夏油傑による姉神信仰について.2
そんなこんなで学年も変わり、新入生がやって来た頃の話。
私の人見知りが再発した。
その原因は新入生の後輩達にあった。
そもそも私は4年生となり、本来であれば実習として各地に飛ばされることになっていたはずが、先生からの呼び出しで言い渡されたのは以下の通りであった。
「お前を下手に何処かに飛ばしたらそのまま帰って来なくなりそうだから、お前は私達の目の届く範囲にまだ居なさい」
「え、」
「"気付いたら居なくなってる"を辞めたら本格的な実習に出す」
そんな、一瞬目を離した隙きに居なくなってる幼児じゃないんだから……。
関西に行ったらなにしよう、東北に行ったらあの山に行こう…四国はやっぱりお遍路さんだよなあ、等と楽しみを膨らましていたのにこの仕打ち、私はあんまりだと嘆いて暫くの間授業をサボって裏山でテントを張ってキャンプをしたりなどしていた。
傑くんは私の実質内勤状態に鬱陶しいくらい喜んでいたけれど、それがまた腹立たしいったらありゃしない。
君ね、この野郎、弟この野郎、姉の嘆きを喜ぶな、本当君そういうとこが家入さんからクズって呼ばれる原因の一つなんだよ。
そんなこんなで4月、高専で迎える4度目の春。
私には新たな後輩が出来た。
そして、その後輩に対して人見知りをしまくっていた。
高専に運ばれて来た呪具の精密調査のため、朝から研究室であれやこれやとやっていた私は、作業着にしているジャージと軍手のまま休息にと自販機を求めて彷徨い歩いていた。
今日は朝寝坊をしたため、水筒を用意出来なかったのだ。
いつも起こしに来てくれる傑くんは任務に行ってしまっていて不在なため、私は朝から一人で慌てていたりした。
まあ、慌てると言っても、結局すぐに諦めて普段通りに準備をして朝食を取って研究室に行ったものだから、普通に遅刻した。
ひたすらに任された呪具の調査を行うこと数時間、喉の渇きを感じ、傑くんの「こまめに水分を取るんだよ」の言葉を思い出した私は自販機を探していたわけである。
しかし、最も近い自販機に行ったが、手ぶらで来てしまったことを思い出す。
集中し過ぎていたせいで、頭が上手く回っていないのかもしれない。
ジャージのポケットに手を突っ込み中を探るも、出てきたのは携帯電話と飴玉だけだった。
もう水道水でいいか……。
そう考え自販機の前から立ち去ろうとした私の横から、ニュッと何者かの腕が伸びる。
それにギョッとして固まると、斜め後ろらへんから「お好きな物、どうぞ」と声がしてさらに驚き肩が大袈裟なくらいビクッと跳ねた。
ソロリソロリと振り返り、見上げた先にはサラサラの金髪が眩しい青年が一人。
「ぁ、ゃ、あの……」
「どうぞ」
は、はへぇ…………圧が……。
思わず一歩、二歩とその場から後退する。
彼はこの春高専にやって来た新入生の一人、七海建人くんである。
思わず触れてみたくなるくらい美しい金髪に、キメ細かな白肌、鋭い目付きに伸びた背筋、纏う冷たい空気がまるで大理石で出来た彫刻を思わせる、そういう男の子だった。
遠目から見ている分には目の保養になって大変良いのだが、こうして関わるとどうしたら良いか分からない。
口を閉ざし固まる私はさながら、いきなり現れた人間に驚き固まる野生動物のような感じだろう。
こういう時、本当にどうしたら良いか分からない。
何も言えずに固まる私に痺れを切らしたのか、七海くんは自販機の前に立ち喋り出す。
「夏油さんから、貴女が困っていたら面倒を見ておいてくれと頼まれているんです」
「え、ぇ……」
「資金も渡されています、だからこれは夏油さんのお金なので気にせず選んで下さい」
「は、はい……」
あの、その…私も一応"夏油"さんなんですが……。
いややっぱり何でもありせん、すみません、さっさと買います。
ヒシヒシと伝わる「面倒臭い」「早くして欲しい」「何だコイツ」というオーラに縮こまりながら自販機でいつも買っているオレンジジュースを買おうとした、が………
「あれ…ない………」
「何がですか」
「ぁ、えと……オレンジ…」
オレンジジュースが無かった。
そんな馬鹿な、オレンジジュースが無い自販機なんて何のために設置されてると言うのだ。
またしても固まってしまう。
どうしよう、他に飲みたい物…お茶?でも麦茶と緑茶しかない、別にどちらも飲みたい気分では無い。じゃあ他には…ミルクティーと炭酸水、珈琲数種類、あとは飲んだこと無い謎のゼリー飲料などなど。
どうしよう、早く、早く、早く選ばないと、買わないと。
焦る気持ちとは裏腹に、全く飲みたい物が決まらない。
こうしている間にも後輩は真横で私の買い物を待っているというのに。
いや、真横で待たなくていい、頼むから私のことは放っておいてくれ。心がしんどい。
やっぱり水道水で良かったじゃん、なんで後輩の男の子に世話任せちゃったの傑くん。ちゃんと私のこと見ててよ。見てないなら月に帰っちゃうよお姉ちゃん。
心も喉の渇きも限界に達した私は、耐えられなくなった。
「もう、いらない……」
「ですが、」
「いい、いいです、さよなら」
そう言うや否や、その場から走って立ち去る。
後ろからは「は?」という疑問の声がしたが気にしなかった。だって本当に知らない人と一緒に居るの辛いんだもん。
しかし喉は渇いていたため、今度は水道を目指す。
ゼェゼェと犬のように喉を鳴らして辿り着いた水道には、不運なことに先客が居た。
黒い髪に短ラン、私を見た瞬間に明るく華やぐその笑顔は、まるで晴天の日差しのように輝きを放つ。
ま、まぶし〜………夜が恋しい………。
「お姉さん!!」
「ハ、ハイ…」
「お疲れ様です!」
ニコッ!!!
誰が見てもピカピカ満点花丸最強笑顔で微笑んで挨拶してくれたのは、もう一人の新入生である灰原雄くんだ。
あのさ、強い日差しって浴び過ぎると体に毒らしいね。頭痛を誘発する原因にもなるんだとさ、ね、私の言いたいこと分かりますか?
もう限界も限界なしんどさである。
やってらんねぇよ、地球。
「お姉さん、奇遇ですね!」
「もう行きます、さようなら…」
「え!?」
駄目だもう耐えられん、そう思い進路を急転換させ足早に研究室へと帰る。
そうして息を切らしながら、カラカラの喉をさすりつつ辿り着いた研究室の窓から中を覗き見る。
よし、私の荷物が置いてある場所には誰も居ないな。
確認を終え、窓を開ける。鍵は予め開けておいたのだ、こういう時のために。
窓から中に入り、素早く荷物を掴むと再び窓を使って外に出る。
うんしょうんしょと身体を捻り、脱出は完了。
腕時計を確認し、時間を見る。
現在時刻は昼過ぎ、傑くんは帰って来ていない。悟くんも不在、他の生徒は昼休憩中。
頭の中に地図を浮かばせ、考える。
今の時間帯はあの辺りに警備の人が居て…そんで職員はこっちから来ることが多いから…抜け道は…うん、よし。
今日は山の方の道…ルートDから抜け出そう。
背中にリュックサックを背負い直し、私は静かに人の目や気配を掻い潜って予定していたルートを突き進む。
つまるところの、ボイコット。
内申点なんて知ったことじゃない、私はオレンジジュースを飲みに行く。ついでにリフレッシュしないと精神が参ってしまう。
精神が参ってしまうと、謎に発光したりするのだ、中学生の時みたいに。
裏手の山に足を踏み入れ、ザクザクと藪を掻き分けていく。
確かこっちに行けばまだ綺麗な湿地があったはず、そこで水を飲もう。リュックサックに入れっぱなしだったボトル型浄水器がある、あんまり使ったこと無かったけど持ってるもんだな。
斜面を上手いこと滑り、前にも通ったことのある開拓された道を進む。
無事に辿り着いた湿地にて水を濾過して飲み、人心地着く。
ここまで来れば、まず追い掛けてくる奴は居ないだろう。
「フゥ………よし、」
と、リュックサックにボトル型浄水器を仕舞っている時だった。
いきなり携帯が震え出す。
次は誰だ…そろそろ勘弁してくれ……と思いながらもポケットから取り出し画面を開けば、そこには「非通知」の文字。
こ、これは…!!
「友よ!」
『もっと早く出ろよ、金無くなるだろ』
甚爾さんだ!!!
マイ・ベストフレンド(現在友人総数は一人)ではないか!!
『今どこ』
「山、水飲んでた」
『相変わらずタヌキみたいな行動してんな、お前…』
「ポンポコ」
リュックサックを背負い直し、携帯を耳に当てながら再び歩き出す。
友達ってのは良いものだな、友達の声を聞いたらちょっと気分が回復した気がする。
やっぱり弟だけと関わっているのは良くない、もっと外に出た方がいいのではないだろうか。
「で、今日はどうしたの」
『金無くて飯食えねえ、女にも家追い出された』
「他の女の人は?」
『面倒くせぇからお前に電話したんだろ、察しろ』
あ、これはきっと今日はかなり負けたな、この人。
そんで腹も減ってる。私も段々分かって来たぞ。
「今ね、学校脱走したとこ」
『こっち来れるか』
「行ける、私もお腹減ってるから何か食べ行こうか」
『肉』
肉ね、はいよ。
落ち合う場所を決め、到着予定時刻を伝える。
甚爾さんは「俺が飢えて死ぬまでに来い」と言って電話を切った。
唯一の友達に死なれちゃ困るのでさっさと行こう。
そして美味いオレンジジュースを飲もう。
私の人見知りが再発した。
その原因は新入生の後輩達にあった。
そもそも私は4年生となり、本来であれば実習として各地に飛ばされることになっていたはずが、先生からの呼び出しで言い渡されたのは以下の通りであった。
「お前を下手に何処かに飛ばしたらそのまま帰って来なくなりそうだから、お前は私達の目の届く範囲にまだ居なさい」
「え、」
「"気付いたら居なくなってる"を辞めたら本格的な実習に出す」
そんな、一瞬目を離した隙きに居なくなってる幼児じゃないんだから……。
関西に行ったらなにしよう、東北に行ったらあの山に行こう…四国はやっぱりお遍路さんだよなあ、等と楽しみを膨らましていたのにこの仕打ち、私はあんまりだと嘆いて暫くの間授業をサボって裏山でテントを張ってキャンプをしたりなどしていた。
傑くんは私の実質内勤状態に鬱陶しいくらい喜んでいたけれど、それがまた腹立たしいったらありゃしない。
君ね、この野郎、弟この野郎、姉の嘆きを喜ぶな、本当君そういうとこが家入さんからクズって呼ばれる原因の一つなんだよ。
そんなこんなで4月、高専で迎える4度目の春。
私には新たな後輩が出来た。
そして、その後輩に対して人見知りをしまくっていた。
高専に運ばれて来た呪具の精密調査のため、朝から研究室であれやこれやとやっていた私は、作業着にしているジャージと軍手のまま休息にと自販機を求めて彷徨い歩いていた。
今日は朝寝坊をしたため、水筒を用意出来なかったのだ。
いつも起こしに来てくれる傑くんは任務に行ってしまっていて不在なため、私は朝から一人で慌てていたりした。
まあ、慌てると言っても、結局すぐに諦めて普段通りに準備をして朝食を取って研究室に行ったものだから、普通に遅刻した。
ひたすらに任された呪具の調査を行うこと数時間、喉の渇きを感じ、傑くんの「こまめに水分を取るんだよ」の言葉を思い出した私は自販機を探していたわけである。
しかし、最も近い自販機に行ったが、手ぶらで来てしまったことを思い出す。
集中し過ぎていたせいで、頭が上手く回っていないのかもしれない。
ジャージのポケットに手を突っ込み中を探るも、出てきたのは携帯電話と飴玉だけだった。
もう水道水でいいか……。
そう考え自販機の前から立ち去ろうとした私の横から、ニュッと何者かの腕が伸びる。
それにギョッとして固まると、斜め後ろらへんから「お好きな物、どうぞ」と声がしてさらに驚き肩が大袈裟なくらいビクッと跳ねた。
ソロリソロリと振り返り、見上げた先にはサラサラの金髪が眩しい青年が一人。
「ぁ、ゃ、あの……」
「どうぞ」
は、はへぇ…………圧が……。
思わず一歩、二歩とその場から後退する。
彼はこの春高専にやって来た新入生の一人、七海建人くんである。
思わず触れてみたくなるくらい美しい金髪に、キメ細かな白肌、鋭い目付きに伸びた背筋、纏う冷たい空気がまるで大理石で出来た彫刻を思わせる、そういう男の子だった。
遠目から見ている分には目の保養になって大変良いのだが、こうして関わるとどうしたら良いか分からない。
口を閉ざし固まる私はさながら、いきなり現れた人間に驚き固まる野生動物のような感じだろう。
こういう時、本当にどうしたら良いか分からない。
何も言えずに固まる私に痺れを切らしたのか、七海くんは自販機の前に立ち喋り出す。
「夏油さんから、貴女が困っていたら面倒を見ておいてくれと頼まれているんです」
「え、ぇ……」
「資金も渡されています、だからこれは夏油さんのお金なので気にせず選んで下さい」
「は、はい……」
あの、その…私も一応"夏油"さんなんですが……。
いややっぱり何でもありせん、すみません、さっさと買います。
ヒシヒシと伝わる「面倒臭い」「早くして欲しい」「何だコイツ」というオーラに縮こまりながら自販機でいつも買っているオレンジジュースを買おうとした、が………
「あれ…ない………」
「何がですか」
「ぁ、えと……オレンジ…」
オレンジジュースが無かった。
そんな馬鹿な、オレンジジュースが無い自販機なんて何のために設置されてると言うのだ。
またしても固まってしまう。
どうしよう、他に飲みたい物…お茶?でも麦茶と緑茶しかない、別にどちらも飲みたい気分では無い。じゃあ他には…ミルクティーと炭酸水、珈琲数種類、あとは飲んだこと無い謎のゼリー飲料などなど。
どうしよう、早く、早く、早く選ばないと、買わないと。
焦る気持ちとは裏腹に、全く飲みたい物が決まらない。
こうしている間にも後輩は真横で私の買い物を待っているというのに。
いや、真横で待たなくていい、頼むから私のことは放っておいてくれ。心がしんどい。
やっぱり水道水で良かったじゃん、なんで後輩の男の子に世話任せちゃったの傑くん。ちゃんと私のこと見ててよ。見てないなら月に帰っちゃうよお姉ちゃん。
心も喉の渇きも限界に達した私は、耐えられなくなった。
「もう、いらない……」
「ですが、」
「いい、いいです、さよなら」
そう言うや否や、その場から走って立ち去る。
後ろからは「は?」という疑問の声がしたが気にしなかった。だって本当に知らない人と一緒に居るの辛いんだもん。
しかし喉は渇いていたため、今度は水道を目指す。
ゼェゼェと犬のように喉を鳴らして辿り着いた水道には、不運なことに先客が居た。
黒い髪に短ラン、私を見た瞬間に明るく華やぐその笑顔は、まるで晴天の日差しのように輝きを放つ。
ま、まぶし〜………夜が恋しい………。
「お姉さん!!」
「ハ、ハイ…」
「お疲れ様です!」
ニコッ!!!
誰が見てもピカピカ満点花丸最強笑顔で微笑んで挨拶してくれたのは、もう一人の新入生である灰原雄くんだ。
あのさ、強い日差しって浴び過ぎると体に毒らしいね。頭痛を誘発する原因にもなるんだとさ、ね、私の言いたいこと分かりますか?
もう限界も限界なしんどさである。
やってらんねぇよ、地球。
「お姉さん、奇遇ですね!」
「もう行きます、さようなら…」
「え!?」
駄目だもう耐えられん、そう思い進路を急転換させ足早に研究室へと帰る。
そうして息を切らしながら、カラカラの喉をさすりつつ辿り着いた研究室の窓から中を覗き見る。
よし、私の荷物が置いてある場所には誰も居ないな。
確認を終え、窓を開ける。鍵は予め開けておいたのだ、こういう時のために。
窓から中に入り、素早く荷物を掴むと再び窓を使って外に出る。
うんしょうんしょと身体を捻り、脱出は完了。
腕時計を確認し、時間を見る。
現在時刻は昼過ぎ、傑くんは帰って来ていない。悟くんも不在、他の生徒は昼休憩中。
頭の中に地図を浮かばせ、考える。
今の時間帯はあの辺りに警備の人が居て…そんで職員はこっちから来ることが多いから…抜け道は…うん、よし。
今日は山の方の道…ルートDから抜け出そう。
背中にリュックサックを背負い直し、私は静かに人の目や気配を掻い潜って予定していたルートを突き進む。
つまるところの、ボイコット。
内申点なんて知ったことじゃない、私はオレンジジュースを飲みに行く。ついでにリフレッシュしないと精神が参ってしまう。
精神が参ってしまうと、謎に発光したりするのだ、中学生の時みたいに。
裏手の山に足を踏み入れ、ザクザクと藪を掻き分けていく。
確かこっちに行けばまだ綺麗な湿地があったはず、そこで水を飲もう。リュックサックに入れっぱなしだったボトル型浄水器がある、あんまり使ったこと無かったけど持ってるもんだな。
斜面を上手いこと滑り、前にも通ったことのある開拓された道を進む。
無事に辿り着いた湿地にて水を濾過して飲み、人心地着く。
ここまで来れば、まず追い掛けてくる奴は居ないだろう。
「フゥ………よし、」
と、リュックサックにボトル型浄水器を仕舞っている時だった。
いきなり携帯が震え出す。
次は誰だ…そろそろ勘弁してくれ……と思いながらもポケットから取り出し画面を開けば、そこには「非通知」の文字。
こ、これは…!!
「友よ!」
『もっと早く出ろよ、金無くなるだろ』
甚爾さんだ!!!
マイ・ベストフレンド(現在友人総数は一人)ではないか!!
『今どこ』
「山、水飲んでた」
『相変わらずタヌキみたいな行動してんな、お前…』
「ポンポコ」
リュックサックを背負い直し、携帯を耳に当てながら再び歩き出す。
友達ってのは良いものだな、友達の声を聞いたらちょっと気分が回復した気がする。
やっぱり弟だけと関わっているのは良くない、もっと外に出た方がいいのではないだろうか。
「で、今日はどうしたの」
『金無くて飯食えねえ、女にも家追い出された』
「他の女の人は?」
『面倒くせぇからお前に電話したんだろ、察しろ』
あ、これはきっと今日はかなり負けたな、この人。
そんで腹も減ってる。私も段々分かって来たぞ。
「今ね、学校脱走したとこ」
『こっち来れるか』
「行ける、私もお腹減ってるから何か食べ行こうか」
『肉』
肉ね、はいよ。
落ち合う場所を決め、到着予定時刻を伝える。
甚爾さんは「俺が飢えて死ぬまでに来い」と言って電話を切った。
唯一の友達に死なれちゃ困るのでさっさと行こう。
そして美味いオレンジジュースを飲もう。