巨乳と汗と涙の結晶
七海さんと向かう先は山間部に位置する廃寺のようだ、廃寺とは廃止された仏教寺院などを指す言葉であるが、今回行くのは仏教施設ではなく…
「山岳信仰か」
一日かけて移動を終え、山の側の町に着いたのは日も暮れる頃だった。
今から山に入っても獣を相手にし、斜面に足を取られるだけだと七海さんは判断し、町にあるビジネスホテルに部屋を取った。
別々の部屋に別れ、シャワーを浴びて髪を整えてから、リュックに入れておいた資料とノートを取り出し情報を改めて整理する。
山岳信仰。
アニミズム信仰の一種だ、古来から存在する原始的宗教。
山に信仰を見出し崇拝する。精霊、悪魔、神、神秘…山が放つ雄大で圧倒的な感覚を恐れ、敬う。
自然環境は人智を超えたものである。
ならば、人の心が惹かれるのは自然なことなのだろう。
だが、いくら惹かれたとしてもそこには何も無いのだ。
無いからこそ、よく溜まる。
人から生み出された畏怖の念が募り続け、怪と成す。
生み出された怪は人の崇拝により、神としての役割を果たしたそうだ、しかし時代が移ろい、信仰の途絶えた今、そこにあるのは最早呪いであった。
「なるほど、だから君が選ばれたのか」
冷ややかな空気の揺れと共に、傑さんの声が耳元からした。
私の呪力を使って実態を得ようとしている傑さんは、最近見えない状態ではあるが、確かに現世に現れる。
常ならば気にして構うが、今は情報整理が先だ、何せ相手は神と崇められた存在…それを祓うのではなく、従えよとの御達しなのだから、気を抜ける訳が無い。
「良かったじゃないか、上手く行けば駒が増える」
「………」
「どうかしたかい?」
「………臭い」
「…失礼な、私は臭くなんてないよ」
違う、傑さんじゃない。
臭いのは外、山の方からだ。
腐ったような臭いがする、まるで死体みたいだ。
「信者を求めて降りて来てるんだ、信仰が欲しいから…」
民無くして王が無いように、信仰無くして神は無い。
救いを求められた側が、己が魂を救うために祈りを求めて彷徨い歩いている。腐った屍肉のような臭いを撒き散らしながら。
こんなものと繋がり、従えろと?
馬鹿馬鹿しい、こんな物を身の内に飼うなど正気じゃない。
「こっちまでは来ないようだね」
「来れないよ、山に縛られてるから」
「じゃあ今夜はゆっくり出来そうだ」
両肩に乗せられた手に力が込められたのが分かった。
なるほどな、オバケが憑いて肩コリが〜って言ってる人ってこんな感覚なのかもしれん、こりゃ大変だ。
「だから、重いんだって」
「愛だと思って」
愛が重いのが一番嫌なんですが。
やだよ、私は思われるより思う方が得意なタイプのヒューマンなんだよ、一方的に好き勝手感情抱いて満足してる奴なの、寄せた分だけ同じ熱量を返して欲しいとか思ってないから。あと普通に良い歳した男から思われてるとかキショい。
ムリです、考えたくないので寝ます。
「キショ杉剣心、さよなら…」
「あ、こらまだ話してる途中だろう」
「スカピー…」
明日は朝から山登りなんでね、乳に興奮して寝坊するとかしたらインテリヤクザ風の呪術師に怒られちゃうからさ、すまんね。
…
七海さんは凄い、山の中歩く時までスーツである。執念を感じる…。
私はいつも通り制服だ、背中に最低限の荷物を入れたリュックを背負って、えっちらおっちら廃寺を目指している。
それにしても……前を歩く七海さんを見やる。視線は自然とそのケツに向かってしまう。
や、あの、勘違いして貰っちゃ困るんだけど、私はケツより胸派なんです。魂に誓って、何なら花京院の命を賭けてもいい。
でも、でも…目の前で、スラックスに包まれた形の良い引き締まったケツがプリプリしていると、自然と目で追ってしまう…これはきっと全人類が抗えないことだと思います、私だけじゃない、何故なら人類はみな兄弟なので。
失敗したな、私が前を歩けば良かった。こうも目の前でプリプリされると全く集中出来ないぞ…。
「そろそろ着きますよ」
「…………(これが本当のケツ圧ってやつか)」
「聞いてますか、着きますよ」
ハッ!いかんいかん、ケツから感じる圧に少しばかりやられていたようだ。クッ!こんなんじゃ巨乳信者としてやっていけないぞ、しっかりしろ!お前の信じるものはケツ圧なんかにやられるちっぽけな祈りだったのかよ!!そうじゃないだろ!もっと熱くなれよ!!!乳を見て魂震わせていけ!!!
私は己が恥ずかしい…あの日、甚壱さんの胸に誓ったではないか……巨乳を信じて戦っていくって。なのに、こんなちょっと目の前でケツがプリプリしていたからって集中力を欠いて…。
「よし、ここからは本気で頑張るぞ」
「いつも通りでお願いします」
いつも通りね、オッケー。
つまりはおっぱいを信じればいいってことだね。
でもいつもは無いケツがあるせいで、やっぱりちょっと集中力が欠けちゃうな。
ということで廃寺に到着、時刻は昼前。
今日は晴れていて気温も落ち着いているはずなのに、何だか妙に薄ら寒い。
やだな〜怖いな〜、七海さんがケツをプリッとしたら終わったりしませんかね?もしくは傑さんからおっぱいミサイルが発射されて全てを破壊してエンディングになったりとか。
え、いいじゃん、プリケツおっぱいミサイルエンド、めちゃめちゃ見たい!人類のロマンだよ!
傑さん聞いてる?おっぱいミサイルの用意しておいてね。
「無いよ、そんな物は」
気合で頑張れ、神なら出来る。
「出来ないよ、そんな神なんて聞いたことない」
傑さんとダベりながら周囲に帳を下ろす七海さんのケツを優しく見守っていれば、昨夜嗅いだ腐臭が辺りに漂いはじめた。
取り出したキセルに火を着け、ゆっくりと吸い込み、深い呼吸を意識する。
セット、深淵探求。
「準備は万端、さあ…何処からでもかかって来い!」
これを人は、フラグと呼ぶのであった。
「山岳信仰か」
一日かけて移動を終え、山の側の町に着いたのは日も暮れる頃だった。
今から山に入っても獣を相手にし、斜面に足を取られるだけだと七海さんは判断し、町にあるビジネスホテルに部屋を取った。
別々の部屋に別れ、シャワーを浴びて髪を整えてから、リュックに入れておいた資料とノートを取り出し情報を改めて整理する。
山岳信仰。
アニミズム信仰の一種だ、古来から存在する原始的宗教。
山に信仰を見出し崇拝する。精霊、悪魔、神、神秘…山が放つ雄大で圧倒的な感覚を恐れ、敬う。
自然環境は人智を超えたものである。
ならば、人の心が惹かれるのは自然なことなのだろう。
だが、いくら惹かれたとしてもそこには何も無いのだ。
無いからこそ、よく溜まる。
人から生み出された畏怖の念が募り続け、怪と成す。
生み出された怪は人の崇拝により、神としての役割を果たしたそうだ、しかし時代が移ろい、信仰の途絶えた今、そこにあるのは最早呪いであった。
「なるほど、だから君が選ばれたのか」
冷ややかな空気の揺れと共に、傑さんの声が耳元からした。
私の呪力を使って実態を得ようとしている傑さんは、最近見えない状態ではあるが、確かに現世に現れる。
常ならば気にして構うが、今は情報整理が先だ、何せ相手は神と崇められた存在…それを祓うのではなく、従えよとの御達しなのだから、気を抜ける訳が無い。
「良かったじゃないか、上手く行けば駒が増える」
「………」
「どうかしたかい?」
「………臭い」
「…失礼な、私は臭くなんてないよ」
違う、傑さんじゃない。
臭いのは外、山の方からだ。
腐ったような臭いがする、まるで死体みたいだ。
「信者を求めて降りて来てるんだ、信仰が欲しいから…」
民無くして王が無いように、信仰無くして神は無い。
救いを求められた側が、己が魂を救うために祈りを求めて彷徨い歩いている。腐った屍肉のような臭いを撒き散らしながら。
こんなものと繋がり、従えろと?
馬鹿馬鹿しい、こんな物を身の内に飼うなど正気じゃない。
「こっちまでは来ないようだね」
「来れないよ、山に縛られてるから」
「じゃあ今夜はゆっくり出来そうだ」
両肩に乗せられた手に力が込められたのが分かった。
なるほどな、オバケが憑いて肩コリが〜って言ってる人ってこんな感覚なのかもしれん、こりゃ大変だ。
「だから、重いんだって」
「愛だと思って」
愛が重いのが一番嫌なんですが。
やだよ、私は思われるより思う方が得意なタイプのヒューマンなんだよ、一方的に好き勝手感情抱いて満足してる奴なの、寄せた分だけ同じ熱量を返して欲しいとか思ってないから。あと普通に良い歳した男から思われてるとかキショい。
ムリです、考えたくないので寝ます。
「キショ杉剣心、さよなら…」
「あ、こらまだ話してる途中だろう」
「スカピー…」
明日は朝から山登りなんでね、乳に興奮して寝坊するとかしたらインテリヤクザ風の呪術師に怒られちゃうからさ、すまんね。
…
七海さんは凄い、山の中歩く時までスーツである。執念を感じる…。
私はいつも通り制服だ、背中に最低限の荷物を入れたリュックを背負って、えっちらおっちら廃寺を目指している。
それにしても……前を歩く七海さんを見やる。視線は自然とそのケツに向かってしまう。
や、あの、勘違いして貰っちゃ困るんだけど、私はケツより胸派なんです。魂に誓って、何なら花京院の命を賭けてもいい。
でも、でも…目の前で、スラックスに包まれた形の良い引き締まったケツがプリプリしていると、自然と目で追ってしまう…これはきっと全人類が抗えないことだと思います、私だけじゃない、何故なら人類はみな兄弟なので。
失敗したな、私が前を歩けば良かった。こうも目の前でプリプリされると全く集中出来ないぞ…。
「そろそろ着きますよ」
「…………(これが本当のケツ圧ってやつか)」
「聞いてますか、着きますよ」
ハッ!いかんいかん、ケツから感じる圧に少しばかりやられていたようだ。クッ!こんなんじゃ巨乳信者としてやっていけないぞ、しっかりしろ!お前の信じるものはケツ圧なんかにやられるちっぽけな祈りだったのかよ!!そうじゃないだろ!もっと熱くなれよ!!!乳を見て魂震わせていけ!!!
私は己が恥ずかしい…あの日、甚壱さんの胸に誓ったではないか……巨乳を信じて戦っていくって。なのに、こんなちょっと目の前でケツがプリプリしていたからって集中力を欠いて…。
「よし、ここからは本気で頑張るぞ」
「いつも通りでお願いします」
いつも通りね、オッケー。
つまりはおっぱいを信じればいいってことだね。
でもいつもは無いケツがあるせいで、やっぱりちょっと集中力が欠けちゃうな。
ということで廃寺に到着、時刻は昼前。
今日は晴れていて気温も落ち着いているはずなのに、何だか妙に薄ら寒い。
やだな〜怖いな〜、七海さんがケツをプリッとしたら終わったりしませんかね?もしくは傑さんからおっぱいミサイルが発射されて全てを破壊してエンディングになったりとか。
え、いいじゃん、プリケツおっぱいミサイルエンド、めちゃめちゃ見たい!人類のロマンだよ!
傑さん聞いてる?おっぱいミサイルの用意しておいてね。
「無いよ、そんな物は」
気合で頑張れ、神なら出来る。
「出来ないよ、そんな神なんて聞いたことない」
傑さんとダベりながら周囲に帳を下ろす七海さんのケツを優しく見守っていれば、昨夜嗅いだ腐臭が辺りに漂いはじめた。
取り出したキセルに火を着け、ゆっくりと吸い込み、深い呼吸を意識する。
セット、深淵探求。
「準備は万端、さあ…何処からでもかかって来い!」
これを人は、フラグと呼ぶのであった。