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深淵巨乳伝説

神奈川県川崎市で起きた事件の解決をすべく、七海と虎杖が顔合わせを行っていた時にそれは起きた。

暇だからと同席していた夏油傑(ガワがJK)(自分で改造した制服着用)(スカートがフリフリ)が突然クツクツと笑い声を溢したかと思えばカクンッと意識を失うように倒れた。
慌てて手を伸ばした虎杖によって抱き留められた細い身体からはクッタリと力が抜けており、声を掛け揺すっても返事は無かった。
そして近寄ってきた五条が詳しく確認しようとした瞬間、彼女はいきなりカッと目を見開き勢い良く飛び起きた。

サッと避けた虎杖と至近距離で顔を合わせた少女は、キョロキョロと視線を動かし虎杖の顔をベタベタと触った。

「本物!?本物なのか!?」
「おち、落ち着…やめてそこ鼻の穴!」
「あ、これは本物のおっぱいの感触!」
「キャー!エッチ!!」

もにっ、もにっ。

いきなりのセクハラ攻撃に虎杖は甲高い悲鳴を上げながら後ずさった。しっかりと両手で胸を庇う姿は恥じらう乙女のようだった。

そんなワチャワチャした生徒二人を見下ろしていた五条がにこやかに声を掛ける。

「お、これは戻って来たね」
「待ってやっぱり分かんないかも、ちょっと誰かもう一回確認のために胸触らせてくれません?」
「ほら、そこに七海がいるよ」
「プリケツの七海!?」

不名誉な二つ名で呼ばれた七海は無言でこの場を離れようとした。しかし背を向けた七海の背後からベシャッッ!!と、盛大にすっ転ぶ音が聞こえて立ち止まった。

やっと起きたと思ったらこの喧しさ、傑INのままのお淑やかで優雅で…なんかちょっと影のある奥さんみたいな方が良かったかもしれないと五条はヘラヘラ笑いながら思った。

「大丈夫?パンツ見えてるけど」
「ば、バランス感覚が死んでる…たしゅけて…起きれないよぉ……」
「もー、何してんの」

よっこいせ。
五条によって軽々と持ち上げられた少女は足先をプラプラさせながら虎杖に渡された。
虎杖は「え?俺?」と至極真っ当な反応をしたが、五条によって問答無用で押し付けられてしまった。だって僕忙しいし。
仕方無く同級生の少女をお姫様抱っこしてあげた虎杖は、腕の中でしょぼ…と項垂れる少女へ声を掛けてあげる。

「だいじょ?一歩目ですっ転んでたけど」
「虎杖くん私を介護して…死ぬまで養って…」
「俺これからやることあるからごめんね」
「怒りのネチコぱんち!!」

べちっ!べちっ!べちっ!!

突き出した拳を虎杖の肩に向かって数度放つも、全く効果は無かった。むしろ拳を放った方が痛みを負った。なんだこの肩硬度がおかしいだろ、肩に隕石乗せてんのかい。

そんなよく知るいつもの少女の様子に戻っていることを実感した虎杖は、良かった良かったと安心した。
まあそれはそれとして、これから任務に向かう身である虎杖にとって少女は邪魔だったので、この子どうしようかな〜と少し悩む。

一方未だ頭ポヤポヤの自我あやふや、今まで過ごした星の彼方での日々によってちょっとヤバめのレディへと生まれ変わった少女は、今コイツに見捨てられたら困る!と言わんばかりに虎杖にしがみついて離れようとしなかった。
虎杖のほうもそれはもう困った。全然タイプでは無いとはいえ、女の子にしがみつかれた挙げ句に「置いてかないでぇ〜!」と言われているのだ、心優しい彼は見捨てるなんて出来なかった。

「ナナミン、こいつ…」
「元居た所に返して来なさい」
「ごめん、家じゃ飼えないって」
「やだやだやだやだやだあ!!!連れてって連れてって連れてって!!」

ビチビチビチビチッ!!

虎杖の腕の中で生きのいいマグロのように跳ねて暴れる少女を、虎杖は「パンツ見えちゃうから!」と落ち着かせようと宥める。
けれどこの少女、ゴネたらなんとかなる!という前科がある。過去の経験からゴネの力を知っているため諦めずに「やだやだやだやだ!!!やだもん!!」と駄々を捏ねて捏ねて捏ねまくった。

「一人にしないで!頭の中にいっぱい声があって怖いの!!」
「それ医者行った方が良くね?」
「えーーーん!!!闇の眷属が私に向かってイアイア言ってる〜〜!!」
「先生!コイツいやいや期の仲間が居るらしいんだけどお〜!!!」

狂人とは会話が成立しない、それは本当にそう。

話を振られた五条であったが、軽く相槌を打つばかりであった。
その理由は虎杖にダル絡みを繰り返す少女の姿をサングラスの下からジッ…と観察し続けているからに他ならない。


畏怖と崇拝、狂気と邪悪によって成り立つその身の何とおぞましいことか。
何を持ってして至ったのかは不明だが、とうとう彼女は術式を"完成"させてしまった。
神々の声を聴き届けるのは彼女の術式のほんの一部に過ぎない、真に危惧すべきはその先…神々と呼ばれる"何か"を我が物とし、奇跡と言う名の説明の付かない理不尽を成し遂げてしまうこと。

今までここに至った人間が姿をくらませていたのには理由があった。
あまりに異端で冒涜的な情報を大量に得たことによる発狂、それによる自我の永久的損失、せめてもと自身の尊厳を守り抜くため自死を選び魂の自由を最期に獲得する。

だが少女は自死を選ばなかった。
あらゆる苦痛と悲嘆と悦楽を飲み干して、最後の夢と希望すら投げ捨てて帰って来た。
そして今、まるで今までと変わらぬ人間であるかのように振る舞っている。

五条は少女の在り方を恐ろしく思うと同時に、とても面白く感じた。
これはちょっと愉しくなってきたぞ、この子がここからさらに強くなっていく所を見たい。そのために必要なのは何よりも経験だ。

五条は一つ頷くと虎杖と七海に「コイツもついでに連れてってやって、リハビリってことで」と声を掛けた。
それに対して七海はすぐさま「五条さん、正気ですか?」と虎杖に全身を使ってしがみつく少女を見ながら言った。

「大丈夫大丈夫、いざと言う時は傑が何とかするはずだし」
「それが一番危ないのでは…」
「まあ何とかなるでしょ、ほら行った行った!」

こうして七海のパーティーに邪神使いのイカれガールが加わった。
七海の胃に5000のダメージ。七海は少し吐き気がした。

頑張れ七海、負けるな七海。

三人の冒険はこれからだ。
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