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第十五話 答え合わせ(9月1日 火曜日)

 空高く鎮座していた入道雲は姿を消し、空には鰯に似た雲が連なって浮かんでいた。

 まだまだ昼間は暑いが、生活の最中に秋の気配を感じる瞬間が増えていっている。特に、日が沈んだ後の暑さは落ち着き、夕方頃には、鈴虫の涼やかな音が耳を楽しませるようになっていた。

 大学院の建物から、トートバッグを肩から提げたザマスがでてくる。半袖のサマーニットのカーディガンを来たザマスは、大学院の裏手にある駐車場へと向かう。

 周りの人間達は好奇の視線とひそひそ話をぶつけてくるが、ザマスはそのような戯れ言は気にもとめず、胸を張って歩み去って行った。

 駐車場に駐めてある赤い車のそばに行くと、そのまま助手席のドアを開けて中に滑り込む。跳ね馬のエンブレムがついた高級車に乗り込んだザマスを見て、駐車場にいた人間達が驚きに目を見開いた。

 下衆な人間どもが好きな噂の種になるようなこの車で大学院に来たのは、失敗だったかもしれない、とザマスは心の中で呟く。

 本当はザマスひとりで大学院に行こうとしたのだが、この車の持ち主が一緒に行きたいと強硬に主張したのだ。

「終わったのか?」

 運転席に座ってザマスの帰りを待っていたハーツが、そう声をかけた。
 ザマスはシートベルトを締めながら、

「ああ。問題なく承諾が降りた。これで予備審査に論文を提出できる」

 博士号を取得するために提出する論文は、担当教授から認められなければ予備審査に提出できない。

 しかし、死んでしまった教授の代わりに、二日前にザマスの指導教員になったふくよかな老年の女性教授は、ザマスが作成した論文の完成度の高さを褒めつつ、予備審査に進むようにザマスに伝えたのだ。

「これで博士号に一歩近づいたな」

 ハーツは笑いながら、車を出す。車は滑らかに動き出した。

 作成した論文が予備審査に通れば、その後、本審査に進む。だが、論文の実質的な審査は予備審査で行われるので、この審査に通れば大丈夫だろう。

 そして、ザマスは作成した論文に自信があるので、予備審査は通ると信じていた。作成した論文を読ませたゴワスや担当教授の反応を見る限り、過信ではないはずだ。

 車は駐車場を通り抜けると、大学院を出て交通量の多い通りに入る。
 ザマスは、窓の外を眺めながら、

「ここに来る前に、牧師夫妻の娘に予備審査の事を伝えた」

ハーツの動きがぴくっと止まる。

「彼女は、なんと言っていた?」

 ザマスはくすっと機嫌良く笑うと、

「心底、嬉しそうだった。『これであんたと結婚しなくてすむ!』とまで言われた」
「おおっと。中々、刺激的な祝いの言葉だな。
……仲が悪かったのか?」
「というより、お互いの親が乗り気なだけで、お互い恋愛対象じゃなかったのだ」
「なるほど」

 ハーツは思わず苦笑する。
 ひとしきり笑った後、ハーツはまるでつっかえが取れたかのように、晴れ晴れとした顔で、楽しそうにハンドルを操った。

「どこに行く? 今日は天気がいい。このままデートしよう」
「お前が行きたいところに行けばいい」

 デート、と言う物言いに引っかかるものはあったが、ザマスは取り合わずに返事をした。

「なら、海に行こうか」

 ハーツはウインカーを出して、海岸線に続く進路に変更する。

「ところで、ザマス。一週間、フューの家で何をしてたんだ?」
「なんだ、早速、詮索か? 二度と監視しないなどと、言っていたくせに」
「監視はしない。だが、気になることを君に尋ねないとは言っていないな」
「呆れた男だ」

 ザマスは呆れ半分で小さく笑った。

 ハーツと会ったのは一週間ぶりだった。ハーツの家を飛び出して物別れしてから今まで、顔も合わせず、電話のやり取りもしなかった。

 その間、ザマスはフューの家で家事をしつつ、論文の見直しと修正に没頭した。ほとんど外出もしなかったが、論文作成に集中することで、昂ぶっていた気持ちを落ち着かせることができた。

 頭と心を整理して、自分の気持ちを見つめ直すことができた昨日、一体どうやって手に入れたのか、フューは院長の捜査報告書、教授の捜査報告書、社長の解剖報告書をザマスに渡したのだった。

 時が経つのも忘れて、ザマスはその報告書を読み耽った。そして、全ての報告書を読み終わったその時、フューのスマートフォンを経由して、ハーツから会いたいと連絡があったのだ。

「へえ、論文の作成をしつつ、フューの家で家事をしていたのか」

 どことなく、面白くなさそうにハーツは呟いた。

「ただ世話になるのは私も不本意だったし、何よりあいつに貸しを作ると、対価として何を要求されるかわからんからな」
「その考えには賛成するが……何か変なことはされてないか?」
「何も」

 実はこの一週間、ずっと同じベッドでフューと寝ていたのだが、なんとくなくそれは言わない方が良いだろうとザマスは思っていた。

 実際、文字通り寝ただけなのだから、何も問題は無い。

 車は交通量の多い道から逸れて、一旦、住宅街に入る。交通量が少ない反面、道は少々狭かった。陽射しがぐんぐんとその力強さを増していっている。

「ハーツ」

 ザマスが口を開く。

「なんだ?」
「報告書は読んだか?」
「ああ。フューから見せて貰った」

 死んだ三人に関する報告書のことだ。ハーツもまた、フューから見せて貰っている。

 ハーツは信号のない横断歩道の前で車を止めた。幼い子供の手を引いた母親が、ハーツに頭を下げて礼を言いながら、横断歩道を渡っていく。

「そういえば、フューから聞いたが、君はオレがあの三人を殺したと思ってたらしいな」
「ああ」

 悪びれもなく、ザマスは肯定した。

「あの三人とトラブルを起こし、事件が起こった時に近辺にいて、なおかつ殺すチャンスがあったのは、私が知る限りお前だけだったからな」

 ハーツは苦笑いを浮かべながら、

「心外だな。トラブルは確かにあったが、大したものじゃないぞ?」
「お前にとっては大したことのない金額かもしれないが、一般的な経済状況の人間だったら、殺人事件に発展してもおかしくない金額だぞ。それに、お前が私に近づいた理由が怪しすぎた」
「本当にオレは君から信用されないな」
「実を言うと、お前は人の心が読めるのではないかと疑っていた。その力を使って、社長に毒物を仕込んだんじゃないかと、本気で思っていたんだ」
「……」





「左前下行枝が血栓で詰まったことによる心筋梗塞。それが、社長の死因だよ」

 病院の駐車場の先。
 その人気のない場所にあるベンチに座ったフューは、死体検案書を読みながら、隣に座るゴジータにそう説明した。

 ゴジータは制服を着ているので勤務中らしいのだが、いつも側に居る相方の後輩は、車に待たせているとの事だった。

「間違いないのか?」

 ゴジータがそう問うと、フューはこっくり頷いた。

「社長が病院に運び込まれた直後、すぐに色々と検査しているけど、心筋梗塞と矛盾しない所見だった。
 それに、心臓カテーテル検査っていう、心臓の血管を調べる検査を運び込まれている直後にしている。その時の検査で、がっつり血管が詰まっているのを認めてる。
 だから、社長の死因は病死だよ」
「その、心筋梗塞ってのは、人が意識を失って倒れるような病気なのか?」
「もちろん。全員が全員って訳ではないけど、心臓の血管が詰まると、詰まった先にある心筋に酸素と栄養が行き渡らなくなるから、心臓がダメージを受ける。
 その時、心室細動みたいな致死的な不整脈を起こすことがあるんだ。
 ていうか、その時使用したAEDが作動しているんでしょ? だったら、致死的不整脈が起こってたのは間違いないよ」
「だが、社長は病院にかかってたんだろう? 日頃、病院にかかってる人間が、そんな突然死するものか?」

 なおも食い下がるゴジータだが、フューは先程、自販機で買ったサイダーのペットボトルのキャップを開けながら、

「残念ながら、あり得るんだよ。医学は万能じゃないから。
 それに、この社長、以前にも心筋梗塞を起こして治療しているにも関わらず、服薬のコンプライアンスが悪かったみたいだしね」
「つまり?」
「心筋梗塞の再発を予防するお薬を飲んでなかったってこと。薬を飲まなかったら、そりゃこうなるよ」
「そうかよ……」

 ゴジータはがっくりと項垂れる。

「残念そうだね」
「あのハーツって奴が、殺したんじゃないかと思ってんだがな」
「ハーツが? あの状況でどうやって?」
「あいつ、人の心を読めそうじゃねぇか」





 赤信号のため、ハーツは軽やかに走っていた車を停車させる。

「オレは社長を殺していない。だが、オレが人の心を読むことができるとしたら、どうする?」
「それはない」

 ザマスは、きっぱりと確信を持って言い切った。

「お前は、人の心は読めない」

 ハーツはその言葉の力強さに面食らいながら、

「なぜ、そう思うんだ?」
「お前は知らなかったみたいだが――私は、都会の光で星がかき消された夜空が、大っ嫌いなんだ」
「……そういうことか」

 ハーツは納得したように呟いた。
 青信号になったので、車を発車させる。

「いつも、夜になるたびに夜空を見上げていたから、好きなんだと思っていたよ」

 ザマスがハーツの家に来た日、ベランダから夜空を見上げていた彼に声をかけたら、妙に驚いた様子だった。

 ハーツはその時、突然、声をかけられて驚いていただけだと思っていたが、それは勘違いで、実際は思ってもいないことを言われて驚いたのだと、理解したのだった。

「なぜ、心を読めるふりをする?」
「ああ、それはオレが『心を読める』と言った時に、君がどういう反応するか、知りたかったからだ」
「そんな理由でか?」
「ただの興味だ。気にしなくていい」





 フューはサイダーをごくっと飲みながら、

「心が読めるとか、本当にそんなお伽話を信じてたの?」

 ゴジータは横目でじろっとフューを睨むと、

「あんたのせいでもあるんだぞ。
 あんた、『この間、社長が警察に嘘をついていたのをハーツが見破った。まるで心を読んだみたい』って言ってたじゃねぇか」
「ああ、あれ」

 フューは納得した。
 まだ、ザマスが集中治療室で治療を受けていた頃の話だ。あの時、ハーツは『ずっと家にいた』と主張する社長が、嘘をついているのを見破ったのだ。

 どういう方法で見破ったのかは教えてくれなかったので、フューはハーツが相手の心を読んで嘘を看破したのではないかと、隣にいる警官に話したことがあった。

「あれ、ハーツになぜ知っていたのか、聞いてみたよ。なんてことはない、社長のスマートフォンの運動アプリを盗み見たんだって」
「運動アプリ?」
「そ。社長ってスマートフォンのロックをパターン認証にしてたらしいんだ。
 パターン認証って結構、単純でしょ? ハーツは横目で見てロック解除のパターンを覚えて、それで社長が席を外した隙に、スマフォの中身を調べたらしいよ」
「それで、どうやって、大学院に行ったのがわかるんだよ」
「今時の運動アプリって、GPSをオンにしてたら、移動ルートを記録してくれるんだよ」
「……なるほど」

 ゴジータは思わず納得した。その運動アプリとやらに、大学院に行った時の経路が記録されていたのだ。

 ふと、あることを思いついたゴジータは怪訝そうな顔をすると、

「ん?じゃあ、そのGPSの記録を見たら、社長が轢き逃げ事件が起こしたかどうかわかったんじゃないのか? その日の移動したルートが記録されるんだろう?」
「それ、僕も気になったからハーツに聞いたよ。ハーツが言うには、確かに社長のGPSログには轢き逃げをした記録がなかったんだって。
 ただ、例え轢き逃げをしていたとしても、その間、GPSをオフにしておけば記録なんて残らないから、社長を容疑者から外さなかったんだって」

 そこまで喋ったフューは、少し温くなったサイダーをぐいっと一口飲むと、

「じゃあ、今度はそっちの番だよ。教授と院長の件、詳しく教えてくれるんでしょ?」

 フューが社長の検案書の中身を詳しく教える代わりに、ゴジータが教授と院長の事件の件を詳しく教えるという取り引きだった。

 無論、お互い職務的にそういう事をすると不味いのだが、お互いバレなければ良いだろうというスタンスである。

 ゴジータは、生真面目な後輩が、上層部にこの事をばらさないように、何も告げずに後輩を車で待機させているが。

「といっても、報告書の通りだ。教授を轢き逃げした犯人は見つかったよ。近くに住んでいる会社員だ」





「教授の癖の悪さは私も知っている」

 ザマスは、助手席の窓から街並みを眺めながら、ぽつりと言った。

「歩きスマフォなんて日常茶飯事だった。
 だから、赤信号に気づかずに横断歩道に出て、車に轢かれたと言われても、特になんの違和感もない」
「車を運転するオレにしたら、その教授を轢いてしまった会社員に哀れみを抱いてしまうな。
 赤信号なのに横断歩道を渡られたら、轢いてしまうのも無理はない」
「その会社員も、通報したら大人しくその場で待っていたらよかったものを。逃げてしまった以上、厳罰は免れんだろうな」
「『歩行者が赤信号を渡っていたという自分の証言が、信用されないかもしれないと思うと、怖くてたまらなくなった』と、供述しているらしいな。
 しかし、今はどこにでも監視カメラがあるから、結局、教授が赤信号を渡っていたのは、事実だと証明されたわけだ」
「ついでに、倒れている教授を放り出して、混乱した会社員が逃げる姿も、事実として記録されていたわけだ」
「哀れだ」

 ハーツはもう一度、顔も知らぬ会社員に同情した。

 車は住宅街を抜けて、交通量の少ない道を走る。そろそろ海が近い。





「院長の件で何か面白いことはないの?」

 蝉がうるさいくらいに鳴いている。
 そろそろ、日が高くなったせいで、日陰でも汗ばむようになってきた。

「面白いこと? 特に何もねぇよ。報告書の通り、強行班係はあれを事故として片付けるみたいだぜ」
「……でも、君はそう思ってないみたいだね」

 フューが見る限り、ゴジータはその結論に納得していないようだった。

「あのザマスって奴が殺したんだじゃないかと思ってたんだよ。くそ。ここまで勘が外れたのは初めてだぜ」
「勘で捜査しないでくれるかな。一般市民は迷惑。
 てか、報告書を見た限り、ザマスは殺せないでしょ。
 なんで、そんなに頑なに彼を疑ってたの? 強行班係だって早々に、彼を疑うの止めたのに」
「だって、ザマスを轢き殺そうとしたのは、院長だろう? その復讐をしようとしたと考えるのが、普通じゃねぇか」





「君が轢き殺されそうになった理由として、一番可能性が高かったのは、院長と社長の癒着を暴こうとしたことだ」

 ハーツは運転をしながら、視線を窓硝子の向こうに向けたままのザマスに語りかける。

「その中でも、君があの日、税務署に向かったことを知っていたのは院長だけだった。
 普段行かない場所に行く君を、突発的に盗難車で轢き殺そうと思ったら、やはり行き先を知っておかないと難しいだろうな」
「院長から電話で告発の件を聞かされた社長がやった、という可能性もあるぞ。距離的には社長も犯行は可能だ」
「その場合、轢き逃げ事件が起こる前に院長から社長に電話してなければいけない。
 あのゴジータという警官に調べて貰ったが、院長が社長に電話したのは確かだが、時間は轢き逃げ事件が起こった後だ。
 だから、あの事件は院長が独断で起こしたんだろうな」
「なるほど。私を殺そうとした犯人はあいつだったのか」
「……やはり、君は自分を殺そうとした犯人が誰なのかわかっていなかったのか」
「ああ。最初は躍起になって犯人を見つけてやろうと思っていたのだが、途中で考え方を変えたらどうでもよくなった」
「誰が犯人であれ、神を汚すような真似をした三人全員を殺そうと考えたから、だろう?」
「まあな。よくわかったな」

 あっけらかんとザマスは伝える。

「君の普段の姿を見れば、バレバレだ。お陰で、こちらはいつ君が事件を起こすかひやひやしていた」
「だから、監視アプリを使ってまで、私を見張っていたのか?」
「監視アプリの事は重ねて詫びるよ。
 ただ、言い訳させて貰うと、ああでもしないと守り切れないと思ったんだ。君は君で、君を殺そうとした犯人の前にのこのこ姿を現すし。
 それに、あのノートパソコンで三人を殺す方法を調べていただろう?
 あれを見てしまったら、君が本気だと嫌でもわかる。
 もし、行動を怪しまれたくないのであれば、見られるとまずい検索履歴は消した方が良いぞ」
「お互い様だ。見られると誤解されるようなメールは、さっさと消しておけ」
「いやまあ、あれはまさか君がそこまで誤解するとは思わなかったから、そのままにしてたんだよ。
 オレにとって、ああいうのはよくあるトラブルだからな」
「それで――」

 ザマスはハーツの方に向き直った。

「それで、お前は院長が死んだと聞いた時、私が殺したと思わなかったのか? 私が院長を殺そうとしていたのは、知っていたんだろう?」
「いや、それは考えなかった」

 ザマスは意味ありげに笑った。

「それはそうだろうな」





「まあ、結局、現実なんてこんなもんってことだよ」

 フューはしたり顔で頷く。

「写真を見せて貰ったけど、院長室は棚の上にまで植木鉢を沢山飾っていたみたいだから、そのうちのひとつが落ちてきても不思議じゃない。
 実際、死んだ院長は頭頂部の頭蓋骨が陥没してたしね。背後や正面から殴られた場合はこうはならない」

 院長の事件は、フューの言うとおり、棚の上に飾ってあった植木鉢のひとつが落下し、たまたま下にいた院長の頭に運悪く直撃したと、強行班係は結論を出した。

 当初は、院長とトラブルがあったザマスが捜査線上に浮かんだらしいが、それもすぐに院長自身が送ったメッセージによって消え去ったため、今ではこの論を唱えるものはいないらしい。

 ゴジータを除いて。

「でも、ザマスは怪しくないか?」
「怪しいかどうか聞かれたら怪しいけど、でも大学院の正面玄関の防犯カメラに、彼が写ってたんでしょう? 院長が業者宛てにメッセージを送った時」

 院長がインテリアショップ宛てにメッセージを送った時、ザマスは正面玄関にいた。それは、大学の防犯カメラにしっかり記録していた。

 その時、院長は生きており、しかもその後のザマスの行動を調べたところ、ずっと友人と一緒にいたことが判明している。

 その友人が言うには、近くのカフェでお茶をしていたらしく、そのカフェの防犯カメラにもザマスの姿は映っていた。

 それが決定打となって、警察はザマスを疑うことを止め、そして、院長が事故で死んだのはザマスが大学院を去ったすぐ後だろうと、結論づけたのだ。

「そのメッセージの宛先は、あのハーツっていう奴が経営しているインテリアショップだぞ。
 もしかしたら、ザマスの変わりにハーツが殺した可能性もあると思わねぇか?」
「思わないよ」

 フューは呆れた口調で言った。

「ザマスの代わりに院長を殺して、ハーツに何のメリットがあるの?」



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