深淵巨乳伝説
以前瞼の向こうに広がる光は強く苦しく、私の身を蝕むように燦々と輝き照らす。
遍く命をその指先から発す光で救うかのような浄土の光明は、まるで私を私の居るべき世界に戻さんとする力のように思えた。
それでも私は還るのではなく帰りたい。
例え先に待ち受ける困難が常軌を逸するものだとしても、私を待つもの達のために帰らなければいけない。
そう、私を待つおっぱいとかおしりとか、なんかすげぇ偽JKとか…そういう素晴らしいもののために歩みを止めるわけにはいかないのだ。
だから着実に一歩ずつ、しっかりとした足取りで前に前にと進み続ける。
大丈夫、どれだけ長い道だろうと、どれほど不安な世界だろうと、隣に手を繋いで私を導いてくれる人が居るから…私はまだ歩けるんだ。
「まだ歩けるけど流石に歩きすぎて足疲れた…今どのへんすか……」
「知らねぇ、そもそも方角こっちであってんのか?」
「…え?」
「あ?」
…………いま、なんて…???
目は開けないがそれでも甚爾さんの顔があるであろう方向をバッと向く。
珍しくこの私が口の端を引き攣らせる事態が発生してしまった。
今彼はなんと言っただろうか。方角の話をしたか?手を引いてくれた彼が?
「え?こっちじゃないの?私何も知らないのですが…」
「俺も知らねぇよ」
「貴方馬鹿なの?」
「あ"?」
ヒッ…!! シンプルかつ直球な感想を述べたら殺気を向けられた。
ごめんなさいごめんなさい馬鹿とか言ってごめんなさいでもやっぱり言わせて下さい、いや馬鹿だろ私もコイツも。
今までの歩いていた時間は何だったんですか???ただのお散歩?手を繋いでるし…もしかしてデートだった?そんなことある?
いや顔は分からないけど巨乳とデートしてるって事実は泣けるくらい嬉しいからいいんですけど。全然喜ばしいことなんですけど。
それはそれとして時間を大幅にロスしたことには変わりなく…。
しかし甚爾さんを責めるのはお門違いというものか。
何せ私も彼もどちらに行けば良いか分からないんだ、ならば責任の一端は私にもある。
さて、困ったぞ。
「甚爾さん、とりあえず周囲の状況をお聞かせ願えますか?」
「とくに何にもねぇよ、白くてだだっ広いだけだ」
「そうですか、ちなみに好きな下着のタイプはなんですか?」
「エロけりゃ何でもいい」
「え!?今、エッチな下着履いてるんですか!?!??」
「俺が履く下着の話じゃねぇよ」
え!?でも今エロい下着が云々って言ってましたよね!?もしかして今…ドスケベな下着を着けていたりします!?
ま、まさかですけど…スケスケのぶ、ぶ、ブラとか…あの……。
ゴクリ。
空気を変えるためにした質問から得られた情報が想像の百倍は喜ばしい情報で、五条先生曰く「クソ童貞根性JK」の私は後先考えず目を開こうとした。しかしそれは甚爾さんの手によって防がれてしまった。
瞼の上に大きく温かい手が置かれ、「落ち着けアホ」と言われる。
「でも目の前にドスケベ下着の男が居るんでしょ!?」
「居ねえよ、話聞け」
「え…?居ないの?なんで?」
「逆にこっちが聞きてえよ、なんでお前そんなに胸が好きなんだ」
なんでって…そりゃ、いや何でだろうね。私にも分からない。
でもさ、全ての物事に理由って必要かな?理由の無い愛や好意だってあってもいいじゃない。
それでも一応私はファースト巨乳のことを思い出す。
俺の甚壱…キレて喚く私を落ち着かせるためにその偉大なる胸で優しく包み込んでくれた聖なるおっぱい様…あの日あの瞬間、私は真理に至っていたのだろう。
この世に誰かから与えられる救いなどはない。
しかし、自ら何かに救いを見出すことは出来るのだと。
狂気と恐怖と悲嘆と苦痛と共にある私の人生に舞い込んできた唯一の柔らかく温かな癒やし、それを私は救いだと思った。
何も守りたいものなど無く、神も仏も呪いも全て視界に入れたくなんて無いと背を丸め縮こまっていた私は、救いを求め守るために頑張ることにしたのだ。
そう、私にとっておっぱいとは生きる理由だ。
それがあるから頑張れる。それのためなら命を張れる。
まだ生きようと歩いて行ける。
改めて愛する物へ思いについて考えを深めた私は、目を背けていた事実に対峙する。
「甚爾さん、私…分かったよ」
「いや何がだよ、いきなり怖ぇな」
スッと顔を上げ、瞼の上に置かれた手に触れる。
この真っ白く私の瞼を焼き付ける空間は私の未だ堕ちぬ心の一部なのだろう。
神々によって永劫の狂気に囚われた私の、唯一最後に残った人としての正しい部分。つまりは、領域。
ここには出口など無い。
そして、ここをどうするもこうするも私の一存だ。
目を開けば、それで全ては完成する。
ヒナが卵から孵るように、パズルの最後のピースがハマるように。
甚爾さんがここに居る理由は最期の選択を迫られているからだろう。
古き神々が与えし選別と選択、このまま人としてこの白い光を捨てずにここで"救い"と共に過ごすか、それとも"救い"を手放し真なる邪となるか。
お前が選べと時間をくれた。
常闇の底で脂臭い獣を総て、あらゆる楽を飲み干し狂気と共鳴した私。夜の帳の向こうへ逝くか、はたまた地獄の隅から隅まで我が物とするか。
最後に残った人の心が我が目を照らす。
決して開けるな開けたら終わり、後戻りなど出来るはずもない。進む道はただ一つ…暗く、暗く、暗い、彼方の世界への巡礼。
それでも私は行かねばならない。
例え心の一欠片まで闇に堕ちようとも帰らねばならない。
暇だ何だと喚きながらも私を救おうとしてくれたあの人のことを、途中で放棄することなど出来るわけがない。
待ってる人が居るんだ、それはきっと投げ出しちゃいけないことなんだ。
「甚爾さん、貴方悪い人ですよね?」
「まあ、良い奴ではねえな」
「じゃあ、いつかきっと地獄でまた会いましょう」
「…………」
ああ、きっとこの人は最初から全部分かっていたんだろうな。分かっていたから適当に歩き回ってくれていたんだろうな。
私があまりにもただの子供だったから問題を先延ばしにする時間をくれたんだろう。
甚爾さんの役目は私を無限の真っ暗闇に誘い突き落とすことだ。
これを成立させた時、彼の魂は神々の赦しを得て救われるのだろう。だから、私と彼が同じ地獄で笑い合うことは二度と無い。
だって私は堕ちるから。
無限に堕ちて、この魂はずっとずっと救われないのだから。
けれどそれでもいいと思った。
それは何故かと無言のままに聞かれたから、私は笑ってこう答える。
「私、呪術総理大臣になっておっぱいハーレムを築き世界を平和にしなくちゃいけないんです!私を必要無いと言う人間を撲滅するために、私はがんばらなきゃいけないんです!」
「お前さては根がただの馬鹿だな?」
「特級アルティメット呪術総理大臣になって地獄なんてぶっ壊してやるよ!!神も仏も真っ二つじゃバカタレがーー!!!」
甚爾さんの大きな手を剥がし、私は苦しいほどの光に抗って瞼を開く。
先に見えるは彼方へと続く常闇だけ。
星の重力から解放された身体が滑るように堕ちていく、堕ちていく、堕ちていく。どこまでも、どこまでも、どこまでも。
溺れる闇に微睡む。
どこかで聴き慣れた声が微かに笑うのを感じた。
それきり、世界はあっという間に遠くなった。
遍く命をその指先から発す光で救うかのような浄土の光明は、まるで私を私の居るべき世界に戻さんとする力のように思えた。
それでも私は還るのではなく帰りたい。
例え先に待ち受ける困難が常軌を逸するものだとしても、私を待つもの達のために帰らなければいけない。
そう、私を待つおっぱいとかおしりとか、なんかすげぇ偽JKとか…そういう素晴らしいもののために歩みを止めるわけにはいかないのだ。
だから着実に一歩ずつ、しっかりとした足取りで前に前にと進み続ける。
大丈夫、どれだけ長い道だろうと、どれほど不安な世界だろうと、隣に手を繋いで私を導いてくれる人が居るから…私はまだ歩けるんだ。
「まだ歩けるけど流石に歩きすぎて足疲れた…今どのへんすか……」
「知らねぇ、そもそも方角こっちであってんのか?」
「…え?」
「あ?」
…………いま、なんて…???
目は開けないがそれでも甚爾さんの顔があるであろう方向をバッと向く。
珍しくこの私が口の端を引き攣らせる事態が発生してしまった。
今彼はなんと言っただろうか。方角の話をしたか?手を引いてくれた彼が?
「え?こっちじゃないの?私何も知らないのですが…」
「俺も知らねぇよ」
「貴方馬鹿なの?」
「あ"?」
ヒッ…!! シンプルかつ直球な感想を述べたら殺気を向けられた。
ごめんなさいごめんなさい馬鹿とか言ってごめんなさいでもやっぱり言わせて下さい、いや馬鹿だろ私もコイツも。
今までの歩いていた時間は何だったんですか???ただのお散歩?手を繋いでるし…もしかしてデートだった?そんなことある?
いや顔は分からないけど巨乳とデートしてるって事実は泣けるくらい嬉しいからいいんですけど。全然喜ばしいことなんですけど。
それはそれとして時間を大幅にロスしたことには変わりなく…。
しかし甚爾さんを責めるのはお門違いというものか。
何せ私も彼もどちらに行けば良いか分からないんだ、ならば責任の一端は私にもある。
さて、困ったぞ。
「甚爾さん、とりあえず周囲の状況をお聞かせ願えますか?」
「とくに何にもねぇよ、白くてだだっ広いだけだ」
「そうですか、ちなみに好きな下着のタイプはなんですか?」
「エロけりゃ何でもいい」
「え!?今、エッチな下着履いてるんですか!?!??」
「俺が履く下着の話じゃねぇよ」
え!?でも今エロい下着が云々って言ってましたよね!?もしかして今…ドスケベな下着を着けていたりします!?
ま、まさかですけど…スケスケのぶ、ぶ、ブラとか…あの……。
ゴクリ。
空気を変えるためにした質問から得られた情報が想像の百倍は喜ばしい情報で、五条先生曰く「クソ童貞根性JK」の私は後先考えず目を開こうとした。しかしそれは甚爾さんの手によって防がれてしまった。
瞼の上に大きく温かい手が置かれ、「落ち着けアホ」と言われる。
「でも目の前にドスケベ下着の男が居るんでしょ!?」
「居ねえよ、話聞け」
「え…?居ないの?なんで?」
「逆にこっちが聞きてえよ、なんでお前そんなに胸が好きなんだ」
なんでって…そりゃ、いや何でだろうね。私にも分からない。
でもさ、全ての物事に理由って必要かな?理由の無い愛や好意だってあってもいいじゃない。
それでも一応私はファースト巨乳のことを思い出す。
俺の甚壱…キレて喚く私を落ち着かせるためにその偉大なる胸で優しく包み込んでくれた聖なるおっぱい様…あの日あの瞬間、私は真理に至っていたのだろう。
この世に誰かから与えられる救いなどはない。
しかし、自ら何かに救いを見出すことは出来るのだと。
狂気と恐怖と悲嘆と苦痛と共にある私の人生に舞い込んできた唯一の柔らかく温かな癒やし、それを私は救いだと思った。
何も守りたいものなど無く、神も仏も呪いも全て視界に入れたくなんて無いと背を丸め縮こまっていた私は、救いを求め守るために頑張ることにしたのだ。
そう、私にとっておっぱいとは生きる理由だ。
それがあるから頑張れる。それのためなら命を張れる。
まだ生きようと歩いて行ける。
改めて愛する物へ思いについて考えを深めた私は、目を背けていた事実に対峙する。
「甚爾さん、私…分かったよ」
「いや何がだよ、いきなり怖ぇな」
スッと顔を上げ、瞼の上に置かれた手に触れる。
この真っ白く私の瞼を焼き付ける空間は私の未だ堕ちぬ心の一部なのだろう。
神々によって永劫の狂気に囚われた私の、唯一最後に残った人としての正しい部分。つまりは、領域。
ここには出口など無い。
そして、ここをどうするもこうするも私の一存だ。
目を開けば、それで全ては完成する。
ヒナが卵から孵るように、パズルの最後のピースがハマるように。
甚爾さんがここに居る理由は最期の選択を迫られているからだろう。
古き神々が与えし選別と選択、このまま人としてこの白い光を捨てずにここで"救い"と共に過ごすか、それとも"救い"を手放し真なる邪となるか。
お前が選べと時間をくれた。
常闇の底で脂臭い獣を総て、あらゆる楽を飲み干し狂気と共鳴した私。夜の帳の向こうへ逝くか、はたまた地獄の隅から隅まで我が物とするか。
最後に残った人の心が我が目を照らす。
決して開けるな開けたら終わり、後戻りなど出来るはずもない。進む道はただ一つ…暗く、暗く、暗い、彼方の世界への巡礼。
それでも私は行かねばならない。
例え心の一欠片まで闇に堕ちようとも帰らねばならない。
暇だ何だと喚きながらも私を救おうとしてくれたあの人のことを、途中で放棄することなど出来るわけがない。
待ってる人が居るんだ、それはきっと投げ出しちゃいけないことなんだ。
「甚爾さん、貴方悪い人ですよね?」
「まあ、良い奴ではねえな」
「じゃあ、いつかきっと地獄でまた会いましょう」
「…………」
ああ、きっとこの人は最初から全部分かっていたんだろうな。分かっていたから適当に歩き回ってくれていたんだろうな。
私があまりにもただの子供だったから問題を先延ばしにする時間をくれたんだろう。
甚爾さんの役目は私を無限の真っ暗闇に誘い突き落とすことだ。
これを成立させた時、彼の魂は神々の赦しを得て救われるのだろう。だから、私と彼が同じ地獄で笑い合うことは二度と無い。
だって私は堕ちるから。
無限に堕ちて、この魂はずっとずっと救われないのだから。
けれどそれでもいいと思った。
それは何故かと無言のままに聞かれたから、私は笑ってこう答える。
「私、呪術総理大臣になっておっぱいハーレムを築き世界を平和にしなくちゃいけないんです!私を必要無いと言う人間を撲滅するために、私はがんばらなきゃいけないんです!」
「お前さては根がただの馬鹿だな?」
「特級アルティメット呪術総理大臣になって地獄なんてぶっ壊してやるよ!!神も仏も真っ二つじゃバカタレがーー!!!」
甚爾さんの大きな手を剥がし、私は苦しいほどの光に抗って瞼を開く。
先に見えるは彼方へと続く常闇だけ。
星の重力から解放された身体が滑るように堕ちていく、堕ちていく、堕ちていく。どこまでも、どこまでも、どこまでも。
溺れる闇に微睡む。
どこかで聴き慣れた声が微かに笑うのを感じた。
それきり、世界はあっという間に遠くなった。