巨乳と汗と涙の結晶
部活をすることを諦め切れなかった私は、一から十まで手書きの「部活申請書類」を手に職員室へと参った次第である。
頭の中で開戦のための法螺貝が鳴り響く、戦の時間じゃ、推して参るぞ。
………時は平成、我が身に課せられしこの命運、どうやら果たすべき時が来たようだ…。
無駄に腕組なんかしちゃって、きっちり脳内ナレーションもして、精神的な準備は万端。
ドアの前でスカートを直し、切ったばかりの前髪を手鏡で確認してから、ココンコンココンッとターミネーター式リズムのノックをして扉をガラリと開く。
「お頼申しやぁーす」
素早く室内へと視線を配り、ターゲットを確認…居た!ターゲット捕捉完了!
ターゲットは現在……黒服の男性に言語による攻撃の真っ最中の模様…うん、状況把握、これより作戦に移行する!
ポテポテと上履きを鳴らしながら我らが担任、五条悟の元へと近寄って行く。
先生は補助監の伊地知さんを弄って遊んでいる、なんて奴だ……弱いものいじめ、カッコ悪い!
そんな先生に私は話し掛ける。
「せんせー」
「ん?どうしたの」
私の声に振り返った先生は、高い場所にある目線を下にしてこちらを見下ろしながら首を傾げた。
そんな たかーい場所にある先生が見易いようにと、持ってきた手作り書類をピラリと先生の目線の位置に近付けるために掲げてみせる。
「先生、部活やりたい!これ見て!」
「え、何々楽しそうなことしてるじゃん」
「頑張って書いたの!」
「えらーい!ちょっと伊地知見てる?僕の生徒ったら超可愛い」
偉いだろう、そうだろう、何せ昨日夜中まで頑張って書いてた物だ……つまりは、深夜テンションの産物!
ふふん、暇を持て余していた乳神様にも手伝って貰ったこの一枚…渾身の出来ってもんだ。
先生は書類を読む片手間に私の頭をポワポワグリグリと撫でてきた。
やめろよー!さっきわざわざ整えた髪型が乱れるだろ!!あと手のひらがデカすぎてほぼ頭鷲掴み状態なんですが、え?これ先生が力加減間違えたら…わ、私の頭、ぐちゃって…ヒェッ 大人しくしておこう……。
じっとしていれば、書類を読み終わった先生が口を開く。
「美食研究同好会ね、いいじゃん」
「ほ、本当ですか!?じゃあ…!」
「でもごめん、僕はちょーっと忙しくて顧問してあげらんないかも」
あ、上げて落とされてしもうたが……そんな、作戦では先生に「僕、美味しいお店いっぱい知ってるから連れてってあ・げ・る☆」て言って貰えるはずだったのに……!
やはり、世の中そんなに甘くないってことか、え~~じゃああとは…二年の担任の先生とか?あの先生絶対やってくれないでしょ、流石に聞く前から分かる。
くそ~~こうなったら毎晩先生の枕元に立って「顧問になれ顧問になれ顧問になれ」って念仏のように唱え続け、意識の奥深くに刷り込むしかないか……。
悔しさに表情を歪めていれば、また先生は私の頭をポスポス撫でて、書類を返してきた。
「この際教師じゃなくてもいいからさ、顧問見つけておいで、そしたら判子押してあげる」
「ウゥ"~~~~」
「唸らない唸らない」
「バウッ!!!」
「吠えない吠えない」
唸っても吠えても駄目だった、悲しい。
ガックリと肩を落としながら職員室を後にし、テコテコ廊下を歩く。
ちくしょう、別の顧問って誰に頼めばいいんだよ、自慢じゃないが知り合いなんて全然居ないぞ。
家入先生は忙しそうだからダメでしょ、日下部先生はやる気無いからダメ、学長先生は…流石に無理かな~?
ムムムッと悩んでいれば、脳内に神からの有り難かったり邪魔だったりするお告げが降りて来た。
「一人アテがあるけれど」
ハッ!その声は乳神様!
ここで皆様に改めて説明をしよう!
この私の脳内に直接語り掛けてくる人物は、乳神様こと傑さんである。
宗教法人 救いの乳の祭壇(私の部屋にある小さい神棚)に祀られし乳の精だ。
彼は五条先生の話から察するに、めちゃヤバ呪詛師であるらしいのだが、私にとっては後方野次馬おじさんである!
最近は呪術についてなどもちょっとアドバイスをくれる、頼もしい顧問でもあるぞ。
まあ、野次飛ばしてくる方が割合的には多いのだが。凄い暇らしいから仕方無いね。
「アテがあるんですか!本当ですか!」私がそう食い付けば、ニヤリと笑った傑さんは「ああ、あるとも」と含んだ言い方をしてくる。
あるならさっさと言ってくれりゃいいのに~、焦らすんだからもぉ~~。
誰だろ、私の知ってる人ですか?
「いや、知らないだろうね」
突撃するので教えて下さい!お願いします神様仏様傑様!!
「いいね、君も段々信者らしさが板に付いてきた」
らしさってなんだ、らしさって。
こちとらガチモンの巨乳信者やぞ、ファッション巨乳信者とちゃうぞ、真面目に信仰してんのよ、この世にある"巨乳"という神の奇跡を。
「教える変わりに一ついいかな?」
何かしら、神よ。
私が軽いノリでそう尋ねれば、傑さんとの繋がりが一瞬近くなったように錯覚した。
言うなれば、空間をあけて座っていたのに、いきなり詰められたような、そんな感じだ。
いきなりの不可解な感覚に一瞬動きをぎこちなく停止する。
指先の感覚がじわり、じわりと、薄くなっていくのを感じて、私の首筋には鳥肌がブツブツと立った。
そして、神は言う。
「今度一度、その身体を私に貸してくれないかな?」
言葉を失い、呼吸を忘れた。
身の毛もよだつ、とはこのことだと思った。
頭の中に響いていたはずの声が、耳のすぐそばからする。
吐息すら感じそうな至近距離に憑かれている錯覚を覚えた。
振り返ろうにも、まるで身を掴まれているかのように動かすことが出来ない。
金縛り。
医学的には睡眠麻痺、脳やストレスの問題からくる現象。
だがそんなものじゃ説明がつかないような不快で奇妙な感覚が我が身を襲う。ぼやけた視界の端で、私を覆うように立っている袈裟姿の男が見えた。
傑さんが、口角を吊り上げながら私に覆い被さるように立っている。
のし掛かる重さは、彼の生前持っていた技術の重さか、未だ消えぬ執念か、それとも………。
私は震えそうな呼吸を無理矢理飲んで、声を低くしながら瞳を吊り上げた。
クソが、ナメた真似してくれる。
教祖だか特級だか知らんが、どちらが上かハッキリ分からせてやるよ。
「おい」
「なんだい」
「重いぞ、痩せろデブ」
「デ…!?」
痺れる脳を無理矢理働かせ、こちら(現世)へ私の呪力と術式を勝手に使って現れようとしている男が居るであろう方角を睨み付ける。
「巨乳デブなんてお呼びじゃないぞ、さっさと戻れ、エクササイズでもしてろ暇人がよ」
「失礼な。今の私に体重なんて存在しないはずだろ、何を言ってるんだ君は」
「いや、重いのは本当だから、潰れちゃう」
「そんなことない、そこまで重くは無い」
いーや、重いね。
そんなことない、私は重く無い。
やんや、やんや。
信者の女子高生VS皆には見えない野次馬おじさんVSダークライ
見えないが、多分このへんにあるだろうと思い両手で空中をグワッと鷲掴んだ。ムッ!この感覚はビンゴ!!胸だ、胸筋だ!!
「こら、そんなに強く、やめなさッ」
「オラオラオラオラオラァ!!!」
「スタンド使いがスタンドを殴るな!」
「無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!!」
シュババババババッ!!!
目にも止まらぬ速さと精密性から繰り出される連撃によって、傑さんは沢山パイタッチされた。
うん、速さと精密さを優先させると拳が軽くなるのだな、覚えたぞ。
息が切れるまでひたすら自分のスタンド相手にオラついていれば、後ろから「何やってんだお前」と呆れたようなお声が掛かった。
超高速パイタッチをやめ、振り返ればそこにはドギツい美女がおった。
「ヒィ…ヒィ……真希シャン…」
「マジで何してんだ」
「がんばってた……」
「そっか、お疲れさん」
そう言って私の乱れた髪を直すように撫でてくれる真希さんは、控え目に言って最高の女である。かっちょいい…。
だが、乳神様は真希さんのことが嫌いらしく、彼女と話していると脳内がめちゃくちゃ煩くなるのだ。
さらに今は最悪なことに私の術式と呪力を使って半実体化しているので、傑さんはちょっかいを掛けようとしてきた。
真希さんに手を伸ばそうとする感覚をキャッチした私は、空中に向けて両手を広げて真希さんと傑さんの間で通せんぼする。
百合の間に入るとか、男子ってホントさいてー!
「真希さんには指一本触れさせんぞ!」
「いや、だからお前何やってんだ」
「もうっ!もうっ!こんにゃろ!!こんにゃろめ!!」
ペチペチッベシベシッ
真希さんから見れば、後輩が廊下で空中に向かって謎の戦いを繰り広げているわけだから、さぞかし滑稽であろう。
今の私の状態を説明すると、傑さんの片手によってオデコを鷲掴みにされており、その状態で両手をグーの状態で腕ごとグルグル回している状態である。
べ、別に私の腕が短いとかそんなんじゃないから、単純にあっちが化物みたいに長いだけだから、攻撃が届かないのはそのせいです。
「こなくそー!!」
「…よく分からないけど頑張れよ」
真希さんは「何やってたんだアイツ…」と言いながら廊下の向こうへと歩いて行ってしまった。
ぜ、絶対変な奴だと思われた……(※元から皆に思われています)
こんなに健気にいじらしく、粗食に耐えて頑張っているというのに…毎月給料の半分を禪院家に奪われ、お小遣いは5000円、暇だ何だと煩い神様のために映画館に通ったり何だりして…その道中では猿はどうのこうのと語られるし……風呂に入ってれば鼻歌を笑われ、挙げ句の果てにはスタンド化しようとしてるし。
何だこれ、本当に一回縁切ろうかな…。
「はぁ……はぁ…つかれた……」
「体力が無いな…今後の課題の一つにしておこう」
「理不尽な…」
膝に手を付き呼吸を整える。
ほぁぁ~~~、もっと距離感を考えていこう。
あと支配権を持っていかれないように気を付けねば。
あぁ、やはり私は神様に愛されていない…。
頭の中で開戦のための法螺貝が鳴り響く、戦の時間じゃ、推して参るぞ。
………時は平成、我が身に課せられしこの命運、どうやら果たすべき時が来たようだ…。
無駄に腕組なんかしちゃって、きっちり脳内ナレーションもして、精神的な準備は万端。
ドアの前でスカートを直し、切ったばかりの前髪を手鏡で確認してから、ココンコンココンッとターミネーター式リズムのノックをして扉をガラリと開く。
「お頼申しやぁーす」
素早く室内へと視線を配り、ターゲットを確認…居た!ターゲット捕捉完了!
ターゲットは現在……黒服の男性に言語による攻撃の真っ最中の模様…うん、状況把握、これより作戦に移行する!
ポテポテと上履きを鳴らしながら我らが担任、五条悟の元へと近寄って行く。
先生は補助監の伊地知さんを弄って遊んでいる、なんて奴だ……弱いものいじめ、カッコ悪い!
そんな先生に私は話し掛ける。
「せんせー」
「ん?どうしたの」
私の声に振り返った先生は、高い場所にある目線を下にしてこちらを見下ろしながら首を傾げた。
そんな たかーい場所にある先生が見易いようにと、持ってきた手作り書類をピラリと先生の目線の位置に近付けるために掲げてみせる。
「先生、部活やりたい!これ見て!」
「え、何々楽しそうなことしてるじゃん」
「頑張って書いたの!」
「えらーい!ちょっと伊地知見てる?僕の生徒ったら超可愛い」
偉いだろう、そうだろう、何せ昨日夜中まで頑張って書いてた物だ……つまりは、深夜テンションの産物!
ふふん、暇を持て余していた乳神様にも手伝って貰ったこの一枚…渾身の出来ってもんだ。
先生は書類を読む片手間に私の頭をポワポワグリグリと撫でてきた。
やめろよー!さっきわざわざ整えた髪型が乱れるだろ!!あと手のひらがデカすぎてほぼ頭鷲掴み状態なんですが、え?これ先生が力加減間違えたら…わ、私の頭、ぐちゃって…ヒェッ 大人しくしておこう……。
じっとしていれば、書類を読み終わった先生が口を開く。
「美食研究同好会ね、いいじゃん」
「ほ、本当ですか!?じゃあ…!」
「でもごめん、僕はちょーっと忙しくて顧問してあげらんないかも」
あ、上げて落とされてしもうたが……そんな、作戦では先生に「僕、美味しいお店いっぱい知ってるから連れてってあ・げ・る☆」て言って貰えるはずだったのに……!
やはり、世の中そんなに甘くないってことか、え~~じゃああとは…二年の担任の先生とか?あの先生絶対やってくれないでしょ、流石に聞く前から分かる。
くそ~~こうなったら毎晩先生の枕元に立って「顧問になれ顧問になれ顧問になれ」って念仏のように唱え続け、意識の奥深くに刷り込むしかないか……。
悔しさに表情を歪めていれば、また先生は私の頭をポスポス撫でて、書類を返してきた。
「この際教師じゃなくてもいいからさ、顧問見つけておいで、そしたら判子押してあげる」
「ウゥ"~~~~」
「唸らない唸らない」
「バウッ!!!」
「吠えない吠えない」
唸っても吠えても駄目だった、悲しい。
ガックリと肩を落としながら職員室を後にし、テコテコ廊下を歩く。
ちくしょう、別の顧問って誰に頼めばいいんだよ、自慢じゃないが知り合いなんて全然居ないぞ。
家入先生は忙しそうだからダメでしょ、日下部先生はやる気無いからダメ、学長先生は…流石に無理かな~?
ムムムッと悩んでいれば、脳内に神からの有り難かったり邪魔だったりするお告げが降りて来た。
「一人アテがあるけれど」
ハッ!その声は乳神様!
ここで皆様に改めて説明をしよう!
この私の脳内に直接語り掛けてくる人物は、乳神様こと傑さんである。
宗教法人 救いの乳の祭壇(私の部屋にある小さい神棚)に祀られし乳の精だ。
彼は五条先生の話から察するに、めちゃヤバ呪詛師であるらしいのだが、私にとっては後方野次馬おじさんである!
最近は呪術についてなどもちょっとアドバイスをくれる、頼もしい顧問でもあるぞ。
まあ、野次飛ばしてくる方が割合的には多いのだが。凄い暇らしいから仕方無いね。
「アテがあるんですか!本当ですか!」私がそう食い付けば、ニヤリと笑った傑さんは「ああ、あるとも」と含んだ言い方をしてくる。
あるならさっさと言ってくれりゃいいのに~、焦らすんだからもぉ~~。
誰だろ、私の知ってる人ですか?
「いや、知らないだろうね」
突撃するので教えて下さい!お願いします神様仏様傑様!!
「いいね、君も段々信者らしさが板に付いてきた」
らしさってなんだ、らしさって。
こちとらガチモンの巨乳信者やぞ、ファッション巨乳信者とちゃうぞ、真面目に信仰してんのよ、この世にある"巨乳"という神の奇跡を。
「教える変わりに一ついいかな?」
何かしら、神よ。
私が軽いノリでそう尋ねれば、傑さんとの繋がりが一瞬近くなったように錯覚した。
言うなれば、空間をあけて座っていたのに、いきなり詰められたような、そんな感じだ。
いきなりの不可解な感覚に一瞬動きをぎこちなく停止する。
指先の感覚がじわり、じわりと、薄くなっていくのを感じて、私の首筋には鳥肌がブツブツと立った。
そして、神は言う。
「今度一度、その身体を私に貸してくれないかな?」
言葉を失い、呼吸を忘れた。
身の毛もよだつ、とはこのことだと思った。
頭の中に響いていたはずの声が、耳のすぐそばからする。
吐息すら感じそうな至近距離に憑かれている錯覚を覚えた。
振り返ろうにも、まるで身を掴まれているかのように動かすことが出来ない。
金縛り。
医学的には睡眠麻痺、脳やストレスの問題からくる現象。
だがそんなものじゃ説明がつかないような不快で奇妙な感覚が我が身を襲う。ぼやけた視界の端で、私を覆うように立っている袈裟姿の男が見えた。
傑さんが、口角を吊り上げながら私に覆い被さるように立っている。
のし掛かる重さは、彼の生前持っていた技術の重さか、未だ消えぬ執念か、それとも………。
私は震えそうな呼吸を無理矢理飲んで、声を低くしながら瞳を吊り上げた。
クソが、ナメた真似してくれる。
教祖だか特級だか知らんが、どちらが上かハッキリ分からせてやるよ。
「おい」
「なんだい」
「重いぞ、痩せろデブ」
「デ…!?」
痺れる脳を無理矢理働かせ、こちら(現世)へ私の呪力と術式を勝手に使って現れようとしている男が居るであろう方角を睨み付ける。
「巨乳デブなんてお呼びじゃないぞ、さっさと戻れ、エクササイズでもしてろ暇人がよ」
「失礼な。今の私に体重なんて存在しないはずだろ、何を言ってるんだ君は」
「いや、重いのは本当だから、潰れちゃう」
「そんなことない、そこまで重くは無い」
いーや、重いね。
そんなことない、私は重く無い。
やんや、やんや。
信者の女子高生VS皆には見えない野次馬おじさんVSダークライ
見えないが、多分このへんにあるだろうと思い両手で空中をグワッと鷲掴んだ。ムッ!この感覚はビンゴ!!胸だ、胸筋だ!!
「こら、そんなに強く、やめなさッ」
「オラオラオラオラオラァ!!!」
「スタンド使いがスタンドを殴るな!」
「無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!!」
シュババババババッ!!!
目にも止まらぬ速さと精密性から繰り出される連撃によって、傑さんは沢山パイタッチされた。
うん、速さと精密さを優先させると拳が軽くなるのだな、覚えたぞ。
息が切れるまでひたすら自分のスタンド相手にオラついていれば、後ろから「何やってんだお前」と呆れたようなお声が掛かった。
超高速パイタッチをやめ、振り返ればそこにはドギツい美女がおった。
「ヒィ…ヒィ……真希シャン…」
「マジで何してんだ」
「がんばってた……」
「そっか、お疲れさん」
そう言って私の乱れた髪を直すように撫でてくれる真希さんは、控え目に言って最高の女である。かっちょいい…。
だが、乳神様は真希さんのことが嫌いらしく、彼女と話していると脳内がめちゃくちゃ煩くなるのだ。
さらに今は最悪なことに私の術式と呪力を使って半実体化しているので、傑さんはちょっかいを掛けようとしてきた。
真希さんに手を伸ばそうとする感覚をキャッチした私は、空中に向けて両手を広げて真希さんと傑さんの間で通せんぼする。
百合の間に入るとか、男子ってホントさいてー!
「真希さんには指一本触れさせんぞ!」
「いや、だからお前何やってんだ」
「もうっ!もうっ!こんにゃろ!!こんにゃろめ!!」
ペチペチッベシベシッ
真希さんから見れば、後輩が廊下で空中に向かって謎の戦いを繰り広げているわけだから、さぞかし滑稽であろう。
今の私の状態を説明すると、傑さんの片手によってオデコを鷲掴みにされており、その状態で両手をグーの状態で腕ごとグルグル回している状態である。
べ、別に私の腕が短いとかそんなんじゃないから、単純にあっちが化物みたいに長いだけだから、攻撃が届かないのはそのせいです。
「こなくそー!!」
「…よく分からないけど頑張れよ」
真希さんは「何やってたんだアイツ…」と言いながら廊下の向こうへと歩いて行ってしまった。
ぜ、絶対変な奴だと思われた……(※元から皆に思われています)
こんなに健気にいじらしく、粗食に耐えて頑張っているというのに…毎月給料の半分を禪院家に奪われ、お小遣いは5000円、暇だ何だと煩い神様のために映画館に通ったり何だりして…その道中では猿はどうのこうのと語られるし……風呂に入ってれば鼻歌を笑われ、挙げ句の果てにはスタンド化しようとしてるし。
何だこれ、本当に一回縁切ろうかな…。
「はぁ……はぁ…つかれた……」
「体力が無いな…今後の課題の一つにしておこう」
「理不尽な…」
膝に手を付き呼吸を整える。
ほぁぁ~~~、もっと距離感を考えていこう。
あと支配権を持っていかれないように気を付けねば。
あぁ、やはり私は神様に愛されていない…。