星を蝕む呪いの祈り
と、いうことで。
花御ちゃんのために文字通り身体を張った私は無事にバタン、キューと暫く意識を飛ばし、次に目が覚めた時にはなんと!我らが夏油軍団に新メンバーが加わっていたのであった!
「で、そのニューフェイスちゃん達は?」
「お使いに行ったよ」
「あらまあ」
そりゃまあ、何というか……起き抜け早々お疲れ様です。
ちゃんと帰って来れたらいいね、なんて思ったままのことを口から出せば、長男だと言う奴に厳しい眼差しで睨み付けられた。
こ、こわ……眼光するど…。
い、言いたいことがあるなら言えばいいのに………。私は真人の後ろにそろそろと隠れて彼の服の裾を握り締めた。
いや違うよ?ビビってなんてないんだよ?本当だよ?ただほら、人間と呪いのミックスなんて私と似てるからちょびっとだけ親近感湧いてた相手にさ、いきなり睨まれたから、そりゃビックリしちゃうでしょう?これから仲良くなっていこって思ってたのにこのザマ。
「脹相やめなって、そんなに心配ならコイツに見に行かせたら?どうせコイツ暇人だし」
「暇人じゃないよ~」
「じゃあこの後の予定は?」
「えっ…と……裏サンの連載更新確認して、ソシャゲ…」
「ほらめっちゃ暇人」
なんだと、ソシャゲの周回は結構時間使うんだからな!!
毎日毎日コツコツコツコツ同じ作業を繰り返し、イベントが始まればひたすら何も考えずにポチポチ、グルグルグルグル……何がしんどいって脳がしんどい、分かるかこの苦痛が、えぇ??
グチグチと真人の背中越しに喋っていれば、長男くんは「そしゃげ…?」と首を傾げていた。
彼の疑問に答えるべく、ジャンパースカートのポケットから「ソーシャルゲーム、この機械で出来るゲーム…遊びのことだよ」とスマホを取り出して見せる。
「脹相にはまだ早いかもね、初心者は人生ゲームからにしな」
「いいね、たまにやると楽しいよね」
言われるとやりたくなってくるなあと思い、やろうと言い出そうとした所でチャカポコチャカポコ スマホが鳴り出した。
ポケットから引っ張り出して画面を確認すれば、黒い画面上には「夏油(偽)」と書かれたテレコールの文字が浮かび上がっていた。私は躊躇うことなく受話器マークをタップする。プツッと一瞬通話が通じる音がした後、「もしもし?」と話し掛ければ相手から声が返って来た。
『やあ、今暇かい?』
「暇と言われれば、まあ……」
『そうか、なら………』
暇と認めたくは無いものであるが、ぶっちゃけやることはとくに無い。なので話を聞いてやった。
夏油傑から言われたのは以下の内容。
新入り兄弟の次男と三男の帰り道の案内をしてやって欲しい。そして、もし、二人が死体になっていた場合はその死体の回収を頼みたい。
…ということであった。
私は「死体」の単語が出た瞬間、長男から距離を取りそのまま部屋を出た。
後ろで真人が「どうしたのー?」と呑気な声を挙げていたので、ヒラヒラと片手を振っておく。
「死体になる予定があるの?」
『もしかしたらね、頼めるかい?』
「……う~ん、ググプレカード五千円は欲しいです」
『安上がりで助かるよ』
それ思っても口に出さないでくれます?この人たまに凄い失礼なんだよな、ちょっと腹立つ。
ややムカつきながらも電話を切り、そんなこんなで新入り兄弟のお使い先である八十八橋へと向かったのであった。
…
「おはよ」
パチンッと片目を瞑って可憐なウインクをかましている女を地面に横たわったまま見上げていた壊相はハッとした様子ですぐさま起き上がり、自身の身体に触れた。
何処も痛くない、腹も腕も恐ろしくなる程綺麗に塞がっている。
意識を失う前に見た極彩色の海は何だったのか、あれによって救われたのか、状況を整理出来ずに混乱する頭のまま、とにかく礼をと口を開いた。
「ありがとうございました、あの…失礼ですが貴女は?」
「夏油から言われて様子見に来たの、あ…でも助けちゃったのは秘密にしてね」
「何故?」
「頼まれたことじゃないことしちゃったから、知られたらまた怒られちゃう」
なんて、悪戯っ子のような笑顔でそう言った女は名乗りもせずに「血塗ちゃーん!」と林の中へ向けて声を張り上げた。
その名に思わず背中も気にせず振り返り、林の方を見ればガサガサと音を立てながら小さな物体が転がるように現れた。
………小さな物体?
「け、血塗?」
「兄者!おはよう!」
一回り、いや…二回りは小さくなった弟の元へ走り寄れば、再会を祝すように弟がピョコンピョコンと跳ねながら無事を伝えてくれた。
弟の元気な様子を見ていたら、私の目からは勝手に一筋涙が零れ落ちていた。
名前も知らない女に得体の知れない術を使われたというのに、私はひどく安堵した心地で弟の頭を撫でて自分の無事も伝えたのであった。
ああ、もう一度お礼を言わねば。
そしてちゃんと名前を聞こう。
そう思い振り返ると、そこには既に誰も居なかった。
日の落ちた道には何も無く、遠くの街頭が照らす弱々しい蛍光灯の光が星の光を鈍くさせる。
夢か現実か段々と分からなくなって来た私は、小さくなった弟の手を握り、とにかく兄の元へと帰ることとした。
未だ現実を受け入れられていない私はまだ知らないが、私はこの日、星の僕となったのだった。
主による唯一にして無二なる破壊の行いを、この時はまだ知らなかった。
花御ちゃんのために文字通り身体を張った私は無事にバタン、キューと暫く意識を飛ばし、次に目が覚めた時にはなんと!我らが夏油軍団に新メンバーが加わっていたのであった!
「で、そのニューフェイスちゃん達は?」
「お使いに行ったよ」
「あらまあ」
そりゃまあ、何というか……起き抜け早々お疲れ様です。
ちゃんと帰って来れたらいいね、なんて思ったままのことを口から出せば、長男だと言う奴に厳しい眼差しで睨み付けられた。
こ、こわ……眼光するど…。
い、言いたいことがあるなら言えばいいのに………。私は真人の後ろにそろそろと隠れて彼の服の裾を握り締めた。
いや違うよ?ビビってなんてないんだよ?本当だよ?ただほら、人間と呪いのミックスなんて私と似てるからちょびっとだけ親近感湧いてた相手にさ、いきなり睨まれたから、そりゃビックリしちゃうでしょう?これから仲良くなっていこって思ってたのにこのザマ。
「脹相やめなって、そんなに心配ならコイツに見に行かせたら?どうせコイツ暇人だし」
「暇人じゃないよ~」
「じゃあこの後の予定は?」
「えっ…と……裏サンの連載更新確認して、ソシャゲ…」
「ほらめっちゃ暇人」
なんだと、ソシャゲの周回は結構時間使うんだからな!!
毎日毎日コツコツコツコツ同じ作業を繰り返し、イベントが始まればひたすら何も考えずにポチポチ、グルグルグルグル……何がしんどいって脳がしんどい、分かるかこの苦痛が、えぇ??
グチグチと真人の背中越しに喋っていれば、長男くんは「そしゃげ…?」と首を傾げていた。
彼の疑問に答えるべく、ジャンパースカートのポケットから「ソーシャルゲーム、この機械で出来るゲーム…遊びのことだよ」とスマホを取り出して見せる。
「脹相にはまだ早いかもね、初心者は人生ゲームからにしな」
「いいね、たまにやると楽しいよね」
言われるとやりたくなってくるなあと思い、やろうと言い出そうとした所でチャカポコチャカポコ スマホが鳴り出した。
ポケットから引っ張り出して画面を確認すれば、黒い画面上には「夏油(偽)」と書かれたテレコールの文字が浮かび上がっていた。私は躊躇うことなく受話器マークをタップする。プツッと一瞬通話が通じる音がした後、「もしもし?」と話し掛ければ相手から声が返って来た。
『やあ、今暇かい?』
「暇と言われれば、まあ……」
『そうか、なら………』
暇と認めたくは無いものであるが、ぶっちゃけやることはとくに無い。なので話を聞いてやった。
夏油傑から言われたのは以下の内容。
新入り兄弟の次男と三男の帰り道の案内をしてやって欲しい。そして、もし、二人が死体になっていた場合はその死体の回収を頼みたい。
…ということであった。
私は「死体」の単語が出た瞬間、長男から距離を取りそのまま部屋を出た。
後ろで真人が「どうしたのー?」と呑気な声を挙げていたので、ヒラヒラと片手を振っておく。
「死体になる予定があるの?」
『もしかしたらね、頼めるかい?』
「……う~ん、ググプレカード五千円は欲しいです」
『安上がりで助かるよ』
それ思っても口に出さないでくれます?この人たまに凄い失礼なんだよな、ちょっと腹立つ。
ややムカつきながらも電話を切り、そんなこんなで新入り兄弟のお使い先である八十八橋へと向かったのであった。
…
「おはよ」
パチンッと片目を瞑って可憐なウインクをかましている女を地面に横たわったまま見上げていた壊相はハッとした様子ですぐさま起き上がり、自身の身体に触れた。
何処も痛くない、腹も腕も恐ろしくなる程綺麗に塞がっている。
意識を失う前に見た極彩色の海は何だったのか、あれによって救われたのか、状況を整理出来ずに混乱する頭のまま、とにかく礼をと口を開いた。
「ありがとうございました、あの…失礼ですが貴女は?」
「夏油から言われて様子見に来たの、あ…でも助けちゃったのは秘密にしてね」
「何故?」
「頼まれたことじゃないことしちゃったから、知られたらまた怒られちゃう」
なんて、悪戯っ子のような笑顔でそう言った女は名乗りもせずに「血塗ちゃーん!」と林の中へ向けて声を張り上げた。
その名に思わず背中も気にせず振り返り、林の方を見ればガサガサと音を立てながら小さな物体が転がるように現れた。
………小さな物体?
「け、血塗?」
「兄者!おはよう!」
一回り、いや…二回りは小さくなった弟の元へ走り寄れば、再会を祝すように弟がピョコンピョコンと跳ねながら無事を伝えてくれた。
弟の元気な様子を見ていたら、私の目からは勝手に一筋涙が零れ落ちていた。
名前も知らない女に得体の知れない術を使われたというのに、私はひどく安堵した心地で弟の頭を撫でて自分の無事も伝えたのであった。
ああ、もう一度お礼を言わねば。
そしてちゃんと名前を聞こう。
そう思い振り返ると、そこには既に誰も居なかった。
日の落ちた道には何も無く、遠くの街頭が照らす弱々しい蛍光灯の光が星の光を鈍くさせる。
夢か現実か段々と分からなくなって来た私は、小さくなった弟の手を握り、とにかく兄の元へと帰ることとした。
未だ現実を受け入れられていない私はまだ知らないが、私はこの日、星の僕となったのだった。
主による唯一にして無二なる破壊の行いを、この時はまだ知らなかった。