小話(ベジザマ)
■生活リズムが合わない日
基本、寝付きは良い方の合体ザマスだが、今夜はやけに眠れなかった。
目を瞑っては薄ら開き、落ち着かなくて体の向きを変える。そうやってベッドの上をころころしていたら、隣で寝ていたけれども合体ザマスの身動きで目を覚ましたベジットが、がしっと抱きついてきた。
「何をする、不届き者」
「動くな。寝ろ」
「眠れない」
「それでも寝ろ。ころころ動くな。こっちが眠れねぇ」
「ならば諦めてそのまま起きていろ」
「無茶言ってんじゃねぇよ。いいから目を閉じてじっとしていろ。さもねぇと、絞め落とすぞ」
「……どっちが無茶を言っているんだ」
合体ザマスは呆れつつそう呟くと、仕方なしに目を瞑ったのだった。
合体ザマスが無理やり目を閉じて眠りについてから数時間後。
目を覚ましたベジットは、上半身を起こすとその場で伸ばをした。存分に強張った体をほぐすと、隣で寝ている合体ザマスの肩を揺さぶる。
「おーい、起きろよかみさま。もう朝だぞ」
「まだ朝ぼらけの時間帯だ! せめて日が昇りきるまでは寝ていろ!」
合体ザマスは五月蠅そうにベジットの手を払うと、布団を頭の上まで被って潜り込んでしまったのだった。
■鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?
「どおぉぉぉして貴様は掃除のひとつもまともにできぬのだ? ん? 見ろ、我の鏡が曇っているではないか」
何となく機嫌が悪い合体ザマスは、雑巾で拭かれたせいで埃が付着した手鏡を掲げながら、ベジットに詰め寄っていた。
散々掃除させられて鬱憤が溜まっていたベジットは、額に青筋を立てながらその手鏡を合体ザマスの手から奪い取ると、
「てめぇのその面を写すには充分だろ。見ろよ、かみさまの嫌みったらしい顔がしっかり映っているじゃねか」
煽りながら、鏡に合体ザマスの顔を映してやる。罵声が飛んでくると予想していたベジットだったが、予想に反して合体ザマスは黙ったまま鏡をじっと見つめていた。
「……おい。どうした?」
眉を顰めながらベジットが問いかけると、合体ザマスは両手を頬に添えながら、
「美しい……!」
「……」
ベジットは、自分の顔を眺めながら惚れ惚れと呟く合体ザマスを見て、顔を引きつらせる。
付き合いは長いが、未だにこの自分自身の容姿に陶酔する合体ザマスは、理解できなかった。
■酔っ払い(漫画版ベジザマ)
珍しく、酒が飲みたくなったベジットは、自室に呼びつけた合体ザマスに酌をさせて、気の向くままにしこたま飲んでいた。
「お前は殺しても死なないし気を遣わなくてもいいから、実は気に入ってんだよ。ほら、ご褒美のちゅー」
「やめろ離れろ汚らわしい!」
五分後。酔っ払いのベジットに力負けした合体ザマスは、彼の濃厚な口付けを受ける羽目になったのだった。
■冷えた指先は凶器
冬の寒さで冷たくなった手で、背後から相手の首元を触って驚かすという悪戯。よくある冬の風物詩。
ベジットが軽い気持ちで合体ザマスにその悪戯を仕掛けると、神速の裏拳を顔面に喰らうことになる。
■ヒーローズのPVでベジットと合体ザマスの再会シーンをやって欲しかった
お互い、すぐに気がついた。
顔を合わせた時間は短かったが、命を賭して全力で戦った相手を忘れられるはずがない。
ベジットは不敵な笑みを浮かべながら、夜空を背景にして空中に佇むその存在に声をかけた。
「よぉ、いつかのかみさまじゃねぇか。いい格好してるな」
記憶にある姿とは違い、衣服はぼろぼろになり、右目には眼帯が巻かれている。
だが、その身体から感じられる気は以前と同じ――いや、以前に増しても強くなっていた。
また、かつて戦った時のように、一瞬の判断が勝敗に繋がる本気の戦いができることを察知して、ベジットの笑みは深くなった。
だが、ベジットに声をかけられた合体ザマスは、顎に手を当てて小首をかしげると、
「はて、お前は誰だったかな?」
すっとぼけた口調でそう言った。
「あ? なんだその下手クソな芝居は。オレのこと覚えているだろう?」
「知らん。私に勝てなかった人間のことなど、いちいち覚えていない」
ベジットの口元が引きつった。彼は、引きつった顔で無理やり笑みを作ると、極力穏やかな声音で、
「もしかして、オレが思いっきり顔を殴ったせいで、記憶を失ってしまったのか?
いや、悪いことをしたとは思ってたんだよ。戦いとはいえ 一 方 的 に 地面に叩き付けたり腹を刺したりしたからよ」
今度は合体ザマスが額に青筋を浮かべる番だった。
「……私に忘れられたせいで傷ついたのか?
安心しろ、色々思い出してきたぞ。腹を殴られて悶絶していた貴様のみっともない顔とか」
「へええぇぇぇぇ。じゃあ、次はもっとたくさんオレのことを覚えていられるように、忘れられないくらいの強烈な一撃をお見舞いしてやるよ」
その言葉を皮切りに、ベジットは腰を落として戦いの構えを取る。合体ザマスもまた、戦闘態勢に移行した。
「前みたいに10分で終わると思うなよ」
「やってみろ。以前のようにはいかんぞ」
■以前、コイキングのゲーム流行ったよね
仕事が終わったので、ベジットの相手をしてやろうと、彼がいるであろう中庭に出向くと、ベジットはベンチに座って何やらアプリゲームをやっていた。
「何のゲームだ?」
合体ザマスが隣に座りながらそう聞くと、ベジットは、ぴちぴち跳ねる魚を育ててどちらが高く飛ぶか競うゲームと簡単に答えた。
説明を聞いた限り、面白くなさそうなゲームだが、なんでも地球ではこのゲームが流行っているとのこと。
ベジットが持っているスマートフォンの画面を覗くと、『フライ』と名付けられた赤い鯉が跳ねていた。
「『フライ』か。高く飛ぶようにと願って名付けたのか?」
「いや、カラっと揚げたら美味そうだったから」
「……………………」
■思わせぶりな態度
風呂から上がったベジットは、濡れた髪をタオルで拭きながら寝室のベッドの上に腰掛けた。夕飯も風呂も済ませたし、パジャマにしている灰色のスウェットに着替えたので後は寝るだけ。
暫くわしゃわしゃタオルで頭を拭いていると、合体ザマスが寝室に入ってきた気配がする。髪を拭く手を止めて振り返ろうとした途端、ベッドを乗り越えてきた合体ザマスが、後ろから抱きついてきた。
合体ザマスの腕がするりとベジットの首に絡まる。
「どうした?」
ちょっと胸を高鳴らせながらベジットが問うと、途端に合体ザマスの腕に力が籠もった。
「貴様はぁぁぁ! 髪が濡れたままベッドに入るなと何度言ったらわかるのだ!?」
「待て待て待て待て! ちゃんと髪を拭いているだろうが!」
「ドライヤーで乾かせ! 飛沫でシーツが濡れる!」
「細かいんだよお前は!」
■夜のあれこれ
ここは合体ザマスの寝室。間接照明は灯っているが、部屋全体を照らすには光量が足りず、部屋の隅には闇が留まっている。
薄暗い部屋の中で、ぼんやりとした灯りが、ベッドの上の掛け布団の下で、何かがごそごそと動いているのを照らし出していた。その掛け布団の下から、押し殺した合体ザマスの抗議が漏れ聞こえる。
「……いい加減に、しろ! いつまでするつもりだ……!」
「敬いが足りないって言うから、ご奉仕してやってるんだよ」
「あれは……そういう意味ではない!」
暫く、布団の下の動きが止まる気配はなかった。
■達筆
合体ザマスが仕事で相手してくれないので、湖の近くにある木の下に寝転がったベジットは、そのまま暇そうにぼんやりと空を眺めていた。
そこに現れたのは、先ほどけんもほろろにベジットを追い払った合体ザマス。
「起きろ」
眉間に皺を刻んだ合体ザマスは、起き上がったベジットの眼前に、先ほど彼が自分宛てに残したメモをずいっと突き付けた。
「なんだこのミミズがのたくったような文字は」
ベジットは、野山育ちの孫悟空と戦場育ちのベジータが素体の合体戦士である。両名とも机に向かう機会などほぼ無かった為、当然の如くベジットの字も汚かった。
「文句言うなよ。読めれば問題ねぇだろ」
「読めんから文句を言ってるのだ」
ちなみに、そのメモには『仕事が終わったら相手しろ』と書かれていた。
■いつものこと
陽向で佇んでいると汗ばむこの時期。第十宇宙の界王神界では、ベジットと合体ザマスが、並んで湖の桟橋に腰掛けて足を水に浸している姿がよく見られた。
足で湖の水をちゃぷちゃぷかき混ぜながら、とりとめもない会話をしていることもあれば、言い合いの末、激怒した合体ザマスがベジットを湖に蹴り落とすこともあり、ベジットが反撃して合体ザマスの足首を掴んで湖に引きずり落とすこともあり、そこから本気の戦闘に移ることがある。
季節の風物詩と言えるほどに。
「また、喧嘩か。どうしてあの二人は、仲良くできないのか……」
湖のある方向から盛大に沸き起こった水柱を眺めながら、ゴワスは困ったように呟いたのだった。
■(急募)かみさまを黙らせる方法
今日の合体ザマスは、ぐちゃぐちゃうるさかった。
何が気にくわないのか細かいところにケチをつけてくるし、ベジットが「悪かった」と謝罪しても「心が籠もっていない!」と更に怒る。
両手を腰に当ててぎゃんぎゃん喚いている合体ザマスを、うんざりした表情で眺めているベジット。好き勝手に言わせていたが、いい加減聞き流すのにも疲れた。
ベジットは溜め息をひとつつくと、いきなり合体ザマスを引き寄せて口付けをした。身体と後ろ頭に手を回して逃げられないように固定する。
虚を突かれた合体ザマスは、すぐに抵抗を始めたが、ベジットはそれを力で押さえ込む。
舌を差し入れて好きなだけ合体ザマスの口の中を堪能した。充分に時間をかけて味わい、合体ザマスの息が上がる頃に口を離したベジットは、これでようやく静かになるなと思いながら唇のぺろっと端を舐めた。
――だが。
「不埒なことをするな人間!」
顔を真っ赤にして合体ザマスが、先ほどの何倍もうるさくなったのを見て、ベジットは自分の目論見が甘かったことを悟ったのだった。
基本、寝付きは良い方の合体ザマスだが、今夜はやけに眠れなかった。
目を瞑っては薄ら開き、落ち着かなくて体の向きを変える。そうやってベッドの上をころころしていたら、隣で寝ていたけれども合体ザマスの身動きで目を覚ましたベジットが、がしっと抱きついてきた。
「何をする、不届き者」
「動くな。寝ろ」
「眠れない」
「それでも寝ろ。ころころ動くな。こっちが眠れねぇ」
「ならば諦めてそのまま起きていろ」
「無茶言ってんじゃねぇよ。いいから目を閉じてじっとしていろ。さもねぇと、絞め落とすぞ」
「……どっちが無茶を言っているんだ」
合体ザマスは呆れつつそう呟くと、仕方なしに目を瞑ったのだった。
合体ザマスが無理やり目を閉じて眠りについてから数時間後。
目を覚ましたベジットは、上半身を起こすとその場で伸ばをした。存分に強張った体をほぐすと、隣で寝ている合体ザマスの肩を揺さぶる。
「おーい、起きろよかみさま。もう朝だぞ」
「まだ朝ぼらけの時間帯だ! せめて日が昇りきるまでは寝ていろ!」
合体ザマスは五月蠅そうにベジットの手を払うと、布団を頭の上まで被って潜り込んでしまったのだった。
■鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?
「どおぉぉぉして貴様は掃除のひとつもまともにできぬのだ? ん? 見ろ、我の鏡が曇っているではないか」
何となく機嫌が悪い合体ザマスは、雑巾で拭かれたせいで埃が付着した手鏡を掲げながら、ベジットに詰め寄っていた。
散々掃除させられて鬱憤が溜まっていたベジットは、額に青筋を立てながらその手鏡を合体ザマスの手から奪い取ると、
「てめぇのその面を写すには充分だろ。見ろよ、かみさまの嫌みったらしい顔がしっかり映っているじゃねか」
煽りながら、鏡に合体ザマスの顔を映してやる。罵声が飛んでくると予想していたベジットだったが、予想に反して合体ザマスは黙ったまま鏡をじっと見つめていた。
「……おい。どうした?」
眉を顰めながらベジットが問いかけると、合体ザマスは両手を頬に添えながら、
「美しい……!」
「……」
ベジットは、自分の顔を眺めながら惚れ惚れと呟く合体ザマスを見て、顔を引きつらせる。
付き合いは長いが、未だにこの自分自身の容姿に陶酔する合体ザマスは、理解できなかった。
■酔っ払い(漫画版ベジザマ)
珍しく、酒が飲みたくなったベジットは、自室に呼びつけた合体ザマスに酌をさせて、気の向くままにしこたま飲んでいた。
「お前は殺しても死なないし気を遣わなくてもいいから、実は気に入ってんだよ。ほら、ご褒美のちゅー」
「やめろ離れろ汚らわしい!」
五分後。酔っ払いのベジットに力負けした合体ザマスは、彼の濃厚な口付けを受ける羽目になったのだった。
■冷えた指先は凶器
冬の寒さで冷たくなった手で、背後から相手の首元を触って驚かすという悪戯。よくある冬の風物詩。
ベジットが軽い気持ちで合体ザマスにその悪戯を仕掛けると、神速の裏拳を顔面に喰らうことになる。
■ヒーローズのPVでベジットと合体ザマスの再会シーンをやって欲しかった
お互い、すぐに気がついた。
顔を合わせた時間は短かったが、命を賭して全力で戦った相手を忘れられるはずがない。
ベジットは不敵な笑みを浮かべながら、夜空を背景にして空中に佇むその存在に声をかけた。
「よぉ、いつかのかみさまじゃねぇか。いい格好してるな」
記憶にある姿とは違い、衣服はぼろぼろになり、右目には眼帯が巻かれている。
だが、その身体から感じられる気は以前と同じ――いや、以前に増しても強くなっていた。
また、かつて戦った時のように、一瞬の判断が勝敗に繋がる本気の戦いができることを察知して、ベジットの笑みは深くなった。
だが、ベジットに声をかけられた合体ザマスは、顎に手を当てて小首をかしげると、
「はて、お前は誰だったかな?」
すっとぼけた口調でそう言った。
「あ? なんだその下手クソな芝居は。オレのこと覚えているだろう?」
「知らん。私に勝てなかった人間のことなど、いちいち覚えていない」
ベジットの口元が引きつった。彼は、引きつった顔で無理やり笑みを作ると、極力穏やかな声音で、
「もしかして、オレが思いっきり顔を殴ったせいで、記憶を失ってしまったのか?
いや、悪いことをしたとは思ってたんだよ。戦いとはいえ 一 方 的 に 地面に叩き付けたり腹を刺したりしたからよ」
今度は合体ザマスが額に青筋を浮かべる番だった。
「……私に忘れられたせいで傷ついたのか?
安心しろ、色々思い出してきたぞ。腹を殴られて悶絶していた貴様のみっともない顔とか」
「へええぇぇぇぇ。じゃあ、次はもっとたくさんオレのことを覚えていられるように、忘れられないくらいの強烈な一撃をお見舞いしてやるよ」
その言葉を皮切りに、ベジットは腰を落として戦いの構えを取る。合体ザマスもまた、戦闘態勢に移行した。
「前みたいに10分で終わると思うなよ」
「やってみろ。以前のようにはいかんぞ」
■以前、コイキングのゲーム流行ったよね
仕事が終わったので、ベジットの相手をしてやろうと、彼がいるであろう中庭に出向くと、ベジットはベンチに座って何やらアプリゲームをやっていた。
「何のゲームだ?」
合体ザマスが隣に座りながらそう聞くと、ベジットは、ぴちぴち跳ねる魚を育ててどちらが高く飛ぶか競うゲームと簡単に答えた。
説明を聞いた限り、面白くなさそうなゲームだが、なんでも地球ではこのゲームが流行っているとのこと。
ベジットが持っているスマートフォンの画面を覗くと、『フライ』と名付けられた赤い鯉が跳ねていた。
「『フライ』か。高く飛ぶようにと願って名付けたのか?」
「いや、カラっと揚げたら美味そうだったから」
「……………………」
■思わせぶりな態度
風呂から上がったベジットは、濡れた髪をタオルで拭きながら寝室のベッドの上に腰掛けた。夕飯も風呂も済ませたし、パジャマにしている灰色のスウェットに着替えたので後は寝るだけ。
暫くわしゃわしゃタオルで頭を拭いていると、合体ザマスが寝室に入ってきた気配がする。髪を拭く手を止めて振り返ろうとした途端、ベッドを乗り越えてきた合体ザマスが、後ろから抱きついてきた。
合体ザマスの腕がするりとベジットの首に絡まる。
「どうした?」
ちょっと胸を高鳴らせながらベジットが問うと、途端に合体ザマスの腕に力が籠もった。
「貴様はぁぁぁ! 髪が濡れたままベッドに入るなと何度言ったらわかるのだ!?」
「待て待て待て待て! ちゃんと髪を拭いているだろうが!」
「ドライヤーで乾かせ! 飛沫でシーツが濡れる!」
「細かいんだよお前は!」
■夜のあれこれ
ここは合体ザマスの寝室。間接照明は灯っているが、部屋全体を照らすには光量が足りず、部屋の隅には闇が留まっている。
薄暗い部屋の中で、ぼんやりとした灯りが、ベッドの上の掛け布団の下で、何かがごそごそと動いているのを照らし出していた。その掛け布団の下から、押し殺した合体ザマスの抗議が漏れ聞こえる。
「……いい加減に、しろ! いつまでするつもりだ……!」
「敬いが足りないって言うから、ご奉仕してやってるんだよ」
「あれは……そういう意味ではない!」
暫く、布団の下の動きが止まる気配はなかった。
■達筆
合体ザマスが仕事で相手してくれないので、湖の近くにある木の下に寝転がったベジットは、そのまま暇そうにぼんやりと空を眺めていた。
そこに現れたのは、先ほどけんもほろろにベジットを追い払った合体ザマス。
「起きろ」
眉間に皺を刻んだ合体ザマスは、起き上がったベジットの眼前に、先ほど彼が自分宛てに残したメモをずいっと突き付けた。
「なんだこのミミズがのたくったような文字は」
ベジットは、野山育ちの孫悟空と戦場育ちのベジータが素体の合体戦士である。両名とも机に向かう機会などほぼ無かった為、当然の如くベジットの字も汚かった。
「文句言うなよ。読めれば問題ねぇだろ」
「読めんから文句を言ってるのだ」
ちなみに、そのメモには『仕事が終わったら相手しろ』と書かれていた。
■いつものこと
陽向で佇んでいると汗ばむこの時期。第十宇宙の界王神界では、ベジットと合体ザマスが、並んで湖の桟橋に腰掛けて足を水に浸している姿がよく見られた。
足で湖の水をちゃぷちゃぷかき混ぜながら、とりとめもない会話をしていることもあれば、言い合いの末、激怒した合体ザマスがベジットを湖に蹴り落とすこともあり、ベジットが反撃して合体ザマスの足首を掴んで湖に引きずり落とすこともあり、そこから本気の戦闘に移ることがある。
季節の風物詩と言えるほどに。
「また、喧嘩か。どうしてあの二人は、仲良くできないのか……」
湖のある方向から盛大に沸き起こった水柱を眺めながら、ゴワスは困ったように呟いたのだった。
■(急募)かみさまを黙らせる方法
今日の合体ザマスは、ぐちゃぐちゃうるさかった。
何が気にくわないのか細かいところにケチをつけてくるし、ベジットが「悪かった」と謝罪しても「心が籠もっていない!」と更に怒る。
両手を腰に当ててぎゃんぎゃん喚いている合体ザマスを、うんざりした表情で眺めているベジット。好き勝手に言わせていたが、いい加減聞き流すのにも疲れた。
ベジットは溜め息をひとつつくと、いきなり合体ザマスを引き寄せて口付けをした。身体と後ろ頭に手を回して逃げられないように固定する。
虚を突かれた合体ザマスは、すぐに抵抗を始めたが、ベジットはそれを力で押さえ込む。
舌を差し入れて好きなだけ合体ザマスの口の中を堪能した。充分に時間をかけて味わい、合体ザマスの息が上がる頃に口を離したベジットは、これでようやく静かになるなと思いながら唇のぺろっと端を舐めた。
――だが。
「不埒なことをするな人間!」
顔を真っ赤にして合体ザマスが、先ほどの何倍もうるさくなったのを見て、ベジットは自分の目論見が甘かったことを悟ったのだった。