『君は戦友、なのかもしれない』
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⒎
「ヤマト!来て!」
「おっ、うわ!ツグミ?何なの急に」
ヤマトに飛びかかるみたいに腕をひっつかむと廊下から人気のない倉庫に連れ込む。
「はあ、もう何…」
「ヤマト!教えて!」
「ええ?何を…」
「ねぇ、ヤマト」
「な、何」
「カカシさん、何か言ってた?」
「何かって……何?」
「この間の!合コンのこと!」
「……あ、ああ。別に、何も」
「何も?何も言ってなかった?あの子のこととか」
「何も、聞いてないけど」
「…………はあ、そっか」
「何かあった?」
「…………何もないけど」
「けど?」
「何かしたくて」
「何かって、何でまた」
「カカシさん何考えてるのかな?あの子のこと、もうどうでもいいのかな……」
「それは知らないけど」
「そうだよね、ヤマトに聞いてもしょーがないよね」
「って、ちょっと待って、今からいきなり先輩んとこに行く気じゃないよね?」
「え、そのつもりだけどダメだった?」
「はあ、もう……駄目だよ、そんなの」
「何で?本人に聞くのが一番じゃん、今もたまたまヤマトに会ったから先に聞いてみただけだし」
「何でそう直球なんだよ、デリカシーってもんはないの?」
「む……」
「君が友達を思うのはわかるけど、何でもぶつかればいいってもんじゃないだろ」
「でも、」
「二人の間に何も起きてないんだとしたら、それまでの関係って事なんじゃないの」
「そう、なのかな」
「先輩には先輩の考えがあって行動に移してないんだろ。そもそも君の友達だって何かあるんなら自分で考えて動くべきだって思わないの」
「え」
「だいたい、先輩の立場とか解んないのかな」
「そんなの聞いてないっ、てか、ホントは知ってんじゃないの?カカシさんの気持ち」
「知らないよ先輩の本心なんて」
「気にならないの?」
「僕らがとやかく言う事じゃない」
「……薄情だね」
「君みたいに短絡的なのよりずっといいと思うけど」
なんだろう。
私が喋ってヤマトが言葉を返す度に
トゲトゲと刺さる感じ。
普段と同じようで違う。
「……なんか今日のヤマト、変」
「そうかな」
「何かあった?」
「別に」
「私のせい?」
「違うよ」
「なにか怒ってる?」
「別に」
「ねぇ、……ヤマトってなんで怒らないの?そーゆーの、なに考えてんのかわかんない」
「はぁ……逆に何で怒らなきゃいけない訳?疲れるのに」
「我慢されてるんだったら、私はやだ」
「それこそ面倒じゃない、勘繰り過ぎ」
そうやってごまかす。
でも、それってやさしいのとは違くない?
やっぱり私には言いたくないのかな
確かに、なんの役にも立たないかもだけど
ちょっとくらい、認めてくれたっていいじゃん
ヤマトと一緒なら
なにかできるかもって思ったのに
「……前から思ってたけどヤマトっていっつも上から目線」
「そう?」
「そうだよ」
「そんなの意識した事ないけど。まあ、君みたいな人と話してたら仕方ないかもね」
「……なにそれ」
「今だってまさにそうじゃない」
「……ふざけてる?」
「僕が?まさか」
「なら、ケンカ売ってんの?」
「そう思いたいならそれでいいよ。嫌ならもう話し掛けなければいい」
「ねぇ、そーゆーの、ほんとにつまんないんだけど」
「つまんなくていいよ、……どうせ僕が面白かった事なんて一度もないだろ」
じゃあね、と零れた低い声と
目も合わせず出て行く背中と
睨もうとしたのに、力が抜けて動けない。
今のって何?
あれ?
私、なにしに来たんだっけ?
ヤマトは、怒ってた?
私が、ヤマトを怒らせた?
わかんない。
ぜんぜん、わかんない。
私がしつこくて聞き分けなかったから?
でも、ヤマトだってごまかした。
ぜんぜん相手にしてくれなかった。
私、ついに見放されちゃった?
私、ヤマトに見捨てられちゃったんだ…………
◇
◇
◇
「カカシさん、ちょっと出てきますね。しばらく休憩してらして下さい」
「はーい、了解」
「……」
「……」
「……」
「……!?」
コンコン
「……どーぞ」
「失礼します」
「……うん、はい」
「突然お伺いしてすみません」
「うーん、いや全然大丈夫」
「今、お時間よろしいですか?」
「うん、ちょうど休憩中なんで全然平気」
「ふう……」
「え、何、どうした?」
「すみません……実はツグミのことでちょっとありまして」
「は……あ、なんだ、そうか、うん、どうした?」
「実は少し前にヤマトとケンカしてしまったらしく物凄ーく気落ちしてしまって……任務は何とかこなしてますが、もう魂抜けちゃったみたいで見てられなくて」
「……ふむ」
「って、あ……すみません、関係ない話を」
「いや、いいの。けど、全然知らなかったなソレ」
「いっいいんです、カカシさんには関係ないのに私ったら余計な事を!どうか忘れてください」
「んー……」
「それで、話は変わるんですが」
「え?変わるの?」
「はい、今日はお願いしたい事があって伺ったので」
「え?また別の話?そっか。……で、何かな?」
「……あのですね、今から言う事は、たぶん図々しくて世間知らずで身の程知らずだって思われるかもしれないんですが」
「……うん」
「しかも直々になんて無茶な事は重々解っているんですが……それでも直接お話したくて失礼を百も承知でこうしてお願いしに来ました」
「……うん……」
「私、少しでも可能性があるなら挑戦してみたいと思うんです……」
◇
◇
◇
機嫌が頗る悪かった。
先輩に何も言えなかったせいでもあるし
燻りを解消できなかったせいでもあるし
嫌な気分が染み付いて呪われた様な毎日
しまいにはそんな自分に苛苛が募って
虫の居所が悪いなんてもんじゃなかった。
「頭、弱いだろ」
確かに賢いとはお世辞にも言えない
「すぐ出しゃばってくるし」
それは自分でやった方が早くて正確だからで
その決断力と行動力は
きっと僕には真似出来ない
「何かって言うとキレるし」
それだって、ちゃんと話せば解る
意味がない訳じゃない
そういうのってきっと
こっちの対応次第でどっちにも転がるもんだ
「いいのは見た目だけだ…って、それもあれだけガサツじゃ色気も何もないけどさ」
見た目がそんなに大事なら
僕なんてとっくに生きてる価値もない
忍びだろうとなかろうと
女とか男とかそれだけじゃ人間は計れなくて
「まさか本気で狙ってる訳じゃないだろ?」
本気で狙うって何だよ
それ、言ってる自分の話じゃないの?
誰もが自分と同じだと思うなよ
「世話焼きも程々にしとけよ、付け上がらせるとそのうち厄介な事になるぞ」
厄介な事
そんなもん、とっくになってるよ
僕はとっくに知ってんだ
だけど。
これしきの事で頭ん中が沸騰して気持ちが爆発するなんて思わなかった。
知らずにいれば良かった。それなのに。
はぁ……
こういうのって、
やっぱり僕には向いてない。
◇
「テンゾ」
「テンゾウ」
「おい、こら!テンゾー」
「……あーもう、煩いなって、何だ先輩か」
「ったく、何ピリピリしてんの?」
「別に」
「やれやれ……いつにも増して辛気臭い顔だねぇ」
「余計なお世話です」
「……」
「何ですか」
「いや、よく見たらいつもより色男だなと思って」
「……」
「……」
「……ジロジロ見ないで下さいよ。それより何か用ですか」
「そう急かすなって。せっかく面白い話持って来たんだから、ゆっくり聞きなさいよ」
「やですよ、手短にして下さい」
「はいはい、可愛くないねぇもう」
「……どうぞ」
「実はさ、俺んとこにあの子が来たんだ」
「……そうですか」
「でね、これからは俺の近くに居てくれることになりそうよ」
「……はい?」
「いやー俺もびっくりなんだけどね?自分から志願して来たんだよ、直近で働きたいって」
「え、何ですかそれ」
「まあ、さすがに補佐って訳には行かないから、シズネさんとシカマルのサポート役って辺りで落ち着きそうだ。シズネさんはすっごく喜んでる、後継者が欲しかったって」
「……それ、いいんですか?」
「うーん……まあ、いいんじゃないの」
「そうですか…て、何か微妙な顔してません?」
「あんなバカ真面目に言われちゃあね……」
「可愛いとか思っちゃったんですか」
「うん、そう……って、おい」
「間違っても任務中に手ぇ出さないで下さいよ?」
「うーん」
「先輩」
「任務中はね」
そう零すとカカシ先輩はニヤリと笑った。何故だか、お前もぼやぼやしてんじゃないよ、と言われた気がして。
それでもぼーっとしてると思われたのか、別れ際には、先輩から背中にバシッと一発食らわされたのだった。
「ヤマト!来て!」
「おっ、うわ!ツグミ?何なの急に」
ヤマトに飛びかかるみたいに腕をひっつかむと廊下から人気のない倉庫に連れ込む。
「はあ、もう何…」
「ヤマト!教えて!」
「ええ?何を…」
「ねぇ、ヤマト」
「な、何」
「カカシさん、何か言ってた?」
「何かって……何?」
「この間の!合コンのこと!」
「……あ、ああ。別に、何も」
「何も?何も言ってなかった?あの子のこととか」
「何も、聞いてないけど」
「…………はあ、そっか」
「何かあった?」
「…………何もないけど」
「けど?」
「何かしたくて」
「何かって、何でまた」
「カカシさん何考えてるのかな?あの子のこと、もうどうでもいいのかな……」
「それは知らないけど」
「そうだよね、ヤマトに聞いてもしょーがないよね」
「って、ちょっと待って、今からいきなり先輩んとこに行く気じゃないよね?」
「え、そのつもりだけどダメだった?」
「はあ、もう……駄目だよ、そんなの」
「何で?本人に聞くのが一番じゃん、今もたまたまヤマトに会ったから先に聞いてみただけだし」
「何でそう直球なんだよ、デリカシーってもんはないの?」
「む……」
「君が友達を思うのはわかるけど、何でもぶつかればいいってもんじゃないだろ」
「でも、」
「二人の間に何も起きてないんだとしたら、それまでの関係って事なんじゃないの」
「そう、なのかな」
「先輩には先輩の考えがあって行動に移してないんだろ。そもそも君の友達だって何かあるんなら自分で考えて動くべきだって思わないの」
「え」
「だいたい、先輩の立場とか解んないのかな」
「そんなの聞いてないっ、てか、ホントは知ってんじゃないの?カカシさんの気持ち」
「知らないよ先輩の本心なんて」
「気にならないの?」
「僕らがとやかく言う事じゃない」
「……薄情だね」
「君みたいに短絡的なのよりずっといいと思うけど」
なんだろう。
私が喋ってヤマトが言葉を返す度に
トゲトゲと刺さる感じ。
普段と同じようで違う。
「……なんか今日のヤマト、変」
「そうかな」
「何かあった?」
「別に」
「私のせい?」
「違うよ」
「なにか怒ってる?」
「別に」
「ねぇ、……ヤマトってなんで怒らないの?そーゆーの、なに考えてんのかわかんない」
「はぁ……逆に何で怒らなきゃいけない訳?疲れるのに」
「我慢されてるんだったら、私はやだ」
「それこそ面倒じゃない、勘繰り過ぎ」
そうやってごまかす。
でも、それってやさしいのとは違くない?
やっぱり私には言いたくないのかな
確かに、なんの役にも立たないかもだけど
ちょっとくらい、認めてくれたっていいじゃん
ヤマトと一緒なら
なにかできるかもって思ったのに
「……前から思ってたけどヤマトっていっつも上から目線」
「そう?」
「そうだよ」
「そんなの意識した事ないけど。まあ、君みたいな人と話してたら仕方ないかもね」
「……なにそれ」
「今だってまさにそうじゃない」
「……ふざけてる?」
「僕が?まさか」
「なら、ケンカ売ってんの?」
「そう思いたいならそれでいいよ。嫌ならもう話し掛けなければいい」
「ねぇ、そーゆーの、ほんとにつまんないんだけど」
「つまんなくていいよ、……どうせ僕が面白かった事なんて一度もないだろ」
じゃあね、と零れた低い声と
目も合わせず出て行く背中と
睨もうとしたのに、力が抜けて動けない。
今のって何?
あれ?
私、なにしに来たんだっけ?
ヤマトは、怒ってた?
私が、ヤマトを怒らせた?
わかんない。
ぜんぜん、わかんない。
私がしつこくて聞き分けなかったから?
でも、ヤマトだってごまかした。
ぜんぜん相手にしてくれなかった。
私、ついに見放されちゃった?
私、ヤマトに見捨てられちゃったんだ…………
◇
◇
◇
「カカシさん、ちょっと出てきますね。しばらく休憩してらして下さい」
「はーい、了解」
「……」
「……」
「……」
「……!?」
コンコン
「……どーぞ」
「失礼します」
「……うん、はい」
「突然お伺いしてすみません」
「うーん、いや全然大丈夫」
「今、お時間よろしいですか?」
「うん、ちょうど休憩中なんで全然平気」
「ふう……」
「え、何、どうした?」
「すみません……実はツグミのことでちょっとありまして」
「は……あ、なんだ、そうか、うん、どうした?」
「実は少し前にヤマトとケンカしてしまったらしく物凄ーく気落ちしてしまって……任務は何とかこなしてますが、もう魂抜けちゃったみたいで見てられなくて」
「……ふむ」
「って、あ……すみません、関係ない話を」
「いや、いいの。けど、全然知らなかったなソレ」
「いっいいんです、カカシさんには関係ないのに私ったら余計な事を!どうか忘れてください」
「んー……」
「それで、話は変わるんですが」
「え?変わるの?」
「はい、今日はお願いしたい事があって伺ったので」
「え?また別の話?そっか。……で、何かな?」
「……あのですね、今から言う事は、たぶん図々しくて世間知らずで身の程知らずだって思われるかもしれないんですが」
「……うん」
「しかも直々になんて無茶な事は重々解っているんですが……それでも直接お話したくて失礼を百も承知でこうしてお願いしに来ました」
「……うん……」
「私、少しでも可能性があるなら挑戦してみたいと思うんです……」
◇
◇
◇
機嫌が頗る悪かった。
先輩に何も言えなかったせいでもあるし
燻りを解消できなかったせいでもあるし
嫌な気分が染み付いて呪われた様な毎日
しまいにはそんな自分に苛苛が募って
虫の居所が悪いなんてもんじゃなかった。
「頭、弱いだろ」
確かに賢いとはお世辞にも言えない
「すぐ出しゃばってくるし」
それは自分でやった方が早くて正確だからで
その決断力と行動力は
きっと僕には真似出来ない
「何かって言うとキレるし」
それだって、ちゃんと話せば解る
意味がない訳じゃない
そういうのってきっと
こっちの対応次第でどっちにも転がるもんだ
「いいのは見た目だけだ…って、それもあれだけガサツじゃ色気も何もないけどさ」
見た目がそんなに大事なら
僕なんてとっくに生きてる価値もない
忍びだろうとなかろうと
女とか男とかそれだけじゃ人間は計れなくて
「まさか本気で狙ってる訳じゃないだろ?」
本気で狙うって何だよ
それ、言ってる自分の話じゃないの?
誰もが自分と同じだと思うなよ
「世話焼きも程々にしとけよ、付け上がらせるとそのうち厄介な事になるぞ」
厄介な事
そんなもん、とっくになってるよ
僕はとっくに知ってんだ
だけど。
これしきの事で頭ん中が沸騰して気持ちが爆発するなんて思わなかった。
知らずにいれば良かった。それなのに。
はぁ……
こういうのって、
やっぱり僕には向いてない。
◇
「テンゾ」
「テンゾウ」
「おい、こら!テンゾー」
「……あーもう、煩いなって、何だ先輩か」
「ったく、何ピリピリしてんの?」
「別に」
「やれやれ……いつにも増して辛気臭い顔だねぇ」
「余計なお世話です」
「……」
「何ですか」
「いや、よく見たらいつもより色男だなと思って」
「……」
「……」
「……ジロジロ見ないで下さいよ。それより何か用ですか」
「そう急かすなって。せっかく面白い話持って来たんだから、ゆっくり聞きなさいよ」
「やですよ、手短にして下さい」
「はいはい、可愛くないねぇもう」
「……どうぞ」
「実はさ、俺んとこにあの子が来たんだ」
「……そうですか」
「でね、これからは俺の近くに居てくれることになりそうよ」
「……はい?」
「いやー俺もびっくりなんだけどね?自分から志願して来たんだよ、直近で働きたいって」
「え、何ですかそれ」
「まあ、さすがに補佐って訳には行かないから、シズネさんとシカマルのサポート役って辺りで落ち着きそうだ。シズネさんはすっごく喜んでる、後継者が欲しかったって」
「……それ、いいんですか?」
「うーん……まあ、いいんじゃないの」
「そうですか…て、何か微妙な顔してません?」
「あんなバカ真面目に言われちゃあね……」
「可愛いとか思っちゃったんですか」
「うん、そう……って、おい」
「間違っても任務中に手ぇ出さないで下さいよ?」
「うーん」
「先輩」
「任務中はね」
そう零すとカカシ先輩はニヤリと笑った。何故だか、お前もぼやぼやしてんじゃないよ、と言われた気がして。
それでもぼーっとしてると思われたのか、別れ際には、先輩から背中にバシッと一発食らわされたのだった。