番外編
休日、朝早くから姉さんの部屋に行けば、そこには何故か悟が居た。
「私以外の男を部屋に入れないでくれ!」
「おはよう、今日は悟くんと探検しに行ってくるね」
「私以外の男と休みの日に出掛けないでくれ!」
私が選んだパジャマを着たままの姉さんは、準備万端な悟に「姉ちゃん、こっちのスカートとこっちのワンピースどっちが良い?」と聞かれて迷っていた。
おい、やめろ。そのスカートもワンピースも私とのデート服のやつだ、私以外の男の前で着るなど許さない、許せない。
ドスッと横から悟を押しのけるようにタックルして彼を吹き飛ばし、私はクローゼットの中からパッパと手際良く何枚か手に取った。
白いジャンパースカート、ラベンダー色のブラウス、ファージャケット、その他諸々…。
「姉さん、どれにする?」
「ジーパン、探検に行くから」
「た……んけんは、また後日でもいいんじゃないかな?折角の休日だしほら、私も任務無いからさ、一緒に出掛けよう」
「でも昨日悟くんと約束したから…」
私以外の男と出掛ける約束をしないでくれ!!!
「そう、俺が約束したから、先に」
「駄目だ、許可出来ない」
「誰もお前に許可求めてねぇし」
「私の許可無く姉さんと出掛けられると思うなよ…」
私の許可無しに姉さんと出掛けることはおろか、会話も触ることも許可が必要だと思って欲しい。
姉さんは私に管理されている時が一番安全で幸せなんだから、他の奴が手を出すな。
私に吹っ飛ばされた悟が起き上がり、今度は私に身体をぶつけてくる。
それを受け止め、私も肩をぶつける。
ゴンゴンッドスドスッガシガシッ
「このっ!姉さんの部屋から!出て行け!!」
「傑こそ!出てけよ!一々面倒臭いんだよ!!」
悟のビンタが左頬を打つ、お返しに右手で腹を殴る。
手が出たが最後、次いで脚が出て、最終的に取っ組み合いへと発展していく。
クソ、休日の朝からどうしてお子ちゃまボンボン問題児相手にこんなことを!
しかし、いくら親友と言えども姉さんとの休日は譲れない、やはり何とかして勝たねば。
何故なら、勝った方にこそ姉さんと過ごす休日の権利が手に入…
「…皆で行けば良くない?」
「姉ちゃん天才」
「いや、私は二人きりが、」
「とりあえず着替えるから出てって貰えるかな」
扉を指差す姉さんの目にはハッキリと「めんどくさい」と書かれていた。
面倒臭いと思わないでくれ…私はいつだって姉さんのために必死なんだ、こんなに健気に頑張る弟を面倒臭い奴を見る目で見ないでくれ。
肩を落としながら部屋から出る。
デカい男が二人揃って廊下で待たされる姿は実に滑稽だろう。
「というか、姉さんと何処へ行く気だったんだ?」
「カップル限定チャレンジパフェ食いたくて」
「そんなものに姉さんを誘うな」
悟なら適当に引っ掛ければ何とかなっただろうと思ったが、それをしたら後々面倒臭くなることに気付き言わなかった。
分かる、姉さんみたいに仲良くなった男性に対して特別な感情や欲求を向けて来ない女は便利で貴重なのは凄く良く分かる、が、分かるからと言って姉さんを貸すわけにはいかない。私のものだから。
というか、姉さんを探検と称して遊びに誘っておいてパフェ食べに行くつもりだったのか?
姉さんはそれを知っているのか?
マズイ……このまま本人に用意を任せていたら、折りたたみ式シャベルや熊よけの鈴、ガスバーナーを持って行くことに…。
いやそれだけじゃない、今頃登山用パーカーと防水ザックを引っ張り出しているかもしれない、止めなければ!
気付いた私は扉を開け放って部屋の中へ入った。
「姉さん!今日は山には行かな…」
「ムキュ~」
「………………」
恥ずかしいことだが、部屋に入る前に少しだけそういう展開があるかもしれないと期待してしまった。
だが、現実は違った。
横着してボタンを外さず頭からパジャマを脱ごうとしたのだろう、途中で突っかかり脱皮に失敗した虫のようなことになっている姉さんはキュゥキュゥ言いながらジタバタゴロゴロと部屋の中で藻掻いていた。
思わず5秒程眺めてしまう。
「ハッ!大丈夫かい!?」
「ウキュッ」
「もしかして首締まってる!?」
マズイマズイマズイ、早く助けなければ。
駆け寄り脱がすのを手伝うが、どうにもならない。藻掻き苦しむようにジタバタする姉さんは、苦しそうにキュウキュウ鳴いていた。そんな姿をちょっと可愛いとか思ってしまった私をどうか許して欲しい。
結局力付くでボタンをブチブチと外して何とかパジャマによる拘束から脱出させた。
「プハッ」と息をした姉さんの顔は真っ赤で、ゼェゼェと喉を鳴らして息しながら「えらい目にあった…」と呟いていた。
全く、私が居ないとパジャマもろくに脱げないんだから。
まあ、そうなるように仕込んだのは私なのだが…いや訂正する、流石にこんな風になるまではしていない、これは単純に姉さんが素ボケをかましただけだ。
「パジャマはボタンを外してから脱いで」
「うん…」
「はあ…いや、今度からボタンが無いパジャマにしようか」
「そうして…」
どうせ出掛けるならば、買いに行くか。
姉さんを少しでも生きやすくするのが私の使命なんだから、怠るわけにはいかない。
うん、とりあえずまずは…
「着替えようか」
「あ、いや、自分で出来」
「出来ないから今みたいなことになるんだろ、いいから大人しく言うことを聞いて」
こうして今日も、姉さんは私の選んだ服を着るのだった。
「私以外の男を部屋に入れないでくれ!」
「おはよう、今日は悟くんと探検しに行ってくるね」
「私以外の男と休みの日に出掛けないでくれ!」
私が選んだパジャマを着たままの姉さんは、準備万端な悟に「姉ちゃん、こっちのスカートとこっちのワンピースどっちが良い?」と聞かれて迷っていた。
おい、やめろ。そのスカートもワンピースも私とのデート服のやつだ、私以外の男の前で着るなど許さない、許せない。
ドスッと横から悟を押しのけるようにタックルして彼を吹き飛ばし、私はクローゼットの中からパッパと手際良く何枚か手に取った。
白いジャンパースカート、ラベンダー色のブラウス、ファージャケット、その他諸々…。
「姉さん、どれにする?」
「ジーパン、探検に行くから」
「た……んけんは、また後日でもいいんじゃないかな?折角の休日だしほら、私も任務無いからさ、一緒に出掛けよう」
「でも昨日悟くんと約束したから…」
私以外の男と出掛ける約束をしないでくれ!!!
「そう、俺が約束したから、先に」
「駄目だ、許可出来ない」
「誰もお前に許可求めてねぇし」
「私の許可無く姉さんと出掛けられると思うなよ…」
私の許可無しに姉さんと出掛けることはおろか、会話も触ることも許可が必要だと思って欲しい。
姉さんは私に管理されている時が一番安全で幸せなんだから、他の奴が手を出すな。
私に吹っ飛ばされた悟が起き上がり、今度は私に身体をぶつけてくる。
それを受け止め、私も肩をぶつける。
ゴンゴンッドスドスッガシガシッ
「このっ!姉さんの部屋から!出て行け!!」
「傑こそ!出てけよ!一々面倒臭いんだよ!!」
悟のビンタが左頬を打つ、お返しに右手で腹を殴る。
手が出たが最後、次いで脚が出て、最終的に取っ組み合いへと発展していく。
クソ、休日の朝からどうしてお子ちゃまボンボン問題児相手にこんなことを!
しかし、いくら親友と言えども姉さんとの休日は譲れない、やはり何とかして勝たねば。
何故なら、勝った方にこそ姉さんと過ごす休日の権利が手に入…
「…皆で行けば良くない?」
「姉ちゃん天才」
「いや、私は二人きりが、」
「とりあえず着替えるから出てって貰えるかな」
扉を指差す姉さんの目にはハッキリと「めんどくさい」と書かれていた。
面倒臭いと思わないでくれ…私はいつだって姉さんのために必死なんだ、こんなに健気に頑張る弟を面倒臭い奴を見る目で見ないでくれ。
肩を落としながら部屋から出る。
デカい男が二人揃って廊下で待たされる姿は実に滑稽だろう。
「というか、姉さんと何処へ行く気だったんだ?」
「カップル限定チャレンジパフェ食いたくて」
「そんなものに姉さんを誘うな」
悟なら適当に引っ掛ければ何とかなっただろうと思ったが、それをしたら後々面倒臭くなることに気付き言わなかった。
分かる、姉さんみたいに仲良くなった男性に対して特別な感情や欲求を向けて来ない女は便利で貴重なのは凄く良く分かる、が、分かるからと言って姉さんを貸すわけにはいかない。私のものだから。
というか、姉さんを探検と称して遊びに誘っておいてパフェ食べに行くつもりだったのか?
姉さんはそれを知っているのか?
マズイ……このまま本人に用意を任せていたら、折りたたみ式シャベルや熊よけの鈴、ガスバーナーを持って行くことに…。
いやそれだけじゃない、今頃登山用パーカーと防水ザックを引っ張り出しているかもしれない、止めなければ!
気付いた私は扉を開け放って部屋の中へ入った。
「姉さん!今日は山には行かな…」
「ムキュ~」
「………………」
恥ずかしいことだが、部屋に入る前に少しだけそういう展開があるかもしれないと期待してしまった。
だが、現実は違った。
横着してボタンを外さず頭からパジャマを脱ごうとしたのだろう、途中で突っかかり脱皮に失敗した虫のようなことになっている姉さんはキュゥキュゥ言いながらジタバタゴロゴロと部屋の中で藻掻いていた。
思わず5秒程眺めてしまう。
「ハッ!大丈夫かい!?」
「ウキュッ」
「もしかして首締まってる!?」
マズイマズイマズイ、早く助けなければ。
駆け寄り脱がすのを手伝うが、どうにもならない。藻掻き苦しむようにジタバタする姉さんは、苦しそうにキュウキュウ鳴いていた。そんな姿をちょっと可愛いとか思ってしまった私をどうか許して欲しい。
結局力付くでボタンをブチブチと外して何とかパジャマによる拘束から脱出させた。
「プハッ」と息をした姉さんの顔は真っ赤で、ゼェゼェと喉を鳴らして息しながら「えらい目にあった…」と呟いていた。
全く、私が居ないとパジャマもろくに脱げないんだから。
まあ、そうなるように仕込んだのは私なのだが…いや訂正する、流石にこんな風になるまではしていない、これは単純に姉さんが素ボケをかましただけだ。
「パジャマはボタンを外してから脱いで」
「うん…」
「はあ…いや、今度からボタンが無いパジャマにしようか」
「そうして…」
どうせ出掛けるならば、買いに行くか。
姉さんを少しでも生きやすくするのが私の使命なんだから、怠るわけにはいかない。
うん、とりあえずまずは…
「着替えようか」
「あ、いや、自分で出来」
「出来ないから今みたいなことになるんだろ、いいから大人しく言うことを聞いて」
こうして今日も、姉さんは私の選んだ服を着るのだった。