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巨乳覇者列伝

結論を申しますと、傑さんはめちゃめちゃ危ない人でした。

「本当にありがとうございました、さよなら……」
「こらこら、今更だろう」
「さよなら……」
「無理だよ、もう離れられない」

君も、私もね。
瞳を細めて唇の端を釣り上げた傑さんは、こう言った。

「私が呪っておかないと、君は変な物とばかり親密になろうとするから危ない、君はもっと自分の術式がどれだけ危険なのかを理解した方が良い」

そんなこと、言われなくとも理解している。
使えば使うほどに精神は軋み、意識はひび割れ、心が何処かへ引っ張られる。
いずこの果てへと繋がる空虚な穴を覗き続けると、ムシャムシャと、虫の幼虫が無作為に葉を食べ散らかすように、私の輪郭を食い破られていくかのような、おぞましい感覚を覚えるのだ。

そんな感覚に身を浸しながら、何処までも、何処までも、私は宇宙の神秘へ手を伸ばし続けている。
そうしなければならないと、心が掻き立てるのだ。

私の何かが、宇宙の神秘に拐われたがっている。
恐ろしくも美しい、広大で幻想的なソラが、私を呼んでいるのだ。


「神の声なんて聞かなくていい、私の言葉だけに耳を傾けていなさい、その方が健全だ」
「そのおっぱいで健全を名乗るのは無理でしょ」
「私の胸以外のことも考えてくれ」

胸以外か………うーむ……………

「変な前髪…」
「前髪以外のことも考えてくれ」
「ふかふかおっぱい…」
「ねえ、頼むから胸以外のことも考えてくれないか?」
「変な前髪…」


これは無限ループに入ろうとしてるな。
正直傑さんがどれだけの大罪を犯したかとか全く興味は無いのです、重要なのは、そう…OPPAI。
この混沌とした無慈悲な世の中において、唯一生きていく上で大事にしていかにゃならんもの、それこそがおっぱい、巨乳だ。
巨乳はこの星において最も尊い物であるってダーウィンだかアインシュタインだかも言ってたでしょ、多分。むしろ、言ってないと可笑しいまである。

だから、五条先生に傑さんがめちゃめちゃファンキーサイコパスないっちゃんヤベェ奴だって説明されてる最中も、「いやでも…乳がデカいからな……」ってずっと思ってた。
は~あ、私が呪術総理大臣になってたら傑さんのこと「乳がデカいから無罪なり!」って法廷でガベル打ち鳴らしながら言ってたのになあ……。

ま、もし傑さんより役に立つ巨乳が現れた時は五条先生の言うとおりに縁を切ってもいいかな、それまでは今暫く傑さんの乳を信仰していよう。



___




緊急召集がかかった、場所は仙台。
仙台ってどこだよ、日本?って感じだが、仙台らしい。あ、牛タンのとこか。
近場で健気に低級呪霊を祓いながらパトロールをしていた私は、召集を受けてそちらに行くことにした。
なんでも、伏黒くんがちょっぴり大変らしい。確か彼は、特級呪物の回収に行ってるんじゃなかったっけか、大丈夫だろうか?まあ、伏黒くん強いみたいだし大丈夫でしょう。

指定された先の学校まで来れば、既に入り口には鍵がかかっていた。開かねぇなあってガシャガシャやっていればこちらに走ってくる人影が一人。

その人影は、猛スピードで走って来たと思えば、私を素通りし、校門を飛び越えて校舎の方へと行ってしまった。
過ぎ去る背中を唖然と見送り、ハッとしてから私も彼を真似て校門をよじ登って校内へと侵入した。

よいせ、よいせ、これスカート捲れてパンツ丸見えになってるな。

ひぇ~~、てか今の一般人じゃない?マズイのでは?どうしよ、一般人に何かあったら怒られちゃうよ~~!で、でも自分から突っ込んで行ったし、私が悪いわけじゃない……よね…?悪くないって誰か言って……。

「それより早く行った方がいいんじゃないか?呪いの気配が酷い」
「帰りたいよ~~~!」
「危なくなったら助けてあげるから、ほら頑張って」
「うぅぅ……」

傑さん…その言葉信じてるからね、本当頼りにしてるから、マジで頼むよ、絶対助けてくれよ。

警戒しながら建物内に入っていく。
雑魚い呪いはまあまあ居るが、それよか伏黒くんだ、あと一般人……何処にいるんだ?てか、夜の学校怖すぎる、無理だよ、やっぱ帰りたい……。
よくよく考えたら色々おかしい気がしてきた、そもそも私、禪院家に嫁として買い取られたのにどうしてこんな戦闘要員として働かされているんだ?給料も半分くらい向こうに取られるし、いやまあ、お小遣い貰ってるんだけどさ…毎月5000円、これが粗食に耐えろってことなのか……。

そんなことを考えながら校内を我が物顔で闊歩する呪霊を片手間にチマチマ祓っていれば、突如校舎が揺れる程の振動と共に、大きな破壊音が響き渡った。

「何事!?」
「気を付けて行くんだよ」
「"行く"しか選択肢無くすのやめて貰えます!?」

こんな時に会話のミスリードやめろ!!一々ツッコミをさせるな!!
伏黒くん大丈夫なの?校舎壊すとか………しゅ、修理費ってどのくらいなんですかね?あ、いや、そんなこと考えてる場合じゃないや。


月明かりに照らされながら、友人の姿を探し、夜の校内を全力で走る。

重く嫌な気配が肌にまとわりつくように絡んで来て、鳥肌が立った。
この先に何かが居る、怖じ気付く足を叱咤して無理矢理に窓から身を乗り出してそちらを見れば、渡り廊下の屋根には伏黒くんと…あれは………

「半裸の…一般人くん!?」
「君、本当にこの状況を怖いと思ってるかい?」

思っとるわい!普通に考えてみてくれよ、夜の学校でさっきまで服を着ていたはずの奴が半裸になって高笑いしてたら怖いやろがい!!

それよりも、伏黒くんがピンチだ!友人代表として助けに行かねば!!
パイプを取り出し、術式発動の準備を素早く済ます。

さあ、神々も照覧あれ! 恐怖にも負けぬ友情と誠の偉大な力を、いまこそ発揮して見せよう!!メロス、いきます!(メロスではない)
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