このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

会長と副会長の幼馴染はご令嬢

01.私の全てを費やす





七月。
暦上ではすっかり夏なのだけど、
めっきり梅雨の国と化したこの国に今日、
僕と敬人最愛の幼馴染みが帰国する。
だけど今日が何の日かなんて、
きっと誰も知らないし知らなくていい。
僕らは終業のチャイムが鳴ると同時に、
肩を並べて足早に教室を後にした。
校門前には天祥院の運転手がドアを開き待ち構えていて、二人揃って後部座席に乗り込めば、車は音もなく進み出す。
ここまでお互い黙ってはいるけれど、
別に機嫌が悪いわけじゃないんだよ?
何ならその逆なんだ。



「敬人、部活はいいの?」
「伏見に一任してきたからな、問題ない」
「"十年来の幼馴染みが留学から帰国するのを出迎えたいから、英智と一緒に早退します"って正直に伝えてきたんだ?」
「そんな訳あるか。まぁ、伏見はそれでも動じないだろうがな」
「あーあ、楽しみすぎてなんだか鼓動が騒がしいよ。倒れちゃわないか心配だ」
「…おい、返事に困る冗談はよせ。このまま車が引き返す事になる」
「ふふ、冗談だよ。会うのは1年ぶりだっけ?」
「正確には、13ヵ月と3日ぶりだな」
「もしかして指折り数えていたの?すごいな敬人は、まるでストーカーだ」
「人聞きの悪いことを言うな。去年の春に見送っただろう。そこから逆算しただけだ」
「そんなに経つんだ…あんまりにも長すぎたよね、嫌になるくらい」
「あいつが耐えたんだ、俺たちにどうこう言える義理はないだろう」



それでも、文句の一つや百八つくらいは
どうか許してほしい。
それ程までに彼女という人と逢えない日々は
喪の黒で空白で、殺伐としてしまっていたから。
彼女の父親は、指折りの実業家で。
海運王とか武器商人とかあることない事囁かれ続けている時の人だ。貫地谷の名声はほぼ彼女の父親ひとりの功績と言って過言ではない。
その一人娘である彼女は、
国内屈指のお嬢様校に入学させられて以降。
事ある毎にありとあらゆる国へ
留学に次ぐ留学を繰り返させられている。
断っておくけれどこれは決して彼女の意思ではない。
僕だって財閥の跡取りだ。
似たような身の上ではあるけれど、
彼女への抑圧的なまでの英才教育と自由の無さには憤りを感じる。
どうか若く新しい妻でも娶って囲って孕ませて、
彼女に代わる世継ぎをそれこそ複数人こさえてはくれないかと心の中で彼女の父親に何度か吐き捨てた程だ。
敬人に話したら、俺以外には絶対に言うなってきつく嗜められたっけ。敬人だって考え方は違えども、同じ気持ちでいる癖に。



小言の多いドライブも束の間。
空港に到着した僕らは幸いなことに何の労力も費やさず一目で彼女を見つけてしまう。
僕たちの完全無欠で唯一無二の幼馴染み。
彼女を見誤ることなんて、絶対に有り得ない。
エメラルドグリーンのロングワンピースに白い大きな帽子、スーツケースひとつといった軽装具合がまるで避暑地帰りのお嬢様のようで、一年以上僕らの側に居なかった現実を一瞬忘れさせてくれる。
それでも僕らの体はとても正直で、


「「すみれ」」


彼女がこちらに気がつくより先に、僕らは
存外大きな声で彼女の名前を呼んでしまっていた。
叫んだ…と表現されてもこれは致し方ないかな?
チープで態とらしい連続ドラマみたいだ。
人がまばらな夕方の空港に、僕らの声があまりに響くものだから僕と敬人は思わず顔を見合わせる。
バツの悪そうな敬人の顔が嫌に笑えた。


「英智さん!敬人さん!」


君まで叫んでくれなくてもいいのに。
彼女は泣き顔によく似た満面の笑顔で、荷物も何も放り出し僕らの元まで真っ直ぐに駆けつけてくれる。
そんなに嬉しそうにしてくれるなんて。
触れ合う瞬間が待ち遠しくて愛しさが募る。
手が届く寸前、敬人よりも一歩前に出て
両の手を広げてみせれば僕の腕の中に、
とても上手に君だけを閉じ込められた。
これで頑張り屋な君をやっと、
目一杯抱きしめてあげられる。
やわらかい菫色の髪に顔を埋めると、
体温と香りがじんわりと広がってこれは他でもない
彼女なのだと僕の五感が脳に直接囁いた。
抱きしめた反動を逃すように、
喜びを表現するように。
数回くるくるとターンを決めれば
スカートのドレープが遅れて優美に舞う。
周りの音が遠のいて、世界で二人きり
社交ダンスに興じているような。
そんな甘い錯覚すら覚える感動的な再会と、
今日という日に賛美歌を送りたい。



「英智さん、会いたかった」
「僕もだよ、おかえり菫」



時が止まればいいのにと思っていたら、彼女の帽子やスーツケースを拾った敬人が遅れて出迎える。
本人は何も言わないけれど眼鏡の下には
"抜け駆けしたな"と有りあり
僕だけに見える油性ペンで書いてあった。


「英智お前、随所が日々樹化していってないか?」
「ふふ、愛と驚きが僕にも理解できてきたみたい」
「度し難い。もう少し自分の体調を考えてから、落ち着いて出迎えてやれ」
「羽みたいに軽いからなんら問題ないよ。それより敬人は?抱きしめてあげないの?」
「人を差し置いて何を言う」
「敬人さん、敬人さんもしましょう」


僕の肩からするりと手を引いて、彼女は敬人に両手を伸ばす。離れていく体温がほんの少し寂しいけれど、これは順番だ。
敬人は僕を一瞥してから諦めたような顔で彼女をおざなりに抱きしめた。嫌々やってる風を装ってはいるけど、僕にはわかる。
敬人の腕には、目一杯力が込められそれでいて
抱きつぶしてはしまわないように
彼女を労り慈しんでいること。
おかえり菫、って。
敬人のやけに優しいくぐもった声が聞こえて
僕は二人ごともう一度抱きしめた。
敬人は所在なさげに嫌がっていたけど、
菫は本当に泣いてしまうんじゃないかってくらい
幸せそうに笑ってくれた。


「ねぇ、菫がいま一番したいことを教えてくれないかな?」
「久しぶりに英智さんの煎れて下さる紅茶が飲みたいです」
「決まりだね。早く僕の家まで帰ろう」
「長旅で疲れているだろう。先に家に寄った方がいいんじゃないか?」
「それは帰国して一番にすることでは、決してありませんね」
「……そのようだな」
「敬人さんのお家とお墓参りにも、必ず伺いたいのですが」
「そうか、連絡しておく」
「僕も同席していいかな?」
「ええ、是非。ありがとうございます」


菫を捕まえられたなら此処にはなんの用もない。
空港を後にして、僕らは直ぐ様天祥院の家に向かう。
車内では彼女が疲れてすぐに眠ってしまったので、
ろくな会話はしていない。
僕と敬人、どちらの肩にもたれかかってくるかで
醜い競争を繰り広げたくらいだ。
結果は6:4で僕が勝った。
公道を走る車内の揺れさえ僕に味方してくれて、
そうでなくても機嫌がいい。
屋敷に着いたら、彼女が僕の家で一番好きな
温室で紅茶を嗜むとしよう。
君も僕も、花に囲まれて飲む紅茶が一番美味しいと知っているからね。
時差でまだ少し眠たそうな彼女の為に、
今日の紅茶は珍しくストレートに。
それでもお砂糖はたんと入れた彼女使用。
ガーデンテラスによく似た温室の中、
木製のソファに腰掛ければ、紅茶の香りに癒されて
だんだんと表情が緩んでいくのがわかる。
揃いの茶器はすべて並々と満たされた。
これで漸く、ゆっくり話すことができる。



「月並みだけど、留学はどうだった?」
「端的に申し上げると最悪でした」
「それが満面の笑みでいうことか…?」
「学ぶことの多い旅でしたが、残念ながら心動かされるような事は終ぞありませんでした。お二人がいる世界はこんなにも綺麗なのに、本当に残念です」


彼女はたまに、呼吸すら面倒くさいのだという表情で
何事にも興味がないと、表情だけで語ってみせる。
穏やかで心底お優しい彼女の線引きは
他人には見えなくともとても深く、色濃い。
万人に優しいけれど、万人を愛してはいない。
それはきっと実の父親や周りのその他大勢に対してもそうで。つまりは八方美人止まりなんだ、
彼女は聖母にはなれない。
僕はこの人間らしい顔が、実は結構好きだったりする。


「ご苦労様でした、が一番の手向けの言葉かな」
「ふふ、恐れ入ります。なので私からのお話は、あまり有りません。それよりも私は、英智さんと敬人さんのお話が聞きたいです」
「僕の?」
「俺の?」
「お二人が通う学院の…アイドルのお話を、たくさん聞かせてくださいませんか?先程、最悪と言ってしまいましたが、英智さんと敬人さんがお電話やお手紙をくださった日は、とてもすばらしい最高の1日だったのですよ」


スーツケースの中身の3分の1は、
僕らと交わした手紙なのだと彼女は幸せそうに笑う。
こんなに大事にしてくれるなら、
返事なんて待たずに毎日送ってあげればよかった。
手紙に同封していた楽曲や映像も
何度も何度も観てくれたようで、
国際電話で話した時とまったく同じ熱量で、
あのユニゾンが
あのパフォーマンスが
あの掛け合いがあの歌が歌詞が
ダンスが表情がって…
菫は小さな女の子のように
顔を赤らめてはしゃいで見せた。
敬人は僕が紅月の動画まで送っているとは思いもしなかったようで、多少慌てふためいていたけど彼女の愛ある感想と力説を聞くうちにだんだんと大人しくなっていく。
君が強請るのなら、僕らも語る他ない。
会えない期間、起こった出来事を何十年も昔のことのように僕らは口々に話した。
fineのユニットメンバーの再編、
trickstarとの出会い、
そしてDDDの結末。
デッドマンズの話は、残念ながら割愛した。
当時の話になった途端に無口を決め込む敬人自身が、いつか自分で語り聞かせてくれた方がきっと何百倍も面白いだろうから。
彼女は僕らの話全てにとても真剣に耳を傾けてくれる。
もっともっとと強請る君は、何処にでもいるただの恋する女子高生そのものだった。



「菫は、アイドルが好きかい?」
「はい。とても、大好きになりました」
「じゃあ僕らのことも好き?」
「はい、とてもお慕いしています」
「ふふ。僕も大好きだよ」
「英智、くだらん誘導尋問はやめてやれ」
「何度でも聞きたいんだから、いいじゃないか」
「下心しか感じないが?」
「敬人だって嬉しいくせに」
「あの、例えアイドルでなくともお二人のことは贔屓目抜きに大好きですよ」
「…言っていて恥ずかしくないのか貴様は」
「本当のことですので」
「だったら菫はアイドルをプロデュースする側に興味はない?」
「プロデューサーにですか?」
「菫のいない間に、学院にプロデュース科が新設されたのは知ってるよね?僕は君に、君が大好きな僕たちを手掛ける新しいプロデューサーになって欲しいんだけどな」
「それは…転校しておいで、と仰ってるんですか」
「流石の菫だ。話が早い」
「おぃ、ちょっと待て英智」
「悪いね敬人。でも僕はもぅ充分待ったから。敬人だってそうだろう?」
「………」
「君のその瑞々しいまでの才能が、
 君が何も好きだと思えない者たちに注がれ
 捧げられるのは僕も見るに耐えない。
 それならいっそ君が心から愛し、
 求めてくれる僕らアイドルの為に
 残りの短い時間をどうか
 費やしてはくれないかな」



残り短い時間、というのは
卒業迄の半年間ではなく、
"彼女が婚約するまでの"時間を指す。
菫は二十歳になれば、彼女の父親がその日その時
一番相応しいと勝手に決めた相手と
婚約することが義務付けられている。
ちなみに僕と敬人は一体いつお眼鏡にかなったのか、
既に菫の婚約者候補に数えられているらしい。
父親公認がここまで素直に喜べない事もなかなかない。まぁ、僕は諸々利用してでも彼女の側にいたいんだけど。
婚約したとしても破棄することはできるのだからと、
彼女はいつも何でもない風に笑う。
だけどね、僕は彼女程優しくないんだ。
名門校への進学、
度重なる留学、
花嫁修行のためだけの大学進学。
そして婚約に至るまで今までもこれからも、
全てが未だあの人の手中にある。
ならば尚の事。
そろそろ僕らが反旗を翻す頃だ。
君を僕らから引き離した罪はあまりに重い。


「勿論僕は菫の意見を尊重するよ。どうか、返事を聞かせてくれないかな」


人差し指の背を口元に当て、彼女は暫し黙り込む。
昔から良くする癖だ。
子どもの頃、探偵みたいだって言ったら自覚がなかったのか驚いて、すごく気に入ってくれたよね。
だけど僕は知っている。
これは単なるフォームでしかない。
彼女の中で答えはとっくに出ているって。
馬鹿なふりもいい加減やめたっていいんだ。
女王たり得る才女は決断を渋らない。
だけど素直になるのに、もう少し建前が必要なら。
僕がいくらでもお膳立てしてあげよう。


「菫は僕たちと一緒に居たくはない?」
「いいえ、ずっといっしょに居たいです」
「また留学で離れ離れになっても?」
「…もう、片時も離れたくありません」
「敬人と僕と、菫の三人で同じ学校に通えるなんて僕にとっては夢のようなのだけど」
「望んでも、いいのですか?」
「勿論。全て僕が叶えるよ」
「それが私で良いのでしょうか…?」
「ふふ、誘導尋問のお返しかな」
「そんなつもりは…」
「君の為なら何度でも言うけれど、
 絶対に君じゃないといけない。
 これは揺る気ない事実だ。
 君と同じ境遇の誰かが居たとしても、
 僕は絶対に声をかけたり求めたりはしないよ。
 君が欲しくて堪らないんだ」


うっかりプロポーズのようになってしまったけれど、
僕としては何ら問題はない。
菫の手を取り、手の甲に口付けようとしたら、
隣の敬人に軽く小突かれてしまった。
敬人はここまでずっと難しい顔をして沈黙を決め込んでいたけれど、ここで漸く口を開く。


「英智にそそのかされて決断する貴様でもないだろう。思っている事があるなら、正直に話してみろ。俺と英智で聞いてやる」


敬人の言葉で彼女の瞳が揺らがなくなった。

ほんの少しの悔しさや羨ましさもあるけれど、僕らが求める答えは同じだから。
僕らは静かに彼女の言葉を待つ。
ほんの少しの沈黙を破って、聴き心地の良いソプラノが僕たちに囁きかける。



「お二人にこんな事を話すのは、本当にお恥ずかしい限りなのですが…私には将来の夢がありません。父の望む後継者像を演じているのも、これといってやりたい事がないからです。

でも、学院に入学されたお二人をそばで見ていて、離れてからも尚、ずっと見ていて…
好きなものができたような気がしました。
いいえ、ずっと好きだったはずなのに…
どうして気付けなかったんでしょうね。
不思議なんです、自分でも。

何を今更と思われるかもしれませんが、
こんな私にでも、皆さんを輝かせるお手伝いができるのなら私は。
私の全てを費やしてでもお力になりたいです。
きっとその経験は今まで過ごしたどの時間より有意義で、意味のあるものになると思うから…」

「是非その先も、聞かせてくれるかな?」
「はい、私は夢ノ咲学院への編入を希望します」
「よかった、菫の口から聞けて」



僕によく似ていて、それでいて全てが違う蒼い瞳が細められる。花のように綻ぶ君の笑顔がやっと見れた。
敬人は黙ってそんな彼女を見つめていたけれど、
何か言いたげでもあったし、物悲しそうにも安堵した様にも見える。
目は口程にものを言うなんて、よく言ったものだ。
瞳が雄弁に語るものを人が言語化できないだけじゃないか。
さて僕は今一体どんな瞳をしているだろう。
誰にも悟られたくない気持ち半分、
何かに満たされる心地半分で
僕はそっと瞳を閉じる。


「そうと決まれば、転校手続きだね。貫地谷の家と女学院両方に、書類一式早急に手配するよ」
「お手数おかけします」
「これで数カ所サインするだけで、新学期にはうちの生徒だ。気分はどう?」
「とても緊張しますが…不思議と楽しみな気持ちの方が勝りますね」
「それは何より。僕も同じ気持ちだよ」
「菫、本当にいいのか?」
「留学先で卒業資格は既に得ていますし、残りの半年は国内で受験に専念するよう言われていますから、今更学校を変える分には何ら問題ありませんよ」
「そういうことを言っているんじゃない。本当によく考えたのか?」
「たくさん考えましたよ」
「ならもう一度だけ考えろ。三年の二学期にもなって男性アイドルしかいない科目の中、更にたった一人しか生徒のいないプロデュース科に転入して来るんだぞ?本当にそこまで考えたのか?」
「敬人だって嬉しいくせに。僕らだってアイドル科だよ?自分を棚に上げてよく話せるね」
「俺は菫に聞いている」
「プロデュース科は今後は二人になるので何も問題ないと思いますよ」
「………………もういい。好きにしろ」
「敬人さん?」
「いつもの度し難が過ぎちゃったかな?」
「ああ、全く持って度し難い限りだが…お前に高説を垂れても何ら意味がない事を俺は誰より理解しているからな。これ以上は何も言わん」
「お気遣い痛み入ります」
「嫌味にしか聞こえんぞ」
「そうだ、お父上にはなんて?」
「転校の理由ですよね。大変不本意ですが、口実に将来の花婿探しだとでも伝えれば父はきっと何も言いません」
「ははは、笑えない冗談だ。いいね。アイドルから婿養子探しなんてロクでもなくて最高じゃないか」
「何がおかしい。俺にはさっぱり笑えん冗談だ」
「父はたいへん面食いといいますか、優秀な遺伝子が欲しいだけですから…自分でも皮肉だなとは思いますよ」
「僕の愛すべき学院には、僕の愛してやまないアイドル達が星の数ほどいるからね。誰か一人でも菫のお眼鏡に叶えばいいけれど…でもそれなら十年以上側にいる僕らの事も、是非とも視野に入れて貰いたいものだね」
「視野に入れるだなんて、そんな。そんなこと言わないで下さい。だって…」
「だって?」


「だって、私には英智と敬人しかいないもの」


いつの頃からか身についた他人行儀な敬語と
敬称も忘れて、彼女は困ったように微笑み
言ってのけるものだから。
僕らに出来ることなんて今までもこれからも
たったひとつだと、改めて思い知らされる。
これは決して、優越ではない。
綺麗で哀しい真実だ。
僕らは彼女のそばにいる。
いることしかまだ、できないけれど。
それでもそばにいたいから、僕はこの手を差し伸べた。



「少し気が早いけど…喜んで歓迎するよ。
 ようこそ、夢ノ咲学院へ」










*おしまい
spending all my time
いつも君を想う
2/17ページ
スキ