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巨乳覇者列伝

あんだけゴネたけど家には帰して貰えなかった、恥かいただけでした、悲しい、恥ずかしい。穴があったら入りたいとはこのことだ。

噂によれば、一度は家に帰す話もあがったらしいのだが、私の実家が金を返すつもりが無いとかなんとかで………マジかよ~~もう実家滅べよ~~~遺伝子根絶やしになってくれ………あ、それだと私もエンディングを迎えてしまう、やっぱなしで。

しかし、家には帰れなかったが嫁入りは遠退いたらしい。
というのも、後日禪院家で一番偉い当主の人に呼び出されて話に行ったら、一定期間内に呪術師として成果を上げたら好きにして良いと仰って下さったのだ。
私は思わずその場で万歳してしまった、だって嬉しくて…自由が手に入れられるかもしれないとか、テンションあがる。

「私、頑張って総理大臣になります!」
「総理大臣じゃなくて呪術師になれと言っただろう」
「呪術総理大臣になります!!」
「そんな役職は存在せんぞ」

当主のおじさん、会話が通じる!凄い!!
初対面の時、片方だけ乳首出してるスタイルにビビってしまったが、どうやら私の思い違いだったらしい。当主のおじさんはお酒をグビグビ飲みながら笑ってお話してくれた、思いの外まともだった。


ということで、私は現在絶賛一級呪術師になるべく訓練中であった。


一応は腐っても呪術師の家系に産まれたので、家に居た頃もボチボチ訓練はしていたし、任務も何度か出たことはある。何せ任務に出ると金が貰えるからな…汗をかくのは嫌いだが、金が貰えるなら話は別だ、女ってのは金が掛かる生き物なんだよ。
でも残念なことに私の家系はもう廃れに廃れていたため、まともに術式と呪力がある奴は私くらいなもので、皆戦う気のない奴等ばかりな一族であった。
だから当然教えてくれる人なんて周りには居なかったし、そうなりゃ自己流である。動画見たり本読んだり、映画アクションの真似したり、漫画読んでみたりとかね。そういう感じだ。

つまるところ、私はちゃんとした基礎的な部分は全くと言っていい程知らない。


そんなわけで、私は自分でもどれだけ戦えるのか実力がよく分かっていないため、本日は引率者同伴の元で任務へとやって来たのだった。
本日の引率者はこの人、おっぱいさんこと甚壱………間違えた、甚壱さんことおっぱい……いやこれも違うな………えっと、はい、特別一級術師の甚壱さんである。

クソカスゴミ男しか居ない禪院家の中においては、比較的マシな方である甚壱さんは私の様子を時々見てくれている。
顔は怖いけどイイ奴だ、あとおっぱいもデッカイし、デッカイおっぱいは正義だって六法全書にも載ってるし聖書でも神は巨乳を作ったって書いてあるから甚壱さんはイイ奴だ、知らんけど。

ということで、バリバリジャンジャカ祓っていくぅ!!

工事が中止となった工事現場に湧いた呪霊は頭が複数もあるグロテスクな見た目をしており、気味の悪い声を発しながら二本の長い足でセカセカと動いている。
汗をかくのは嫌だけど、これも呪術総理大臣になって自由を手に入れるため……戦わせて貰いましょう!

「ってことで説明しますね、私の術式はこれ…デデン!」

呪霊から一旦距離を取って戦闘準備を行う。
一応実力を測るための任務なので、説明をしておこうと甚壱さんに向けて術式の解説をすることにした。

私は一つ、ポケットから古いパイプ煙草を取り出して、葉などは入れずに吸ってみせる。
火もついていないそれは、何処か妙に甘苦い味がした。


『疑似天啓術』

このパイプは、呪術師のカルメットと称される物だ。
古くはアメリカのカナダ、インディアンが儀式に使っていた物であり、インディアンはこれを用いて"大いなる神秘"と交信を行ったとされる。

それに起因するこの術式は、パイプと煙草の葉、それから火を使い、煙を天へ捧げて天啓を賜う術である。

大いなる神秘とは、宇宙の真理であると定義付けられており、所謂キリスト教や他宗教における神のような人格は存在せず、宇宙の根本原理であるとされている。
この根本原理とは、二本の足を使う物も四本の足を使う物も、草も木も石も、全てがみな空の下では平等であり、上下関係の存在しない世界である……といったような考え方だ。


さて、ここからが本題だ。


実の所、私の家には代々精霊信仰が根付いている。
精霊信仰とは、アニミズム信仰……八百万に神が宿るってな考え方の信仰だ。
で、まあ、我が家の人々はこの精霊との交信を主な呪いとしている。

そもそも精霊だって一種の呪いだ、呪霊の中の精霊科…みたいな括り、つまるところ私が信仰している物はそういう類いの物で、術式を使い交信し力を与えて貰っている存在の大元は呪いなのだ。

呪いに煙を捧げて呪われた天啓を賜う。

これこそが我が家に代々伝わり、私に宿った術式である。


「分かった?」
「ああ」
「ちなみに失敗するとガンギマリのラリラリパッパラパーになっちゃう」
「そうか」


反応うっっっっっっす!!!!
まあいいけど、ちょっと分かるよ、コメントし辛い術式だよね。
いきなり我が家の信仰云々話されても「は?」ってなるよね、分かる。

まあ、言うよりも見せた方が早いか。

私はいそいそとパイプに煙草の葉を詰めると、火を着けそれを吸い込んだ。
ちなみに未成年なので本当はいけないことです、私もご飯が不味くなると嫌だからニコチンの入ってない紅茶の葉っぱをベースにした禁煙用の葉っぱしか使いません。だって煙草って臭いし、髪に臭いつくの嫌なんだもん。

リップと呼ばれるマウスピースの先端に口を付け、ゆっくりと静かに煙を吸い込んで肺へと納める。
そうしてまた、同じようにゆっくりと煙を天へと向けて吐き出し、瞳を閉じる。

精神を落ち着け、深い呼吸を意識し、大気と己を交わらせ、意識の底から覗き込むソレと視線を合わせて交信を開始した。


グルグル、グルグル。
クルクル、クルクル。


見えないはずの視界が不思議と歪み、回り、グラグラと平衡感覚が失われていく。
何処かふわふわとした心地のまま、アクセスした先の精霊が命ずるままに身体を動かす。
たどたどしい足取りで呪霊の方へと一歩、二歩…近寄って行く。



何処かで、子供の笑い声がした。

笛の音と、炎の揺らぎ。

吐き出す息は熱く、幾何学模様の味がした。

幻想的光景と千紫万紅の曼荼羅が、私の"理解"を加速させる。



おぞましく冒涜的な存在が心の中を這いずり回り、夢のように鮮やかな、美しく麗しい幻想の意思に意識を絡め取られる。

ここはもう、夢の中。

私はもう、夢の中。


………私を見ているお前は、誰だ。
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