巨乳覇者列伝
なんと、この世には伝説の巨乳が居るらしい。
禪院家によって修行に出された私は、何処から情報が流出したかは知らないが、先回りして待ち構えていた五条さんに取っ捕まった後、黒塗りの高級車に押し込まれ雑な拉致をされ、東京呪術高専へとやって来た。
五条さん曰く、私はちょっと珍しいので一人でほっつき歩いていたら危ないとのこと。
それについては、確かに禪院を出る時も注意されたような……なんだったっけ、降霊術とは似て非なるものは云々かんぬん…お前が触れようとしているものは人智を超越した云々……呑み込まれたらお前もムニャムニャ………だから用心しろ!的な話だった気がする。
正直、当主のおじさまの剥き出しになってる片乳を眺めるのに忙しくて全然聞いていなかった、あのお歳であの乳……凄いよね。
それでまあ、未来ある若者の育て人である五条さんはわざわざ私を迎えに来てくれたらしい。
普通に良い人だった、車に詰め込まれてる時めちゃめちゃ暴れてすみませんでした、でも「パンツ丸出しになってるよ」とかは別に言わなくて良かったです。むしろJKのパンツ見たなら金払えよ。
「つまり、金払ったらパンツ見せてくれんの?」
「え、発想がキショ…」
「お前、会話する気無さ過ぎじゃない?」
「キショ杉剣心……」
てな感じで高専に到着した私は、今にもガッデムとか言い出しそうなおじ様の前に連れて来られたのだった。
そして唐突に「何をしに来たか」を問われた。
何をしに来たかと言われると、あの、質問に質問を返すようで申し訳無いんですが、私は何故ここに連れて来られたのでしょうか……。
そもそもほっつき歩いてるのが駄目なら、それは禪院家に言って欲しい。あと別に私は東京に来たくて来たわけじゃないし、修行だってしたくないし、そもそも働きたくない。呪いとかどうでもいいし、汗も血も流したくない。
というようなことをグダグダ語ったら以下の通りである。
「だからあの、」
「不合格だ」
「あ、はい」
じゃあ………帰っちゃおっかな♪
不合格の烙印を押し付けられた瞬間、私は素早く回れ右をして「失礼しました、さよならー!」と出口に向かって競歩のスピードで歩いて行く。
だがしかし、その行動に対して「ちょっと待って待って待って」と壁に寄り掛かってこちらを見物していた五条さんからストップが入った。
「合格しないと高専通えないんだから、頑張ってよ」
「高専に………通う……?」
誰が?え、私が??なんで??
「いや、だから修行するんでしょ?東京で」
「ほ???」
「力のコントロールするために僕の方で預かるって京都の学校と話し合って……もしかして、聞いてない?」
「そ、粗食に耐えろって言われて追い出されたから……」
どうやら私の預り知らぬ所でそんな話になっていたらしい。
え、何で説明されなかったんだ?もしかして、説明しても無駄な奴だと思われてる?そんなアホな。
ちょっと待って欲しい、そもそも京都にも呪術高専あるよね?なんで京都で受け入れてくれなかったの?私、もしかして問題児扱いされてる?
厄介者ってこと?そんなことある!?いやだって、禪院家が金払って買ったんやんけ!お前らが私を家族から金使って引き離したんやろがい!!おい、ふざけんなよ京都の乳デカ軍団さんよお!!!
「ゆ、許せねえ!!!許せねえよあの巨乳共!!乳がデカいからって偉そうにしやがって!!!」
「ウケる、動画撮っとこ」
「私、絶対絶対ぜぇーったい、呪術総理大臣になってやる!!!」
「呪術総理大臣ってなに?はじめて聞いたんだけど」
「この国を豊かにします!!巨乳税を作ります!!戦争を終わらせます!!!」
「志しが高くていいね」
俺が!!!海賊王と火影と天下の大将軍になるってばよ!!!!
「特級呪術総理大臣になりに来ました!!全部ぶっ壊します、対戦よろしくお願いします!!!」
「薬ヤッてたりする?」
腹の底から叫ぶように夢を宣言すれば、薬の使用を疑われてしまった。
確かにこの世の不条理に嘆くあまり、少しばかり錯乱していたかもしれない。だが言った言葉は紛れもない真実だ、私がこの腐りきった世界に鉄槌を下し、悪い巨乳を成敗してやるのだ。
覚悟はいいか?オレは出来てる。
「もう合格でいいんじゃない?面白いし」
「……呪術師には向いていそうだな」
「むしろ呪術師以外無理でしょ、この子」
そんなことないですけど、失礼しちゃうわね……こう見えて私、研究者気質なのでね、色んな精霊と交信するために知識を仕入れて蓄えることには余念が無いタイプのJKなんで、あと本職はJKなので、呪術師はオマケなんだから。
というか、今思ったんだけど………私、JKらしいことをこの学校で出来るの?
え、部活とか……ありますか?
…
そして冒頭の話へと戻るが、この世には伝説の巨乳がいるらしい。
かの巨乳は、"呪術師殺し"と呼ばれた呪詛師であるらしく、彼は既にお亡くなりになっており、力もさることながら、胸も凄かったらしい………ちなみにこの情報は五条先生から頂きました、対価は任務に行かされました。私、ナチュラルに扱い安い人間になっていってないか?
で、私は現在その伝説の巨乳と交信をすべく頭を悩ませていた。
とりあえず伝説の巨乳の息子であるらしい生徒の元に向かったのだが、これがまあ……その、なんだ…伝説の巨乳の息子だからって期待しちゃった私も悪いんだが……なんというか、ひ、貧相な身体付きなもので…。
「ふ、伏黒くん…大丈夫?ちゃんと食べてる?何か悩みとかある?ダイエットしたとか?」
「いや、別に…」
そうか………身体に異常があるわけじゃないんだな、それならいいんだ。
うん、よくよく考えたら君のおっぱいがデカくなくても私が困ることは無いからな、むしろデカかったらキショ童貞ムーヴをかましていたので、これはこれで良かったかもしれない。
とりあえずは同じ学年のよしみで仲良くして貰いたい、何せ他に同学年の人間が誰もいない現状なので。
休息所でジュース片手に親交を深めるためにポツポツ話す。
飲みきりサイズに丁度良い280mlのミルクティーを両手に持って、私は伏黒くんへ質問をした。
「私、マネージャーとかやりたいんだけど」
「マネージャーって…補助監ってことか?」
「いや、運動部のマネージャー」
「ここ、部活ねぇぞ」
伏黒くんは「コイツ何言ってるんだ」というような表情でそう言った。
知ってるよ、流石にそこまでアホじゃないよ。
でもさ、考えてみて?かのフランス王妃、マリーアントワネットが言ったとされているが実は近代になって彼女の発言では無いと訂正されつつある有名な台詞、「パンが無ければケーキを食べればいいじゃない」があるでしょ?
あれと同じだ、つまりは………
「部活がなければ、部活を作ればいいじゃない!」
「そんな暇ねぇよ」
「それは分かってる、だから何かこう…簡単な、共有しあえる趣味的な…」
部活というか同好会というか、とにかく私は放課後の夕陽が照らす教室で絵を描いたり、皆で一緒に走り込みをしたりとか…そういうのをやってる人達のマネージャーがしたいんだ。
普通の学校に通って、普通に友達を作って、普通に放課後マックに行ったり部活に励んだりなんて望めない人生なのは分かっている。
だからこれは、ただの夢だ。
ささやかな夢だけど、口に出すことが実現への一歩に繋がるかもしれないだろう。
ペットボトルを持って黙って私の夢を聞いてくれる伏黒くんはいい奴だ、おっぱいは無いけど。
ああ、巨乳だけを集めたバレー部とか見たかったなあ………。
「マネージャーって、呼ばれたいの…」
「まぁ……ここじゃ無理だろうな」
「普通の部活してみたかったなぁ」
「…普通校に行けば良かっただろ」
伏黒くんの言葉に反論しようとして口を開きかけるも、彼の表情を見てやめた。
苦々しさを隠しきれていない、ムッツリとした表情をする伏黒くんは、「お前…」とこちらを見ずに喋り始める。
「禪院に買われたんだろ」
「…そうだけど」
「よく俺と普通に喋れるな」
「……え、突然の上から俺様ムーヴ?」
「違う」
じゃあなんだって言うんだよ、さっきの言葉、どう考えても「禪院に金で買われた女ごときがよくもまあ、恥も知らずに俺様に話掛けて来たなあ!」ってことでしょ?
違う?違うってなにが?伏黒くん、ちょっと貴方言葉が足りなすぎるよ。え?私の察しが悪いだけ?
「俺が………禪院に行けば、お前は買われずに済んだかもしれない」
「そうなの?」
「いや、正しいことは…分かんねぇけど」
「……………」
正しいこと分からないのに心配する必要ないのでは………あと、別に君が禪院に行かないことと、私が金で禪院に買われたことは別の問題だよ。だって私が禪院に行ったのは、我が家が金も地位も何にも失くなって、私を嫁に出すくらいしかやれることが無くなったから金と引き換えにされたわけだし。
そもそも私が禪院に行くことになった最終的な判断は親がしたことであって、君が決めたことでは無いのだから、責任を感じる必要は何処にも無いはずなのだが。
「辛くないのか?」
「何が?」
「あそこに、居ること……」
「………伏黒くん、君って幸せな奴だね」
私は思わず、口の端から笑い声を溢してしまった。
ハハッと渇いた薄ら笑いが休息所に妙に響く。
私の笑い声に反応し、視線を上げた伏黒くんと目が合ったので、これでもかと得意気な笑みを作ってやった。
「私が辛いかどうかは私が決めることだよ、君が考えることじゃないでしょう」
「……悪い」
「君には何の責任も無いんだから、謝らなくていいのに」
可笑しな子だな、私に対する罪悪感なんていらないのにね。
だって私、禪院家に行かなければ甚壱さん(の乳)と出会ってなかったんだからさ。
禪院家によって修行に出された私は、何処から情報が流出したかは知らないが、先回りして待ち構えていた五条さんに取っ捕まった後、黒塗りの高級車に押し込まれ雑な拉致をされ、東京呪術高専へとやって来た。
五条さん曰く、私はちょっと珍しいので一人でほっつき歩いていたら危ないとのこと。
それについては、確かに禪院を出る時も注意されたような……なんだったっけ、降霊術とは似て非なるものは云々かんぬん…お前が触れようとしているものは人智を超越した云々……呑み込まれたらお前もムニャムニャ………だから用心しろ!的な話だった気がする。
正直、当主のおじさまの剥き出しになってる片乳を眺めるのに忙しくて全然聞いていなかった、あのお歳であの乳……凄いよね。
それでまあ、未来ある若者の育て人である五条さんはわざわざ私を迎えに来てくれたらしい。
普通に良い人だった、車に詰め込まれてる時めちゃめちゃ暴れてすみませんでした、でも「パンツ丸出しになってるよ」とかは別に言わなくて良かったです。むしろJKのパンツ見たなら金払えよ。
「つまり、金払ったらパンツ見せてくれんの?」
「え、発想がキショ…」
「お前、会話する気無さ過ぎじゃない?」
「キショ杉剣心……」
てな感じで高専に到着した私は、今にもガッデムとか言い出しそうなおじ様の前に連れて来られたのだった。
そして唐突に「何をしに来たか」を問われた。
何をしに来たかと言われると、あの、質問に質問を返すようで申し訳無いんですが、私は何故ここに連れて来られたのでしょうか……。
そもそもほっつき歩いてるのが駄目なら、それは禪院家に言って欲しい。あと別に私は東京に来たくて来たわけじゃないし、修行だってしたくないし、そもそも働きたくない。呪いとかどうでもいいし、汗も血も流したくない。
というようなことをグダグダ語ったら以下の通りである。
「だからあの、」
「不合格だ」
「あ、はい」
じゃあ………帰っちゃおっかな♪
不合格の烙印を押し付けられた瞬間、私は素早く回れ右をして「失礼しました、さよならー!」と出口に向かって競歩のスピードで歩いて行く。
だがしかし、その行動に対して「ちょっと待って待って待って」と壁に寄り掛かってこちらを見物していた五条さんからストップが入った。
「合格しないと高専通えないんだから、頑張ってよ」
「高専に………通う……?」
誰が?え、私が??なんで??
「いや、だから修行するんでしょ?東京で」
「ほ???」
「力のコントロールするために僕の方で預かるって京都の学校と話し合って……もしかして、聞いてない?」
「そ、粗食に耐えろって言われて追い出されたから……」
どうやら私の預り知らぬ所でそんな話になっていたらしい。
え、何で説明されなかったんだ?もしかして、説明しても無駄な奴だと思われてる?そんなアホな。
ちょっと待って欲しい、そもそも京都にも呪術高専あるよね?なんで京都で受け入れてくれなかったの?私、もしかして問題児扱いされてる?
厄介者ってこと?そんなことある!?いやだって、禪院家が金払って買ったんやんけ!お前らが私を家族から金使って引き離したんやろがい!!おい、ふざけんなよ京都の乳デカ軍団さんよお!!!
「ゆ、許せねえ!!!許せねえよあの巨乳共!!乳がデカいからって偉そうにしやがって!!!」
「ウケる、動画撮っとこ」
「私、絶対絶対ぜぇーったい、呪術総理大臣になってやる!!!」
「呪術総理大臣ってなに?はじめて聞いたんだけど」
「この国を豊かにします!!巨乳税を作ります!!戦争を終わらせます!!!」
「志しが高くていいね」
俺が!!!海賊王と火影と天下の大将軍になるってばよ!!!!
「特級呪術総理大臣になりに来ました!!全部ぶっ壊します、対戦よろしくお願いします!!!」
「薬ヤッてたりする?」
腹の底から叫ぶように夢を宣言すれば、薬の使用を疑われてしまった。
確かにこの世の不条理に嘆くあまり、少しばかり錯乱していたかもしれない。だが言った言葉は紛れもない真実だ、私がこの腐りきった世界に鉄槌を下し、悪い巨乳を成敗してやるのだ。
覚悟はいいか?オレは出来てる。
「もう合格でいいんじゃない?面白いし」
「……呪術師には向いていそうだな」
「むしろ呪術師以外無理でしょ、この子」
そんなことないですけど、失礼しちゃうわね……こう見えて私、研究者気質なのでね、色んな精霊と交信するために知識を仕入れて蓄えることには余念が無いタイプのJKなんで、あと本職はJKなので、呪術師はオマケなんだから。
というか、今思ったんだけど………私、JKらしいことをこの学校で出来るの?
え、部活とか……ありますか?
…
そして冒頭の話へと戻るが、この世には伝説の巨乳がいるらしい。
かの巨乳は、"呪術師殺し"と呼ばれた呪詛師であるらしく、彼は既にお亡くなりになっており、力もさることながら、胸も凄かったらしい………ちなみにこの情報は五条先生から頂きました、対価は任務に行かされました。私、ナチュラルに扱い安い人間になっていってないか?
で、私は現在その伝説の巨乳と交信をすべく頭を悩ませていた。
とりあえず伝説の巨乳の息子であるらしい生徒の元に向かったのだが、これがまあ……その、なんだ…伝説の巨乳の息子だからって期待しちゃった私も悪いんだが……なんというか、ひ、貧相な身体付きなもので…。
「ふ、伏黒くん…大丈夫?ちゃんと食べてる?何か悩みとかある?ダイエットしたとか?」
「いや、別に…」
そうか………身体に異常があるわけじゃないんだな、それならいいんだ。
うん、よくよく考えたら君のおっぱいがデカくなくても私が困ることは無いからな、むしろデカかったらキショ童貞ムーヴをかましていたので、これはこれで良かったかもしれない。
とりあえずは同じ学年のよしみで仲良くして貰いたい、何せ他に同学年の人間が誰もいない現状なので。
休息所でジュース片手に親交を深めるためにポツポツ話す。
飲みきりサイズに丁度良い280mlのミルクティーを両手に持って、私は伏黒くんへ質問をした。
「私、マネージャーとかやりたいんだけど」
「マネージャーって…補助監ってことか?」
「いや、運動部のマネージャー」
「ここ、部活ねぇぞ」
伏黒くんは「コイツ何言ってるんだ」というような表情でそう言った。
知ってるよ、流石にそこまでアホじゃないよ。
でもさ、考えてみて?かのフランス王妃、マリーアントワネットが言ったとされているが実は近代になって彼女の発言では無いと訂正されつつある有名な台詞、「パンが無ければケーキを食べればいいじゃない」があるでしょ?
あれと同じだ、つまりは………
「部活がなければ、部活を作ればいいじゃない!」
「そんな暇ねぇよ」
「それは分かってる、だから何かこう…簡単な、共有しあえる趣味的な…」
部活というか同好会というか、とにかく私は放課後の夕陽が照らす教室で絵を描いたり、皆で一緒に走り込みをしたりとか…そういうのをやってる人達のマネージャーがしたいんだ。
普通の学校に通って、普通に友達を作って、普通に放課後マックに行ったり部活に励んだりなんて望めない人生なのは分かっている。
だからこれは、ただの夢だ。
ささやかな夢だけど、口に出すことが実現への一歩に繋がるかもしれないだろう。
ペットボトルを持って黙って私の夢を聞いてくれる伏黒くんはいい奴だ、おっぱいは無いけど。
ああ、巨乳だけを集めたバレー部とか見たかったなあ………。
「マネージャーって、呼ばれたいの…」
「まぁ……ここじゃ無理だろうな」
「普通の部活してみたかったなぁ」
「…普通校に行けば良かっただろ」
伏黒くんの言葉に反論しようとして口を開きかけるも、彼の表情を見てやめた。
苦々しさを隠しきれていない、ムッツリとした表情をする伏黒くんは、「お前…」とこちらを見ずに喋り始める。
「禪院に買われたんだろ」
「…そうだけど」
「よく俺と普通に喋れるな」
「……え、突然の上から俺様ムーヴ?」
「違う」
じゃあなんだって言うんだよ、さっきの言葉、どう考えても「禪院に金で買われた女ごときがよくもまあ、恥も知らずに俺様に話掛けて来たなあ!」ってことでしょ?
違う?違うってなにが?伏黒くん、ちょっと貴方言葉が足りなすぎるよ。え?私の察しが悪いだけ?
「俺が………禪院に行けば、お前は買われずに済んだかもしれない」
「そうなの?」
「いや、正しいことは…分かんねぇけど」
「……………」
正しいこと分からないのに心配する必要ないのでは………あと、別に君が禪院に行かないことと、私が金で禪院に買われたことは別の問題だよ。だって私が禪院に行ったのは、我が家が金も地位も何にも失くなって、私を嫁に出すくらいしかやれることが無くなったから金と引き換えにされたわけだし。
そもそも私が禪院に行くことになった最終的な判断は親がしたことであって、君が決めたことでは無いのだから、責任を感じる必要は何処にも無いはずなのだが。
「辛くないのか?」
「何が?」
「あそこに、居ること……」
「………伏黒くん、君って幸せな奴だね」
私は思わず、口の端から笑い声を溢してしまった。
ハハッと渇いた薄ら笑いが休息所に妙に響く。
私の笑い声に反応し、視線を上げた伏黒くんと目が合ったので、これでもかと得意気な笑みを作ってやった。
「私が辛いかどうかは私が決めることだよ、君が考えることじゃないでしょう」
「……悪い」
「君には何の責任も無いんだから、謝らなくていいのに」
可笑しな子だな、私に対する罪悪感なんていらないのにね。
だって私、禪院家に行かなければ甚壱さん(の乳)と出会ってなかったんだからさ。