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深淵巨乳伝説

今回は前回の結論から語らせて頂こう。


結論、真人ちゃんのおっぱいはとても柔らかかった。


それはもう、フワフワのマシュマロデカパイだった。
でも偽物だった、残念なことに模造品だったのだ。

けれど彼女のおっぱいが柔らかかったことは紛れもない事実であり、例え偽物だったとしても価値のある偽物だった。芸術的価値のある、美しき贋作だった。

まあそのフワフワマシュマロおっぱいを、私はめちゃくちゃにしてしまったのだが。
いやこの言い方だと私がドスケベ破廉恥野郎みたいだな…訂正しておこう。

私は真人ちゃんのおっぱいをグチャグチャにした。

………いや、やっぱり結果としてどう説明してもドスケベ破廉恥野郎になるな。何でだろう、傑さんはなんでだと思う?

「君のオツムが残念だからだろうね」

そうかそうか、ならばもう諦める他無いだろう。


ということで、あれからの話をしよう。

怪傑の定理がどのような解答を出したのか、何をどうして私は無事なのか。

全てを話してご覧にいれよう。

良い子のみんな、私の話をその目で聞いてくれ。
では、はじまりはじまり。




___





私と傑さんが…というよりも、傑さんが殆ど一人で編み出した新技「怪傑の定理」は所謂「神罰」である。


神罰……とは、神の与える罰である。

神……とは、信仰の対象である。

罰……とは、悪事に対する報いである。


そして、私にとっての神とはこの場合傑さんのことを指し示す。

つまりメカニズムとしてはこうだ。
私(信者)に悪事が働かれる→それに傑さん(神)が罰を与える。

以上、終わり。

では今回どんな罰が真人ちゃんに与えられ、成敗されたのかについて今度は説明していこう。

以下、回想。






私に放たれた呪いは意味を成さなかった。
殆ど得体の知れぬ者共に食われて終わった。
食べ残された呪力の残骸も、グチャグチャと気色の悪い粘着音を立てながら競うように闇へと喰われて消えていく。

私は、魂までをも呪われている。

このイカれてラリラリな頭の中だけじゃない、無防備な心だけではない、魂まで異形の神々に愛されて(呪われて)いる。

だからそう、真人ちゃんが触れた所で意味など無いのだ。
もう私の魂は神様達の物だから、そちらで管理されているから、真人ちゃんが触れてどうにかなる問題じゃない。


「真人ちゃん、呪力を捧げてくれてありがとうね」


左胸、心臓と呼ばれる臓器があるべき場所がグチャグチャの肉塊と化した真人ちゃんは、信じられないと言わんばかりの目をしてこちらを見てきた。

己が放った呪いが捧げ物として受け入れられ、喰われて、代わりに返って来たのは別の呪い。


神罰、怪傑の定理。


傑さんを主軸とした、精霊による呪い返し。

本来精霊の降臨や接続は、私を介入してでないと成り立たないことなのだが、この技はその過程をすっ飛ばして傑さんが「おりゃっ!」ってやれば精霊達も一緒に「オラオラオラー!」ってやれちゃうのである。

つまり、スーパースグルキャノンなのだ!!
しかも相手の呪力を使うから燃費も良い!
その代わり、傑さんはめちゃめちゃ疲れるらしいが。

それもそのはず、自分に得体の知れない呪いだか何だか知らない気持ち悪いパワーが流れ込むわけだ。そりゃめちゃんこ疲れるに決まっている。

うん、でもお陰で私は万事休すからは抜け出せたわけだ。
てなことであとは逃げるだけ、名残惜しいが真人ちゃんのデカパイともおさらばだ。

「じゃね!真人ちゃん!」
「ねえなんか動けないんだけど、あと身体溶けてくんだけど」
「え?なにそれ怖…よくわかんないけど頑張って!」
「お前色々おかしくない?」

可憐なお嬢さんにはやはりウインクぐらいしておくべきでしょ、ってことで華麗にウインクを一つ放ち、私は影からニョキッと出てきた恐らくゾムファちゃんの触手らしき物と一緒に帳を色んな力を借りて無理矢理破壊し、無事に外へと脱出したのだった。


いやはや全く怖いとこだね東京は。
しかし、今回のことで一つ有意義なことを知れた。
今まで私の中でのナンバーワンおっぱいは俺の甚壱こと禪院甚壱だったんだが、この度東京にもニセ乳とは言え素晴らしいお胸を持つ少女が居ることを知ってしまった。
西の甚壱、東の真人…東西おっぱいチャンピオンマッチが私の脳内では繰り広げられている。
しかも五条先生の話によれば、伝説級おっぱいを持つ伏黒くんのお父さんが居るらしいじゃないか。
これはもう、会うまでは死んでも死にきれん。
この魑魅魍魎、悪鬼羅刹がお天道様の下を闊歩するコンクリートジャングルを私は生き抜く、おっぱいのために。

改めて決意と覚悟を己に誓い、私はそそくさと人を避けつつ駅を目指した。

とりあえず高専に帰りつつ、コンビニに寄って水分と糖分くらいは補給しよう。
贅沢は言わないからローソンのアイスカフェラテが飲みたい。いや十分贅沢だけど。

そうやって他愛の無いことばかり考える。
友達との関わり方や、すぐ側から感じる精神に干渉してくる這いずり回るような薄ら寒さとは関係の無いことを必死に考えながら帰路を辿る。

……だが、そういえば。
先程から傑さんの声が聞こえない。

私の神様の声が、聞こえない。


まるで天にも神にも見放されたような、それでいて深淵には程なく辿り着きそうな。
そんな気配に急激に呑まれていく。


唐突に、世界が歪む。


いつしか空の青は遠ざかり、私にだけ黒い霧が見え出した。
名状し難き悪意がすぐ側までやって来るのを肌で感じ、私は歪む世界で一人立ち止まる。

これはたかが人間風情が神の与える罰をシステムとして解析し、擬似的な人による神罰などという罰当たりな技を使用した罰なのだろうか。
はたまた、外側を這う神の折りに触れた気まぐれか。

ただの人間である私には分からない。

だが一つ分かることは、私は今……何処とも知れぬ世界の外側に焦点を合わせてしまっているようだった。

身を蝕むは暗き霧の囁き。

呪わしき神託が、鼓膜の奥で悲鳴のような笑い声を挙げていた。
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