番外編
私は一つ、とんでも無いことに気付いてしまった…それは……。
「甚壱お兄ちゃんも巨乳じゃん!!!」
「………」
モニモニ、パフパフ……なんて豊かな乳なんだろうか…。
私は上の方の兄、甚壱お兄ちゃんに取っついて乳に顔を埋めていた。
ちなみにお兄ちゃんは今何か読み物をしている、多分恐らくはお仕事、私はお仕事中のお兄ちゃんにくっついているのだ。何故かって?それは一人で屋敷内を無意味に歩いていると女中さんを怖がらせたり、男共に警戒されたりするからである。
えーん!仲良くしようよー!一緒に実験してくれてもいいんだよ?って言っても、女中さんは逃げるだけだし、男共なんて「やめろ!それ以上近付くな!」とか言ってくる。
なんならさっきも言われた、だからこうしてお兄ちゃんにくっついて哀しみを紛らわせているのである……。
いやあ…それにしても、まさか兄が二人共揃って巨大な乳の持ち主だったとは……どっかのアンケートで「巨乳お兄ちゃん」というアホ丸出しの選択肢を用意したが、これではどちらの兄か分からんな…(※アンケートは一応甚爾の方です、マジで紛らわしくてごめんね)
「お兄ちゃんの乳あったけぇ……これが、バブみ…?」
「静かにしていろ」
「……………(これが、バブみ…?)」
「心で会話をするな」
お兄ちゃんと私の間に言葉はいらない!だって仲良し兄妹だもんね!!
私はお兄ちゃんの顔を見上げてニコニコしたが、お兄ちゃんは私を視界の端にも入れずに文字を追っていた。ドライだ……しかしこれが平常運転です、私達ずっとこんな感じ、そりゃもう小さな頃からである。
甚爾お兄ちゃんが家から出て行った後、私は荒れに荒れた。反抗期なんて言葉じゃ生ぬるい荒れ方をした。
グレたりしたわけでは無く、単純にやって来るクソカス雑魚共を容赦なく捻り潰し、一生に残る傷や苦痛を与えてそれを観察、時に介入し与えられた傷を思い出させる…ということをしていた。
クソカス雑魚というのは、私の才能を妬んだ家の者などなどである。
決して殺しはしなかった、何故なら死は一種の救いとなる。何故自分を襲う馬鹿に慈悲を与えなければならないのか、だから私が与えるは生き地獄。
量産されていく地獄の生者。
止まらない悲鳴と傷。
錯乱する者、泣いて赦しを請う者、中には自害する者まで出た。
何せ加害者であり被害者でもある人間が幼い女であり、さらには決して殺しはしていなかった事が災いとなり、対応が遅れた禪院家で、最終的に私を止めるために宛がわれたのは他でもないもう一人の兄…甚壱兄さんであった。
「こっちも兄だし、なんとかなるだろ」的な安易な発想から私の凶行を止めるための犠牲者となった甚壱兄さんは、そりゃもう大変な目にあった。
話がまともに通じない荒れ狂う妹の世話を焼かなければならないのだから、今ならば苦労は察する。
何せあの頃の私は「災厄」その者であり、歩く環境汚染にして人を苦しめることしかしない悪魔のような子供であった。よくもまあ、当主は私を処刑しなかったと思う。
さて、だがしかし、結果を話せば甚壱お兄ちゃん供物作戦は成功した。
私は他人に無差別に向けていたやり場の無い嘆き、悲しみ、憎悪、怒り…を含んだグッチャグチャの感情を甚壱お兄ちゃんにだけ向けることを覚えたのであった。
本当に、お兄ちゃんからしたら迷惑以外の何物でも無かっただろうけれど、私は基本的にお兄ちゃんに常にくっついて唸ったり噛んだり頭突きをしたり、泣いたり吠えたりしていた。何せまともに喋れなかったので…そんな不機嫌な犬のような行動しか出来なかったのだ。
しかしまあ、年月を重ねれば感情の制御は身に付くもので、消えぬ憎悪との付き合い方を学んでいくにつれ、私は甚壱お兄ちゃんへアホみたいな八つ当たりに他ならないヘイトを向けることをしなくなったのであった。
そんで色々あって、今はこうしてただひたすら時間が許す限りじゃれついている。
胸を堪能したので、今度は胡座をかく兄の膝の上でグニャグニャと猫のように構ってアピールをする。
「お兄ちゃん~構って~~抱っこぉ~!」
「今は忙しい」
「なんで?何読んでるの?」
「上層部からの物だ」
へぇ……妹より上層部からの手紙の方が大事なんですか…ふーん。
私は手紙を覗き込む、書いてある内容のくだらなさに鼻で笑えば、兄は書類を閉じた。
「私の血を残させろとか、アホだね~!」
「ああ」
「お兄ちゃんなら分かるよね?私に男を宛がった場合の結果くらい」
「…確実に死ぬだろう」
ピンポンピンポンその通り~!さっすが期間で言えば誰よりも私と一緒に居るだけはあるね!私の担当飼育員ならば分かっていて当然ではあるが……兄の言う通りだ、宛がわれた男は無駄死にするだけである。
発狂して死ぬか、私に使い潰されて死ぬか、私に耐えられなくなり自害するか…どのみち生存は限り無く不可能であろう。
最低限私の人間性を理解していなければ、一ヶ月でノイローゼコース確定だ。
「この話は私が直々に断っておくよ」
「そうしろ」
「だからお兄ちゃんは私を構って!」
「…………」
兄が無言で私に手を伸ばす。
両手で頬をこねくり回し、頭をグリグリグチャグチャと掻き回すように撫でる。
へへへ……楽し~!もっとやってと腕に纏わり付けば、兄は言葉無く私を抱えて立ち上がった。
適当に片腕で私を抱えて廊下を進む。
抱っこだー!抱っこ大好き、キャッキャッ。
首に腕を回して頭にすり寄れば、そんな光景を目撃した扇おじ様が目線を外して頭の痛そうな顔をしていたので、私は全力で扇おじ様の名を呼び手をブンブンと振る。
「おじ様ー!扇おじ様ーー!!朝ピザ何卒よろしくお願い致しますーー!!!」
あ、綺麗に方向転換して遠ざかって行く!!
「お兄ちゃん追って!扇おじ様行っちゃう!」
「少しは大人しくしろ」
「あ、落とさないで落とさないでー!」
わざと手を一瞬離した兄にしがみつく。
んもう!いじわるしないでよ!落っことしたら頭突きするし、あと…夜中に布団に潜りこむぞ!!布団の中でひっつくからな、身体冷えてもいいのか?
と、文句を言えば、兄は「早く東京に戻れ」と冷たく言う。
え~……そんな寂しいこと言わないでよ~!
お兄ちゃんは別に私のことなんて面倒臭くて邪魔でしつこいだけの存在としか思ってないかもしれないけど、私はお兄ちゃんのこと好きなんだよ、ご当主様の命令も扇おじ様の意見もガン無視するけど、お兄ちゃんの話は一応聞くぐらいには好きだよ。
え?十分伝わってる?あっそう、ならいいけど。
私、基本的に気に入った人は死んだら自分の物にしたいなって思うけど、お兄ちゃんは別だよ。
今まで私を狙う馬鹿共から私を守ってくれたお兄ちゃんへのお礼に、お兄ちゃんのことは私が助けてあげるからね。
……え?私を守ったんじゃなくて、被害者を減らすために仕方無く…?へ、へぇ…ふーん……そうすか…。
「ま、でも助けてあげるし救ってあげるよ、お兄ちゃんが居ないと私はこの家に居場所無いからね」
「そうか」
「そうだよ~!」
他の奴等がどうなろうと知らないけど、お兄ちゃん一人くらいなら無条件で助けてあげるよ。
だって私、貴方の可愛くて天才な自慢の妹なので。
え?自慢に思ったことなど一度も無い?
ハハッ、うるせえ、知るか。
「甚壱お兄ちゃんも巨乳じゃん!!!」
「………」
モニモニ、パフパフ……なんて豊かな乳なんだろうか…。
私は上の方の兄、甚壱お兄ちゃんに取っついて乳に顔を埋めていた。
ちなみにお兄ちゃんは今何か読み物をしている、多分恐らくはお仕事、私はお仕事中のお兄ちゃんにくっついているのだ。何故かって?それは一人で屋敷内を無意味に歩いていると女中さんを怖がらせたり、男共に警戒されたりするからである。
えーん!仲良くしようよー!一緒に実験してくれてもいいんだよ?って言っても、女中さんは逃げるだけだし、男共なんて「やめろ!それ以上近付くな!」とか言ってくる。
なんならさっきも言われた、だからこうしてお兄ちゃんにくっついて哀しみを紛らわせているのである……。
いやあ…それにしても、まさか兄が二人共揃って巨大な乳の持ち主だったとは……どっかのアンケートで「巨乳お兄ちゃん」というアホ丸出しの選択肢を用意したが、これではどちらの兄か分からんな…(※アンケートは一応甚爾の方です、マジで紛らわしくてごめんね)
「お兄ちゃんの乳あったけぇ……これが、バブみ…?」
「静かにしていろ」
「……………(これが、バブみ…?)」
「心で会話をするな」
お兄ちゃんと私の間に言葉はいらない!だって仲良し兄妹だもんね!!
私はお兄ちゃんの顔を見上げてニコニコしたが、お兄ちゃんは私を視界の端にも入れずに文字を追っていた。ドライだ……しかしこれが平常運転です、私達ずっとこんな感じ、そりゃもう小さな頃からである。
甚爾お兄ちゃんが家から出て行った後、私は荒れに荒れた。反抗期なんて言葉じゃ生ぬるい荒れ方をした。
グレたりしたわけでは無く、単純にやって来るクソカス雑魚共を容赦なく捻り潰し、一生に残る傷や苦痛を与えてそれを観察、時に介入し与えられた傷を思い出させる…ということをしていた。
クソカス雑魚というのは、私の才能を妬んだ家の者などなどである。
決して殺しはしなかった、何故なら死は一種の救いとなる。何故自分を襲う馬鹿に慈悲を与えなければならないのか、だから私が与えるは生き地獄。
量産されていく地獄の生者。
止まらない悲鳴と傷。
錯乱する者、泣いて赦しを請う者、中には自害する者まで出た。
何せ加害者であり被害者でもある人間が幼い女であり、さらには決して殺しはしていなかった事が災いとなり、対応が遅れた禪院家で、最終的に私を止めるために宛がわれたのは他でもないもう一人の兄…甚壱兄さんであった。
「こっちも兄だし、なんとかなるだろ」的な安易な発想から私の凶行を止めるための犠牲者となった甚壱兄さんは、そりゃもう大変な目にあった。
話がまともに通じない荒れ狂う妹の世話を焼かなければならないのだから、今ならば苦労は察する。
何せあの頃の私は「災厄」その者であり、歩く環境汚染にして人を苦しめることしかしない悪魔のような子供であった。よくもまあ、当主は私を処刑しなかったと思う。
さて、だがしかし、結果を話せば甚壱お兄ちゃん供物作戦は成功した。
私は他人に無差別に向けていたやり場の無い嘆き、悲しみ、憎悪、怒り…を含んだグッチャグチャの感情を甚壱お兄ちゃんにだけ向けることを覚えたのであった。
本当に、お兄ちゃんからしたら迷惑以外の何物でも無かっただろうけれど、私は基本的にお兄ちゃんに常にくっついて唸ったり噛んだり頭突きをしたり、泣いたり吠えたりしていた。何せまともに喋れなかったので…そんな不機嫌な犬のような行動しか出来なかったのだ。
しかしまあ、年月を重ねれば感情の制御は身に付くもので、消えぬ憎悪との付き合い方を学んでいくにつれ、私は甚壱お兄ちゃんへアホみたいな八つ当たりに他ならないヘイトを向けることをしなくなったのであった。
そんで色々あって、今はこうしてただひたすら時間が許す限りじゃれついている。
胸を堪能したので、今度は胡座をかく兄の膝の上でグニャグニャと猫のように構ってアピールをする。
「お兄ちゃん~構って~~抱っこぉ~!」
「今は忙しい」
「なんで?何読んでるの?」
「上層部からの物だ」
へぇ……妹より上層部からの手紙の方が大事なんですか…ふーん。
私は手紙を覗き込む、書いてある内容のくだらなさに鼻で笑えば、兄は書類を閉じた。
「私の血を残させろとか、アホだね~!」
「ああ」
「お兄ちゃんなら分かるよね?私に男を宛がった場合の結果くらい」
「…確実に死ぬだろう」
ピンポンピンポンその通り~!さっすが期間で言えば誰よりも私と一緒に居るだけはあるね!私の担当飼育員ならば分かっていて当然ではあるが……兄の言う通りだ、宛がわれた男は無駄死にするだけである。
発狂して死ぬか、私に使い潰されて死ぬか、私に耐えられなくなり自害するか…どのみち生存は限り無く不可能であろう。
最低限私の人間性を理解していなければ、一ヶ月でノイローゼコース確定だ。
「この話は私が直々に断っておくよ」
「そうしろ」
「だからお兄ちゃんは私を構って!」
「…………」
兄が無言で私に手を伸ばす。
両手で頬をこねくり回し、頭をグリグリグチャグチャと掻き回すように撫でる。
へへへ……楽し~!もっとやってと腕に纏わり付けば、兄は言葉無く私を抱えて立ち上がった。
適当に片腕で私を抱えて廊下を進む。
抱っこだー!抱っこ大好き、キャッキャッ。
首に腕を回して頭にすり寄れば、そんな光景を目撃した扇おじ様が目線を外して頭の痛そうな顔をしていたので、私は全力で扇おじ様の名を呼び手をブンブンと振る。
「おじ様ー!扇おじ様ーー!!朝ピザ何卒よろしくお願い致しますーー!!!」
あ、綺麗に方向転換して遠ざかって行く!!
「お兄ちゃん追って!扇おじ様行っちゃう!」
「少しは大人しくしろ」
「あ、落とさないで落とさないでー!」
わざと手を一瞬離した兄にしがみつく。
んもう!いじわるしないでよ!落っことしたら頭突きするし、あと…夜中に布団に潜りこむぞ!!布団の中でひっつくからな、身体冷えてもいいのか?
と、文句を言えば、兄は「早く東京に戻れ」と冷たく言う。
え~……そんな寂しいこと言わないでよ~!
お兄ちゃんは別に私のことなんて面倒臭くて邪魔でしつこいだけの存在としか思ってないかもしれないけど、私はお兄ちゃんのこと好きなんだよ、ご当主様の命令も扇おじ様の意見もガン無視するけど、お兄ちゃんの話は一応聞くぐらいには好きだよ。
え?十分伝わってる?あっそう、ならいいけど。
私、基本的に気に入った人は死んだら自分の物にしたいなって思うけど、お兄ちゃんは別だよ。
今まで私を狙う馬鹿共から私を守ってくれたお兄ちゃんへのお礼に、お兄ちゃんのことは私が助けてあげるからね。
……え?私を守ったんじゃなくて、被害者を減らすために仕方無く…?へ、へぇ…ふーん……そうすか…。
「ま、でも助けてあげるし救ってあげるよ、お兄ちゃんが居ないと私はこの家に居場所無いからね」
「そうか」
「そうだよ~!」
他の奴等がどうなろうと知らないけど、お兄ちゃん一人くらいなら無条件で助けてあげるよ。
だって私、貴方の可愛くて天才な自慢の妹なので。
え?自慢に思ったことなど一度も無い?
ハハッ、うるせえ、知るか。