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星を蝕む呪いの祈り

随分曖昧な記憶について語ろう。
幸か不幸か、私はやや特殊な家に産まれた。

京都のどっか、とてもお金持ちで怪しい一族の末端も末端、端くれ者の親から産まれた私は、5歳の頃に養子に出されて産みの親と別れた。

世の中酷いもので、貰われた先の人々は私におよそ2年間のあいだ、それはもう語るも無惨聞くも無惨な不幸でおぞましい仕打ちを繰り返し、とうとう耐えられなくなった私は月夜を背に家を脱走。
以降、産みの親と怪しい一族からお尋ね者となったのだった。

無かった運が向いてきたのか、はたまた頭の弱さが露呈した結果かはさておき、いかにも悪そうな大人に引っ捕らえられた後に二度程売り買いを繰り返され、落ち着いた先は呪詛師の元であった。

呪詛師とは、簡単に説明すると人に呪いで迷惑をかける社会のゴミである。

そんなゴミに育てられた私も勿論ゴミ、気付いた時にはあら不思議……立派な呪詛師になっていましたとさ。

なっちまったもんは仕方無い、同時期に知り合った「呪術師殺し」を名乗るプー太郎が引退したのを切っ掛けに、私は「二代目呪術師殺し」を名乗らされることとなった。
それまで流されるままに生きてきた私であったが、これについては猛反対の意を唱えた。だって可愛くない、あと二番煎じ過ぎる、もっと女の子が喜ぶ感じにしろよボケが。
そうは言えど、私のプロデュース全般を担っていた孔時雨と名乗る元刑事の悪い大人は煙草を吸いながら私の頭をグリグリと押し潰すように撫でるばかりで話なんぞ録に聞いちゃくれなかった。

ふぁっくゆー。

この世は実にクソである。

狡い大人と狡い武器が勝つ、汚いお金と頭の弱い人間を踏みつけて、この世は罪無き人々を嘲笑って回るのだ。

金持ちに股を開く女、盗みを働いた馬鹿、口の軽い同業者、不必要になった金蔓、真っ当に生きる呪術師…そういう奴等を片っ端から死体にしては金を貰い生きていく。

誰がクソかって、そんなの分かり切っている。
自分だ、自分が一番どうしようも無い人間だ。

そんなことは分かってはいるが、他にどうやって生きたらいいのか分からない。
死のうにも術式のせいで簡単には死ねないから、諦めて依頼が来るまま人を殺す。
無い物ねだりをしたってしょうがないが、もちょっとマシな人生を歩めなかったものかどうか。まあ、無理か。

そんなこんなで19歳、もうすぐ20歳になろうかと言う頃に知り合った男、夏油傑によって私は彼の商売道具へと華麗なるジョブチェンジをしてしまった。
女受けが良さそうな語り口と温和な笑顔が信者の彼曰く"猿共"を魅了して止まない夏油傑は、信仰の力と称して私の術を使いたがった。

私の術式、ザックリ言えば寿命を操る物である。

『命数解読術』

対象(生命)の寿命を計り、それを吸収、もしくは逆の行為をする術式。
所謂、ゲームでいう所のHPドレインであり、回復技でもある。
発動可能条件はそれなりに限りがあり、また、一度発動させると対象と私の魂が近しくなるため場合によっては大変なことになりかねないのが注意点。

……と、なんともまあ、使い勝手が悪い物である。

で、夏油傑は私の術式を信者の人に大金払わせて使用しているのだ。
酷い話である、他人から吸い上げた寿命を他人に横流ししているだけなのにあの金額を平気な顔してふんだくる…信者ビジネスってのは実に恐ろしい話だ。
いやまあ、私はそのおこぼれに預かっている身だったわけなので、何も文句なんて言えやしないのだけど。

が、そんな夏油傑も去年の冬に消えた……はずが、あら不思議…額に縫い跡を付けてのイメチェン再登場。
ついでにちょっと魂の質も変わってしまった。
そしてそして、気付けば彼の周りには特級呪霊の友達がわんさか。
流石にそろそろ彼との付き合い方について考えていこうとしていた頃、事件は起きるのだった。
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