『君は戦友、なのかもしれない』
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⒌
「お前とツグミってさ、ホント仲良くなったよねぇ」
「あーまあ、そうですかね」
「あれ?否定しないんだ?」
「そうですね、事実ですし、まあ戦友みたいなもんですよ」
「え、二人して何と戦ってんの?」
「いや、本当に戦ってる訳じゃ」
「そんなこた解ってるよ、で?何なの」
「うーん、そうですね……実はよく解んないんですけどね」
「……あ、そ。で、上手く行ってんのか?それ」
「どうなんでしょうね」
さっぱり解らない、と肩を竦めて見せると、意外や先輩が答える。
「そうね、変わったと思うよ」
「……変わった?僕がですか?」
「最近よく話してんじゃない、女の子と」
「えー……そうですかね?うーん、そう言われれば話しかけられる回数が増えた気がするような、気がしないような、しなくもないような」
「鈍感か」
いや、やっぱり増えたかもしれない。が、自覚すると妙に照れ臭い。
「何が変わったのか自分ではいまいちよくわかりませんけどね」
「ふーん。で、あっちもそうじゃない?」
そう言って、先輩の促す方を見れば。
くノ一の集団に紛れるツグミがいる。
ああやって、誰かとつるむツグミを見るのは確かに珍しい。あのツグミが、ちゃんと笑って会話に加わって居るではないか。
「ヤマト効果?」
「僕は何もしてませんよ」
「お前とツグミってさ、何か不思議なんだよねー」
「何がですか?」
「最近よく一緒に居てさ、普通なら変な噂の一つでも立ちそうなもんなのに全くだろ」
「はあ」
「傍から見ててもさ、男と女なのに全然そういう感じに見えないんだよなぁ。嫌な感じがしないって言うか。たぶん皆もそうなんだろうけど」
「へぇ、そうなんですか」
「俺はまだ期待を捨てちゃあいないけどね」
「……暇なんですか?」
「んな訳ないだろ」
「いい加減ふらふらするの止めて下さいね。そのうち僕にまで迸りが来そうなんで」
「たまの息抜きくらい大目に見ろよ」
「大事な時期でしょう、あまり無茶しないで下さいよ……」
「小言はもーいーよ、で、何か面白い話ないの?」
「そんなの持ち合わせてる訳ないでしょう」
「俺の期待に答えてくれる優秀な後輩はお前しかいない」
「無茶ぶりにも程があります……」
外面はいい方で、優等生で模範生だなんて言われる事もあったけど、ただ事を荒立てるのが嫌なだけで本音では悪態も吐くし毒も吐く。
確か、もう少し若い頃は声を荒らげた事もあったけど。そう言えば、ここ最近で何かに対して本気で怒ったのはいつだったろうか。
部下に注意するとかそういうのじゃなく、ただ怒りに任せて……なんて、もうすっかりしてないな。それだけ感覚が鈍ってるんだって思い知る。
こんな調子じゃ、先輩の期待に答えられるような話題なんて湧いてくる筈もないのだ。
◇
「最近思ったんだけど、ヤマトって思ってたより話しやすくない?」
「うん、わたしも思った。任務中の厳しいイメージしかなかったんだけど」
「普段はそうでもないんだね、意外と」
ね、と振られてうんと頷く。
「厳しい事言うけど、実はフォローが上手くて頼りになるしね」
「そうそう」
「暗いのかと思ってたけど、ツグミと喋ってるの見てたら結構笑ってるし」
「そう、そうなんだ!ヤマトって結構笑うんだよー」
って、思わず意気込んじゃった。
だって何か嬉しくなっちゃって。
ヤマトがちょっと見直されたらしい。
それが自分のことみたいに嬉しいとかおかしい
おかしいのにテンションが上がっちゃう。
ついでにね、
面白いとこもあるし
クソ真面目だけどなかなかいい奴だよ!
と言おうとした時。
「ツグミとヤマトって付き合ってるの?」
「……へ」
「え、何?その反応」
「ん、なんかビックリして。そんな風に思われてるって思ってなくって、ほんとビックリ……」
「て言うかね、あんまりそういう感じには見えないねって、みんなで言ってたんだよ。やっぱり違うんだ?」
「えっ、あ、そっか!……うん、全然そーゆー感じじゃない」
「そうなんだぁ……じゃあ、他に彼女いるのかな?」
「うーーん、たぶん、居なさそう」
たぶんだけど。
ふと思った。
もしかして、もしかしたら
この中にヤマトの彼女になる子が
居たりするかもしれないんだ……
おお、なんかドキッとした
身近な人同士が付き合うなんて
そんなことが現実にあったら?
それはなかなか嬉しいのかも……
あー、なにこれ、すっごいドキドキしてきたぞ
他人事なのに
こんなに気になるなんてこと、
私にもあるんだなぁ……
「ツグミとヤマトって、どういう関係なの?」
「えー?うーん何だろう?」
「友達じゃないの?」
「友達……そうなるかな?割とぶつかるけど」
「へぇ、そうなんだ?」
「私が勝手にぶつかってるだけの気もするけど」
「ええ?」
「うーん、良くないってわかってるんだけどさー……ヤマトってぜんぜん怒んないからつい言い過ぎちゃって」
「ケンカじゃないならいいんじゃない?……て言うか、ヤマトってそんなに優しいんだー」
「えっ、やさしい?」
「だってそれめちゃくちゃ甘えてるよねぇ?」
「こら惚気か!」
「えっ、え?」
「いいなぁ、そういう相手がいるって」
「……そーゆー相手?」
「……ありのままを受け入れてくれる人、みたいな感じ?」
「……」
「違うの?」
「ありのまま、って言うか悪いとこばっか見せちゃってるからね……」
「本当はいい所を見せたいの?」
「そーゆー訳でもないけど」
「けど?」
「もう少し見直してもらいたい、かな。かわいそーな奴とかさ、仕方なく構ってやってるみたいに思われてたらやだなぁって、最近思って」
「……なるほど」
「ふぅん」
「でもねー、マヌケなとこ見せちゃったから今さら気取るわけにもいかないし、ほんと楽ちん過ぎてマズいんだよ……」
「え、それ嫌なの?いいの?どっちなの」
「えー?どっちなの?わかんない」
「あらまぁ」
「あーーー、もーいーや!今のままで……」
「諦めるの早!」
「だってもームリだもーん」
「ええー?」
「あはは」
今のままってことは、
今のままで何も変わらないってこと。
友達も居て、最近の生活も気に入ってるから
それはなかなかいい気がする。
彼氏なんか居なくても全然平気で、平和な毎日。
今じゃあの時の自分が
ちょっと上手く思い出せなかったりする。
だから。
いーのだ、このままで。
◇
「……それで、何人集めればいいの?」
「え!いいの!?」
「別に構わないけど」
「絶対嫌だって言われるかと思ってた」
「いい人材が揃うかは運と時次第ってやつだけど、それでも良ければ」
「うん、大丈夫、おお、やった……」
「やったって、何か楽しそうだね?好きなの?こういう……合コン」
「え?ち、違っ!」
「あはは、嘘嘘、冗談だよ。友達とってのが嬉しいんでしょ?」
「……う、あーもう!いいから!」
最初こそ驚いたけど、少し聞けばすぐ解った。どうやら気の合う女友達ができたらしい事。みんなでわいわいと食事でもしてみたいって所だろうか。
合コンって言う割に女友達を僕に自慢したそうにうずうずしてるし。これは、きっと安請け合いでもしたんだろう。
「あ、でも飲みは止めてね」
「え?何で?ヤマトって弱かったっけ?」
「そうじゃなくて。誰かが酔って何かあったとか嫌だし、把握し切れるかわかんないでしょ」
「それは心配し過ぎだって」
「女性陣に何かあったらどうするの?」
「…ヤマトが変な人連れて来なきゃいいだけじゃん」
「男性陣に何かあったらどうするの?」
「ん!?」
「ぶふっ」
「あっ、何?からかってる?」
「いーや、真面目な話。何はともかく、弱いくせに雰囲気に流されて飲みたがるような人が居たら…と非常に心配なんでね」
「……はーい、わかった」
「よろしく」
君は素直じゃないから面と向かって弱いくせになんて言えやしないし。そもそも、君が思い描く楽しい会合には酒なんて必要ないだろうし。
本当はこんな時に呼べる知り合いなんて全然思い付かないけど、参加メンバーの名前を確認して少し本気を出せば……何とかなる気がする。
「お店はこっちで決めるね!」
あまりに無邪気に笑うツグミに、果たして釣り合う奴なんかいるのだろうか?
それはなかなかの難題だな、なんて小さくため息を吐きながら、その呑気な後姿を見送っていた。
「お前とツグミってさ、ホント仲良くなったよねぇ」
「あーまあ、そうですかね」
「あれ?否定しないんだ?」
「そうですね、事実ですし、まあ戦友みたいなもんですよ」
「え、二人して何と戦ってんの?」
「いや、本当に戦ってる訳じゃ」
「そんなこた解ってるよ、で?何なの」
「うーん、そうですね……実はよく解んないんですけどね」
「……あ、そ。で、上手く行ってんのか?それ」
「どうなんでしょうね」
さっぱり解らない、と肩を竦めて見せると、意外や先輩が答える。
「そうね、変わったと思うよ」
「……変わった?僕がですか?」
「最近よく話してんじゃない、女の子と」
「えー……そうですかね?うーん、そう言われれば話しかけられる回数が増えた気がするような、気がしないような、しなくもないような」
「鈍感か」
いや、やっぱり増えたかもしれない。が、自覚すると妙に照れ臭い。
「何が変わったのか自分ではいまいちよくわかりませんけどね」
「ふーん。で、あっちもそうじゃない?」
そう言って、先輩の促す方を見れば。
くノ一の集団に紛れるツグミがいる。
ああやって、誰かとつるむツグミを見るのは確かに珍しい。あのツグミが、ちゃんと笑って会話に加わって居るではないか。
「ヤマト効果?」
「僕は何もしてませんよ」
「お前とツグミってさ、何か不思議なんだよねー」
「何がですか?」
「最近よく一緒に居てさ、普通なら変な噂の一つでも立ちそうなもんなのに全くだろ」
「はあ」
「傍から見ててもさ、男と女なのに全然そういう感じに見えないんだよなぁ。嫌な感じがしないって言うか。たぶん皆もそうなんだろうけど」
「へぇ、そうなんですか」
「俺はまだ期待を捨てちゃあいないけどね」
「……暇なんですか?」
「んな訳ないだろ」
「いい加減ふらふらするの止めて下さいね。そのうち僕にまで迸りが来そうなんで」
「たまの息抜きくらい大目に見ろよ」
「大事な時期でしょう、あまり無茶しないで下さいよ……」
「小言はもーいーよ、で、何か面白い話ないの?」
「そんなの持ち合わせてる訳ないでしょう」
「俺の期待に答えてくれる優秀な後輩はお前しかいない」
「無茶ぶりにも程があります……」
外面はいい方で、優等生で模範生だなんて言われる事もあったけど、ただ事を荒立てるのが嫌なだけで本音では悪態も吐くし毒も吐く。
確か、もう少し若い頃は声を荒らげた事もあったけど。そう言えば、ここ最近で何かに対して本気で怒ったのはいつだったろうか。
部下に注意するとかそういうのじゃなく、ただ怒りに任せて……なんて、もうすっかりしてないな。それだけ感覚が鈍ってるんだって思い知る。
こんな調子じゃ、先輩の期待に答えられるような話題なんて湧いてくる筈もないのだ。
◇
「最近思ったんだけど、ヤマトって思ってたより話しやすくない?」
「うん、わたしも思った。任務中の厳しいイメージしかなかったんだけど」
「普段はそうでもないんだね、意外と」
ね、と振られてうんと頷く。
「厳しい事言うけど、実はフォローが上手くて頼りになるしね」
「そうそう」
「暗いのかと思ってたけど、ツグミと喋ってるの見てたら結構笑ってるし」
「そう、そうなんだ!ヤマトって結構笑うんだよー」
って、思わず意気込んじゃった。
だって何か嬉しくなっちゃって。
ヤマトがちょっと見直されたらしい。
それが自分のことみたいに嬉しいとかおかしい
おかしいのにテンションが上がっちゃう。
ついでにね、
面白いとこもあるし
クソ真面目だけどなかなかいい奴だよ!
と言おうとした時。
「ツグミとヤマトって付き合ってるの?」
「……へ」
「え、何?その反応」
「ん、なんかビックリして。そんな風に思われてるって思ってなくって、ほんとビックリ……」
「て言うかね、あんまりそういう感じには見えないねって、みんなで言ってたんだよ。やっぱり違うんだ?」
「えっ、あ、そっか!……うん、全然そーゆー感じじゃない」
「そうなんだぁ……じゃあ、他に彼女いるのかな?」
「うーーん、たぶん、居なさそう」
たぶんだけど。
ふと思った。
もしかして、もしかしたら
この中にヤマトの彼女になる子が
居たりするかもしれないんだ……
おお、なんかドキッとした
身近な人同士が付き合うなんて
そんなことが現実にあったら?
それはなかなか嬉しいのかも……
あー、なにこれ、すっごいドキドキしてきたぞ
他人事なのに
こんなに気になるなんてこと、
私にもあるんだなぁ……
「ツグミとヤマトって、どういう関係なの?」
「えー?うーん何だろう?」
「友達じゃないの?」
「友達……そうなるかな?割とぶつかるけど」
「へぇ、そうなんだ?」
「私が勝手にぶつかってるだけの気もするけど」
「ええ?」
「うーん、良くないってわかってるんだけどさー……ヤマトってぜんぜん怒んないからつい言い過ぎちゃって」
「ケンカじゃないならいいんじゃない?……て言うか、ヤマトってそんなに優しいんだー」
「えっ、やさしい?」
「だってそれめちゃくちゃ甘えてるよねぇ?」
「こら惚気か!」
「えっ、え?」
「いいなぁ、そういう相手がいるって」
「……そーゆー相手?」
「……ありのままを受け入れてくれる人、みたいな感じ?」
「……」
「違うの?」
「ありのまま、って言うか悪いとこばっか見せちゃってるからね……」
「本当はいい所を見せたいの?」
「そーゆー訳でもないけど」
「けど?」
「もう少し見直してもらいたい、かな。かわいそーな奴とかさ、仕方なく構ってやってるみたいに思われてたらやだなぁって、最近思って」
「……なるほど」
「ふぅん」
「でもねー、マヌケなとこ見せちゃったから今さら気取るわけにもいかないし、ほんと楽ちん過ぎてマズいんだよ……」
「え、それ嫌なの?いいの?どっちなの」
「えー?どっちなの?わかんない」
「あらまぁ」
「あーーー、もーいーや!今のままで……」
「諦めるの早!」
「だってもームリだもーん」
「ええー?」
「あはは」
今のままってことは、
今のままで何も変わらないってこと。
友達も居て、最近の生活も気に入ってるから
それはなかなかいい気がする。
彼氏なんか居なくても全然平気で、平和な毎日。
今じゃあの時の自分が
ちょっと上手く思い出せなかったりする。
だから。
いーのだ、このままで。
◇
「……それで、何人集めればいいの?」
「え!いいの!?」
「別に構わないけど」
「絶対嫌だって言われるかと思ってた」
「いい人材が揃うかは運と時次第ってやつだけど、それでも良ければ」
「うん、大丈夫、おお、やった……」
「やったって、何か楽しそうだね?好きなの?こういう……合コン」
「え?ち、違っ!」
「あはは、嘘嘘、冗談だよ。友達とってのが嬉しいんでしょ?」
「……う、あーもう!いいから!」
最初こそ驚いたけど、少し聞けばすぐ解った。どうやら気の合う女友達ができたらしい事。みんなでわいわいと食事でもしてみたいって所だろうか。
合コンって言う割に女友達を僕に自慢したそうにうずうずしてるし。これは、きっと安請け合いでもしたんだろう。
「あ、でも飲みは止めてね」
「え?何で?ヤマトって弱かったっけ?」
「そうじゃなくて。誰かが酔って何かあったとか嫌だし、把握し切れるかわかんないでしょ」
「それは心配し過ぎだって」
「女性陣に何かあったらどうするの?」
「…ヤマトが変な人連れて来なきゃいいだけじゃん」
「男性陣に何かあったらどうするの?」
「ん!?」
「ぶふっ」
「あっ、何?からかってる?」
「いーや、真面目な話。何はともかく、弱いくせに雰囲気に流されて飲みたがるような人が居たら…と非常に心配なんでね」
「……はーい、わかった」
「よろしく」
君は素直じゃないから面と向かって弱いくせになんて言えやしないし。そもそも、君が思い描く楽しい会合には酒なんて必要ないだろうし。
本当はこんな時に呼べる知り合いなんて全然思い付かないけど、参加メンバーの名前を確認して少し本気を出せば……何とかなる気がする。
「お店はこっちで決めるね!」
あまりに無邪気に笑うツグミに、果たして釣り合う奴なんかいるのだろうか?
それはなかなかの難題だな、なんて小さくため息を吐きながら、その呑気な後姿を見送っていた。