巨乳覇者列伝
日本の結婚可能年齢は、女性は16歳からである。
16歳っていうとあれだ、原チャリだとか2級小型船舶だとかの免許が取れるようになり、200ccなら献血が出来るようになったりする。
印鑑登録だって出来るし、義務教育も終わり。
自分の人生を、自分で選択して生きていかなければならなくなる第一歩を踏み出さなきゃいけない大切な年齢。
だというのに、いうのに……。
「(ほぁあ~~~)」
私は心のなかでクソデカ溜め息を吐き出して眉間を揉んだ。
心なしか頭が痛い、胃の奥がムカムカする。いやこれ、単純に私が苛立ってるだけかもしれない、気の短い方では無いはずなのにどうしてこんなに腹立たしい気持ちになってしまっているのか。
怒ったって仕方の無いことなのに、怒りを堪え切れないのは、私がたかだか16年しか生きていない子供だからか。
それとも現実がシビアなだけか。
よくある話で済ますのは如何なものかと思うが、まあこの界隈じゃよくある話。
娘が結婚出来る年齢になったから結婚させようとする親が、私を連れて見合いの席に行ったと思ったら親達だけ帰っていって、私はそのまま見合い先の人の家に連れ帰られた。
早い話が売られたのだろう。
全く情けない話だが、私の家は歴史こそあれど近年特別優秀な呪術師を輩出したわけでも無ければ、金払いが良いだとか、上層部に顔が効くだとかも無く、簡単に言えば絶える他無いような家だ。
だからきっと旨味のある話が舞い込んだのだろう、仕方がないと言えば仕方がない。
だが、仕方がないで済ませられる程達観した精神は持ち合わせておらず、私は自分の夫になるんだかならないんだかイマイチ説明が分からない男の話を無視して、現状を打開すべく頭を働かせた。
京都のデッカイデッカイお屋敷、呪術御三家が一つ、禪院家。
そう、あの女の扱いが酷いと噂に聞く禪院。
当主の居る部屋まで連れて来られる道すがら見掛けた女中さん達の目にはハイライトが見当たらなかった。
おわりだおわり、人生バッドエンドへ向けて一直線。
もうあとは好きにしてくれ………とは、言うまい。いや、言いたくない。
諦めたらそこで試合終了だって安西先生も言っていたでしょう、しっかりするのだ私。
でも正直に言って勝ち筋が全く見えて来ない。
相手は優秀な人材を抱えるお家柄のトップ、王族だ。
かたや私は大した取り柄がとくに無い16歳の女子、JKブランドなんて物もこんなとこじゃ通用しないだろう。
いやでも何か無いか?本当何でも良いんだ、この際結婚の取り止めが無理ならせめて先延ばしにするとか……あ、やっぱ結婚したくないな、一人の方が気楽だろうし、別に子供も求めちゃいないし。
本人の反応を無視して、周りでは数人の大人達があれやこれやと話を進めている。
私は未だ一言も発することの出来ないまま、思考を働かせ続ける。
そもそも私は結婚なんぞしたくは無いと思うが、具体的には何が嫌なのだろう?
この際だから少し情報を整理してみよう。
親にはきっとそれなりの金額が支払われた。
そしてこの家は私を買った。
この家が望むことは私をこの家の誰かの元へ嫁がせること、ないしは子を設けること。
ふむ、なるほど。
よくある条件だ、よくあっちゃいけないけど。
だがしかし私は16歳、結婚は出来ても子供を産むのに適した年齢とは言い難い。
女性は18歳から45歳までが性成熟期とされている。私が適齢期になるまでにはあと2年はかかる。
私は自分と同じ遺伝子を持った存在を後の世に残したいとは思わないし、愛の無い相手との間に子を設けたとしても愛することは出来ないだろう。
まあ、ここにまともな倫理観を持った大人が居るとは思えないから、きっとこんなポイントをつついた所で何だという話なのだろうが。
逃げようも無いから、嫁ぐのは仕方無いと受け入れるべきか。
ならばせめて、せめて少しでもマシな男を選ばせてくれ。
いや……………他に何か……。
……ああ、そうだ。
その瞬間、私は唐突にひらめく。
………こりゃもう、ゴネるしかない、と。
ゴネてゴネてゴネまくり、私がめちゃめちゃ面倒臭くて喧しい手のかかる女だと思わせる…これしかないのではなかろうか。
先んじて言っておくと、この時の私は存外焦っていて、初めて感じる重圧感とプレッシャー、品定めされているかのような複数の視線、固く絞められた着物の帯などのせいでストレスが高まり、一時的に正常な判断が不可能となっていた。
つまりは頭がパッパラパーになっちゃっていたのだ。
だから、やんややんやと話込むオッサン達を前に、恥も人権も乙女のプライドもかなぐり捨てて、私は畳にバタリと寝っ転がり、大きな声で喚き出してしまった。
プツンッと、緊張の糸が途切れる感覚がした。
息を吸い込み、一度瞳を閉じて、覚悟を決めた瞬間カッと見開く。
「やだやだやだやだやだーーー!!!」
ドタドタ、バタバタ。
お高そうな畳を蹴りまくり、甲高い声を響かせて恥じらい無く暴れ出す。
もうこれしかない、これしかないのだ。
むしろこれで何とかなるなら安いもの、かすり傷にもならないと、自分に言い聞かせる。
「まず京都がいやーー!!!スタバの店舗数ベスト5に入ってないとこなんていやーーー!!!」
「な、なんだ!?」
「おい、どうしたんだ!」
ジタバタジタ バタジタバタ!
畳の上で手足を暴れさせ、着物を跳ね上げるようにしながら私はひたすらヤダヤダ言い続ける。
ゴネるしかない!!もうこれしかないんだ!!あばよ羞恥心、ごめんねお母さん!!
「線香臭い!!古臭い!!汗臭い!!むり、やだ、本当しんどい!!!プールの付いた庭のある、アイランドキッチンの家じゃないと嫁ぎたくない!!屋根の低い日本家屋なんて絶対やだよーー!!えーーーん!!!」
「落ち着け、よく分からんが落ち着くんだ!」
「白いブラウスにクラシックなスカート合わせるファッションをさせろ!!着物なんて絶対着ないからな!!!」
「それは……好きにしたら良いと思うが…」
三つ折りソックスを履かせろ!!
丸いシルエットのパンプスを履かせろ!!
春はデニム素材のジャンパースカート、夏は白いワンピース、秋は厚底ブーツ、冬はふわふわなポンチョ!!
エプロンはフリフリ、髪はゆるふわカールの栗色で、ネイルはツヤツヤのピンク!!!
毎月サーティワンに行かせろ!!スタバの新作買わせろ!!アンドハニーのシャンプー以外使わないからな!!ジェラピケでしか寝ない!!!
オヤツにローソンのマカロン買いに行ってやる!モンエナは白!カントリーマアムのココアばっかり食べてやる!!
マイメロ様を一緒に信仰しろ!!中国の可愛いコスメ買わせろ!!お前達全員SNOWでめちゃ盛ってきゅるきゅるきゃわたんにしてやるからな!!!
どよめきと共にデカイ笑い声が聞こえてくる。
ええい!こうなりゃとことんまでやってやる、私はお前達の言うことなんて聞かないからな!三歩後ろなんて歩いてやらん、私は私の好きなテンポで歩く、だからお前達も好きにしな!!
まるで浜に打ち上げられた魚の如くビッタンビッタン畳の上でのたうち回る私は、近寄る足音には全く気付きもしなかった。
「味噌汁の変わりにビーフシチュー出してやる!!だし巻き玉子は全てポーチドエッグにしてやる!!緑茶をこの世から全滅させてチャイを茶の湯に出してやるー!!!」
「落ち着け」
「やだーーー!!!!総理大臣になってお父さんの下着と娘の下着は絶対一緒に洗濯しちゃいけない法律を作ってやるーーー!!!!」
「落ち着け」
そんな感じでボルテージ最高潮な私は、バタバタ暴れて叫んでいたわけだが、突然着物の襟首を掴まれたと思ったら身体を起こされ抱き上げられた。
なに!?誰だよ、邪魔するな、離してよ!!と、文句を言いながら腕の中で暴れようとするも、なんかこう…上手い具合に拘束されているらしく、腕を振り上げようにもムギュッとされていてどうにもならない。
これは……なに?抱き締められてる??
はあ????おい、どこの誰だか知らないが、女子高生真正面から抱き締めるとか良い度胸してるじゃないの。
「離せ!!!女子高生触るなら金払え!!!」
「幾らだ」
「時給ななひゃ……………え?払ってくれるの?」
「払うから落ち着け」
はら、え?払ってくれるの??いい人じゃん。
チョロい私がそう思うと、途端に荒れ狂っていた心は鎮火していき、拘束してくる人物の腕の中で大人しく静かにしてしまった。
な、なんか落ち着いてしまった………。
いやだって、凄いんだよここ、この腕の中本当落ち着くの、ここに住めるわ。誰か知らないがとてつもない包容力…頬に当たるこのフカフカは一体なんだ……?触ってみよう。
もにゅっもにゅっ。
………あ、おっぱいだこれ。
え?このデッケェおっぱいは誰のおっぱいなんですか??
絶対私よりデカイじゃん、ちょっとムカつくんだけど。
おいコラ デカ乳、ツラ拝ませろやボケ。
よいしょ、よいしょ。
胸に押し付けている状態の顔をなんとか上げ、空気を吸い直す。
そうして見上げてみれば、そこに居たのは髭を生やした厳つい男だった。
お、お、おい……わ、私………こいつのおっぱい揉んじゃったの…??え、どうしよう……殺されないよね??やだよ死因が「無許可でおっぱいを揉んだ」になるとか、勘弁してくれ…。
予想していなかった厳めしい男を至近距離で見てしまった私は、プルプルと震えながら「ひ、ヒェ……おっぱい、ごめんなさい……」と謎の謝罪をしてしまった。
自分でも一体何故こんな風に謝っているのかは全く分からないのだが、ひたすらにおっぱいを揉んだことについて謝っていた。
まあ先程も言った通り、私は正気を失っているので深くは考えないで頂きたい。
「ぁ、おっぱい………ごめんなさ…とても、あの、良いおっぱいで……」
「落ち着け」
「はひっ、はひっ……」
人生早いもので16年、私は16年間生きてきたわけだが、この日初めて親にすらしたことがないような駄々をこね、厳しそうなおじさん達を狼狽えさせ、そしておっぱいを揉んだ。
そして分かったんだが、やっぱり巨乳はロマンですよ。
世間では貧乳がどーたら言ってる奴もいますが、やっぱ巨乳ですよ、巨乳しか勝たんやろがい。貧乳が良いとか言ってる奴は非国民でいいだろ、私が総理大臣になったら巨乳には巨乳ボーナスが支払われる国にします。
皆様の清き一票、お待ちしております。
16歳っていうとあれだ、原チャリだとか2級小型船舶だとかの免許が取れるようになり、200ccなら献血が出来るようになったりする。
印鑑登録だって出来るし、義務教育も終わり。
自分の人生を、自分で選択して生きていかなければならなくなる第一歩を踏み出さなきゃいけない大切な年齢。
だというのに、いうのに……。
「(ほぁあ~~~)」
私は心のなかでクソデカ溜め息を吐き出して眉間を揉んだ。
心なしか頭が痛い、胃の奥がムカムカする。いやこれ、単純に私が苛立ってるだけかもしれない、気の短い方では無いはずなのにどうしてこんなに腹立たしい気持ちになってしまっているのか。
怒ったって仕方の無いことなのに、怒りを堪え切れないのは、私がたかだか16年しか生きていない子供だからか。
それとも現実がシビアなだけか。
よくある話で済ますのは如何なものかと思うが、まあこの界隈じゃよくある話。
娘が結婚出来る年齢になったから結婚させようとする親が、私を連れて見合いの席に行ったと思ったら親達だけ帰っていって、私はそのまま見合い先の人の家に連れ帰られた。
早い話が売られたのだろう。
全く情けない話だが、私の家は歴史こそあれど近年特別優秀な呪術師を輩出したわけでも無ければ、金払いが良いだとか、上層部に顔が効くだとかも無く、簡単に言えば絶える他無いような家だ。
だからきっと旨味のある話が舞い込んだのだろう、仕方がないと言えば仕方がない。
だが、仕方がないで済ませられる程達観した精神は持ち合わせておらず、私は自分の夫になるんだかならないんだかイマイチ説明が分からない男の話を無視して、現状を打開すべく頭を働かせた。
京都のデッカイデッカイお屋敷、呪術御三家が一つ、禪院家。
そう、あの女の扱いが酷いと噂に聞く禪院。
当主の居る部屋まで連れて来られる道すがら見掛けた女中さん達の目にはハイライトが見当たらなかった。
おわりだおわり、人生バッドエンドへ向けて一直線。
もうあとは好きにしてくれ………とは、言うまい。いや、言いたくない。
諦めたらそこで試合終了だって安西先生も言っていたでしょう、しっかりするのだ私。
でも正直に言って勝ち筋が全く見えて来ない。
相手は優秀な人材を抱えるお家柄のトップ、王族だ。
かたや私は大した取り柄がとくに無い16歳の女子、JKブランドなんて物もこんなとこじゃ通用しないだろう。
いやでも何か無いか?本当何でも良いんだ、この際結婚の取り止めが無理ならせめて先延ばしにするとか……あ、やっぱ結婚したくないな、一人の方が気楽だろうし、別に子供も求めちゃいないし。
本人の反応を無視して、周りでは数人の大人達があれやこれやと話を進めている。
私は未だ一言も発することの出来ないまま、思考を働かせ続ける。
そもそも私は結婚なんぞしたくは無いと思うが、具体的には何が嫌なのだろう?
この際だから少し情報を整理してみよう。
親にはきっとそれなりの金額が支払われた。
そしてこの家は私を買った。
この家が望むことは私をこの家の誰かの元へ嫁がせること、ないしは子を設けること。
ふむ、なるほど。
よくある条件だ、よくあっちゃいけないけど。
だがしかし私は16歳、結婚は出来ても子供を産むのに適した年齢とは言い難い。
女性は18歳から45歳までが性成熟期とされている。私が適齢期になるまでにはあと2年はかかる。
私は自分と同じ遺伝子を持った存在を後の世に残したいとは思わないし、愛の無い相手との間に子を設けたとしても愛することは出来ないだろう。
まあ、ここにまともな倫理観を持った大人が居るとは思えないから、きっとこんなポイントをつついた所で何だという話なのだろうが。
逃げようも無いから、嫁ぐのは仕方無いと受け入れるべきか。
ならばせめて、せめて少しでもマシな男を選ばせてくれ。
いや……………他に何か……。
……ああ、そうだ。
その瞬間、私は唐突にひらめく。
………こりゃもう、ゴネるしかない、と。
ゴネてゴネてゴネまくり、私がめちゃめちゃ面倒臭くて喧しい手のかかる女だと思わせる…これしかないのではなかろうか。
先んじて言っておくと、この時の私は存外焦っていて、初めて感じる重圧感とプレッシャー、品定めされているかのような複数の視線、固く絞められた着物の帯などのせいでストレスが高まり、一時的に正常な判断が不可能となっていた。
つまりは頭がパッパラパーになっちゃっていたのだ。
だから、やんややんやと話込むオッサン達を前に、恥も人権も乙女のプライドもかなぐり捨てて、私は畳にバタリと寝っ転がり、大きな声で喚き出してしまった。
プツンッと、緊張の糸が途切れる感覚がした。
息を吸い込み、一度瞳を閉じて、覚悟を決めた瞬間カッと見開く。
「やだやだやだやだやだーーー!!!」
ドタドタ、バタバタ。
お高そうな畳を蹴りまくり、甲高い声を響かせて恥じらい無く暴れ出す。
もうこれしかない、これしかないのだ。
むしろこれで何とかなるなら安いもの、かすり傷にもならないと、自分に言い聞かせる。
「まず京都がいやーー!!!スタバの店舗数ベスト5に入ってないとこなんていやーーー!!!」
「な、なんだ!?」
「おい、どうしたんだ!」
ジタバタジタ バタジタバタ!
畳の上で手足を暴れさせ、着物を跳ね上げるようにしながら私はひたすらヤダヤダ言い続ける。
ゴネるしかない!!もうこれしかないんだ!!あばよ羞恥心、ごめんねお母さん!!
「線香臭い!!古臭い!!汗臭い!!むり、やだ、本当しんどい!!!プールの付いた庭のある、アイランドキッチンの家じゃないと嫁ぎたくない!!屋根の低い日本家屋なんて絶対やだよーー!!えーーーん!!!」
「落ち着け、よく分からんが落ち着くんだ!」
「白いブラウスにクラシックなスカート合わせるファッションをさせろ!!着物なんて絶対着ないからな!!!」
「それは……好きにしたら良いと思うが…」
三つ折りソックスを履かせろ!!
丸いシルエットのパンプスを履かせろ!!
春はデニム素材のジャンパースカート、夏は白いワンピース、秋は厚底ブーツ、冬はふわふわなポンチョ!!
エプロンはフリフリ、髪はゆるふわカールの栗色で、ネイルはツヤツヤのピンク!!!
毎月サーティワンに行かせろ!!スタバの新作買わせろ!!アンドハニーのシャンプー以外使わないからな!!ジェラピケでしか寝ない!!!
オヤツにローソンのマカロン買いに行ってやる!モンエナは白!カントリーマアムのココアばっかり食べてやる!!
マイメロ様を一緒に信仰しろ!!中国の可愛いコスメ買わせろ!!お前達全員SNOWでめちゃ盛ってきゅるきゅるきゃわたんにしてやるからな!!!
どよめきと共にデカイ笑い声が聞こえてくる。
ええい!こうなりゃとことんまでやってやる、私はお前達の言うことなんて聞かないからな!三歩後ろなんて歩いてやらん、私は私の好きなテンポで歩く、だからお前達も好きにしな!!
まるで浜に打ち上げられた魚の如くビッタンビッタン畳の上でのたうち回る私は、近寄る足音には全く気付きもしなかった。
「味噌汁の変わりにビーフシチュー出してやる!!だし巻き玉子は全てポーチドエッグにしてやる!!緑茶をこの世から全滅させてチャイを茶の湯に出してやるー!!!」
「落ち着け」
「やだーーー!!!!総理大臣になってお父さんの下着と娘の下着は絶対一緒に洗濯しちゃいけない法律を作ってやるーーー!!!!」
「落ち着け」
そんな感じでボルテージ最高潮な私は、バタバタ暴れて叫んでいたわけだが、突然着物の襟首を掴まれたと思ったら身体を起こされ抱き上げられた。
なに!?誰だよ、邪魔するな、離してよ!!と、文句を言いながら腕の中で暴れようとするも、なんかこう…上手い具合に拘束されているらしく、腕を振り上げようにもムギュッとされていてどうにもならない。
これは……なに?抱き締められてる??
はあ????おい、どこの誰だか知らないが、女子高生真正面から抱き締めるとか良い度胸してるじゃないの。
「離せ!!!女子高生触るなら金払え!!!」
「幾らだ」
「時給ななひゃ……………え?払ってくれるの?」
「払うから落ち着け」
はら、え?払ってくれるの??いい人じゃん。
チョロい私がそう思うと、途端に荒れ狂っていた心は鎮火していき、拘束してくる人物の腕の中で大人しく静かにしてしまった。
な、なんか落ち着いてしまった………。
いやだって、凄いんだよここ、この腕の中本当落ち着くの、ここに住めるわ。誰か知らないがとてつもない包容力…頬に当たるこのフカフカは一体なんだ……?触ってみよう。
もにゅっもにゅっ。
………あ、おっぱいだこれ。
え?このデッケェおっぱいは誰のおっぱいなんですか??
絶対私よりデカイじゃん、ちょっとムカつくんだけど。
おいコラ デカ乳、ツラ拝ませろやボケ。
よいしょ、よいしょ。
胸に押し付けている状態の顔をなんとか上げ、空気を吸い直す。
そうして見上げてみれば、そこに居たのは髭を生やした厳つい男だった。
お、お、おい……わ、私………こいつのおっぱい揉んじゃったの…??え、どうしよう……殺されないよね??やだよ死因が「無許可でおっぱいを揉んだ」になるとか、勘弁してくれ…。
予想していなかった厳めしい男を至近距離で見てしまった私は、プルプルと震えながら「ひ、ヒェ……おっぱい、ごめんなさい……」と謎の謝罪をしてしまった。
自分でも一体何故こんな風に謝っているのかは全く分からないのだが、ひたすらにおっぱいを揉んだことについて謝っていた。
まあ先程も言った通り、私は正気を失っているので深くは考えないで頂きたい。
「ぁ、おっぱい………ごめんなさ…とても、あの、良いおっぱいで……」
「落ち着け」
「はひっ、はひっ……」
人生早いもので16年、私は16年間生きてきたわけだが、この日初めて親にすらしたことがないような駄々をこね、厳しそうなおじさん達を狼狽えさせ、そしておっぱいを揉んだ。
そして分かったんだが、やっぱり巨乳はロマンですよ。
世間では貧乳がどーたら言ってる奴もいますが、やっぱ巨乳ですよ、巨乳しか勝たんやろがい。貧乳が良いとか言ってる奴は非国民でいいだろ、私が総理大臣になったら巨乳には巨乳ボーナスが支払われる国にします。
皆様の清き一票、お待ちしております。
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