小話(いろいろ)
■効果あったのか。この政策(孫悟空+チチ)
お昼時、畑仕事から家に帰ってきた孫悟空は、珍しく興奮していた。
「チチ! チチ! プレミアムフライデーって知ってるか!?」
最終週の金曜日は、仕事を早く切り上げて帰宅する制度。
先程、もうすぐ昼ご飯ができるから、家に戻るように伝えに来た息子の孫悟天から、その制度のことを教えてもらった孫悟空は目を輝かせた。
折しも、今日は最終週の金曜日だった。
「プレミアムフライデーって、働き方改革っていう制度のひとつで、最後の週の金曜日は短い時間しか仕事しなくていいらしいぞ! だから、今日はもう仕事やめて……」
――修行していいか?
そう言葉を続けようとしたのだが、修行の「しゅ」を口にした瞬間、チチが無言で包丁を握ったので孫悟空は口を噤む。
秋を迎えた農家に、休みなどあろうはずもない
■ねこと嘘(ビルス+シン)
至急、破壊神ビルスに伝えねばならないことができたので、第七宇宙界王神シンは地球のカプセルコーポレーションに単身で降り立っていた。
半円形の建物のテラスで、地球のご馳走をほおばっていたビルスに、おっかなびっくりしながらも、なんとか報告をすませる。
シンから話を聞いたビルスは、話を理解しているのかいないのか不明だったが、それでも下がって良いと許されたことでほっとしたシンは、お暇しようとビルスに一礼して背を向ける。
だが、振り返った先で、ひなたぼっこしている黒猫の姿が目に止める。シンは興味を引かれてそちらに近寄った。
あまりにも気持ちよさそうに寝そべっているので、シンも思わず顔を綻ばせた。
「猫、かわいいですね」
シンが近寄ってかがんでも、その猫は逃げずに陽の光を浴びながら目を細めている。シンが優しい手つきで体を撫でてやると、猫はゴロゴロと喉をならした。
ビルスはそんな猫と戯れているシンの様子を横目で眺めながら、
「丁重に扱えよ。猫は僕の眷属だからお前を見張っているし、何かあればそいつらから僕に報告が来るからな」
「……こ、こんにちは」
以降、シンは地球で猫に会う度にびくびくしながら挨拶している。ビルスの嘘はまだバレていない。
■お茶の淹れ方(ゴワス+ザマス+ブラック+合体ザマス)
ゴワスが界王神界の神殿にある談話室を訪れると、そこには既にザマス、ゴクウブラック、合体ザマスの三人がそれぞれソファに腰掛けて、思い思いに過ごしていた。
ザマスは足を揃えて座り、ブラックは足を広げて座り、合体ザマスは足を組んで座っている。
存在する時間軸が違うとは言え、全員『ザマス』であるはずなのに、三者三様の座り方。
思わず本当に同一人物なのか訝しんだゴワスだったが、後日、彼の為に淹れられた紅茶を一口飲んだ後、その疑問は跡形もなく消え去った。
甘い香り、豊かな風味。その紅茶の味と香りは、誰が淹れても、『ザマス』が淹れた紅茶だった。
■同じ身長、同じ体重、同じサイズ(ベジット+孫悟空+ブラック)
……体が同じって事は、アレもカカロットと同じなのか。
……オラと同じサイズなのか。
「……何なんだ、お前達。さっきから、無言でこちらを見つめてきて。気色の悪い……」
ゴクウブラックは、無言のまま、じーっと自分の腰辺りを見つめてくるベジットと孫悟空の視線を受けて、気味が悪そうに呟いたのだった。
■恋愛模様(ベジット+ブラック)
鳥が爽やかに鳴く朝。
ゴクウブラックは合体ザマスの部屋の扉をノックしていた。
現在、この界王神界には、界王神見習いとしてザマス、ゴクウブラック、合体ザマスの三人がおり、普段は三人とも忙しく働いているのだが、今日は全員が休みだった。
務めの時は、界王神見習いの服を着用しているブラックだが、仕事が休みの今日は道着を着ている。武神として精進する為に修行をしようと思っているのだが、どうせなら合体ザマスと一緒に修行がしたい。
そう思ったブラックは、合体ザマスの部屋にやって来た。ザマスは先に修行場に向かっている。
重厚な木の扉をノックすると、扉の向こうから近づいてくる気配がある。
――ん?この気は……。
かちゃっと扉を開けて中から出てきたのは、合体ザマスではなくベジットだった。いつもの道着を来ているが、紺色の上服だけは脱いでいる。
ベジットはちょくちょく第十宇宙の界王神界に遊びに来ているので、彼の姿は特別珍しいものではないが、今はまだ地球に戻ったまま、こちらには帰ってきていないと思っていたので、ブラックは意外そうに目を丸くした。
「お前か。戻って来ていたのか」
「ああ。昨日……っていうか、今日だな。日付が変わる頃に戻ってきた」
「そうか――ところで、あいつは?」
この部屋の主人である合体ザマスの居場所を尋ねれば、ベジットは事も何気に、
「あいつなら、遅くまで起きてたから、まだ寝てる。起こそうか?」
「いや、寝てるならいい」
ブラックはかぶりを振って遠慮した。
――ベジットがこの界王神界に来ると、早起きであるはずの合体ザマスが、昼近くまで寝ていることが多くなる。ゴワスやザマスは、ベジットと全力で修行するからだろうと考えているようだったが――ブラックは、薄々、そうではないのだろうなと感づいていた。
そして、それはベジットがこうして、合体ザマスの部屋から出てきたことで確信に変わる。
「あまり、羽目を外しすぎるな」
夜ふかしを咎める言葉だが、その言葉の裏にある意味をしっかり汲み取ったベジットは、ニヤッと笑うと、
「ちゃんとわかってる。その証拠にあいつが仕事に寝坊したことないだろ? 仕事の日は手加減してやってるよ。
――ところで、仕事の話か?」
「違う。一緒に修行にでもどうかと誘いに来ただけだ」
「あ、それならオレも一緒に修行したい」
「構わないが」
ベジットが相手なら不満はない。ブラックは悩むことなく了承した。
「ところでさ……」
ベジットは扉から顔を覗かせて、廊下をキョロキョロと見渡しながら、
「あっちのザマスも一緒か?」
「そうだ。先に修行場に行っているが……何故、気にする?」
ブラックの視線が鋭くなる。ザマスと合体ザマスは瓜二つだ。合体ザマスに少なからぬ好意を抱いているはずのベジットの目に、ザマスがどう映るか。それを考えた瞬間、ブラックの心にベジットに対する警戒心が生まれた。
ベジットは肩をすくめるとおどけた口調で、
「あっちのザマスもちょっと気になってたからな」
「……お前を修行に誘うのを止めようか」
「冗談だって。つまみ食いとかしたりしないから心配するな。かみさまから今日はザマスも休みだって聞いていたから、ただ単に一緒に修行できないかと思っただけだ」
「本当だろうな?」
「安心しろって。人のものに手を出す趣味はねぇから」
「っ!」
ベジットがさらりとそう言うと、ブラックは驚きで言葉を詰まらせた。
「……気づいていたのか」
「バレバレだ。まあ、かみさまとゴワス様は気づいていないようだがな」
「孫悟空は?」
「気づく分けねーだろ、あの野暮天が」
「ならばそのまま黙っていろ。誰にも言うな。ザマスが、オレとの関係を他に知られることを望んでいない」
「別に良いけどよ。それなら、かみさまの事も黙っていてくれよ。あいつも大っぴらになるのは嫌だって言ってたから」
「仕方がないな。
――それより、修行に付き合う気があるなら、そろそろ行くぞ。ザマスが待っている」
「あ、ちょっと待てよ。上着を取ってくるから」
「さっさとしろ」
第十宇宙の界王神界に流れる密かな関係。その全容を理解しているのは、この二人だけだった。
■繁忙期(ベジット+孫悟空+合体ザマス+ザマス+ブラック)
手合わせしたさに、毎度毎度、第七宇宙の破壊神とその使いをタクシー代わりにして、第十宇宙に向かう孫悟空とベジット。ザマス、ゴクウブラック、合体ザマスの三人は呆れつつも、子供のように瞳を輝かせながら、手合わせを願ってくる二人の相手をしていた。
だが、仕事が忙しい時は別である。
忙しなく本棚と机を往復する足音。ひたすら響く字を書く音。
ピリピリとした雰囲気の中、孫悟空は恐る恐るザマスとゴクウブラックに声をかける。
「なあ、手合わせ……」
「後にしろ」
「ちょっとだけ……」
「勤めの邪魔をするな」
ザマスとゴクウブラックから、けんもほろろに断られる孫悟空の背後では、ベジットが、何やら真剣に書物を読み込んでいる合体ザマスに声をかけていた。
「少しくらい、いいだろ」
「……」
「無視かよ……」
一心不乱に仕事をするザマス達。部屋にあった椅子に座った孫悟空とベジットは、ふてくされた表情でそれを眺めていたのだった。
■身勝手の極意(孫悟空+ザマス)
「底知れない力を持っているな、サイヤ人というのは」
涼しい風が吹く中庭で、ザマスは呆れたような感心したような調子でそう言った。
中庭に置かれた白のガーデンテーブルを挟んで、ザマスと孫悟空がお茶を飲んでいる話題は、先日行われた力の大会で、孫悟空が披露した身勝手の極意についてである。
「自分の意思じゃ、発動できないんだけどな」
「破壊神でさえ習得が困難な技だ。素直に誇れ」
ザマスは時の指輪を悪用した罪で、第十宇宙の界王神界から出ることを禁止されていた為、会場で観戦することは叶わなかったが、神チューブで一部始終を見ていたので詳細を知っている。
「ザマスも一緒に修行しようぜ。きっと習得できるって。目の色が身勝手の極意と似てるし」
「……もう少しまともな発破をかけられないのか、お前は」
「でも、本当に似てると思うんだけどよ」
そう言うなり、孫悟空はぐいっと顔を近づけた。
「っ!?」
腕を伸ばしきらずとも、反対側に手が届くほど狭いテーブルだ。いきなり眼前まで孫悟空が近づいてきたので、ザマスは思わず仰け反った。
「よく見えない」
孫悟空はザマスの両肩を掴んで自分に引き寄せる。吐息すら感じられるほどの近距離。
緊張で体を強張らせるザマス。
ザマスの瞳を覗き込もうと顔を近づける孫悟空。
そして、鬼の形相で孫悟空の背後に出現するゴクウブラックの姿があったのだった。
■毎年、家庭菜園で大量に採れるトマトとピーマンとキュウリとなすの消費に困っている癖に、収穫量を減らさない上に植える苗の本数を増やす我が家族をどうにかしたい(我がごと)(孫悟空+ベジット)
夏。さんさんと降り注ぐ太陽の光を目一杯浴びて、植物達の生命力が旺盛になる季節。
孫悟空は、一抱えほどの大きさの段ボールを両手に抱えて、カプセルコーポレーションを訪れていた。
半円形のマンション構造になっている建物の一角。空からベジットが泊まっている部屋を見てみると、彼はちょうどベランダの手すりにもたれ掛かって、グラスの水を飲んでいるところだった。
ベジットは普段、第十宇宙の界王神界に入り浸っているので滅多に会えないが、時々、食糧補給も兼ねて地球に戻ってくることがある。
孫悟空とベジータが合体して生まれた戦士であるベジットは、当然の如く宿無しである為、地球に戻ってきた時は、専ら金銭的にも部屋の数にも余裕があるカプセルコーポレーションに厄介になっていた。
「よう、ベジット。ほい、オラん所で取れたピーマンのお裾分け」
どうやら、ベジットは寝起きのようで、蒼い髪はボサボサだし、衣服はTシャツにトランクス一枚という気の抜けた格好だ。
ベジットは、舞空術を使って直接ベランダに降り立った孫悟空に視線だけを向けると、段ボールに溢れんばかりに詰め込まれているピーマンを見て顔を顰めた。
「いらねぇ。持ってくるんなら、料理してから持ってこい」
「折角、持ってきてやったのに。わがまま言うなよ、自分で料理したらいいだろ」
「オレのベースは、お前とベジータだぞ? 焼いて塩胡椒を振るくらいしかできねぇよ。飽きる」
説得力がありすぎる理由を聞いて、孫悟空は思わず納得したのだった。
後日。
「おーい、ベジット。おらんとこの野菜のお裾分けを持ってきたぞー! そのまま食べられるから、料理できねぇお前にぴったりだろ」
「だからって毎日キュウリばっかり持ってくんじゃねぇええええええええっ!」
連日キュウリばかり届けられる事にキレたベジットは、孫悟空に鉄拳制裁を課したのだった。
■歳時記:お正月(ザマス+ブラック+ベジット+合体ザマス+ゴワス)
談話室にある縦長のテーブルには、ベジットが持ち込んだ地球の品々が積まれていた。
ゴワスは目を輝かせながら、
「ほう、これが地球の新年を祝う品々か」
「縁起を担ぐ物がほとんどですね」
合体ザマスは、鏡餅の上に乗っていた橙を手に取って興味深げに眺めている。
その隣で、ザマスは絵本を開いて読んでいた。正月飾りの由来や意味が、子供向けの平易な言葉で書かれている。
ザマスはざっとそれに目を通しながら、向かいで同じように正月に関する書籍を眺めていたゴクウブラックに声をかけた。
「人間を理解する為に、人間の風習を真似てみようと計画したは良いが、ほぼ神に願いを届ける物ばかりだ。神である我らが実践するには違和感があるな。そう思わないか?」
「あ、ああ。そうだな……」
ブラックの返答は、歯切れが悪かった。
彼が手にした書籍に書かれた、『姫はじめ』の一文。それが気になって仕方がないブラックと、密かに今晩実施する気満々のベジットと。
■サングラスとマスクが必需品(ゴワス+ベジット+合体ザマス)
ベジット、合体ザマス、ゴワスの三人がテーブルを囲んでお茶をしていた。
「暗いところから明るいところに行くと、目が痛くなることあるよな。最近、夏になって陽射しが強くなったからから、たまに目が痛くなるんだよな」
「それは難儀だな。
――そうだ。それなら私のサングラスをあげよう。陽射しの下に出る時にかけるといい」
ゴワスは立ち上がると、サングラスを持ってくると言って自分の部屋に向かう。
ベジットはその後ろ姿を見送りながら、合体ザマスに向かって意外そうに、
「ゴワス様って、サングラスとか持ってるんだな」
ベジットがそう言うと、合体ザマスは視線を逸らしつつ、言いづらそうに言葉を紡いだ。
「……神チューバーに、興味がおありでな」
「神ちゅーばー?」
■お手伝い(ベジット+合体ザマス+ザマス+ブラック)
合体ザマスの仕事を手伝うと言ったのは、ベジットの思いつきだった。
いつも合体ザマスが仕事をしている間は一人で時間を潰しているので、だったら仕事を手伝ってやったら暇つぶしにもなるし仕事も速く終わって、一石二鳥かもしれないと考えたからでもある。
ベジットの申し出を聞いて、合体ザマスは少々驚いたものの、折角彼が手伝うと言っているのだから働かせてやろうと仕事を割り振った。
ベジットに割り振られた仕事は、当然専門的な知識も技術もいらない単純作業。ベジットもこれなら問題ないと手伝い始めたものの――
「やり直し」
合体ザマスはベジットに書類を突き返した。
「誤字脱字があるリストが順番通りになっていないレイアウトがおかしいやり直せ」
ベジットが不満の抗議をあげる間もなく、合体ザマスは一息で書類の不備を指摘する。
口を挟むタイミングを失ったベジットは、言いたいことを言った後さっさと自分の仕事に戻った合体ザマスを、苦虫を噛み潰した顔で見つめるが、彼はひたすら羽根ペンで何かをノートに書き込んでいてベジット方を見向きもしない。
ベジットは書類を両手に持ったまま、渋々といった様子で先程まで作業をしていた席に戻ると、隣の席で資料に目を通していたザマスに愚痴る。
「なー、聞いてくれよ。かみさまの言うとおりに作ったのに細かいことグチグチ言ってやり直しさせるんだが……」
「文字の大きさが異なっているフォントの種類が統一されていないお前が悪い」
「……」
ベジットの言葉を遮って、ザマスは、ベジットがひらひらさせている書類をちらっと横目で見ると、合体ザマスと同じようににべもなく言い放ったのだった。
「行間、余白が規定通りになっていない」
「グラフがおかしい」
「表紙のタイトルの位置が違う」
「グラフの位置と段落の頭の位置を合わせろ」
「だああああ! お前ら細かすぎ!」
「……ってことがあってよ、途中で仕事の手伝いを辞めようとしたら、かみさま達が『仕事を途中で投げ出すとは何事だ!』って怒ってさ。悪いけど、あいつらの機嫌が直るまで匿ってくれねぇか?」
ベジットが顔の前で手を合わせてお願いしているのを横目に見ながら、ゴクウブラックは無言のまま合体ザマスとザマスに通報したのだった。
■食事制限再び(ベジット+ブラック)
強い陽射しから逃れる為、ベジットは木陰の下に胡座をかいて座っていた。地べたの上に直接座っているが、道着が土で汚れて気にするような人間ではない。
「この間は、かみさまとザマスに、いきなりダイエットさせられそうになって酷い目に遭った」
ベジットは、直ぐ近くにある木の幹に背を預けて立っているゴクウブラックに、先日の出来事を話していた。
「お前の体を思ってのことだろう。神の慈悲をありがとうく思え」
だがブラックはにべもなく言い放つ。
ベジットがザマス達に食事制限させられそうになった件は、ブラックも知っている。確かに、あの食事量を見れば、そう考えてしまうのも仕方がないとザマス達の考えに共感していたブラックは、同時に自分には関係の無いことと考えていた。
しかし、それから暫くして。
季節が秋に変わった頃、深夜にお腹が空くので夜食を食べるという生活を連日続けていたら、とうとうザマスが『食事管理』『痩せる』『ダイエット』というキーワードが記載された本を、真剣な目で読み始めたので、強制的にダイエットさせられるのではないかと戦々恐々な日々を送る羽目になるブラックであった。
■あんなこといいな できたらいいな(ベジット+ブルマ)
ブルマは、ガレージでバイクを修理していた。
ベジットが趣味で買ったバイクなのだが、最近調子が悪いと相談を受けたので、修理ついでにオーバーホールしているところである。軍手をしてレンチを片手にバイクをいじっていたブルマは、ふと思いついて、近くの窓枠に腰掛けてこちらの様子を見守っていたベジットに声をかけた。
「ところでさ」
「ん?」
「あなた用の新しいスマートフォンを作ろうと思うんだけど、何か欲しい機能とかある?」
「かみさまの一撃を食らっても消し炭にならない機能。機嫌の悪いかみさまを宥める機能」
「無茶を言わない」
■挑戦(ベジット+合体ザマス+ザマス+ブラック+孫悟空+ベジータ 多すぎ)
風が吹きすさぶ荒野の真ん中で、孫悟空、ベジータ、ゴクウブラック、ザマスは隙無く戦闘の構えを取っていた。
四人と対峙するのは両耳にポタラをつけた二つの影――ベジットと合体ザマスだ。
鋭く相手を睨み据える四人に対して、ベジットと合体ザマスの二人には、余裕が見受けられる。
「それじゃあ、いっちょ遊んでやるか。どこからでも来いよ」
「手加減無用だ。本気で来るといい」
■背比べ(ザマス+ベジット+合体ザマス)
切っ掛けは、ベジットの「かみさまの腕って、オレより細いんだな」という一言だった。
何気なく呟いたベジットとしては、見たままの感想であり他意は無かったのだが、合体ザマスはどうやら当て擦りと受け取ったらしく、「背は我の方が高いがな」と嫌みったらしい言い方で言い返した。
そして始まるどちらの背が高いか論争。口だけの論争から拳を交えた闘争に発展しそうになった寸前、また神殿を壊されてはたまらないと考えたザマスが仲裁にでた。
「私が判断してやるから、二人とも背中合わせに並べ」
言われたとおりに背中合わせで並ぶベジットと合体ザマス。その二人を前にして、ザマスは困ったように小首をかしげた。
逆立った髪が邪魔で、正確な身長がわからない。
少しの間考えたザマスは、ふとあることを閃く。ベジットと合体ザマスに、少しの間そのままにしていろと言い置くと、一旦その場を離れて再び姿を現した。
ザマスの腕には大判の本が抱かれている。この本を二人の頭にのせれば、本の傾きで新潮が比較できるというので、ザマスがやりたいとおりにやらせることに決めた二人。
再度、ベジットと合体ザマスが背中合わせに並んだところ、ザマスは大判の本を凄い勢いで叩き付けたのだった。
「二人とも硬そうな髪質に見えたから、勢いつけて本を置かなければいけないと思った」
痛む頭を抑えて蹲るベジットと合体ザマスを前にして、ザマスはそう言いのける。
一切の反省はしていない模様。
お昼時、畑仕事から家に帰ってきた孫悟空は、珍しく興奮していた。
「チチ! チチ! プレミアムフライデーって知ってるか!?」
最終週の金曜日は、仕事を早く切り上げて帰宅する制度。
先程、もうすぐ昼ご飯ができるから、家に戻るように伝えに来た息子の孫悟天から、その制度のことを教えてもらった孫悟空は目を輝かせた。
折しも、今日は最終週の金曜日だった。
「プレミアムフライデーって、働き方改革っていう制度のひとつで、最後の週の金曜日は短い時間しか仕事しなくていいらしいぞ! だから、今日はもう仕事やめて……」
――修行していいか?
そう言葉を続けようとしたのだが、修行の「しゅ」を口にした瞬間、チチが無言で包丁を握ったので孫悟空は口を噤む。
秋を迎えた農家に、休みなどあろうはずもない
■ねこと嘘(ビルス+シン)
至急、破壊神ビルスに伝えねばならないことができたので、第七宇宙界王神シンは地球のカプセルコーポレーションに単身で降り立っていた。
半円形の建物のテラスで、地球のご馳走をほおばっていたビルスに、おっかなびっくりしながらも、なんとか報告をすませる。
シンから話を聞いたビルスは、話を理解しているのかいないのか不明だったが、それでも下がって良いと許されたことでほっとしたシンは、お暇しようとビルスに一礼して背を向ける。
だが、振り返った先で、ひなたぼっこしている黒猫の姿が目に止める。シンは興味を引かれてそちらに近寄った。
あまりにも気持ちよさそうに寝そべっているので、シンも思わず顔を綻ばせた。
「猫、かわいいですね」
シンが近寄ってかがんでも、その猫は逃げずに陽の光を浴びながら目を細めている。シンが優しい手つきで体を撫でてやると、猫はゴロゴロと喉をならした。
ビルスはそんな猫と戯れているシンの様子を横目で眺めながら、
「丁重に扱えよ。猫は僕の眷属だからお前を見張っているし、何かあればそいつらから僕に報告が来るからな」
「……こ、こんにちは」
以降、シンは地球で猫に会う度にびくびくしながら挨拶している。ビルスの嘘はまだバレていない。
■お茶の淹れ方(ゴワス+ザマス+ブラック+合体ザマス)
ゴワスが界王神界の神殿にある談話室を訪れると、そこには既にザマス、ゴクウブラック、合体ザマスの三人がそれぞれソファに腰掛けて、思い思いに過ごしていた。
ザマスは足を揃えて座り、ブラックは足を広げて座り、合体ザマスは足を組んで座っている。
存在する時間軸が違うとは言え、全員『ザマス』であるはずなのに、三者三様の座り方。
思わず本当に同一人物なのか訝しんだゴワスだったが、後日、彼の為に淹れられた紅茶を一口飲んだ後、その疑問は跡形もなく消え去った。
甘い香り、豊かな風味。その紅茶の味と香りは、誰が淹れても、『ザマス』が淹れた紅茶だった。
■同じ身長、同じ体重、同じサイズ(ベジット+孫悟空+ブラック)
……体が同じって事は、アレもカカロットと同じなのか。
……オラと同じサイズなのか。
「……何なんだ、お前達。さっきから、無言でこちらを見つめてきて。気色の悪い……」
ゴクウブラックは、無言のまま、じーっと自分の腰辺りを見つめてくるベジットと孫悟空の視線を受けて、気味が悪そうに呟いたのだった。
■恋愛模様(ベジット+ブラック)
鳥が爽やかに鳴く朝。
ゴクウブラックは合体ザマスの部屋の扉をノックしていた。
現在、この界王神界には、界王神見習いとしてザマス、ゴクウブラック、合体ザマスの三人がおり、普段は三人とも忙しく働いているのだが、今日は全員が休みだった。
務めの時は、界王神見習いの服を着用しているブラックだが、仕事が休みの今日は道着を着ている。武神として精進する為に修行をしようと思っているのだが、どうせなら合体ザマスと一緒に修行がしたい。
そう思ったブラックは、合体ザマスの部屋にやって来た。ザマスは先に修行場に向かっている。
重厚な木の扉をノックすると、扉の向こうから近づいてくる気配がある。
――ん?この気は……。
かちゃっと扉を開けて中から出てきたのは、合体ザマスではなくベジットだった。いつもの道着を来ているが、紺色の上服だけは脱いでいる。
ベジットはちょくちょく第十宇宙の界王神界に遊びに来ているので、彼の姿は特別珍しいものではないが、今はまだ地球に戻ったまま、こちらには帰ってきていないと思っていたので、ブラックは意外そうに目を丸くした。
「お前か。戻って来ていたのか」
「ああ。昨日……っていうか、今日だな。日付が変わる頃に戻ってきた」
「そうか――ところで、あいつは?」
この部屋の主人である合体ザマスの居場所を尋ねれば、ベジットは事も何気に、
「あいつなら、遅くまで起きてたから、まだ寝てる。起こそうか?」
「いや、寝てるならいい」
ブラックはかぶりを振って遠慮した。
――ベジットがこの界王神界に来ると、早起きであるはずの合体ザマスが、昼近くまで寝ていることが多くなる。ゴワスやザマスは、ベジットと全力で修行するからだろうと考えているようだったが――ブラックは、薄々、そうではないのだろうなと感づいていた。
そして、それはベジットがこうして、合体ザマスの部屋から出てきたことで確信に変わる。
「あまり、羽目を外しすぎるな」
夜ふかしを咎める言葉だが、その言葉の裏にある意味をしっかり汲み取ったベジットは、ニヤッと笑うと、
「ちゃんとわかってる。その証拠にあいつが仕事に寝坊したことないだろ? 仕事の日は手加減してやってるよ。
――ところで、仕事の話か?」
「違う。一緒に修行にでもどうかと誘いに来ただけだ」
「あ、それならオレも一緒に修行したい」
「構わないが」
ベジットが相手なら不満はない。ブラックは悩むことなく了承した。
「ところでさ……」
ベジットは扉から顔を覗かせて、廊下をキョロキョロと見渡しながら、
「あっちのザマスも一緒か?」
「そうだ。先に修行場に行っているが……何故、気にする?」
ブラックの視線が鋭くなる。ザマスと合体ザマスは瓜二つだ。合体ザマスに少なからぬ好意を抱いているはずのベジットの目に、ザマスがどう映るか。それを考えた瞬間、ブラックの心にベジットに対する警戒心が生まれた。
ベジットは肩をすくめるとおどけた口調で、
「あっちのザマスもちょっと気になってたからな」
「……お前を修行に誘うのを止めようか」
「冗談だって。つまみ食いとかしたりしないから心配するな。かみさまから今日はザマスも休みだって聞いていたから、ただ単に一緒に修行できないかと思っただけだ」
「本当だろうな?」
「安心しろって。人のものに手を出す趣味はねぇから」
「っ!」
ベジットがさらりとそう言うと、ブラックは驚きで言葉を詰まらせた。
「……気づいていたのか」
「バレバレだ。まあ、かみさまとゴワス様は気づいていないようだがな」
「孫悟空は?」
「気づく分けねーだろ、あの野暮天が」
「ならばそのまま黙っていろ。誰にも言うな。ザマスが、オレとの関係を他に知られることを望んでいない」
「別に良いけどよ。それなら、かみさまの事も黙っていてくれよ。あいつも大っぴらになるのは嫌だって言ってたから」
「仕方がないな。
――それより、修行に付き合う気があるなら、そろそろ行くぞ。ザマスが待っている」
「あ、ちょっと待てよ。上着を取ってくるから」
「さっさとしろ」
第十宇宙の界王神界に流れる密かな関係。その全容を理解しているのは、この二人だけだった。
■繁忙期(ベジット+孫悟空+合体ザマス+ザマス+ブラック)
手合わせしたさに、毎度毎度、第七宇宙の破壊神とその使いをタクシー代わりにして、第十宇宙に向かう孫悟空とベジット。ザマス、ゴクウブラック、合体ザマスの三人は呆れつつも、子供のように瞳を輝かせながら、手合わせを願ってくる二人の相手をしていた。
だが、仕事が忙しい時は別である。
忙しなく本棚と机を往復する足音。ひたすら響く字を書く音。
ピリピリとした雰囲気の中、孫悟空は恐る恐るザマスとゴクウブラックに声をかける。
「なあ、手合わせ……」
「後にしろ」
「ちょっとだけ……」
「勤めの邪魔をするな」
ザマスとゴクウブラックから、けんもほろろに断られる孫悟空の背後では、ベジットが、何やら真剣に書物を読み込んでいる合体ザマスに声をかけていた。
「少しくらい、いいだろ」
「……」
「無視かよ……」
一心不乱に仕事をするザマス達。部屋にあった椅子に座った孫悟空とベジットは、ふてくされた表情でそれを眺めていたのだった。
■身勝手の極意(孫悟空+ザマス)
「底知れない力を持っているな、サイヤ人というのは」
涼しい風が吹く中庭で、ザマスは呆れたような感心したような調子でそう言った。
中庭に置かれた白のガーデンテーブルを挟んで、ザマスと孫悟空がお茶を飲んでいる話題は、先日行われた力の大会で、孫悟空が披露した身勝手の極意についてである。
「自分の意思じゃ、発動できないんだけどな」
「破壊神でさえ習得が困難な技だ。素直に誇れ」
ザマスは時の指輪を悪用した罪で、第十宇宙の界王神界から出ることを禁止されていた為、会場で観戦することは叶わなかったが、神チューブで一部始終を見ていたので詳細を知っている。
「ザマスも一緒に修行しようぜ。きっと習得できるって。目の色が身勝手の極意と似てるし」
「……もう少しまともな発破をかけられないのか、お前は」
「でも、本当に似てると思うんだけどよ」
そう言うなり、孫悟空はぐいっと顔を近づけた。
「っ!?」
腕を伸ばしきらずとも、反対側に手が届くほど狭いテーブルだ。いきなり眼前まで孫悟空が近づいてきたので、ザマスは思わず仰け反った。
「よく見えない」
孫悟空はザマスの両肩を掴んで自分に引き寄せる。吐息すら感じられるほどの近距離。
緊張で体を強張らせるザマス。
ザマスの瞳を覗き込もうと顔を近づける孫悟空。
そして、鬼の形相で孫悟空の背後に出現するゴクウブラックの姿があったのだった。
■毎年、家庭菜園で大量に採れるトマトとピーマンとキュウリとなすの消費に困っている癖に、収穫量を減らさない上に植える苗の本数を増やす我が家族をどうにかしたい(我がごと)(孫悟空+ベジット)
夏。さんさんと降り注ぐ太陽の光を目一杯浴びて、植物達の生命力が旺盛になる季節。
孫悟空は、一抱えほどの大きさの段ボールを両手に抱えて、カプセルコーポレーションを訪れていた。
半円形のマンション構造になっている建物の一角。空からベジットが泊まっている部屋を見てみると、彼はちょうどベランダの手すりにもたれ掛かって、グラスの水を飲んでいるところだった。
ベジットは普段、第十宇宙の界王神界に入り浸っているので滅多に会えないが、時々、食糧補給も兼ねて地球に戻ってくることがある。
孫悟空とベジータが合体して生まれた戦士であるベジットは、当然の如く宿無しである為、地球に戻ってきた時は、専ら金銭的にも部屋の数にも余裕があるカプセルコーポレーションに厄介になっていた。
「よう、ベジット。ほい、オラん所で取れたピーマンのお裾分け」
どうやら、ベジットは寝起きのようで、蒼い髪はボサボサだし、衣服はTシャツにトランクス一枚という気の抜けた格好だ。
ベジットは、舞空術を使って直接ベランダに降り立った孫悟空に視線だけを向けると、段ボールに溢れんばかりに詰め込まれているピーマンを見て顔を顰めた。
「いらねぇ。持ってくるんなら、料理してから持ってこい」
「折角、持ってきてやったのに。わがまま言うなよ、自分で料理したらいいだろ」
「オレのベースは、お前とベジータだぞ? 焼いて塩胡椒を振るくらいしかできねぇよ。飽きる」
説得力がありすぎる理由を聞いて、孫悟空は思わず納得したのだった。
後日。
「おーい、ベジット。おらんとこの野菜のお裾分けを持ってきたぞー! そのまま食べられるから、料理できねぇお前にぴったりだろ」
「だからって毎日キュウリばっかり持ってくんじゃねぇええええええええっ!」
連日キュウリばかり届けられる事にキレたベジットは、孫悟空に鉄拳制裁を課したのだった。
■歳時記:お正月(ザマス+ブラック+ベジット+合体ザマス+ゴワス)
談話室にある縦長のテーブルには、ベジットが持ち込んだ地球の品々が積まれていた。
ゴワスは目を輝かせながら、
「ほう、これが地球の新年を祝う品々か」
「縁起を担ぐ物がほとんどですね」
合体ザマスは、鏡餅の上に乗っていた橙を手に取って興味深げに眺めている。
その隣で、ザマスは絵本を開いて読んでいた。正月飾りの由来や意味が、子供向けの平易な言葉で書かれている。
ザマスはざっとそれに目を通しながら、向かいで同じように正月に関する書籍を眺めていたゴクウブラックに声をかけた。
「人間を理解する為に、人間の風習を真似てみようと計画したは良いが、ほぼ神に願いを届ける物ばかりだ。神である我らが実践するには違和感があるな。そう思わないか?」
「あ、ああ。そうだな……」
ブラックの返答は、歯切れが悪かった。
彼が手にした書籍に書かれた、『姫はじめ』の一文。それが気になって仕方がないブラックと、密かに今晩実施する気満々のベジットと。
■サングラスとマスクが必需品(ゴワス+ベジット+合体ザマス)
ベジット、合体ザマス、ゴワスの三人がテーブルを囲んでお茶をしていた。
「暗いところから明るいところに行くと、目が痛くなることあるよな。最近、夏になって陽射しが強くなったからから、たまに目が痛くなるんだよな」
「それは難儀だな。
――そうだ。それなら私のサングラスをあげよう。陽射しの下に出る時にかけるといい」
ゴワスは立ち上がると、サングラスを持ってくると言って自分の部屋に向かう。
ベジットはその後ろ姿を見送りながら、合体ザマスに向かって意外そうに、
「ゴワス様って、サングラスとか持ってるんだな」
ベジットがそう言うと、合体ザマスは視線を逸らしつつ、言いづらそうに言葉を紡いだ。
「……神チューバーに、興味がおありでな」
「神ちゅーばー?」
■お手伝い(ベジット+合体ザマス+ザマス+ブラック)
合体ザマスの仕事を手伝うと言ったのは、ベジットの思いつきだった。
いつも合体ザマスが仕事をしている間は一人で時間を潰しているので、だったら仕事を手伝ってやったら暇つぶしにもなるし仕事も速く終わって、一石二鳥かもしれないと考えたからでもある。
ベジットの申し出を聞いて、合体ザマスは少々驚いたものの、折角彼が手伝うと言っているのだから働かせてやろうと仕事を割り振った。
ベジットに割り振られた仕事は、当然専門的な知識も技術もいらない単純作業。ベジットもこれなら問題ないと手伝い始めたものの――
「やり直し」
合体ザマスはベジットに書類を突き返した。
「誤字脱字があるリストが順番通りになっていないレイアウトがおかしいやり直せ」
ベジットが不満の抗議をあげる間もなく、合体ザマスは一息で書類の不備を指摘する。
口を挟むタイミングを失ったベジットは、言いたいことを言った後さっさと自分の仕事に戻った合体ザマスを、苦虫を噛み潰した顔で見つめるが、彼はひたすら羽根ペンで何かをノートに書き込んでいてベジット方を見向きもしない。
ベジットは書類を両手に持ったまま、渋々といった様子で先程まで作業をしていた席に戻ると、隣の席で資料に目を通していたザマスに愚痴る。
「なー、聞いてくれよ。かみさまの言うとおりに作ったのに細かいことグチグチ言ってやり直しさせるんだが……」
「文字の大きさが異なっているフォントの種類が統一されていないお前が悪い」
「……」
ベジットの言葉を遮って、ザマスは、ベジットがひらひらさせている書類をちらっと横目で見ると、合体ザマスと同じようににべもなく言い放ったのだった。
「行間、余白が規定通りになっていない」
「グラフがおかしい」
「表紙のタイトルの位置が違う」
「グラフの位置と段落の頭の位置を合わせろ」
「だああああ! お前ら細かすぎ!」
「……ってことがあってよ、途中で仕事の手伝いを辞めようとしたら、かみさま達が『仕事を途中で投げ出すとは何事だ!』って怒ってさ。悪いけど、あいつらの機嫌が直るまで匿ってくれねぇか?」
ベジットが顔の前で手を合わせてお願いしているのを横目に見ながら、ゴクウブラックは無言のまま合体ザマスとザマスに通報したのだった。
■食事制限再び(ベジット+ブラック)
強い陽射しから逃れる為、ベジットは木陰の下に胡座をかいて座っていた。地べたの上に直接座っているが、道着が土で汚れて気にするような人間ではない。
「この間は、かみさまとザマスに、いきなりダイエットさせられそうになって酷い目に遭った」
ベジットは、直ぐ近くにある木の幹に背を預けて立っているゴクウブラックに、先日の出来事を話していた。
「お前の体を思ってのことだろう。神の慈悲をありがとうく思え」
だがブラックはにべもなく言い放つ。
ベジットがザマス達に食事制限させられそうになった件は、ブラックも知っている。確かに、あの食事量を見れば、そう考えてしまうのも仕方がないとザマス達の考えに共感していたブラックは、同時に自分には関係の無いことと考えていた。
しかし、それから暫くして。
季節が秋に変わった頃、深夜にお腹が空くので夜食を食べるという生活を連日続けていたら、とうとうザマスが『食事管理』『痩せる』『ダイエット』というキーワードが記載された本を、真剣な目で読み始めたので、強制的にダイエットさせられるのではないかと戦々恐々な日々を送る羽目になるブラックであった。
■あんなこといいな できたらいいな(ベジット+ブルマ)
ブルマは、ガレージでバイクを修理していた。
ベジットが趣味で買ったバイクなのだが、最近調子が悪いと相談を受けたので、修理ついでにオーバーホールしているところである。軍手をしてレンチを片手にバイクをいじっていたブルマは、ふと思いついて、近くの窓枠に腰掛けてこちらの様子を見守っていたベジットに声をかけた。
「ところでさ」
「ん?」
「あなた用の新しいスマートフォンを作ろうと思うんだけど、何か欲しい機能とかある?」
「かみさまの一撃を食らっても消し炭にならない機能。機嫌の悪いかみさまを宥める機能」
「無茶を言わない」
■挑戦(ベジット+合体ザマス+ザマス+ブラック+孫悟空+ベジータ 多すぎ)
風が吹きすさぶ荒野の真ん中で、孫悟空、ベジータ、ゴクウブラック、ザマスは隙無く戦闘の構えを取っていた。
四人と対峙するのは両耳にポタラをつけた二つの影――ベジットと合体ザマスだ。
鋭く相手を睨み据える四人に対して、ベジットと合体ザマスの二人には、余裕が見受けられる。
「それじゃあ、いっちょ遊んでやるか。どこからでも来いよ」
「手加減無用だ。本気で来るといい」
■背比べ(ザマス+ベジット+合体ザマス)
切っ掛けは、ベジットの「かみさまの腕って、オレより細いんだな」という一言だった。
何気なく呟いたベジットとしては、見たままの感想であり他意は無かったのだが、合体ザマスはどうやら当て擦りと受け取ったらしく、「背は我の方が高いがな」と嫌みったらしい言い方で言い返した。
そして始まるどちらの背が高いか論争。口だけの論争から拳を交えた闘争に発展しそうになった寸前、また神殿を壊されてはたまらないと考えたザマスが仲裁にでた。
「私が判断してやるから、二人とも背中合わせに並べ」
言われたとおりに背中合わせで並ぶベジットと合体ザマス。その二人を前にして、ザマスは困ったように小首をかしげた。
逆立った髪が邪魔で、正確な身長がわからない。
少しの間考えたザマスは、ふとあることを閃く。ベジットと合体ザマスに、少しの間そのままにしていろと言い置くと、一旦その場を離れて再び姿を現した。
ザマスの腕には大判の本が抱かれている。この本を二人の頭にのせれば、本の傾きで新潮が比較できるというので、ザマスがやりたいとおりにやらせることに決めた二人。
再度、ベジットと合体ザマスが背中合わせに並んだところ、ザマスは大判の本を凄い勢いで叩き付けたのだった。
「二人とも硬そうな髪質に見えたから、勢いつけて本を置かなければいけないと思った」
痛む頭を抑えて蹲るベジットと合体ザマスを前にして、ザマスはそう言いのける。
一切の反省はしていない模様。
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