テンゾウの秘めた恋
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「水無月・・・着いたよ」
まさかの寝ているらしき水無月に声をかける
あの短時間でまたを休ませることができた
僕の今回の最終ミッションは
とりあえず及第点ってところだろうか
一般とは違う病院の処置室まで付き添い
看護師に面を外された水無月の素顔
青白い顔に息を呑む
体力が戻るまで時間がかかるのは明白で
だけど、生きていてくれた、それでいい
「あ、待ってテンゾウ」
黙って引き上げようとした僕に声がかかる
「・・・な、に?」
何事かと驚いて覗き込む僕に
「ありがとう」だなんて微笑む水無月
こんなときは気遣いなんて不要だ
「ああ、そんなこと・・・
今は余計なこと考えずにゆっくり休んで」
弱々しく軽く首を振り微笑む水無月の白い頬
触れて温めてやれたら
触れて体力を分けてやれたら
どれだけいいだろう
「僕は・・・当たり前のことしただけだ」
ポツリと零せば
水無月は「それでもだよ。
凄く気を遣ってくれたでしょう」と言う
ああ、バレていたのか君にまで
してやりたいことは
片手じゃきっと足りなくて
だけど
実際に僕がしてやれることは本当に少なくて
「性格かな?さすがテンゾウだね。
あのね・・・私、割と担がれること
多いんだけどね・・・」
ああ・・・うん、知ってたけど
君は術のタイプからそういう傾向にあるし・・・
って何かな、これ、誰かと比べられる?
「優しいと言うか、心地好くて凄く安心できて
こんなの初めてだった・・・
・・・うっかり今は暗部だって忘れるくらいに」
「えっ」
「ごめんね、変なこと言ってるの
解ってるんだけど、
おかげでいい夢見ちゃったから・・・
ありがとう、・・・でいいのかな?これって」
本当に?僕が?
水無月をそんな気持ちにさせたなんて
いい夢見ちゃったなんてさ
そんなこと言われたら
少しくらい調子に乗ってもいいのかな
運良く面付けたままだし
今ならニヤけたってバレないよな
「バカにしてもいいよ、
職務中に何してんだってくだらないって
思ってるでしょう」
「まあね・・・人が心配して必死で担いでんのに
随分と呑気なんだな」
「仕方ないよ、弱ってる上に・・・」
「・・・ん?何?」
「ううん、さてはテンゾウ
お姫様抱っこに慣れてるなって思って」
「・・・はあぁぁぁぁぁぁ?????」
面食らって大きな声が出て
水無月が慌てて口にしーっと指を当て
僕も思わず面の口元を手で覆う
「ご、ごめん」
「びっくりした・・・」
「水無月が変なこと言うからだろ
・・・慣れてるって何だよ、
仕事でしかした事ないし正直不慣れ過ぎて
申し訳なかったって思ってんのに。
・・・て言うか、喋ってる場合じゃないでしょ、
僕はもう行くからね」
恥ずかしくて
小声で一気に言い切って背を向ける
「テンッ・・・」
何、何、何、
何で途中で止めるんだよ
思わず足まで止めちゃっただろ
「・・・あの」
ただそれだけに、どれだけ引力あるんだよ
「お見舞い来てくれる?」
「ああって言いたい所だけど任務次第だから、
どうかな」
「そう、だよね」
「僕はしばらく来ない方がいいと思うんだけど。
こうやって水無月のお喋りが止まらないんじゃ
身体の治りが悪くて困るだろ」
「えー・・・」
「君が今言いたいこと忘れた頃にでも
また顔見に来るよ」
「そーゆーことで、お大事に」と言って
上半身ひねって水無月の頭をぱっと撫でると
僕は反応も見ずにそそくさと病室を後にした
我ながら大胆なことをしたもんだ
水無月の頭を撫でた自分の掌を
まじまじと見る
まるで子どもみたいに
見舞いに来て欲しいと訴える顔が
弱ってるからそうなんだって
幾ら言い聞かせても
小さな期待が消えなくて
僕の熱が
君に全て伝染ってしまえばいいとさえ思うよ
だってあの掌には
きっと君を治すくらいの想いの強さだけは
紛れもなく滾っていたから
想いだけで水無月の全てを癒せるのなら
僕の右に出られる奴なんか
きっとどこにも居ないよ
嬉しいのに怖かった
弱ってる君が甘えた台詞を口にするのが
勘違いするのが怖いんだ
だけど、今は元気な水無月の姿が見たい
面越しだって構わない
だから、しばらくは距離を置こう
お互いに勘違いしてしまうのは
良くないに決まってる
☆
「おい、テンゾウ」
「あ、はい」
「お前、水無月の見舞い行ったのか」
「・・・いえ」
「まぁ・・・普通は行かないよな。
俺も行ってない、
様子は医者から聞いてるし・・・
けど人伝に聞いたんだ、
アイツがお前の見舞いを待ってるらしいって」
「・・・はあ」
「強制はしないが時間と余裕があるなら
行ってやってもいいんじゃねーか」
「・・・考えておきます」
「アイツ・・・
たぶん暗部に戻らないつもりだろうから」
「えっ!そんなに悪いんですか!?」
「そーじゃねーと思うけどな、
まあ後は直接、本人から聞け」
☆
チームのリーダーから聞かされたことに
動揺が隠せないまま
だけど真相が知りたくて
ついに僕は水無月の入院している病室まで
来ていた
が、生憎先客が居て
去ろうとした僕を引き止めたのは
ふいに耳に入ってしまった声
「暗部止めるって・・・したら、
これからは一緒に働けるってこと?」
「うん・・・まぁそうなるね」
「そっか、なんか嬉しいな。こう言っちゃなんだけど、やっぱり心配だったんだずっと・・・」
「・・・うん・・・」
「じゃあさ、これからはもっと近くに居られるってことだよな」
「・・・え?」
「その・・・誰かいるのか、恋人とか」
ああ、なんてこった
早く立ち去らなくちゃと思うのに
答えが聞きたい気持ちが勝って足が動かない
「いないなら、俺が立候補してもいいかな?」
ああ、僕は本当に何をやってんだろう
こんな形で水無月に恋人がいないと知った所で
何かが変わる訳でもないのに
「・・・ごめんなさい、好きな人がいる」
今更、水無月に想う人がいるくらいじゃ
驚きもしない、むしろ何処かホッとして
そりゃあショックじゃない訳ないけど
こんな形で知った僕は
勝手に気持ちを揺さぶられることすら
許されちゃいないんだから