自然な片言会話に彼は何もツッコまず、善性MAXな最強笑顔を浮かべながら私に「良かったら一緒に食べませんか?」と、これまた善性みなぎる声で聞いてきた。
た、頼む〜〜〜!助けてくれ〜!私を、今すぐ私を夜に帰してくれ、明る過ぎて蒸発する、目潰れる、頭痛になる、焼けて死ぬ、跡形もなくなる。
「ぁ……アノ…ワタシ…タワシ……」
「あ、もしかしてお弁当ですか?」
そうです、そうなんですよく気付きましたね、私はお弁当なので食堂は利用しないんですよだから放っておいて下さい。という意味を込めて首をブンブンカクカクと縦に振りまくる。赤ベコならぬ姉ベコ状態だ。
「じゃあ、食堂でお弁当食べるのはどうですか?七海も来るって!」
え……………え…?だ、だから………???
え、ごめんよ、お姉ちゃんちょっとよく分からないな。食堂を利用したくないから毎日なるべくお弁当を持参してるわけで。さらに言うと、何でそこで七海くん?七海くんが来るから何だと言うのか、別に会いたか無いぞ、むしろ出来る限り人とは関わりたくないんだが…。
固まる私に、「じゃあ、食堂で待ってますね!」と言って灰原くんは窓を締めて何処かへ行ってしまった。
唖然と立ち尽くす私。
まるで嵐にでも巻き込まれた気分だ。
人間、コミュニケーションが難しい。言葉が通じることと、会話が成立することはイコールでは無いのだな。また一つ賢くなれた、そう思えば良い経験だったな。
……………ともいかず、はてさてどうしたものか。
いや、だが待てよ?これはチャンスなのでは?
最近の私は労働の辛さにより疲弊した結果、弟にベタベタのグスグスに甘え切っている。これでは弟の自立心に悪い、いつまでも姉の世話を焼かせているのも駄目だ、ここは一発交友の輪を広げるべきなのかもしれない。
目指せ友達100人、そのためには私が一歩を踏み出さなければ。
よし、食堂…行ってみよう。
そんで、もし駄目だったらすぐに逃げよう。