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君を誘っていいですか?






「え?七夕祭り?」

「そう」

「七夕終わったばかりじゃない」

「旧暦の七夕なんだよ。田舎じゃ8月7日に七夕祭りやってる所もあるんだ」

「.....へぇ、さすがヤマト」


本気で褒めてるのかなこれ
それとも軽くあしらわれてる?
その気が少しでもあれば
こう、テンション上がるとかさ
逆なら口篭り変な空気になるとかさ
予想してたわかり易さが見当たらない
思った以上に短い
あっさりし過ぎな対応に焦る


「先の予定が未定なのはお互い様だし、当日もし都合が合えばって話。一応、聞いてみた」

「一応?」

「うん、一応.....」


一応って何だ、保険か
君に確認された途端駆け巡る情けなさ

考えてくれてるからの簡潔さなのか
考える余地もないから端的なのか
僕はこれしきのことに君の顔さえも見られなくて
声色から君の気持ちを察することすら拒んで


「七夕飾りがそこかしこに飾られて街中に溢れるらしい」

「賑やかそう」


賑やかなのはあまり好きじゃなかっただろうか
今更思い付いても遅いけど
本当はそんなものはどうだっていいのに
君の興味を少しでも引きたくて
口実になるものなら何だって良くて
だけど、ああ、もうちょっと苦しいな


「どうしてもとかじゃなくて、僕がちょっと行ってみたかっただけで、気が向いたらで全然.....」


今日は逃げないって決めてたのに
つい弱気が出ちまった
君の前だとどうにも上手くやれないらしい


「あのね」

「.....ん?」

「私、人混み苦手なんだけど」


やっぱり、そうだったか


「それでも良かったら、行くよ」







「えっ!!」

「えっ?って、あれ私、ヤマトに誘われたよね?」

「ああ、うん、誘った、誘った.....うん」


誘った、何処でも良かった

なけなしの勇気はたいて
断られる前提で逃げ腰で喉がカラカラだった

一瞬白くなった頭がやっと切り替わる


「だからね、逸れないように気を付けて貰えると嬉しい、です」


何それ
ダメだ、やっぱり頭が沸きそうだ


「.....君が僕から離れなきゃいいだけでしょ」


訳わかんなくなりそうで搾り出した台詞
もっと優しくできたらいいだけなのに


「ヤマトが捕まえててくれる方が確実」

「.....」

「でしょ」

「んーーーーーー了解です.....」


何これ
何の話だっけ
離れなきゃいいとか
捕まえててとか
何の約束してんだ僕ら

色んな感情が混ざり合って複雑な
だけど、確実に嬉しい

これからは何処にでも
もうちょっとストレートに誘おう
僕は堅くそう誓った







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