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巨乳覇者列伝

けたたましい子供の笑い声が聞こえたかと思えば、爆発的に呪力が膨れ上がり、次の瞬間には聞くに耐えない醜悪な断末魔が帳の中に響き渡った。

死の大絶叫を上げる呪霊は、八つある頭についた八つの口で恐怖と苦痛を訴えながら極彩色の業火に包まれ息絶えた。


紅茶の香りのする煙を嗅覚で感じ取りながら、それとは全く似合わない光景を目にした甚壱は少し頭が痛くなった。

どう報告したものか。

禪院家の血を遺すための胎の一つとして親に売られ、新しくやって来たまだ16かそこらの女は、とんでもない才能を隠し持っていた。
恐らく、ここ百年の間で最も交信術の類いの中では"完成"に近い物。これを金欲しさに手放した親は本当に価値を分かっていなかったのだろう。

少女と意識を交差させた天上の者の力によって呪霊は跡形も無く消えてしまった。
この呪霊は2級程度の物だったが、2級相手にこれならば十分な成果と言えよう。
ただ………一つ問題があるとすれば……

「大丈夫か」
「メーデーメーデーラリパッパァ」
「………」
「ひつじさぁん、こんにちわぁ、ふふふっ」

術を使用した後、術師が思い切りトリップ状態になってしまっているということ。

人差し指をクルクルと回しながら何処かを眺めて何かと会話を続ける少女を見て、甚壱は無言で少女の腕を掴んでその場を後にした。

帰りの車の中では何かあれば困ると思い隣の席に座ったが、終始支離滅裂な会話に付き合わされることとなったのだった。








意識を取り戻したらそこはトイレだった。
どうやら吐いた後だったらしく、口の中が酸っぱいような苦いようなザラザラとした感じがする。

う~~~む、これは………

「任務…どうなったんだ…?」

術式が発動したのは覚えてるが、どうにも深くアクセスし過ぎたらしい。見事にトリップをキメてしまったようだ、これはヤベェのではなかろうか。

……というか、何で誰もトイレで伸びてる私を回収してくれなかったんだ!?
え、もしかして私嫌われてる?避けられてる?女やぞ?JKやぞ?今が旬なのに!?
お前らが胎にしよ♪って思い付いて金で買った女やぞ!!!?ちゃんと最後まで面倒見ろよ!!こんな所に放置しとくなよ!!今度からお前らの布団にゲロしてやるからな!!!オエ"、オロロロロロロロッ

もう一度吐いてスッキリした私は足を踏み鳴らしながら立ち上がり、トイレの扉を勢い良く開いて廊下に飛び出した。


何処だ!!!引率担当の巨乳!!クレーム入れてやる!!!


目尻を吊り上げ、肩をイカらせ、足音をドスドス立てながら廊下を進む。
前から歩いてきたこの家お抱えの部隊に所属しているであろう、量産型女子ならぬ量産型呪術師な見た目をした男が一瞬私を見て足を止めた。
退け、邪魔だ、私は巨乳にクレームを入れなければならぬのだ、道を譲れ!!

「退いて!!」
「お、女の癖に何言っ」

男は黙ってろ!!
ダンッと強く床を踏み鳴らし、私は拳を握り締めて脇を締め、身体を捻り遠心力を加えながら鋭く早い、体重と呪力を乗せた一撃を振りかぶった。
女に道の一つも譲れない奴はこれでもくらえ!!!


「男塾名物、直 進 行 軍 !!!」


ズギャァアアンッッ!!!!


ただ真っ直ぐに、前方に向けて突き出された拳は、正確に男の顔面を捕らえた。
拳に頬の骨の感触が伝わり、ミシミシと音が聞こえた気がした。
"直進"を阻む物全てを薙ぎ倒し、我が道を切り開かんとする技は、呪力による鮮烈な輝きと私の気合い、それから何らかの力(多分そのへんの暇な精霊)が働いて思った以上の威力となった。

そこそこの轟音を立てながらバッチリと一撃は決まり、ただ廊下を前方から歩いて来ただけで殴られた知らん男は十数メートル吹っ飛び、身体を地に叩きつけ動かなくなってしまった。


「えぇ……………………」


え……………………
…………??…………???

あ、え、嘘………あの……え??マジで?

自身の突き出した拳をスッ……と下げ、見下ろす。

いや、え??当たっちゃったんだけど、何で避けなかったんだアイツ。
これじゃまるで、私が怒りに任せて通行人をぶん殴ったみたいじゃん(※そうです)
どうしよ、これ。
紀元前1世紀・古代ローマの詩人であるホラティウスいわく、怒りは短い狂気だと言うが、マジで私、ただの狂人じゃないか(※そうです)
ゲロ吐いたまんま意識飛ばしてトイレに放置されてたことにキレて、前方から歩いて来ただけの男殴って、私は一体何がしたいんだ、アホか、お前はいつもそうだ、誰もお前を愛さない。

「力が、虚しい……………」
「いや、何浸ってんねん」

先程の一撃のせいで集まって来てしまった人々の中に居た一人からツッコミを貰ってしまった。

お、お前は……!!当主の息子の皆から嫌われてる奴!!!
影で、躯倶留隊の人達に「うんこ」「ゴミ」「精神が臭い」「逆プリン」「あれと比べれば俺ら全員マシ」「シンプルに嫌い」などと言われている直哉さんじゃないか!

私、この人きらい!
意地悪なこと言うし、センス無い嫌味ばっかでさあ…良い歳した大人の癖に恥ずかしくないんですか?

「なんで手出しとんの?生理でも来たん? 暴力的な女はモテんよ、ああでも孕むだけなら出来るか」

なんかネチネチ言ってるけどまあいいや、それより私はクレームを入れに行く途中だったんだ。あの髭面巨乳め……乳がデカイからって全てが許されると思ったら大間違いなんだからな………。

「おい聞いてるんか?何無視してるんや、立場分かってるんか?なんか言えや女!」
「いやでも、おっぱい揉ませて貰えるなら全て許せるな……」
「………は? え、なんやコイツ……」

やっぱ世の中乳よ、乳が全てよ。

というわけで、我々取材班はおっぱいを求めて南米の奥地アマゾンへと向かったのであった…。
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