小話(ベジザマ)
■ビールで寝落ち
孫悟空は、お酒が苦手だから飲まないと言っていた。ベジータは、飲めるが深酒はしないと聞いている。
「だというのは、こいつは……」
合体ザマスは呆れ果てた面持ちで呟いた。
彼の前にあるソファでは、中身が残った缶ビールを片手にベジットが寝落ちしている。ソファ近くのローテーブルの上には、界王神界は娯楽が少ないからと、ベジットが地球から持ち込んだポータブルDVDプレイヤーが鎮座しているのだが、既にその画面は物語を紡ぎ終えていた。
合体ザマスは、仕方がない奴だと嘆息しながら、ベジットの手からこぼれ落ちそうになっている缶ビールを手に取る。
そして、迷わず缶ビールの中身をベジットの口に流し込んで、叩き起こしたのだった。
■不意打ち(漫画版ベジザマ)
「おい」
合体ザマスが神殿の廊下を歩いていると、背後から声をかけられた。
気安く神に声をかけてきたのは、憎たらしい人間のベジットだ。即座に合体ザマスの眉間に皺が寄る。
「何だ?」
合体ザマスは怒りも露わに振り返りながら、苛立たしい口調で吐き捨てた。
その瞬間、思ったよりもすぐ近くにいたベジットは、流れるような動作で合体ザマスに口付けをした。ほんの一瞬のことで、合体ザマスは何をされたのか理解できていない。
その間にベジットは、
「こんなものか」
と、呟いてすたすたと一人で先に歩み去っていく。
残された合体ザマスは、何が起こったのか認識できずに、ただ呆然と立ち尽くしていたのだった。
■ゴミの分別(漫画版ベジザマ)
ベジットは自分の部屋の前に一人で立っていた。辺りを見回す彼の表情は、遠目からでもわかるくらい不機嫌である。
第十宇宙の界王神界の神殿にある彼の部屋。その部屋には、一辺が人の身長ぐらいある巨大な金属の立方体が、床やら壁やらに幾つもめり込んでいた。
宇宙一固い鋼、カッチン鋼。
つい先ほどまでベジットに突っかかっていた合体ザマスが、攻撃手段として繰り出した物なのだが……。
「手当たり次第に投げつけやがって。
……誰が片付けるんだよ、これ」
今、部屋の前にはベジットしかいなかった。
■早く起きた朝は
カーテンの隙間から差し込む朝の光に急かされるように、ベジットは目を覚ました。
ベッドの上で身を起こした彼は、目を擦りながら欠伸をひとつ。ベッドから降りて背伸びをした後、同じベッドの上で眠っている合体ザマスを起こさないように、足音を忍ばせながら寝室から出て行った。
シャワーを浴びて道着に着替え、地球から持ってきた食パンをキッチンにあるトースターで焼いて食べる。
ここは合体ザマスの部屋なのだが、結構な頻度で入り浸っているせいで、どこに何があるのか完璧に把握している。
食パン一斤と牛乳500 mlを食べて簡単な朝食を済ませたら、そのままベジットは外に出て行った。
第十宇宙の界王神界の神殿。広大な土地に立つ広々とした神殿には、体を動かすには充分な広さの中庭が幾つもある。
ベジットは、合体ザマスの部屋のすぐ裏手にある中庭に行くと、そこで自主練を始めたのだった。
暫くすると、合体ザマスが目を覚ました。彼は眠い目を擦りながら、水を求めてキッチンに行く。彼がグラスに注いだ冷たい水を飲み干して眠気を飛ばしていると、合体ザマスが起きたのを察したベジットが戻ってきた。
「よお。昨日は御苦労さん」
意味ありげな言葉を耳にして、合体ザマスは眉間に皺を寄せた。頬が少し赤い。
「座れよ。朝食の用意をしてやるから」
合体ザマスをキッチンカウンターに座らせると、ベジットは冷蔵庫からオレンジジュースを取り出して、彼が持っていた空のグラスに注いでやった。
合体ザマスは大人しくベジットの給仕を受けているが、その目は疑いに満ちている。
「……何を考えている?」
やけに甲斐甲斐しいベジット。何かを企んでいるに違いないと、合体ザマスは考えていた。
ベジットは肩をすくめると、
「下心は何もねぇよ。昨日、かみさまがオレの為に『色々』と頑張ってくれたから、労っているだけだ」
「っ!」
意味ありげに強調された『色々』という言葉を聞いて、今度こそ合体ザマスの顔は赤くなった。
「お、覚えていろ……! この借り、必ず返してやるからな!」
「おー、怖い怖い」
微塵も恐怖を感じていない口調で茶化しながら、ベジットは食パンをトースターに放り込む。
これが、ベジットが早く起きた日の日常だった。
別の日。合体ザマスは、鳥の声に誘われるように目を覚ました。
薄ら目を開けて天井を眺めていると、ぼやけていた視界が徐々に鮮明になる。カーテンが引かれた薄暗い部屋。その部屋の輪郭がしっかりしたところで、合体ザマスは体を起こしてベッドから降りると、カーテンをしゃっと勢いよく空けた。
日の光が洪水のように部屋に降り注ぐ。気の向くままに、暖かい日差しを全身に浴びていた合体ザマスは、やがてくるりとベッドの方を振り返った。
ベッドの上には、爆睡しているベジットの姿が。ぼさぼさの黒い髪に、間の抜けた顔。
ベジットがしっかり夢の中にいることを確認した瞬間。合体ザマスは躊躇いもせずに彼をベッドから蹴り落としたのだった。
「て、てめぇ……」
「朝だ。いつまで我のベッドで寝ているつもりだ」
合体ザマスは腕を組みながら、ベッドに這い上がってきたベジットを睥睨する。
これが、合体ザマスが先に起きた朝の日常だった。
■神絵師
「見てみろ」
合体ザマスがベジットの眼前にずいっと差し出したのは、一枚の画用紙だった。
「なんだ?」
第十宇宙の界王神界の神殿。その中庭のベンチに腰掛けていたベジットは、訝しげな様子でその紙を受け取る。近すぎてよく見ないが、何か絵が描かれているようだ。
得意げな顔の合体ザマスは胸を張り、
「ゴワス様から、たまには芸術に触れてみてはどうかと勧められてな。手慣らしとして絵を描いてみた。どうだ?」
「……これ、何を描いたんだ?」
「お前だが?」
……頭の毛が逆立ったゴリラにしか見えねぇ
■真夏日
額に玉のような汗を浮かべたベジットは、合体ザマスがアイスティを淹れると、待ちかねたようにそれを一気に呷ったのだった。
喉仏が動く度に、氷で冷やされた紅茶が喉を通り過ぎていく。一気に飲み干したベジットは、首にかけていた真っ白で清潔なタオルで額を拭きながら、
「ここは暑いから、南半球に行こうぜ」
強い日差しを浴びながら、アイスティを飲んでいた合体ザマスは、珍しく素直にベジットの提案を受け入れる。
季節は夏。照りつける太陽は、自尊心の高い神をも素直にさせる。
■雨が降った日は
「こうやって、家の中で雨を楽しむのも乙なものだな」
窓の外の雨模様を眺めながら、合体ザマスはティーカップを乗せたソーサーを両手にしみじみと呟いた。
「茶を零すんじゃねぇぞ」
と、腕立て伏せをしながらベジットはぼやく。
トレーニングをしていた彼の背中に、「負荷になってやる」と合体ザマスが勝手に座ったのだ。しかも熱々の紅茶を持って。
合体ザマスはベジットをちらりと冷たく見下ろすと、
「椅子が喋るな」
と、横柄に言い放つ。
「椅子じゃねぇ」
抗議の声をあげるが、合体ザマスは取り合わない。上下に揺れる背中の上で、合体ザマスは優雅にティーカップを傾けたのだった。
■愛情は最高の調味料
合体ザマスの手料理は美味い。
元々、きっちりした性格で、細かい手順も苦にしない為、大概の物は見た目も味も抜群に仕上がる。
欠点と言えば――
晴天の下、木陰に寝転がっているベジットの腹が鳴った。ベジットは、隣に佇んでいる合体ザマスを見上げながら、
「腹減ったー。なぁ、かみさま。この間作ったサラダスパゲッティ食べさせてくれよ」
「その辺の草でも食べていろ」
欠点と言えば、ベジットには気が向いたときにしか作ってあげないことである。ゴワス達には結構頻繁に作ってあげるのに。
■お祭り(何故かベジザマが地球にいる設定)
気がつくと、辺りは薄暗闇に包まれていた。手合わせに夢中になっていたベジットと合体ザマスは、修行を切り上げて家路につく。ひとけの無い荒野から都へと飛んで帰る途中、二人は祭りが開催されているのを発見した。
連なるように飾られた提灯の朧気な光や、鳴り響く笛や太鼓の音。そして、屋台から立ち上る美味しそうな匂いにつられて、同時に二人の腹が鳴る。
「食事を仕入れてこい。我は近くで待っている」
上空からでもはっきり分かるくらい、祭りの会場には歩くのも難儀するほどの人間が集まっている。そんな所に行くのが嫌だったらしい合体ザマスは、そう言い捨てるとさっさとどこかに飛んでいった。
ベジットは、仕方ねぇなとぼやきつつ、一人で屋台を巡り色々食べ物を買い込んでいったのだった。
やがて、祭りの喧噪も遠くに聞こえるぐらい、祭りの会場から離れた河原で、二人は座るのにちょうど良い岩に腰掛けて、屋台で買った食べ物を食べ始めた。味も盛り付けも大味だが悪くない。腹を空かせた二人の箸はどんどん進んだ。
ベジットは焼きそばを頬張りながら、
「屋台のおっちゃんが言ってたけど、この祭りは近くの神社の神様を奉る祭りだってよ。祭りの間は、神様への感謝の気持ちとして、屋台の料理とかを神社に供えるんだとさ」
その言葉を聞いて合体ザマスは鼻で笑った。
「ふん、愚かな人間どもが。偉大なる神がこんな祭りを開かれたくらいで、喜ぶと思っているのか」
「たこ焼きを頬張りながら言っても説得力ねぇぞ」
■真冬日(なぜか地球にいるベジザマ)
組み手をする為、いつも利用しているひとけの無い荒野に行ったら、そこは氷と雪で閉ざされた世界になっていた。
「寒い寒い寒い寒い寒いぃぃぃぃ!」
いつもの半袖の道着しか身につけていないベジットは、体をがたがた震わせながら絶叫した。
身を切るような冷たい風。天から横殴りに吹雪く雪。
ベジットに向けて光弾を放つ合体ザマス。炎と煙が巻き起こる。
「寒い寒いと何度も言うから、うるさ……暖めてやろうと思って」
後に合体ザマスはそう語った。
■納税は義務です
ベジットは仕事もせずに修行ばかりしているように見えるが、たまにブルマに雇われてバイトをしていたりする。
内容は単純で、カプセルコーポレーションが必要としている物資を運んでくるだけ。ベジット一人で運ぶとはいえ、全宇宙でも屈指の実力者である彼の手にかかれば、一日だけでもかなりの物量を運ぶことができる。
加えて、一般的な運輸企業に依頼するよりベジットが運んだ方が、運送コストが大幅に削減される為、喜んだブルマから払われるバイト代も中々に良い。
単純な仕事内容だが、ベジットにとっては鍛錬にもなるので、小遣い稼ぎにはちょうど良かった。
「去年さ……」
第十宇宙の界王神界にある神殿。その中庭で、ガーデンテーブルを挟んでベジットと合体ザマスがお茶をしていた。ベジットは、合体ザマスが淹れたアイスティを飲みながら話を切り出した。
「去年さ、それなりに生活費を稼いだから、もういいやと思って今年は働かなかったんだよ。そうしたら、とくそく状? っていうのが届いて、ぜいきん? 払えって言われたんだよな。去年ちゃんと払ったはずなのに。何でだ?」
前年の収入を元にした、各種の税金を払うように言われているだけなのを完璧に理解しているが、真実を伝えるつもりの無い合体ザマスは、
「働くことができるのに働かないから、罰金を科せられたのだろう」
と言ってベジットを震え上がらせたのだった。
「地球って怖い……」
「大人しく働けば良いだけの話だ」
孫悟空は、お酒が苦手だから飲まないと言っていた。ベジータは、飲めるが深酒はしないと聞いている。
「だというのは、こいつは……」
合体ザマスは呆れ果てた面持ちで呟いた。
彼の前にあるソファでは、中身が残った缶ビールを片手にベジットが寝落ちしている。ソファ近くのローテーブルの上には、界王神界は娯楽が少ないからと、ベジットが地球から持ち込んだポータブルDVDプレイヤーが鎮座しているのだが、既にその画面は物語を紡ぎ終えていた。
合体ザマスは、仕方がない奴だと嘆息しながら、ベジットの手からこぼれ落ちそうになっている缶ビールを手に取る。
そして、迷わず缶ビールの中身をベジットの口に流し込んで、叩き起こしたのだった。
■不意打ち(漫画版ベジザマ)
「おい」
合体ザマスが神殿の廊下を歩いていると、背後から声をかけられた。
気安く神に声をかけてきたのは、憎たらしい人間のベジットだ。即座に合体ザマスの眉間に皺が寄る。
「何だ?」
合体ザマスは怒りも露わに振り返りながら、苛立たしい口調で吐き捨てた。
その瞬間、思ったよりもすぐ近くにいたベジットは、流れるような動作で合体ザマスに口付けをした。ほんの一瞬のことで、合体ザマスは何をされたのか理解できていない。
その間にベジットは、
「こんなものか」
と、呟いてすたすたと一人で先に歩み去っていく。
残された合体ザマスは、何が起こったのか認識できずに、ただ呆然と立ち尽くしていたのだった。
■ゴミの分別(漫画版ベジザマ)
ベジットは自分の部屋の前に一人で立っていた。辺りを見回す彼の表情は、遠目からでもわかるくらい不機嫌である。
第十宇宙の界王神界の神殿にある彼の部屋。その部屋には、一辺が人の身長ぐらいある巨大な金属の立方体が、床やら壁やらに幾つもめり込んでいた。
宇宙一固い鋼、カッチン鋼。
つい先ほどまでベジットに突っかかっていた合体ザマスが、攻撃手段として繰り出した物なのだが……。
「手当たり次第に投げつけやがって。
……誰が片付けるんだよ、これ」
今、部屋の前にはベジットしかいなかった。
■早く起きた朝は
カーテンの隙間から差し込む朝の光に急かされるように、ベジットは目を覚ました。
ベッドの上で身を起こした彼は、目を擦りながら欠伸をひとつ。ベッドから降りて背伸びをした後、同じベッドの上で眠っている合体ザマスを起こさないように、足音を忍ばせながら寝室から出て行った。
シャワーを浴びて道着に着替え、地球から持ってきた食パンをキッチンにあるトースターで焼いて食べる。
ここは合体ザマスの部屋なのだが、結構な頻度で入り浸っているせいで、どこに何があるのか完璧に把握している。
食パン一斤と牛乳500 mlを食べて簡単な朝食を済ませたら、そのままベジットは外に出て行った。
第十宇宙の界王神界の神殿。広大な土地に立つ広々とした神殿には、体を動かすには充分な広さの中庭が幾つもある。
ベジットは、合体ザマスの部屋のすぐ裏手にある中庭に行くと、そこで自主練を始めたのだった。
暫くすると、合体ザマスが目を覚ました。彼は眠い目を擦りながら、水を求めてキッチンに行く。彼がグラスに注いだ冷たい水を飲み干して眠気を飛ばしていると、合体ザマスが起きたのを察したベジットが戻ってきた。
「よお。昨日は御苦労さん」
意味ありげな言葉を耳にして、合体ザマスは眉間に皺を寄せた。頬が少し赤い。
「座れよ。朝食の用意をしてやるから」
合体ザマスをキッチンカウンターに座らせると、ベジットは冷蔵庫からオレンジジュースを取り出して、彼が持っていた空のグラスに注いでやった。
合体ザマスは大人しくベジットの給仕を受けているが、その目は疑いに満ちている。
「……何を考えている?」
やけに甲斐甲斐しいベジット。何かを企んでいるに違いないと、合体ザマスは考えていた。
ベジットは肩をすくめると、
「下心は何もねぇよ。昨日、かみさまがオレの為に『色々』と頑張ってくれたから、労っているだけだ」
「っ!」
意味ありげに強調された『色々』という言葉を聞いて、今度こそ合体ザマスの顔は赤くなった。
「お、覚えていろ……! この借り、必ず返してやるからな!」
「おー、怖い怖い」
微塵も恐怖を感じていない口調で茶化しながら、ベジットは食パンをトースターに放り込む。
これが、ベジットが早く起きた日の日常だった。
別の日。合体ザマスは、鳥の声に誘われるように目を覚ました。
薄ら目を開けて天井を眺めていると、ぼやけていた視界が徐々に鮮明になる。カーテンが引かれた薄暗い部屋。その部屋の輪郭がしっかりしたところで、合体ザマスは体を起こしてベッドから降りると、カーテンをしゃっと勢いよく空けた。
日の光が洪水のように部屋に降り注ぐ。気の向くままに、暖かい日差しを全身に浴びていた合体ザマスは、やがてくるりとベッドの方を振り返った。
ベッドの上には、爆睡しているベジットの姿が。ぼさぼさの黒い髪に、間の抜けた顔。
ベジットがしっかり夢の中にいることを確認した瞬間。合体ザマスは躊躇いもせずに彼をベッドから蹴り落としたのだった。
「て、てめぇ……」
「朝だ。いつまで我のベッドで寝ているつもりだ」
合体ザマスは腕を組みながら、ベッドに這い上がってきたベジットを睥睨する。
これが、合体ザマスが先に起きた朝の日常だった。
■神絵師
「見てみろ」
合体ザマスがベジットの眼前にずいっと差し出したのは、一枚の画用紙だった。
「なんだ?」
第十宇宙の界王神界の神殿。その中庭のベンチに腰掛けていたベジットは、訝しげな様子でその紙を受け取る。近すぎてよく見ないが、何か絵が描かれているようだ。
得意げな顔の合体ザマスは胸を張り、
「ゴワス様から、たまには芸術に触れてみてはどうかと勧められてな。手慣らしとして絵を描いてみた。どうだ?」
「……これ、何を描いたんだ?」
「お前だが?」
……頭の毛が逆立ったゴリラにしか見えねぇ
■真夏日
額に玉のような汗を浮かべたベジットは、合体ザマスがアイスティを淹れると、待ちかねたようにそれを一気に呷ったのだった。
喉仏が動く度に、氷で冷やされた紅茶が喉を通り過ぎていく。一気に飲み干したベジットは、首にかけていた真っ白で清潔なタオルで額を拭きながら、
「ここは暑いから、南半球に行こうぜ」
強い日差しを浴びながら、アイスティを飲んでいた合体ザマスは、珍しく素直にベジットの提案を受け入れる。
季節は夏。照りつける太陽は、自尊心の高い神をも素直にさせる。
■雨が降った日は
「こうやって、家の中で雨を楽しむのも乙なものだな」
窓の外の雨模様を眺めながら、合体ザマスはティーカップを乗せたソーサーを両手にしみじみと呟いた。
「茶を零すんじゃねぇぞ」
と、腕立て伏せをしながらベジットはぼやく。
トレーニングをしていた彼の背中に、「負荷になってやる」と合体ザマスが勝手に座ったのだ。しかも熱々の紅茶を持って。
合体ザマスはベジットをちらりと冷たく見下ろすと、
「椅子が喋るな」
と、横柄に言い放つ。
「椅子じゃねぇ」
抗議の声をあげるが、合体ザマスは取り合わない。上下に揺れる背中の上で、合体ザマスは優雅にティーカップを傾けたのだった。
■愛情は最高の調味料
合体ザマスの手料理は美味い。
元々、きっちりした性格で、細かい手順も苦にしない為、大概の物は見た目も味も抜群に仕上がる。
欠点と言えば――
晴天の下、木陰に寝転がっているベジットの腹が鳴った。ベジットは、隣に佇んでいる合体ザマスを見上げながら、
「腹減ったー。なぁ、かみさま。この間作ったサラダスパゲッティ食べさせてくれよ」
「その辺の草でも食べていろ」
欠点と言えば、ベジットには気が向いたときにしか作ってあげないことである。ゴワス達には結構頻繁に作ってあげるのに。
■お祭り(何故かベジザマが地球にいる設定)
気がつくと、辺りは薄暗闇に包まれていた。手合わせに夢中になっていたベジットと合体ザマスは、修行を切り上げて家路につく。ひとけの無い荒野から都へと飛んで帰る途中、二人は祭りが開催されているのを発見した。
連なるように飾られた提灯の朧気な光や、鳴り響く笛や太鼓の音。そして、屋台から立ち上る美味しそうな匂いにつられて、同時に二人の腹が鳴る。
「食事を仕入れてこい。我は近くで待っている」
上空からでもはっきり分かるくらい、祭りの会場には歩くのも難儀するほどの人間が集まっている。そんな所に行くのが嫌だったらしい合体ザマスは、そう言い捨てるとさっさとどこかに飛んでいった。
ベジットは、仕方ねぇなとぼやきつつ、一人で屋台を巡り色々食べ物を買い込んでいったのだった。
やがて、祭りの喧噪も遠くに聞こえるぐらい、祭りの会場から離れた河原で、二人は座るのにちょうど良い岩に腰掛けて、屋台で買った食べ物を食べ始めた。味も盛り付けも大味だが悪くない。腹を空かせた二人の箸はどんどん進んだ。
ベジットは焼きそばを頬張りながら、
「屋台のおっちゃんが言ってたけど、この祭りは近くの神社の神様を奉る祭りだってよ。祭りの間は、神様への感謝の気持ちとして、屋台の料理とかを神社に供えるんだとさ」
その言葉を聞いて合体ザマスは鼻で笑った。
「ふん、愚かな人間どもが。偉大なる神がこんな祭りを開かれたくらいで、喜ぶと思っているのか」
「たこ焼きを頬張りながら言っても説得力ねぇぞ」
■真冬日(なぜか地球にいるベジザマ)
組み手をする為、いつも利用しているひとけの無い荒野に行ったら、そこは氷と雪で閉ざされた世界になっていた。
「寒い寒い寒い寒い寒いぃぃぃぃ!」
いつもの半袖の道着しか身につけていないベジットは、体をがたがた震わせながら絶叫した。
身を切るような冷たい風。天から横殴りに吹雪く雪。
ベジットに向けて光弾を放つ合体ザマス。炎と煙が巻き起こる。
「寒い寒いと何度も言うから、うるさ……暖めてやろうと思って」
後に合体ザマスはそう語った。
■納税は義務です
ベジットは仕事もせずに修行ばかりしているように見えるが、たまにブルマに雇われてバイトをしていたりする。
内容は単純で、カプセルコーポレーションが必要としている物資を運んでくるだけ。ベジット一人で運ぶとはいえ、全宇宙でも屈指の実力者である彼の手にかかれば、一日だけでもかなりの物量を運ぶことができる。
加えて、一般的な運輸企業に依頼するよりベジットが運んだ方が、運送コストが大幅に削減される為、喜んだブルマから払われるバイト代も中々に良い。
単純な仕事内容だが、ベジットにとっては鍛錬にもなるので、小遣い稼ぎにはちょうど良かった。
「去年さ……」
第十宇宙の界王神界にある神殿。その中庭で、ガーデンテーブルを挟んでベジットと合体ザマスがお茶をしていた。ベジットは、合体ザマスが淹れたアイスティを飲みながら話を切り出した。
「去年さ、それなりに生活費を稼いだから、もういいやと思って今年は働かなかったんだよ。そうしたら、とくそく状? っていうのが届いて、ぜいきん? 払えって言われたんだよな。去年ちゃんと払ったはずなのに。何でだ?」
前年の収入を元にした、各種の税金を払うように言われているだけなのを完璧に理解しているが、真実を伝えるつもりの無い合体ザマスは、
「働くことができるのに働かないから、罰金を科せられたのだろう」
と言ってベジットを震え上がらせたのだった。
「地球って怖い……」
「大人しく働けば良いだけの話だ」
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