巨乳覇者列伝
アイツの噂は知っていた、古いだけが取り柄の落ちぶれた呪術師家系の中で唯一の成功作品。
商品名は「神の意思を知る者」
オークションでの落札価格は3億7千万、アイツは紛う事なく、親に売られた子供だった。
最終的に落札し買い取ったのは歴史ある呪術の名門禪院家、俺が行くはずだった地獄に金と引き換えにされて連れて行かれた女のことなど、忘れてしまいたかった。
だが、アイツは簡単に俺の前に現れて、こっちの気も知らずにヘラヘラ笑いながら、永遠に自分には手の届かない夢物語を楽しそうに語ってみせた。
自分の隣には、自分が地獄に行くことの原因になったかもしれない人間がいるのに。
ヘラヘラ、ヘラヘラ……これから先に待っている日々のことなど何も分かっていないようなお気楽さで、腹が立つ程平和ボケした夢を口にする。
幸せな奴なのはどっちだよ、なんでそんな風に笑って生きられるんだ。
アイツは暇さえあればやたらと絡みに来るようになった。
「伏黒くんのこと色々知りたいの、仲良くなりたい」と、真っ直ぐな瞳で言われてしまえば無下にもし辛いものだ。
俺のことを話せば、同じようにアイツも自分について話す。
甘いものが好きだとか、珈琲はブラックだと飲めないだとか、ひまわりが好きだとか、遊園地に行ってみたいだとか………話せば話すほどに何でコイツはここに来てしまったのだろうかと思わざるおえない。
いや、そもそもどうして呪術師になんぞに産まれて来てしまったのか。
理不尽なんて散々見てきたというのに、コイツに限っては全てが今更立ったとしても、一ミリでも良いから報われて欲しいと思ってしまった。
そう感じてしまえばあとはもう一直線で、俺は受け身な態度をやめて、自ら相手に話し掛けに行ったりするようになった。
マネージャーの真似事がしたいと言うので、それっぽくなるように訓練後にタオルを要求すれば、心底楽しそうな笑みを浮かべてタオル片手に駆け寄ってくる。差し出されたタオルを受け取れば、「スポドリもあれば完璧だったね」と言うので、「そうだな」と肯定してやった。
「あとプロテイン作るのもやりたい!それとね、選手のユニフォームも洗いたいな」
「雑用ばっかだな」
「でも楽しいよ、ウキウキする」
「お前はいつでも楽しいだろ」
「うん、高専に来てから毎日楽しい」
真っ直ぐ素直にそう言えるコイツは本当に呪いが似合わない。
眩しいとまでは言わないが、浮かべた笑みは周囲を少し明るくする。
いっそ痛い程に眩しければそれを理由に目を背けられたのに、そうではないから何となく目線を合わせたまま言葉を紡ぐことも出来ずに沈黙してしまった。
早い話が見つめ合うだけとなった。
数秒互いに無言で見つめ合い、そうして向こうがコテンと首を傾げる。
「無言の伏黒くん、ちょっと怖いね」
「…悪い」
意味の無い形だけの謝罪をすれば、ヘラリと笑って「でも優しいから好き」と意図も簡単に好意を口にしてきたもんだから、不意を付かれて動きを止めてしまう。
ポカリと口を開き、間抜けな表情で固まる俺を置いて「次は私が訓練してくるね~」と言ってグラウンドの中心へ駆けて行ってしまった。
駆けて行く背を見ながら思う。
アイツ、多分深く考えて生きてねぇな、と。
反応するだけ馬鹿なことだとは分かっている、何せこっちが一人で勝手に後ろめたい罪悪感を感じていたとしても、あっちは全く気にしちゃくれないのだ。自分勝手に距離を縮めて笑っている、俺の気持ちなど考えてはいない、そういう人間。
だからそう、先程の言葉にも深い意味は無く、気にするだけ馬鹿だ。
そうは分かっちゃいるが、いやに首元が熱くなってくるのは何故なのか。
訓練のせいということにしておきたい。
手渡されたタオルを首に掛け、溜め息を飲み込む。
グラウンドの中心で真希さんに吹っ飛ばされているアイツは、全くもって呪いの似合わない女だった。
___
伝説の巨乳と交信を行うために、伏黒くんと仲良くなろうキャンペーンは実に順調だ………彼はめちゃめちゃ良い奴なので、私のジャーマネごっこにも付き合ってくれる。絶対モテるでしょ伏黒くん、まあ私のタイプでは無いんだが。
そして、私は伏黒くんと交流していくうちに伝説の巨乳についての新情報をゲットした。
なんと、伝説の巨乳さんは禪院家の方だったらしい。
うむ、禪院家産ならば納得である。あの極悪乳デカ集団の一人だったというわけか……ところで、悪人ってのは乳がデカくないといけない決まりでもあるのだろうか?
まあでも、乳がデカいとどんな悪事も許されてしまうからな……やっぱり巨乳は正義なのかもしれない。
だったら伝説級の巨乳なんて、この世の"教え"に匹敵するもんなんじゃないのか?最早そんなもん宗教である、『宗教法人 救いの乳』 なんか、わりと需要ありそうだな…。
交信をする上で大切なのは、交信先への理解と許容だ。相手を理解し、信じ、受け入れ、己が一部とする。
つまりは、私が正しく巨乳と交信するためには、巨乳を理解し信じなければならないのだ。
ということで、伝説の巨乳への理解を深めるために、情報整理をすることにした。
まずは、えー…伏黒くんの顔からして、目は睫毛バサバサな切れ長だったと憶測する。禪院さん家の顔ですね、一個上の真希先輩とかもそう、あんな感じの顔。
で、身長が高くて、おっぱいがデッカくて、髪は黒くて……で、五条先生と知り合いだったんだっけ?どうだったかな、でも五条先生からの情報なわけだし、多分あってるよね。
よしよしよし、中々良い解析具合じゃなかろうか。ここまで理解を深められているならば、あとは交信あるのみだ。
決行は今日の夜12時過ぎにしよう、やはりそれくらいの時間帯が一番呪いが深まる気がするからね。
それまで一眠りしようかな、夢の中でナイス巨乳と会えますように。
商品名は「神の意思を知る者」
オークションでの落札価格は3億7千万、アイツは紛う事なく、親に売られた子供だった。
最終的に落札し買い取ったのは歴史ある呪術の名門禪院家、俺が行くはずだった地獄に金と引き換えにされて連れて行かれた女のことなど、忘れてしまいたかった。
だが、アイツは簡単に俺の前に現れて、こっちの気も知らずにヘラヘラ笑いながら、永遠に自分には手の届かない夢物語を楽しそうに語ってみせた。
自分の隣には、自分が地獄に行くことの原因になったかもしれない人間がいるのに。
ヘラヘラ、ヘラヘラ……これから先に待っている日々のことなど何も分かっていないようなお気楽さで、腹が立つ程平和ボケした夢を口にする。
幸せな奴なのはどっちだよ、なんでそんな風に笑って生きられるんだ。
アイツは暇さえあればやたらと絡みに来るようになった。
「伏黒くんのこと色々知りたいの、仲良くなりたい」と、真っ直ぐな瞳で言われてしまえば無下にもし辛いものだ。
俺のことを話せば、同じようにアイツも自分について話す。
甘いものが好きだとか、珈琲はブラックだと飲めないだとか、ひまわりが好きだとか、遊園地に行ってみたいだとか………話せば話すほどに何でコイツはここに来てしまったのだろうかと思わざるおえない。
いや、そもそもどうして呪術師になんぞに産まれて来てしまったのか。
理不尽なんて散々見てきたというのに、コイツに限っては全てが今更立ったとしても、一ミリでも良いから報われて欲しいと思ってしまった。
そう感じてしまえばあとはもう一直線で、俺は受け身な態度をやめて、自ら相手に話し掛けに行ったりするようになった。
マネージャーの真似事がしたいと言うので、それっぽくなるように訓練後にタオルを要求すれば、心底楽しそうな笑みを浮かべてタオル片手に駆け寄ってくる。差し出されたタオルを受け取れば、「スポドリもあれば完璧だったね」と言うので、「そうだな」と肯定してやった。
「あとプロテイン作るのもやりたい!それとね、選手のユニフォームも洗いたいな」
「雑用ばっかだな」
「でも楽しいよ、ウキウキする」
「お前はいつでも楽しいだろ」
「うん、高専に来てから毎日楽しい」
真っ直ぐ素直にそう言えるコイツは本当に呪いが似合わない。
眩しいとまでは言わないが、浮かべた笑みは周囲を少し明るくする。
いっそ痛い程に眩しければそれを理由に目を背けられたのに、そうではないから何となく目線を合わせたまま言葉を紡ぐことも出来ずに沈黙してしまった。
早い話が見つめ合うだけとなった。
数秒互いに無言で見つめ合い、そうして向こうがコテンと首を傾げる。
「無言の伏黒くん、ちょっと怖いね」
「…悪い」
意味の無い形だけの謝罪をすれば、ヘラリと笑って「でも優しいから好き」と意図も簡単に好意を口にしてきたもんだから、不意を付かれて動きを止めてしまう。
ポカリと口を開き、間抜けな表情で固まる俺を置いて「次は私が訓練してくるね~」と言ってグラウンドの中心へ駆けて行ってしまった。
駆けて行く背を見ながら思う。
アイツ、多分深く考えて生きてねぇな、と。
反応するだけ馬鹿なことだとは分かっている、何せこっちが一人で勝手に後ろめたい罪悪感を感じていたとしても、あっちは全く気にしちゃくれないのだ。自分勝手に距離を縮めて笑っている、俺の気持ちなど考えてはいない、そういう人間。
だからそう、先程の言葉にも深い意味は無く、気にするだけ馬鹿だ。
そうは分かっちゃいるが、いやに首元が熱くなってくるのは何故なのか。
訓練のせいということにしておきたい。
手渡されたタオルを首に掛け、溜め息を飲み込む。
グラウンドの中心で真希さんに吹っ飛ばされているアイツは、全くもって呪いの似合わない女だった。
___
伝説の巨乳と交信を行うために、伏黒くんと仲良くなろうキャンペーンは実に順調だ………彼はめちゃめちゃ良い奴なので、私のジャーマネごっこにも付き合ってくれる。絶対モテるでしょ伏黒くん、まあ私のタイプでは無いんだが。
そして、私は伏黒くんと交流していくうちに伝説の巨乳についての新情報をゲットした。
なんと、伝説の巨乳さんは禪院家の方だったらしい。
うむ、禪院家産ならば納得である。あの極悪乳デカ集団の一人だったというわけか……ところで、悪人ってのは乳がデカくないといけない決まりでもあるのだろうか?
まあでも、乳がデカいとどんな悪事も許されてしまうからな……やっぱり巨乳は正義なのかもしれない。
だったら伝説級の巨乳なんて、この世の"教え"に匹敵するもんなんじゃないのか?最早そんなもん宗教である、『宗教法人 救いの乳』 なんか、わりと需要ありそうだな…。
交信をする上で大切なのは、交信先への理解と許容だ。相手を理解し、信じ、受け入れ、己が一部とする。
つまりは、私が正しく巨乳と交信するためには、巨乳を理解し信じなければならないのだ。
ということで、伝説の巨乳への理解を深めるために、情報整理をすることにした。
まずは、えー…伏黒くんの顔からして、目は睫毛バサバサな切れ長だったと憶測する。禪院さん家の顔ですね、一個上の真希先輩とかもそう、あんな感じの顔。
で、身長が高くて、おっぱいがデッカくて、髪は黒くて……で、五条先生と知り合いだったんだっけ?どうだったかな、でも五条先生からの情報なわけだし、多分あってるよね。
よしよしよし、中々良い解析具合じゃなかろうか。ここまで理解を深められているならば、あとは交信あるのみだ。
決行は今日の夜12時過ぎにしよう、やはりそれくらいの時間帯が一番呪いが深まる気がするからね。
それまで一眠りしようかな、夢の中でナイス巨乳と会えますように。