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星を蝕む呪いの祈り

グシャリと地面に膝を着いた花御の上に重なるように、グッタリと倒れ込んで来た女は動くことなく小さな呼吸を繰り返していた。
自分の上に倒れて来た女を受け止めた花御は、彼女の身をじっと見下ろし怪我の有無を確認する。

勿論、この星のあらゆる生命体からほんの少しずつ寿命を吸い上げて得体の知れない途方も無い混じり物になっている彼女ならば、例え腕の一本や二本千切れようともどうにかなるのだろうが…それでも一応本人は人間のつもりで居るらしいので、怪我があれば痛がり悲しむ。

悲しむ彼女の顔はあまり見たくない。と、花御は思う。何故そう思うのかは自分でもよく分からないが、呪霊である自分の友人を勝手に名乗り、周りをウロチョロ歩く女のことを花御は嫌っていなかった。
恐らく、在り方が近しいからだと考えている。
自分は自然の一部のような物で、彼女も星の一部のような物。精霊と星霊、言葉の響きは同じだ。
一度それを伝えた時、あまりに嬉しそうにするものだから、花御は思わず微笑む彼女の頭を無意識に撫でていた。

胡桃色をしたサラサラとした髪は指通りが良く、それ以来手慰みに時たま触れていた。

そんな胡桃色の髪をした女は、眼下にて目を伏せ意識を手放してしまっている様子であったので、花御は左手で触れないよう気を付けながら体勢を直しつつ彼女を片腕に抱いた。
温かく軽い、柔らかな身体を傷付かないように抱き留めていれば、作戦に参加した一人の人間と真人が言葉を交わした後に、彼等がこちらにやって来る。

「そいつの気紛れもたまには役に立つもんだね、馬鹿だけど」

真人が言う。
それに対して花御は沈黙を続けながら立ち上がる。
片腕に抱いた女を見下ろし、気紛れと呼べば良いのか何なのかイマイチ理解に苦しむ彼女の行動理由について考えるも、すぐに思考をやめた。

考えた所で無駄なことだ、何せその時の気分に流されて生きているような奴なのだ、彼女という生き物は。
一貫した行動理由や、強い信念など持ち合わせてはいない。宙ぶらりんで適当な子。誰にも合わせず、誰にも傾倒しない、何ともふわふわした奴なのだから、彼女について深く考えたって時間の無駄というもの。

ポツリポツリと真人と言葉を交わしながら、花御は五体満足でアジトへ帰ることとした。

片腕に女の形をした星を抱きながら。
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