もう一回ぎゅっとして※
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(本気で寝ちゃうとこんななんだ)
隣には爆睡する彼がいて
仰向けになって
開いた口から
呑気に「くかー」って音がする
任務で仮眠をとる時の寝顔くらいは
さすがに何度も見てたけど
もちろんここまで緩んでなくて
(ホント子どもみたい)
ふと、子どもの頃なら
見た事があったのを思い出す
昔から寝顔はかわいかった、
なんて確信したところで
木ノ葉丸がもぞもぞと動いた
「……な、ツバメ…」
まだ夢の中らしい彼が
口にした自分の名前
それはやっぱり嬉しくて
けど、まだ何やら
もごもご言っているのに気付いて
息を潜める
「うーん、も……かい……んんん」
(ん?)
「だぁら……、もーいっかい!って……んーむにゃむにゃ」
(え、今〝もういっかい〟って言った?)
途端に顔が熱くなる
ちょっと待て私、違う違う
木ノ葉丸の事だから、そう
これはあれだ、修行とか術とか
(いや待てよ、そうでもない……)
と思い直したのは
昨晩のやり取りを思い出したから
で、さらに顔が熱くなる
今日は
二人にとっての初めての特別な日
初めて二人で朝を迎えた日、
なのだ
根っからの仕事人間の木ノ葉丸は
翌日の任務に響く事はしないから
どんなに甘い時間を過ごしてても
毎回すごーく名残惜しそうな顔をしつつ
必ず夜更けに帰ってく
そんな一本気なところも好きだから
文句なんてなくて
尊敬しかないけれど
それが昨日は違った
帰らないと言って
少しイタズラな瞳で微笑む木ノ葉丸に
びっくりして
思わずぎゅっと抱き着いた
嬉しかった?
嬉しかったけど、もっと違う感情が
身体中を巡ってた
あれは、何だったのかな
すっかり大人しくなった木ノ葉丸は
相変わらず呑気に寝息をたてていて
あんまりに穏やかで
時間が止まってるみたいで
何となく寝癖のついた前髪に触れる
(……この体力オバケめ)
寝てる木ノ葉丸もいいけど
もちろん起きてる木ノ葉丸の方がいい訳で
それは
声が聞けるからで
触れて貰えるからで
見つめ合えるから……てのは
さすがにちょっと臭過ぎるか
だけど今、一番恋しいのは
あの深くて青い瞳
凛々しくて厳しくて真っ直ぐで
時には子どもみたいに眩しくて
ふとした瞬間に甘ーく優しくなる
自分のもそうだったらいいのに
と思うくらい
子どもの頃から知ってる木ノ葉丸を
今は一番近くで独り占めして
その目には私が映っていて
そう思うと、凄く不思議で
だけど、このまま二人一緒にいて
遠くない将来も
一緒に歩いていけたりするのかな?
家族になれたりするのかな?
ぽんっと
木ノ葉丸によく似た男の子が
頭の中に浮かぶ
こんなの、重いって引かれるかな?
ちょっと想像するくらいいいよね?
そう、ちょうどナルトさんとヒナタさんの所の
ボルト君みたいに
お父さんそっくりの可愛い男の子
いいなぁ……
◇
おでこら辺が擽ったくて
薄ら目が覚める
「……コノタイリョクオバケメ」
訳の分からない呪文みたいな
彼女の声が聞こえて
仕方なしにまだ眠い目を
こじ開ける
(何だ…?…さっきの)
ふいに隣を見れば
起きているのかいないのか
目をしっかり閉じた
ツバメがいて
とりあえずちゃんと居る事にホッとして
ニヤける
仕事にかまけてばっかで
全然一緒に居てやれなかったけど
やっと、やっと朝まで一緒だ
帰らないって伝えた時の
ツバメの反応は
嬉しいとか言わなかったけど
反射的みたいな
抱き着いて来た時の衝撃は
わかりやすく喜んでるって感じた
初めての泊まりで
こんなに爆睡できるとか
自分の性格にびっくりだけど
昨日は浮かれて調子乗りすぎたから
まー……当然か
ああ、やっぱりいいもんだよな
めぇ覚めた時に
ツバメがいるって
(けど、これ寝てる?いや、起きてんのか?)
そっと息を殺して見てみれば
難しい顔をしたり
もじもじしたり
ニヤニヤしたり
目を瞑ったままで忙しくする姿に
つい笑いが込み上げた
「さっきからなに笑ってんだコレ」
我慢し切れなくって吹き出したら
よっぽど驚いたのか
目の前のツバメは
目をまん丸に見開いてから
布団に顔を隠すみたいに俯く
「な、なんでもないっ、起きてたの?」
「んー、まだ半分寝てるけど」
寝起きに間近にいる喜びと照れ
ちょっと戸惑い気味のツバメを見てたら
また勝手にニヤけてくる顔
この感じ、考えてたのはオレのこと
だったりして
「はよ」
「……おはよ」
布団に手を突っ込んで
隠されたほっぺたを摘むように触れた
ほんの少しだけ漏れた驚きの声に
何とも擽ったい気分になる
「……夢みてた」
「ふぅん……」
「子どもの夢」
「子どもの頃の?」
「いや、オレの子だろうな……父ちゃんって呼ばれたし、昔のオレにちょっと似てたし。で、一緒に遊んでた」
「へぇ、何して?」
「たかいたかいしてやったらさ、めちゃくちゃ喜んでさぁ、もう一回もう一回ってすっごいしつこくて、可愛くて笑った」
「……そうなんだ」
「父ちゃんはバテバテでした、ってか夢の中のオレって一体いくつだったんだろ?」
もっかいもっかいってねだる子どもとか
軽いけど確かな重みとか
小さな温もりが心地よかった
それに、
ちょっと離れた場所からもう一人
オレの名前を呼んでくれていたから
◇
なんと
あの〝もう一回〟は
夢の中の木ノ葉丸の子どもだった
パパに似てしつこいのね
じゃない、
ひどい勘違いしてごめんね、と
密かに二人に謝る
ああ、やっぱり可愛いんだな
木ノ葉丸の子どもは
まさか夢の中でもパパ似とか
私も見たかった
願わくば木ノ葉丸の隣で見てたかった
なんてね
「今とあんまり変わらない気がしたけどな、ツバメの見た目は」
「え?」
「夢の中のオレの子どもの母ちゃんは、ツバメでしたよ」
「え」
「だってツバメんとこから駆けてきたんだぞ、オレんとこに」
「……そう」
「て、反応薄くないか?……まあ、いいけど」
急激に恥ずかし過ぎて参る
何これ、何て言ったらいい?
照れる困る困る
「三人で手繋いで並んだとこで隙狙ってツバメにチューしたんだけど、真っ赤になって可愛かったなぁ、さらにもう一回って何度もお願いしたら、叱られた」
「夢の中でもしつこい!」
「あはは」
「もう…〝あはは〟じゃないよ」
まるで本当にあった事みたいに
めちゃくちゃ楽しそうに笑う
無邪気な笑顔につられちゃう
「可愛かった?その子」
「おー、可愛かったな」
「私の夢にも出ないかな」
「そりゃ全く同じってのは難しいだろうな」
「だよねぇ」
「そんなに会いたいのか?」
「そりゃあ、まあ…」
「うん、まああれだ、どうせそのうち会えるだろ」
「ええー?さっきは難しいって言ったくせにいい加減」
「ん?んーいや、そうなんだけど、そうじゃなくて。どうせなら本物のがいいだろうと思ってだな」
この顔は
一見真面目な顔だけど
目を逸らせてもじもじするこの態度は
ちょっぴりでも
エッチな事を考えている時の
感じ、だ
「オレは今すぐでも全然構わないけど?」
「……嫌って言ったらどうする?」
「そんなの何度もお願いするに決まってる」
「お願いって何をお願いするつもり?」
「それはー……?」
「しょうもない事言ったら怒るよ」
「ん?んー……」
「もういいよ、この話は」
別に今すぐ約束が欲しいとか思ってないし
無理に言わせたい訳じゃないし
こんな感じで聞かされるのも違う気がして
だって
ちょっと
夢みただけなんだから
◇
何でかわからない
わからないけど
機嫌を損ねた
それも、ちょっとマジな方向に
オレの物言いが
直球過ぎてがっかりしたのか
言い回しがバカみたいって白けたのか
いつもなら仕方ないなって
注意してくれる
それすらない
ノリと勢いでやろうなんて思ってない
ツバメにはちゃんと
ダメなとこも受け入れて欲しい
ただ、ぜんぶ正直にいたいだけなのに
女の気持ちとか疎くって
ツバメの事になると
すぐに舞い上がって
調子に乗り過ぎるのが悪い癖だ
「オレさ」
「…ん?」
「最初からそのつもりだから」
家族って
色んな形があって
いつまでもずっと一緒とは限らない
それを知ってるから
オレはオレなりの形で
ツバメとは、できる事なら
ずっと一緒に、より長く
とか思っちゃうんだよ
「わかってるよ」
そう言って抱き着いて来たツバメに
めちゃくちゃホッとして
「わかってるんだけどね」
と、続けられてまた焦る
「もう、その目であんまり我儘言わないで」
「……は?」
「何でもない!」
「???」
「ぎゅってして」
「…うん」
言われた通りにしたら
ツバメの匂いが鼻を擽って
薄い下着の上からわかり過ぎる
体温と柔らかな肌
もう何度目かわからない
直にだってこれでもかって
知ってるはずなのに
今さら無性に大切にしたくなって
もう一回ゆっくり確かめる
「夢の中だけど、私で良かった。……木ノ葉丸のお嫁さん」
やっとこ聞けた気がする本音
何だ、ちゃんと伝わってる
自分が正直過ぎるばっかりに
黙り込まれると弱るんだ
身体を少し離して顔を覗けば
見上げてくる視線とぶつかる
後頭部に回した掌に力を込めて
引き寄せようとしたら
少し困ったような顔付きで
今まさに食い付く気でいた唇が開く
「……あのね、私たち一緒に住んでみる?」
「住む……」
「早っ」
「住む!」
「えー?もうちょっとちゃんと考え……」
「何で気づかなかったんだ、それいい!」
「でも、親とか周りが何て言うかとか考えないの?」
「え?だって遅かれ早かれそうなるだろうし、周りには聞かれたらそう答えるだけだし、親には説明すればいいだけだ。いろいろ準備もしやすくてー……いいんじゃないのかコレ?」
籍入れる前に一緒に暮らすなんて
そう思う人だって居るだろうけど
一緒に暮らしながら
家族になるんだから
始まりはそれでも、全然いい
「……準備?」
「そ、準備」
今度こそ引き寄せれば
逃げずに柔らかな身体が答える
あー……もう、無理だコレ
「じゃあ木ノ葉丸は、うちから任務出るのに慣れなきゃね」
「え」
「だって、顔が緩んで身が引き締まらなくなるからダメなんでしょ?」
妙な事を指摘されて笑われて
だがしかしコレ、実際問題大問題だコレ
「ん〜〜〜〜〜大丈夫かな」
「ねぇ、本気で言ってる?」
「いやぁ、本当に。本気で気ぃ引き締めてかないとヤバいな鍛錬だなコレ……」
呆れた目で見られるのは
不甲斐ないが仕方ない
男 木ノ葉丸、以後精進します
「じゃ、今日から修行だね」
「おう、そうだな」
そう言って布団の中に潜り込むと
もう一回ツバメをぎゅぎゅっと抱き締めた
それで二人、そのまんまころりと
笑いながら転がる
こんなオレに
必死でぎゅっと抱き着いて来るツバメが
最高に可愛い朝だった
☆
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