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とばっちり(黒にょたザマ)

 とある日。神龍が召喚されている横で、ベジットが『女になったザマスを見てみたい』とか余計なことを言ったせいで、『ザマス』の体は女性の体に変化したのだった。



ドラゴンボールの力で女性に性転換した合体ザマスが、自身の体に起こった奇異な現象を理解できずにあたふたしている頃、ゴクウブラックは自室の一人用ソファに腰掛けて本を読んでいた。

 ――ダンダンダン!

 いきなり激しいノックの音が部屋に響く。
 反射的に気を探ると、扉の外でザマスの気配を感知した。
「ザマス、どうした? 何があった?」

 様子からしてただ事ではない。本をテーブルの上に置くと、急いで扉の方へ向かう。ブラックが扉を開くや否や、険しい表情をしたザマスが部屋の中で潜り込んできた。

「どうした?」

 ブラックがそう尋ねると、ザマスは動揺をはらんだ声で、

「……私にも何が起こったのかわからない。なぜだかわからないが、体が女性になってしまった」
「……は?」

 一瞬、何を言われたのか理解できなかったブラックは、呆けた声を出した。

「何を言って……」
「本当なんだ!」

 突然、ザマスはブラックの言葉を遮って大声を上げた。彼(彼女)の瞳は不安に揺れている。どうやら、平静を保てないほど混乱しているようだ。

「いきなり体が女性のものに変わったんだ! 嘘ではない! 見ろ!」

 ザマスは、自分の言葉が真実であることをブラックにわからせるために、自分の上服の合わせを勢いよく開いて見せた。

「……っ!?」

 ザマスの胸が柔らかく丸みを帯びているのを認めた瞬間、ブラックは思いっきり視線を逸らした。

「ちゃんと見ろ! なぜ視線を逸らす!?」
「いや、あのだな……!」

 真っ赤な顔したブラックは、恥ずかしさから視線を逸しつつ後ずさった。だが、混乱して視野狭窄に陥っているザマスは、ブラックの顔が耳まで真っ赤なことに気づかず、何とかして自分の体に起こった異変を認識して貰うことに必死だった。

「突然だったんだ! 何の前触れもなしにこの体は変化した! 何でだ!?」
「いや、その前に服を……!」
「一緒に考えてくれ! 私だけでは解決出来そうにないんだ! 見捨てないでくれ!」
「見捨てるつもりはないから、服を……!」
「かつての己の体が変容しているのは受け入れ難いだろうが、これは紛れもない事実なんだ!」
「だから頼むから服を……!」

 頑なにこちらを見ようとしないブラックに焦れたザマスは、業を煮やして彼の片腕をつかみ取る。

「幻惑の類いだと思っているのか!? ならば直接触って確かめてみろ!」
「待て待て待て待て! わかった! わかったから! 理解したから! 一緒に解決策を考えるから! 服をちゃんと着てくれ!」



 ブラックが必死にザマスを宥めて服を着せよう格闘して、そしてその目的が達成した頃。
 突然、神殿内に轟音が響き渡ったのだった。

 二人は驚いて、即座に音の出所に向かう。緊張した面持ちで辿り着いたそこでは、ザマスと同じように女性化した合体ザマスが、いつの間にかこの界王神界にやって来ていたベジットを襲っているところだった。

 完全にキレている合体ザマスを、なんとか落ち着かせようと苦心している最中、ザマスを見たベジットは、一瞬驚きの表情を浮かべたものの、すぐに何やら納得したように言葉を零した。

「ああ、そうか。お前も『ザマス』だから女になったのか」

 聞き捨てならない言葉だ。ザマスとブラックの二人はベジットに説明を求めると、彼は
ザマスの体が女性になってしまった理由を手短に話す。

 地球で起こった一連の流れを聞いた瞬間――ザマスとブラックは、合体ザマスの好きなようにさせようと決めたのだった。



 ベジットを見捨てつつ、ゴワスを安全な場所に退避させた後に自分の部屋に戻ったブラックは、ソファにぐったり座ると、両手で顔を覆って項垂れた。
 
「全く、なんという事態を引き起こすんだ、サイヤ人は……」

 ザマスの半裸を思い出して、耳がちょっと赤くなる。斜向かいのソファに座って足を組んでいるザマスも怒り心頭に発した様子で、

「流石、半分は孫悟空で、できているだけはあるな」

 その時、部屋の扉をノックする音が響く。ブラックが扉を開けると、そこには噂をすればなんとやら。孫悟空が立っていた。

「よ! ベジットから話を聞いたんだけどよ、ザマスが女になっちまったんだってな。大変だな。ところで、今から一緒に修行できるか?」

 ブラックに部屋の中に迎え入れられた途端、修行をねだる孫悟空を見て、ザマスはソファにため息をつく。

「他に言うことがないのか、お前は……」



 だが、気晴らしにはちょうど良い。ザマスもブラックも、孫悟空の修行に付き合うことにした。
 未だに大暴れしている合体ザマス達から離れた場所で修行を始めたものの、すぐにザマスが『胸が揺れて痛い』と訴え始めた。

「どうしたらいいんだ!? 修行もまともにできないぞ!」
「女って大変だな」

 予想外の事態にザマスは再び狼狽え、そんな彼女を孫悟空は呑気に眺めている。ザマスを宥めていたブラックの脳裏に、ふとある考えが思い浮かんだ。

「孫悟空。そういえば、お前には妻がいたな。こういう場合、どうしたらいいか聞いてこい」
「えー」

 地球にとんぼ返りさせられる孫悟空は不満げだったが、このままではザマスが満足に修行ができないとブラックに説教されたので、渋々地球に戻ったのだった。

 家に帰って、夕飯の支度をしていたチチに相談すると、彼女は包丁でネギを切る手を止めないまま、

「ブラをつけたらいいだよ。オラが買ってきてやるから、サイズを教えてくんろ」
「サイズ?」



「この巻き尺を使って、胸のてっぺんと一番下を測ればいいってよ。早く終わらせて修行しようぜ」

 チチが作った美味しい夕食をしっかり食べてから第十宇宙に戻った孫悟空は、自宅から持ってきた巻き尺をザマスに差し出した。

 ザマスは巻き尺を受け取ると、思い詰めた顔をして暫くそれを眺めていたが、やがてその顔をブラックに向けた。

「おい」
「ん?」

 ザマスは巻き尺をぐいっとブラックの胸板に押しつけると、

「測ってくれ」
「なぜ私が!?」
「今の自分の体を直視できないんだ! 頼む!」
「それを言うなら私だって……!」

 ただ巻き尺で胸を測るだけなのに、何やら揉め始めた二人を見て、焦れったくなった孫悟空が口を挟む。

「もー、なんで揉めてんだよ。二人ともやりたくないなら、オラがや……」
「私がやる!」

 ブラックの声は孫悟空の言葉を遮るほどに大きかった。



「測定してきてやったぞ!」

 ブラックはザマスのバストサイズが記された紙を、孫悟空の眼前にびしっと突きつけた。 顔が真っ赤である。測定中、視界に入れないよう努力していたが、色々見てしまったらしい。

「なんで怒ってんだよ」
「いいから、早く地球に行って必要なものを持ってこい!」
「へーい」



 孫悟空は一人で地球と第十宇宙を往復することができない。破壊神ビルスとその付き人に頼んで連れてきて貰っているのだが、その度に気まぐれで短気な破壊神を説得したり、見返りを用意したりするのは骨が折れる。

 チチから下着の詰まった紙袋を貰って、再び第十宇宙に戻った孫悟空は、先程まで『僕らへのお礼を忘れるなよ! 忘れたら地球を破壊するからな!』と、耳元でがみがみ怒っていた破壊神のせいで、げんなりとした顔をしていた。

「持ってきたぞ……」
「中身を出すな!」

 ブラックは、わざわざ紙袋から下着を取り出そうとした孫悟空の頭を思いっきり殴る。 殴られたところを押さえて痛がっている孫悟空の手から紙袋をひったくると、自室で待機しているザマスの元へと渡しに行った。

 ザマスの部屋に入ると、部屋の主であるザマスがソファから立ち上がって出迎えた。

「ほら、これを身につけろ。それで問題が解決するはずだ」
「では早速」
「ここで脱ぐな!」

 受け取った紙袋をソファに置くと、いきなり腰紐を解きだしたザマス。ブラックは叫びながら彼女に背を向けた。

「ここは私の部屋だ。ここ以外のどこで着替えろと言うんだ? 外か?」

 ザマスは慌てるブラックに構わず、するする上服を脱いでいく。

「わ、私が言いたいのは、そういう事ではなくてだな……」

 ブラックは動揺したまま弁明するが、衣擦れの音が妙に耳について上手く言葉が紡げない。

 同じ『自分』だからだろうか。ザマスは女になった己の裸体を、ブラックに見せることに抵抗がないようだった。
 密かにザマスに思いを寄せるブラックにとって、それは嬉しくもあり悲しくもある事実だ。
 欲望と理性の間で揺れるブラックの葛藤などつゆも知らないザマスは、

「怒るな。ほら、もうこっち向いて良いぞ」

 ブラックが言われた通りに振り返ると、そこには上服をすべて脱いでブラ一枚のみを身につけたザマスが、平気な顔をして立っていた。

「!?」

 ブラックは驚きつつも、視線は不意打ちで見せられた下着姿から離れない。その視線に気づいていないのか、ザマスは肩紐の位置を調整したりしながら、普段通りに話しかけてくる。

「どうだ? おかしなところは無いか?」

 ブラックに尋ねるが、返事は無い。ブラックは口を半開きにしたまま、こちらに視線を向けて固まっていた。

――何か、おかしな所があったのだろうか? サイズなど特に問題ないように思えるのだが……。

「おい、どうした? 何か変なところがあったか?」

 ザマスがそう声をかけると、ブラックははっと我に返り、

「……肩紐がもつれている」
「え?」

 ブラックは腕を伸ばすと、ザマスの肩紐の下に指を差し入れてすっと紐をなぞる。鎖骨あたりからもつれていた紐が綺麗になった。
 指にかすかに触れるザマスの肌が、ブラックの意識を虜にしようとする。ブラックの心臓は、ブラック自身が五月蠅いと思うほどに鼓動していた。

「すまない。やはり、初めて着るから、そういう細かいところに気が行き難いな。他に何か変なところはないか?」

 ブラックに異常を確かめさせるために、ザマスはさらに彼に近づく。

――我慢の限界だった。

「な、ない!」

 ブラックは大声でそう言うと、ザマスの返事も待たずにその部屋から飛び出していった。 バタン! と荒々しく閉められた扉を、ザマスはきょとんとした顔で見つめていたのだった。



 廊下に出たブラックは全力で自室に戻る。扉を開け、後ろ手で乱暴に扉を閉めた瞬間、力が抜けたように扉にもたれ掛かると、そのままずるずるとその場に座り込んでしまったのだった。

 早くザマスを元に戻さないと、こっちの理性が持たない……。

 ブラックは座り込んだまま頭を抱えた。

 いや、しかし下着問題は解決したのだから、これ以降は普段通りに過ごせば良いはずだ。 今日のように動揺させられっぱなしの日はもう来ないはずだと、ブラックはくじけそうになる自分を叱咤した。

 しかし、ブラックの思惑とは裏腹に、この出来事以降も、「下も女性用の下着を身につけた方がいいと思うか?」とザマスがパンツ片手に訪ねてきたり、寝間着(ノーブラ)のままブラックの元を訪れたりと、彼にとってはある意味過酷な精神修行の日々が続くことになるのだった。



――再びドラゴンボールが使える日まで、あと364日。
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