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巨乳と汗と涙の結晶

久々に動かした生身の身体は、心配になる程軽くて細く、見下ろした手の小ささに笑い声が漏れてしまった。


「ハハ……よくもまあ、こんな身体で戦ってるものだ」
「………貴方は、」
「そう思わないか?」

「七海」


喉から出てくる声の形は自分の物とは全く違うのに、嫌に馴染むのはやはり私達の相性の問題だろうか。
彼女は私を神と崇め、私は彼女を信者として愛でている。
互いに立場をハッキリと示して関係を維持しているからこそ、私達は成り立っているのだ。

ゆっくりと上げた顔に笑みを張り付けて懐かしい名を呼んでやれば、彼は椅子から立ち上がって警戒体制に入った。

「彼女に何を」
「何もしてないさ、ただちょっと身体を借りているだけに過ぎない」

両手を上にあげ、対立の意志が無いことを示す。

神、精霊、そう呼ばれ、人から信仰を集める上位存在の声を聞き、啓示を授かる術式。
即ち、神託を預かりし者。
この身体の本来の持ち主である少女は、ともすれば人間が未だ至らぬ叡知にすら簡単に行き着き、世界を破滅に導くことすら可能だろう。

私はそのことを何度も彼女に伝え、思うがままにやってみれば良いと囁く。だがしかし、本人は「吐くから無理」とつまらない理由で力を使うことを拒絶する。

まあ、そんなささやかな抵抗が可愛らしいのだけれど。
どうせそのうち、嫌でも彼女は神と深く繋がるだろうが。

「ちょっと…いや、かなり暴走癖はあるが、真面目で健気な子なんだ。可愛がってあげて欲しい」
「何故、どうして…貴方が……」
「今、彼女の神様をやっているんだ」

地獄極楽、共にあることを誓い、私の前で私に祈り、神として信じるいたいけな少女を愛でることの何がおかしいと言うのだろう。
私は私の信者のために、先手を打ちに来ただけだ。

「七海には一つ、言っておくことがある
、これは忠告だ」

笑みを消し、真面目な顔をして彼に指を一本差し示す。


「絶対、この子の前で、スーツを脱ぐな」
「は?」
「あと抱き寄せたりもしない方が良い」
「あの、何を言っているのか」


詳しく説明したいのは山々なんだが、どうやらもう交代しなければならないらしい。
一つ手を振ってから、瞳を閉じて意識を手放す。

何も無いはずの視界の外から感じる無数の視線と、身の内に蔓延ろうとする指先を嘲笑ってやった。

こんなものより、余程私の方が優しいだろう。
やはり君は私の声に従っていなさい。
そうすれば必ず、幸せになれるよ。
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