僕らの特別な日
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僕らの特別な日
②
「はあー……」
君が来るまでには結構かかるだろうと
久々に張った湯に深く身体を沈める。
「あっつ……」
全く真夏に僕は何やってんだ……
って言うか驚く程あっさり同意するよな……
いや、ツグミのことだから
誕生日ってのと初めてってのに目が眩んでて
深くは考えてない
わかる、わかってるけどさ
いちいち嬉しそうなツグミが
特別扱いとか、して欲しいこととか口にする度
冷静を装ってはいたけど
頭ん中は振り回されて結構大変だった。
しまいにはシャワー浴びとけってさ
いっそ勘違いした方が楽なのかもしれない
男なんてそんなもんだ
イベントなんてどうでもいい
イベントなんて手段でいい
……なーんて、そう簡単には行かないんだよ
特別扱いって何だよ可愛いし
だけど純粋に祝いたいって言ってくれる相手に
邪な欲求なんて良くないし
よく聞くような雰囲気でーとか流れでーなんて
自分じゃ凡そ検討もつかないし
全然全く上手くやれる気がしないんだよ
って、言い方……
「はあー……」
ツグミと付き合うようになって
最近じゃ随分と欲張りになった。
今まで通り過ぎるだけでよしとしてたくらいで
大した思い入れもなかったけど
ツグミと過ごせるなら
今日を、もっと大事にしようって思えて来るんだから
人生、本当に何が起きるか解らない。
ほんの少し逆上せた頭で
別れ際、すごく嬉しそうにしていたツグミの顔を
ぼんやりと思い出す。
◇
「じゃーん!お弁当!こういうのもたまにはいいでしょ?」
やって来たツグミは
見るからにウキウキした様子で
入って来るなり手にした袋から次々に
弁当箱やら何やら取り出しては並べて行く。
そして、それに若干目を回しながら感動する僕。
「誕生日おめでとう、ヤマト」
面と向かってめちゃくちゃ嬉しそうに告げられて
確かに感じる特別感
あれもこれも美味くて
あれもこれも欲張って食べて
二人揃って「ご馳走さま」と両手を合わせると
僕は片付けするのを手伝いながら
ツグミがさっき言っていた台詞を思い出していた。
〝して欲しいことがあったらどんどん言ってね〟
して欲しいことはある
だけど、どう伝えたらいいのか
そもそもタイミングが解らない
何時どこで?
はっきりと口にしていいものなのかも解らない
「お茶、入れて来るね」
「あ、うん……」
片付けが済むと、
手伝いは要らないからねって笑いながら
ツグミは台所に行ってしまった。
あの感じ、もしかしてまだ何か出してくれるのか?
まさかケーキとか?
いやでももう腹はいっぱいだし
ツグミだってその筈だし
それより食後なんだし少しはゆっくりして
もっとこう、そばに寄り添ったりなんかして……
って、ああーーー
一人で黙ってると思考が邪に……
「はーい、お待たせ」
悶々としかけた所でツグミが掲げて来たのは
初めて見る色違いのカップ
「これね、今度うちで使おうと思って買ってあったんだ。だから誕生日プレゼントって訳じゃないんだけどね、せっかくだから使いたくて持って来ちゃった」
うちにあるのは
番茶とインスタントのコーヒーくらいで
洒落たもんは一切ないけど
「ヤマトはお茶の方が好きだから湯呑みの方が良かったかな?」
「いーや、これで正解じゃない?これでツグミは、うちでも好きなコーヒーが思う存分飲めるってことでしょ」
カップの向こうをチラリと見れば
わかりやすく頬を赤らめるツグミ
「……そっか、そうだね」
そうだよ、ツグミはこれからもここに来るんだ
数え切れないくらいここに来て
これから何度もここでコーヒーを飲んだりするんだ
「ほんとはケーキも欲しかったんだけどね、あの時間だしもう売ってなかったの」
「いいよ、ツグミが作ってくれたものだけで充分」
他人の誕生日なのに必死になって
って言うより、
当の本人より浮かれてすごく楽しそうでさ
だから僕も嬉しくて楽しいんだよ
ツグミとだから
今日初めて、誕生日が特別になって行くんだ。
③に続く☆
②
「はあー……」
君が来るまでには結構かかるだろうと
久々に張った湯に深く身体を沈める。
「あっつ……」
全く真夏に僕は何やってんだ……
って言うか驚く程あっさり同意するよな……
いや、ツグミのことだから
誕生日ってのと初めてってのに目が眩んでて
深くは考えてない
わかる、わかってるけどさ
いちいち嬉しそうなツグミが
特別扱いとか、して欲しいこととか口にする度
冷静を装ってはいたけど
頭ん中は振り回されて結構大変だった。
しまいにはシャワー浴びとけってさ
いっそ勘違いした方が楽なのかもしれない
男なんてそんなもんだ
イベントなんてどうでもいい
イベントなんて手段でいい
……なーんて、そう簡単には行かないんだよ
特別扱いって何だよ可愛いし
だけど純粋に祝いたいって言ってくれる相手に
邪な欲求なんて良くないし
よく聞くような雰囲気でーとか流れでーなんて
自分じゃ凡そ検討もつかないし
全然全く上手くやれる気がしないんだよ
って、言い方……
「はあー……」
ツグミと付き合うようになって
最近じゃ随分と欲張りになった。
今まで通り過ぎるだけでよしとしてたくらいで
大した思い入れもなかったけど
ツグミと過ごせるなら
今日を、もっと大事にしようって思えて来るんだから
人生、本当に何が起きるか解らない。
ほんの少し逆上せた頭で
別れ際、すごく嬉しそうにしていたツグミの顔を
ぼんやりと思い出す。
◇
「じゃーん!お弁当!こういうのもたまにはいいでしょ?」
やって来たツグミは
見るからにウキウキした様子で
入って来るなり手にした袋から次々に
弁当箱やら何やら取り出しては並べて行く。
そして、それに若干目を回しながら感動する僕。
「誕生日おめでとう、ヤマト」
面と向かってめちゃくちゃ嬉しそうに告げられて
確かに感じる特別感
あれもこれも美味くて
あれもこれも欲張って食べて
二人揃って「ご馳走さま」と両手を合わせると
僕は片付けするのを手伝いながら
ツグミがさっき言っていた台詞を思い出していた。
〝して欲しいことがあったらどんどん言ってね〟
して欲しいことはある
だけど、どう伝えたらいいのか
そもそもタイミングが解らない
何時どこで?
はっきりと口にしていいものなのかも解らない
「お茶、入れて来るね」
「あ、うん……」
片付けが済むと、
手伝いは要らないからねって笑いながら
ツグミは台所に行ってしまった。
あの感じ、もしかしてまだ何か出してくれるのか?
まさかケーキとか?
いやでももう腹はいっぱいだし
ツグミだってその筈だし
それより食後なんだし少しはゆっくりして
もっとこう、そばに寄り添ったりなんかして……
って、ああーーー
一人で黙ってると思考が邪に……
「はーい、お待たせ」
悶々としかけた所でツグミが掲げて来たのは
初めて見る色違いのカップ
「これね、今度うちで使おうと思って買ってあったんだ。だから誕生日プレゼントって訳じゃないんだけどね、せっかくだから使いたくて持って来ちゃった」
うちにあるのは
番茶とインスタントのコーヒーくらいで
洒落たもんは一切ないけど
「ヤマトはお茶の方が好きだから湯呑みの方が良かったかな?」
「いーや、これで正解じゃない?これでツグミは、うちでも好きなコーヒーが思う存分飲めるってことでしょ」
カップの向こうをチラリと見れば
わかりやすく頬を赤らめるツグミ
「……そっか、そうだね」
そうだよ、ツグミはこれからもここに来るんだ
数え切れないくらいここに来て
これから何度もここでコーヒーを飲んだりするんだ
「ほんとはケーキも欲しかったんだけどね、あの時間だしもう売ってなかったの」
「いいよ、ツグミが作ってくれたものだけで充分」
他人の誕生日なのに必死になって
って言うより、
当の本人より浮かれてすごく楽しそうでさ
だから僕も嬉しくて楽しいんだよ
ツグミとだから
今日初めて、誕生日が特別になって行くんだ。
③に続く☆