夏油傑と思い出の子
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円城蚕はその年から夏休みに祖母の家に預けられることとなった。
父と別居中である母の仕事の関係上、日中留守になることに悩んだ母親が祖母の家に蚕を預けたのである。
それまで一年に二回程度しか会わなかった祖母であるが、喜んで駅まで蚕を迎えに来てくれたし、お泊まり初日の夜は以前好きだと言った祖母の煮物をこの暑いのにも関わらず出してくれた。
蚕はおばあちゃん大好き~とよく甘え、もりもりご飯をたらふく食べて幸せいっぱいで眠りについた。ああ畳最高、日本人に生まれて良かった、布団もペシャンコじゃないし 籾殻枕しか勝たん。
翌朝、祖母に言われてラジオ体操の存在を知り 存分に暇を持て余していたため時間潰しに顔を出せば既に終わっていて、なんじゃそりゃと冷めた表情で帰宅。
祖母にうんにゃらごろごろと懐いたり、鉛筆を転がして回答を導き出すようなやり方で宿題をやったりして無駄にゴロゴロしてみたりと時間を潰していたが、まあ早々に飽きてしまい、家事をする祖母に「お外に行きたい」と言えば 近所に同い年の子供が居るから行っておいでと頭を撫でられながら教えられ、その通りに『げとう』さんのお家に向かい、ピンポーンとチャイム一つ鳴らせば祖母が話していた子供の母親であろう人物が扉を開いて顔を出した。
蚕は おお…自分の母親とは大分違うな…と思いながら、しっかり挨拶をして、祖母の家に来ていること 暇だから子供と遊べないかということを話す。しかし、どうやら珍しくも息子さんは出掛けてしまっているらしく不在らしい。バッドタイミングすぎるでしょう、蚕はまた冷めた表情になった。
しかし、どうやら他の子供達と共に近所の探検をしているらしく、その辺りにまだ居るんじゃないかと言われ、成る程それなら行ってみようかと気を持ち直し、母親にお礼を言い家を後にした。
しかし、炎天下の中歩けど歩けど どこをほっつき歩いているのか知らないが全然見付からない。
この茹だるような暑さの中一体いつまで歩けば良いのかと蚕は見ず知らずの息子へ向けて こんにゃろめ~と唸りたい気分であった。
自慢じゃないがもやしっこである、かけっこだって遅いし ドッジボールはすぐ当てられる、縄跳びは片足飛びまでしか出来ないし、竹馬は頭を打った、ああ貴重な脳細胞が死滅する…だからもう竹馬だけは二度とやらん、二度とだ。
ハフハフと息をしながら気の赴くままに足を進めていると自分の影からニュルリと黒いユラユラした手が生えて自分の足をつついて来た。
暑さに思考が負けつつあるので不機嫌気味に なんだと目線を落とせば アッチアッチと指をさす。蚕は別にこの影の相棒を信用しているわけでは無かったが、まあ、無闇矢鱈とひっちゃかめっちゃか歩くよかマシかと判断し、指先の示す方へと足を向ける。
てってこてってこ歩いて行けば、視界の先、黒い髪をした帽子も被らない少年が呆然と立って居た。
なんであんなとこに立ってるんだと不思議に思えば、少年の向こう 年季のはいったオンボロアパートの中がえらいこっちゃであった。
なんだあれ、パーティーかよ と 蚕は今日一番の冷えた顔をした。
息子くんさあ、なんでよりによってそんなとこに居るのかな、近付くの凄く嫌なんだけどなあ、でもこれが目的だし行かないわけにはいかないよなあ。というか、こんな炎天下に帽子も被らず野晒しで立ってるとか良くないであろう、頭とかが。
蚕は爪先でトトンッと二度軽く地面を叩き 「何かあったら何とかしてね」と他力本願な声をかけてから少年に向かって歩みを進めた。
近づいた所で少年の挙動は変わらず、不動そのものであった。大丈夫か?こりゃ不味いべと蚕は声を掛ける。
あの、もし?ねえ、
「熱中症になっちゃわないかしら」
一応は心配してみたりした。
別に鬼や悪魔ではないので、初対面の少年がぶっ倒たら うわーと思いながら運ぶけれど、まあ普通に自分の足で歩いて貰った方が良い。だって私もやしだし、まあ運ぶのは絶対私じゃないんだけどもだ。
少年は蚕の声にすぐに勢い良く振り向いた。うわあ、汗飛んだ。そんなに汗かいてミネラルと塩分補給大丈夫か?
そしてそのまま唇を引き結んで だんまりしてしまった、嘘じゃん?ここで黙るの?
蚕は少年を見る、うーん…私に負けず劣らずなもやしっこである。弱そうだな…釣り気味の目が何だか猫のような、なんてかなり失礼なことを考えていた。
そしてだんまりな少年から目線を外し、今度はボロっちいアパートを見る、素敵過ぎて泣けるパーティー会場である、主催誰だよ、悪趣味過ぎる。
思わずゲェ…と顔に出てしまった、いけないいけない、こんな顔したら母親に叱られる。パーフェクトキューティー蚕ちゃんは呪われたアパートを見ても何とも思わないったら思わないのだ。
まあとにかく正直ここから離れたい気持ちでいっぱいだった。
だから「こんなとこに居ちゃ駄目だよ~」と声を掛ければ 今度は見えるのかと問うてくる。
蚕の気持ち的には 今それ聞くの必要か?という思いであった。
けれどまあ、何だか必死そうなので肯定の意を示す。そうすればどうだ、今度はいきなり泣き出すものだからえらいこっちゃである、泣くのは良くない、見られたら色々誤解されるかもしれないし 何より水分と塩分がね…や~~泣き止んで~と思うが男の子の泣き止ませ方なんて知らない。
少女にとって男の子ってのはどうやって私の気を引こうかとあれこれしてくる生き物なのだ、蚕も流石にまだ泣き落としは食らったことが無かったため 涙を静かに溢す少年を前に何をしたら良いかとんと分からなかった。
分からなかったけれど、とにかく水分と塩分を補給しなきゃアカンなということは理解していたので祖母の家に強制連行することとする。
おばあちゃんは麦茶も美味しく淹れてくれるのだ、母親が買ってくるペットボトルの麦茶とは全然違うワケ。
目的は決まったな、何で遊びに出てすぐ帰らねばならないかという不満もややあるが、とにかく少年の手を取り歩き出す。
いざ求めん、祖母の麦茶。
父と別居中である母の仕事の関係上、日中留守になることに悩んだ母親が祖母の家に蚕を預けたのである。
それまで一年に二回程度しか会わなかった祖母であるが、喜んで駅まで蚕を迎えに来てくれたし、お泊まり初日の夜は以前好きだと言った祖母の煮物をこの暑いのにも関わらず出してくれた。
蚕はおばあちゃん大好き~とよく甘え、もりもりご飯をたらふく食べて幸せいっぱいで眠りについた。ああ畳最高、日本人に生まれて良かった、布団もペシャンコじゃないし 籾殻枕しか勝たん。
翌朝、祖母に言われてラジオ体操の存在を知り 存分に暇を持て余していたため時間潰しに顔を出せば既に終わっていて、なんじゃそりゃと冷めた表情で帰宅。
祖母にうんにゃらごろごろと懐いたり、鉛筆を転がして回答を導き出すようなやり方で宿題をやったりして無駄にゴロゴロしてみたりと時間を潰していたが、まあ早々に飽きてしまい、家事をする祖母に「お外に行きたい」と言えば 近所に同い年の子供が居るから行っておいでと頭を撫でられながら教えられ、その通りに『げとう』さんのお家に向かい、ピンポーンとチャイム一つ鳴らせば祖母が話していた子供の母親であろう人物が扉を開いて顔を出した。
蚕は おお…自分の母親とは大分違うな…と思いながら、しっかり挨拶をして、祖母の家に来ていること 暇だから子供と遊べないかということを話す。しかし、どうやら珍しくも息子さんは出掛けてしまっているらしく不在らしい。バッドタイミングすぎるでしょう、蚕はまた冷めた表情になった。
しかし、どうやら他の子供達と共に近所の探検をしているらしく、その辺りにまだ居るんじゃないかと言われ、成る程それなら行ってみようかと気を持ち直し、母親にお礼を言い家を後にした。
しかし、炎天下の中歩けど歩けど どこをほっつき歩いているのか知らないが全然見付からない。
この茹だるような暑さの中一体いつまで歩けば良いのかと蚕は見ず知らずの息子へ向けて こんにゃろめ~と唸りたい気分であった。
自慢じゃないがもやしっこである、かけっこだって遅いし ドッジボールはすぐ当てられる、縄跳びは片足飛びまでしか出来ないし、竹馬は頭を打った、ああ貴重な脳細胞が死滅する…だからもう竹馬だけは二度とやらん、二度とだ。
ハフハフと息をしながら気の赴くままに足を進めていると自分の影からニュルリと黒いユラユラした手が生えて自分の足をつついて来た。
暑さに思考が負けつつあるので不機嫌気味に なんだと目線を落とせば アッチアッチと指をさす。蚕は別にこの影の相棒を信用しているわけでは無かったが、まあ、無闇矢鱈とひっちゃかめっちゃか歩くよかマシかと判断し、指先の示す方へと足を向ける。
てってこてってこ歩いて行けば、視界の先、黒い髪をした帽子も被らない少年が呆然と立って居た。
なんであんなとこに立ってるんだと不思議に思えば、少年の向こう 年季のはいったオンボロアパートの中がえらいこっちゃであった。
なんだあれ、パーティーかよ と 蚕は今日一番の冷えた顔をした。
息子くんさあ、なんでよりによってそんなとこに居るのかな、近付くの凄く嫌なんだけどなあ、でもこれが目的だし行かないわけにはいかないよなあ。というか、こんな炎天下に帽子も被らず野晒しで立ってるとか良くないであろう、頭とかが。
蚕は爪先でトトンッと二度軽く地面を叩き 「何かあったら何とかしてね」と他力本願な声をかけてから少年に向かって歩みを進めた。
近づいた所で少年の挙動は変わらず、不動そのものであった。大丈夫か?こりゃ不味いべと蚕は声を掛ける。
あの、もし?ねえ、
「熱中症になっちゃわないかしら」
一応は心配してみたりした。
別に鬼や悪魔ではないので、初対面の少年がぶっ倒たら うわーと思いながら運ぶけれど、まあ普通に自分の足で歩いて貰った方が良い。だって私もやしだし、まあ運ぶのは絶対私じゃないんだけどもだ。
少年は蚕の声にすぐに勢い良く振り向いた。うわあ、汗飛んだ。そんなに汗かいてミネラルと塩分補給大丈夫か?
そしてそのまま唇を引き結んで だんまりしてしまった、嘘じゃん?ここで黙るの?
蚕は少年を見る、うーん…私に負けず劣らずなもやしっこである。弱そうだな…釣り気味の目が何だか猫のような、なんてかなり失礼なことを考えていた。
そしてだんまりな少年から目線を外し、今度はボロっちいアパートを見る、素敵過ぎて泣けるパーティー会場である、主催誰だよ、悪趣味過ぎる。
思わずゲェ…と顔に出てしまった、いけないいけない、こんな顔したら母親に叱られる。パーフェクトキューティー蚕ちゃんは呪われたアパートを見ても何とも思わないったら思わないのだ。
まあとにかく正直ここから離れたい気持ちでいっぱいだった。
だから「こんなとこに居ちゃ駄目だよ~」と声を掛ければ 今度は見えるのかと問うてくる。
蚕の気持ち的には 今それ聞くの必要か?という思いであった。
けれどまあ、何だか必死そうなので肯定の意を示す。そうすればどうだ、今度はいきなり泣き出すものだからえらいこっちゃである、泣くのは良くない、見られたら色々誤解されるかもしれないし 何より水分と塩分がね…や~~泣き止んで~と思うが男の子の泣き止ませ方なんて知らない。
少女にとって男の子ってのはどうやって私の気を引こうかとあれこれしてくる生き物なのだ、蚕も流石にまだ泣き落としは食らったことが無かったため 涙を静かに溢す少年を前に何をしたら良いかとんと分からなかった。
分からなかったけれど、とにかく水分と塩分を補給しなきゃアカンなということは理解していたので祖母の家に強制連行することとする。
おばあちゃんは麦茶も美味しく淹れてくれるのだ、母親が買ってくるペットボトルの麦茶とは全然違うワケ。
目的は決まったな、何で遊びに出てすぐ帰らねばならないかという不満もややあるが、とにかく少年の手を取り歩き出す。
いざ求めん、祖母の麦茶。