『君は戦友、なのかもしれない』
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
⒍
「何で先輩が居るんですか!?」
「だって人数足んないでしょ?」
「なっ何でそれを」
「………さあねぇ」
「ええ?ああ、もう…」
「いーからいーから!ほら、女性陣が来ちゃったよ」
案の定、次期火影の登場に沸き立つ女性陣。これは、どうしたもんかと他の男性陣と顔を見合わせるが、もうどうしようもないなと諦め無言で頷き合う。
はあ、とりあえず僕は他の面子の邪魔にならないよう先輩をどうにかしなくては。
「ね!カカシさんが来るなんて聞いてない!」
「僕だって呼んでないよ、何でか勝手に来ちゃって」
「ええー?」
「あの調子だとなかなか帰ってくれそうもないし、ちょうど任務で来れなくなった奴が居るから……その代わりって事でよろしく頼むよ」
「うん、私はいいけど、たぶんみんなも、だけど……いいのかね?次期火影が」
「まあ、たぶん興味本位とかなんだろうけど……やれやれだよ」
簡単に挨拶してから店に入り、自己紹介をさくっと済ませる。少し経てばなかなかスムーズに、皆和やかに楽しんでいる様子。
一時はどうなるかと思った先輩は、意外や大人しく飯を食い、隣の女の子と会話をしたりして楽しそうだ。て、あれ?普通過ぎて拍子抜けだ。
、
、
、
あ、
ちょっと待て。違う、普通じゃない。やっぱりわざわざ来たんだ。もちろん予定メンバーを任務送りにしたのも先輩に違いない。
仕方ないなぁ、もう。と、トイレに立ったツグミの後を追う。
「ねぇ、先輩の隣のあの子なんだけど」
「うん?」
「たぶん先輩、彼女のことを気に入ってる」
「え!」
「実はさ、前に彼女のこと先輩から聞いたことがあってさ。話してみたいとか言ってたような記憶があって、ちょっと名前を零しただけなんだけど。今日来るって」
「へぇ……」
「それだけなんだけど、わざわざ来たって事は」
「おお……」
「何かごめん、大丈夫かな?彼女」
「うーん……たぶん大丈夫?じゃないかな、楽しそうだよ?」
「ならいいけど……だいぶ気ぃ遣ってるんじゃない?」
「あとで聞いとく」
意外や頼もしい顔付きで頷く君に、胸がくっとなる。こういう気持ち、何て表せばいいのか解らないけど。
「それよりさ、他の子達が予想以上に上手く行ってるんだけど!」
「……へぇ、良かったじゃない」
「……」
「……」
「ヤマト、何かした?」
「何かしたって人聞き悪いな。ちゃんと見合う人間を選んだけだよ、適材適所ってやつだ」
「は?どーゆーこと?」
「特に仲がいいって訳じゃないけど、アイツらは裏のない人間だから心配ないよ。とにかく彼女たちのことを少なからず想ってるって下調べもついてるし、彼女たちも満更でもないはずだから……誰も悪い様にはならないと思うんだけど」
「……………何それ、すご」
「いや、完全に引いたでしょ今」
「うん、完全に引いたけど、すご」
「ついでにごめんね、君に見合う奴だけ見つからなかった」
「でしょーね、見ればわかるわ」
「本当にごめん」
「そんなの全然いいけどさ。……何か今日のヤマト、他人のことばっか。ちゃんと楽しんでんの?」
「え」
「そもそもアブレてんじゃん、私しか残ってないのに」
「ああ、そう言われれば」
「せっかくチャンスあげたのにさー」
「え、そうだったの?」
「まあ、別にいいけどね」
「いやぁ、面目ない」
「ぷっ」
「笑うトコじゃないって」
「他人のこともいいけど、ヤマトもちゃんと楽しんでよね!」
そう言ってケラケラ笑いながら皆の方へ戻るツグミの後を着いていく。
確かに、他人に構い過ぎてるな。今日、というか今日のために入れ込み過ぎてたのは否めない。
まあ、自分がさておきなのはいいとして、ちょっとやり過ぎたか。それが結果として、ツグミを溢れさせ、ツグミのくれたらしいチャンスを無視し、先輩を招く事になったんだもんな……
これは、反省だな……
◇
「どうしよう、私」
「え?え?何、どーしたの?」
「だってずっとカカシさん隣なんだけど!どうしたらいいの!」
「あ、あー……やっぱり嫌?席変わろうか?」
「……の」
「え?」
「違うの、嬉しいの。死ぬほど嬉しいんだけど、同じくらい恥ずかしいの、もーーどうしたらいいの!!」
トイレの洗面所で
泣きそうな顔で急に抱き着いて来た友人。
びっくりもびっくり。
まさかのまさか。
そーゆーことなの?これは……
「知らなかった……」
「だって、あのカカシさんだよ?気安く言えないよ、憧れだって弁えてるし」
「別にいいじゃん、あのカカシさんだって同じ人間だよ?」
「違うよ、カカシさんは違う」
「んー……でもね、カカシさんだってさ、普通に誰かと話したい時だってあるんじゃない?忙しいこーゆー時だからこそ」
「……そうかな」
「私は、それが誰でもいいって訳じゃないと思うけど。カカシさん、ちゃんと楽しそうだったじゃん」
「私も。……私も楽しい」
「なら、落ち着いて。いっぱい話聞いてあげたらいいじゃない?」
「ん……できるかな」
「あは、できるできる!」
「……わかった。思い出ができたらいいや……えへへ、楽しむ!」
ぽんと背中を押してトイレを後にする。
小声で彼女を応援して、ふと我に返る。
自分にもこんな事ができるなんて。
胸があったかくてちょっぴり誇らしい。
こんな気持ちを知れるなんて
人生捨てたもんじゃない、のかも。
◇
思惑通りに皆が楽しそうでいい雰囲気の中、その場はお開きとなった。
上手く行った。全て無事だった、とは思うけど。
「先輩って肉食系なんですね」
「ん?あはは、バレた?」
「そうならそうと言っておいてくださいよ、全く」
「えー嫌だよ恥ずかしい」
「何言ってんですか、もう充分呆れてますよ」
「ごめーんね」
「やれやれ……本当に大丈夫なんですか?こんな所に来て」
「どうかな?マズいのかな?」
「もう……」
「嘘だよ、ちゃーんと都合付けて来たから大丈夫」
「はぁ、そこまでして来る必要あったんですか?」
「もちろん。……あの子と話せて良かったよ」
「そうですか」
「ずっと気になってたから。これは逃せないって思って時間調整がんばっちゃった」
「……はい」
「うーん参ったなぁ、本当に気に入っちゃったかも」
「それは……別にいい、のでは、ないで、しょうか」
「カタコトで言うなよ」
「すみません」
「大丈夫だよ、しつこくして煙たがられるのなんて嫌だからね」
「……そうですか」
「じゃーね、今日はありがとさん」
誰も駄目なんて言ってない。無理だなんて言ってない。でも、普段と変わらぬ表情で珍しく自分の話をしてくれる先輩に、気の利いた言葉が何一つ返せなかった。
今なら。今のうちに。今だけは。今しか。今更?
本当にそうなんだろうか。だけど、先輩が決めた事に僕がこれ以上口出しするなんてできる訳もなく。
こんな重い気分。歯痒くて苛苛する感覚。久しぶり過ぎて苦しい。こういう時、いったいどう処理すればいいんだっけな……
◇
「ええー、ヤマトって策士?用意周到過ぎる」
「いやいや、そんなカッコいいのじゃないよ!」
「それにしてもまさかカカシさんを連れて来るとはねぇ。私、カカシさんに憧れてるって誰にも言った事なかったのに……何で解ったのかな?」
「えっとそれは……何でかね?」
「本当凄い、ヤマトの情報収集能力ってやっぱり凄いんだね……」
「いやーそれはどーだかね、そんな褒められたもんじゃないって」
「でも、本当におかしいね、面白いって言うか……ズレてるって言うか」
「ホントそう、そもそも合コンに対する準備が間違っちゃってんの」
「あはは、でも優しいね、すごーく真面目だし」
「前も言ってたけど、やさしいの?アレは」
「そうでしょ?全部ツグミのためなんじゃないの?」
「は?何で私のため?私の相手は準備してくれなかったのに?」
「ツグミが楽しみにしてたから、皆が楽しくやれるようにって考えてくれたんじゃないのかなぁ。皆が楽しく上手く行ったらツグミが喜ぶと思って」
「…………うーん?」
「あらら、わからないの?」
「言ってることはわかるけど、やっぱズレてるし。私の相手を用意できなかったってのがねー」
「もしかして拗ねてる?」
「……別に」
「何それ、ツグミもズレてる!そうじゃないでしょ?ツグミの相手だから見つけられなかったんだって思わないの?」
「……私が手のかかる奴だからでしょ?」
「それもある」
「む!」
「あるけど、それだけじゃないって私は思うよ?」
「ん?」
「ツグミの相手だから簡単に見つけられなかったんだよ、きっと。ツグミには私情が働いちゃったんじゃないかな」
「しじょー?」
「他の子達には簡単に割り切れても、ツグミにはそう言うのできなかったってこと!わかる?」
「……はあ……んー?何となく」
「ヤマトなりに大事にしてくれてるんだね、ツグミのこと」
「………………」
「ツグミ?」
「………嘘だぁ」
「お顔が真っ赤ですよ」
「違っ、これは恥ずかしいだけ!ヤマトが悪いの!」
「ヤマトが悪いの?友達を大事に大事にしただけなのに?」
「とっ友達?」
「違うの?」
「〜〜〜〜〜いじわる!」
「ごめんね、あんまりにも可愛くて、つい」
はあ。
そっか。
私、大事にされてたのか。
ふっと〝もったいない〟を思い出す。
さすが口にした張本人、ウソはなかったんだ……
「……私もね、ヤマトにはちゃんと幸せになって欲しいから。合コンとかね、そーゆーこと言うのはもう止める」
「……そうだね、それがいいかも」
友達と夜更かしでお喋り。
こんなこと初めてで
話が深くなってほんの少し熱くなって、
色んなことを知る。
「カカシさんと、楽しかった?」
「……うん」
「思い出にするの?」
「……うん」
「いつから好きだったの?」
「え、すっ……だなんて、そんなんじゃないよ、ずっと憧れてただけ。……どういう人なのかよく知らないし恐れ多いですから」
「そんなの今から知ればいいのに」
「もう、そんな簡単に」
「今日だって話せたんだよ?また話せるよ、何なら一緒にご飯だって行ける」
「今日は偶然だよ、これからどんどん忙しくなる人なのに」
「ご飯はね、人間生きてればみんな食べるの!カカシさんだって食べる、だから大丈夫!」
「そういう問題じゃないの」
「じゃあ、どーゆー問題?」
「だからね?カカシさんはこれからの木の葉を支える、言わば里の象徴になるような人なの」
「うん」
「これからはもう一介のくノ一如きがおいそれと関わっていい御方じゃないんです」
「イッカイノ……てかゴトキって、またそんな堅苦し……」
「兎に角!カカシさんの大事な時期にご迷惑かけられません」
「じゃあ、いつならいいの?」
「それは……一生無理なんじゃない?……しいて言うなら引退されたら、かな?いつかお茶飲み友達くらい立候補してもいいかな、なんてね」
「それいつになるの?おばあさんじゃん!」
「次期火影様に憧れだけでぶつかろうなんて考えるのはツグミくらいだと思います」
「そうかなぁ、もっと気楽でいーんじゃない?疲れた時に癒してくれるよーな話相手とか欲してそーだけど。今日みたいに」
「しつこいなぁ。はい!この話はもう終わり」
「頭かったいなぁーまるで誰かさんみたいー」
「いやーそれほどでも」
「もーつまんない!」
「つまんなくて結構ですよー、あはは」
舌をべっと出しておどける友達が
すごくすごく愛しくなった。
融通の効かないトコが誰かさんと少ーし似てる。
誰かを放っておけないなんて感情が
この私にもあったんだ。
「何で先輩が居るんですか!?」
「だって人数足んないでしょ?」
「なっ何でそれを」
「………さあねぇ」
「ええ?ああ、もう…」
「いーからいーから!ほら、女性陣が来ちゃったよ」
案の定、次期火影の登場に沸き立つ女性陣。これは、どうしたもんかと他の男性陣と顔を見合わせるが、もうどうしようもないなと諦め無言で頷き合う。
はあ、とりあえず僕は他の面子の邪魔にならないよう先輩をどうにかしなくては。
「ね!カカシさんが来るなんて聞いてない!」
「僕だって呼んでないよ、何でか勝手に来ちゃって」
「ええー?」
「あの調子だとなかなか帰ってくれそうもないし、ちょうど任務で来れなくなった奴が居るから……その代わりって事でよろしく頼むよ」
「うん、私はいいけど、たぶんみんなも、だけど……いいのかね?次期火影が」
「まあ、たぶん興味本位とかなんだろうけど……やれやれだよ」
簡単に挨拶してから店に入り、自己紹介をさくっと済ませる。少し経てばなかなかスムーズに、皆和やかに楽しんでいる様子。
一時はどうなるかと思った先輩は、意外や大人しく飯を食い、隣の女の子と会話をしたりして楽しそうだ。て、あれ?普通過ぎて拍子抜けだ。
、
、
、
あ、
ちょっと待て。違う、普通じゃない。やっぱりわざわざ来たんだ。もちろん予定メンバーを任務送りにしたのも先輩に違いない。
仕方ないなぁ、もう。と、トイレに立ったツグミの後を追う。
「ねぇ、先輩の隣のあの子なんだけど」
「うん?」
「たぶん先輩、彼女のことを気に入ってる」
「え!」
「実はさ、前に彼女のこと先輩から聞いたことがあってさ。話してみたいとか言ってたような記憶があって、ちょっと名前を零しただけなんだけど。今日来るって」
「へぇ……」
「それだけなんだけど、わざわざ来たって事は」
「おお……」
「何かごめん、大丈夫かな?彼女」
「うーん……たぶん大丈夫?じゃないかな、楽しそうだよ?」
「ならいいけど……だいぶ気ぃ遣ってるんじゃない?」
「あとで聞いとく」
意外や頼もしい顔付きで頷く君に、胸がくっとなる。こういう気持ち、何て表せばいいのか解らないけど。
「それよりさ、他の子達が予想以上に上手く行ってるんだけど!」
「……へぇ、良かったじゃない」
「……」
「……」
「ヤマト、何かした?」
「何かしたって人聞き悪いな。ちゃんと見合う人間を選んだけだよ、適材適所ってやつだ」
「は?どーゆーこと?」
「特に仲がいいって訳じゃないけど、アイツらは裏のない人間だから心配ないよ。とにかく彼女たちのことを少なからず想ってるって下調べもついてるし、彼女たちも満更でもないはずだから……誰も悪い様にはならないと思うんだけど」
「……………何それ、すご」
「いや、完全に引いたでしょ今」
「うん、完全に引いたけど、すご」
「ついでにごめんね、君に見合う奴だけ見つからなかった」
「でしょーね、見ればわかるわ」
「本当にごめん」
「そんなの全然いいけどさ。……何か今日のヤマト、他人のことばっか。ちゃんと楽しんでんの?」
「え」
「そもそもアブレてんじゃん、私しか残ってないのに」
「ああ、そう言われれば」
「せっかくチャンスあげたのにさー」
「え、そうだったの?」
「まあ、別にいいけどね」
「いやぁ、面目ない」
「ぷっ」
「笑うトコじゃないって」
「他人のこともいいけど、ヤマトもちゃんと楽しんでよね!」
そう言ってケラケラ笑いながら皆の方へ戻るツグミの後を着いていく。
確かに、他人に構い過ぎてるな。今日、というか今日のために入れ込み過ぎてたのは否めない。
まあ、自分がさておきなのはいいとして、ちょっとやり過ぎたか。それが結果として、ツグミを溢れさせ、ツグミのくれたらしいチャンスを無視し、先輩を招く事になったんだもんな……
これは、反省だな……
◇
「どうしよう、私」
「え?え?何、どーしたの?」
「だってずっとカカシさん隣なんだけど!どうしたらいいの!」
「あ、あー……やっぱり嫌?席変わろうか?」
「……の」
「え?」
「違うの、嬉しいの。死ぬほど嬉しいんだけど、同じくらい恥ずかしいの、もーーどうしたらいいの!!」
トイレの洗面所で
泣きそうな顔で急に抱き着いて来た友人。
びっくりもびっくり。
まさかのまさか。
そーゆーことなの?これは……
「知らなかった……」
「だって、あのカカシさんだよ?気安く言えないよ、憧れだって弁えてるし」
「別にいいじゃん、あのカカシさんだって同じ人間だよ?」
「違うよ、カカシさんは違う」
「んー……でもね、カカシさんだってさ、普通に誰かと話したい時だってあるんじゃない?忙しいこーゆー時だからこそ」
「……そうかな」
「私は、それが誰でもいいって訳じゃないと思うけど。カカシさん、ちゃんと楽しそうだったじゃん」
「私も。……私も楽しい」
「なら、落ち着いて。いっぱい話聞いてあげたらいいじゃない?」
「ん……できるかな」
「あは、できるできる!」
「……わかった。思い出ができたらいいや……えへへ、楽しむ!」
ぽんと背中を押してトイレを後にする。
小声で彼女を応援して、ふと我に返る。
自分にもこんな事ができるなんて。
胸があったかくてちょっぴり誇らしい。
こんな気持ちを知れるなんて
人生捨てたもんじゃない、のかも。
◇
思惑通りに皆が楽しそうでいい雰囲気の中、その場はお開きとなった。
上手く行った。全て無事だった、とは思うけど。
「先輩って肉食系なんですね」
「ん?あはは、バレた?」
「そうならそうと言っておいてくださいよ、全く」
「えー嫌だよ恥ずかしい」
「何言ってんですか、もう充分呆れてますよ」
「ごめーんね」
「やれやれ……本当に大丈夫なんですか?こんな所に来て」
「どうかな?マズいのかな?」
「もう……」
「嘘だよ、ちゃーんと都合付けて来たから大丈夫」
「はぁ、そこまでして来る必要あったんですか?」
「もちろん。……あの子と話せて良かったよ」
「そうですか」
「ずっと気になってたから。これは逃せないって思って時間調整がんばっちゃった」
「……はい」
「うーん参ったなぁ、本当に気に入っちゃったかも」
「それは……別にいい、のでは、ないで、しょうか」
「カタコトで言うなよ」
「すみません」
「大丈夫だよ、しつこくして煙たがられるのなんて嫌だからね」
「……そうですか」
「じゃーね、今日はありがとさん」
誰も駄目なんて言ってない。無理だなんて言ってない。でも、普段と変わらぬ表情で珍しく自分の話をしてくれる先輩に、気の利いた言葉が何一つ返せなかった。
今なら。今のうちに。今だけは。今しか。今更?
本当にそうなんだろうか。だけど、先輩が決めた事に僕がこれ以上口出しするなんてできる訳もなく。
こんな重い気分。歯痒くて苛苛する感覚。久しぶり過ぎて苦しい。こういう時、いったいどう処理すればいいんだっけな……
◇
「ええー、ヤマトって策士?用意周到過ぎる」
「いやいや、そんなカッコいいのじゃないよ!」
「それにしてもまさかカカシさんを連れて来るとはねぇ。私、カカシさんに憧れてるって誰にも言った事なかったのに……何で解ったのかな?」
「えっとそれは……何でかね?」
「本当凄い、ヤマトの情報収集能力ってやっぱり凄いんだね……」
「いやーそれはどーだかね、そんな褒められたもんじゃないって」
「でも、本当におかしいね、面白いって言うか……ズレてるって言うか」
「ホントそう、そもそも合コンに対する準備が間違っちゃってんの」
「あはは、でも優しいね、すごーく真面目だし」
「前も言ってたけど、やさしいの?アレは」
「そうでしょ?全部ツグミのためなんじゃないの?」
「は?何で私のため?私の相手は準備してくれなかったのに?」
「ツグミが楽しみにしてたから、皆が楽しくやれるようにって考えてくれたんじゃないのかなぁ。皆が楽しく上手く行ったらツグミが喜ぶと思って」
「…………うーん?」
「あらら、わからないの?」
「言ってることはわかるけど、やっぱズレてるし。私の相手を用意できなかったってのがねー」
「もしかして拗ねてる?」
「……別に」
「何それ、ツグミもズレてる!そうじゃないでしょ?ツグミの相手だから見つけられなかったんだって思わないの?」
「……私が手のかかる奴だからでしょ?」
「それもある」
「む!」
「あるけど、それだけじゃないって私は思うよ?」
「ん?」
「ツグミの相手だから簡単に見つけられなかったんだよ、きっと。ツグミには私情が働いちゃったんじゃないかな」
「しじょー?」
「他の子達には簡単に割り切れても、ツグミにはそう言うのできなかったってこと!わかる?」
「……はあ……んー?何となく」
「ヤマトなりに大事にしてくれてるんだね、ツグミのこと」
「………………」
「ツグミ?」
「………嘘だぁ」
「お顔が真っ赤ですよ」
「違っ、これは恥ずかしいだけ!ヤマトが悪いの!」
「ヤマトが悪いの?友達を大事に大事にしただけなのに?」
「とっ友達?」
「違うの?」
「〜〜〜〜〜いじわる!」
「ごめんね、あんまりにも可愛くて、つい」
はあ。
そっか。
私、大事にされてたのか。
ふっと〝もったいない〟を思い出す。
さすが口にした張本人、ウソはなかったんだ……
「……私もね、ヤマトにはちゃんと幸せになって欲しいから。合コンとかね、そーゆーこと言うのはもう止める」
「……そうだね、それがいいかも」
友達と夜更かしでお喋り。
こんなこと初めてで
話が深くなってほんの少し熱くなって、
色んなことを知る。
「カカシさんと、楽しかった?」
「……うん」
「思い出にするの?」
「……うん」
「いつから好きだったの?」
「え、すっ……だなんて、そんなんじゃないよ、ずっと憧れてただけ。……どういう人なのかよく知らないし恐れ多いですから」
「そんなの今から知ればいいのに」
「もう、そんな簡単に」
「今日だって話せたんだよ?また話せるよ、何なら一緒にご飯だって行ける」
「今日は偶然だよ、これからどんどん忙しくなる人なのに」
「ご飯はね、人間生きてればみんな食べるの!カカシさんだって食べる、だから大丈夫!」
「そういう問題じゃないの」
「じゃあ、どーゆー問題?」
「だからね?カカシさんはこれからの木の葉を支える、言わば里の象徴になるような人なの」
「うん」
「これからはもう一介のくノ一如きがおいそれと関わっていい御方じゃないんです」
「イッカイノ……てかゴトキって、またそんな堅苦し……」
「兎に角!カカシさんの大事な時期にご迷惑かけられません」
「じゃあ、いつならいいの?」
「それは……一生無理なんじゃない?……しいて言うなら引退されたら、かな?いつかお茶飲み友達くらい立候補してもいいかな、なんてね」
「それいつになるの?おばあさんじゃん!」
「次期火影様に憧れだけでぶつかろうなんて考えるのはツグミくらいだと思います」
「そうかなぁ、もっと気楽でいーんじゃない?疲れた時に癒してくれるよーな話相手とか欲してそーだけど。今日みたいに」
「しつこいなぁ。はい!この話はもう終わり」
「頭かったいなぁーまるで誰かさんみたいー」
「いやーそれほどでも」
「もーつまんない!」
「つまんなくて結構ですよー、あはは」
舌をべっと出しておどける友達が
すごくすごく愛しくなった。
融通の効かないトコが誰かさんと少ーし似てる。
誰かを放っておけないなんて感情が
この私にもあったんだ。