最初から、許してる/④億泰
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億泰side┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「仗助よぉー・・・最近、調子どうよ?」
放課後、さっさと帰ろうとする仗助を廊下で引き留めた。
「・・・は?何だそりゃ、毎日学校で会ってんだろーが」
「いや・・・最近なんかお前の様子が変な気がしてよ・・・」
「はあ?別に何もねぇーけど?・・・億泰に心配されるとは、こりゃあ仗助くんちこっとしくったなぁ」
どうせ正直にすぐに話すとは思わなかったけどよ
仗助は呑気を気取ってるが、ホントは凄ぇ賢いから
おれの知らないもんに気付いたり感じたりがあるはずで
周りもよく見てるからそれを隠したり一人で抱え込むなんてのも幾らでもあるはずだ
「億泰よぉー・・・いつまで辛気臭せぇ顔してんだよ?ったく、そんな顔で寄ってくんじゃあねぇよ、伝染っちまうっつーの!」
「仗助・・・」
「あああーうるせぇー」
「俺には言えねぇ話か」
「そんなんじゃあねぇって」
「それなら康一くらいには話せよ、ちっとは楽になんだろ」
「・・・・・・・・・」
「わかったよ、もう何も聞かねぇ。けど、そん代わり俺に出来ることがあんなら何でも言えよ」
「・・・・・・・・・・・・何でもか」
しょげて食い下がるおれに、何故か急に食いつく仗助
「は?・・・お、おう・・・おれにできることならな」
「・・・・・・・・・・・・そんなら貸してくれ」
「ん?何を?」
「雛子を貸してくれ」
「・・・は?えっ、雛子?何で?」
「何も聞かねぇーんじゃあなかったのか?」
頼られる、そのはずが何か違うと感じるのは、仗助の物言いのせいなのか
〝雛子〟とその口から聞かされた時に湧いたいつもと違う妙な感じ
「・・・・・・仗助、本気で言ってんのか?」
「さてどうだかな」
そう言って口の端が上がって見えた仗助の顔。
何なんだコレは?仗助は何を言ってんだ?
おれは・・・・・・仗助に妬いてんのか??
「雛子は物じゃあねぇんだ。貸すとか貸さないとか、ボケてんのか?」
「貸さねぇなら勝手に貰ってくっつーのもありだけどな」
「仗助てめぇ・・・一体何のつもりだ?こんなの絶対ぇおかしいだろ・・・・・・・・・?」
背を向ける仗助の腕に手をかけた時だった。
「ねぇ!!何してるの!!二人してこんな所で・・・っ」
駆け込んできた雛子はハァハァと息を切らしながら、おれたちの会話に割って入る。
いつの間に・・・いつからおれたちの会話を聞いてたんだ?
「なーんだ、自分から来てくれるとはビックリ。捕まえる手間が省けたなぁ」
「・・・え?」「おい、仗助・・・!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なーんて嘘だよ、バーカ」
「え?え?」「は?えっ!?嘘????」
「嘘に決まってんだろーが・・・仗助くんはフェミニストなんだからよぉーーーー他人の女なんか拉致するかボケ」
「やっえっ・・・まあ、そりゃあそうだなぁ」
「しかもそんなブス!金貰っても要らねぇつーの」
そう言うと仗助は身を翻して走って逃げて行く。
ぶっぶっブスって!!!!!!
他人の女 目の前にしてあの野郎・・・だとか思うのに
今おれの胸の中は変なモヤモヤで埋め尽くされて、声も出なけりゃ追うこともできねぇ
仗助が心配とかよりそれよりも、頭ん中も胸ん中も何とも言えない気持ち悪さでいっぱいで
「え?え?ちょっと・・・何これ、どうしたの?億泰くん」
「わっかんねぇ・・・何か様子が変で、気になって聞いてみたんだけど理由を話してくれなくってよぉ・・・」
「ケンカしちゃったの?」
「いや、どうだろう?ありゃあ喧嘩なのか、それもよくわからねぇ・・・」
「・・・そっか、わかった。それならとりあえず私が話してみてもいいかな・・・やっぱり心配だし・・・億泰くんの大事な友達だから放っておけないよね・・・」
「え?雛子が?」
「うん、大丈夫!追い付けなかったらすぐ諦めるし、嫌われない程度にちょっと話を聞いてみるだけだから。億泰くんは先に帰ってて」
「あっ!おいっ・・・!!!!!!」
こーいう時、雛子は行動力が凄ぇ
あっと言う間に仗助の走り去った方を追いかけて行っちまった。
仗助side┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
何となくそんな気がして校門で待ち伏せしてみりゃ予感的中
キョロキョロしながら一人でこっちへ駆けて来る雛子
さりげなく姿を晒してみれば、しばらく何も言わずに後をついてくる。
「東方くん」
学校からはとっくに離れ、住宅地を抜ければもうすぐ商店街・・・という所で、雛子はやっと声を掛けてきた。
「ねぇ、東方くん、どこに行くの?」
「・・・・・・」
「真っ直ぐ帰るの?」
「・・・・・・」
「それとも・・・寄り道するの?どこか・・・」
「・・・・・・」
「いつも億泰くんとは学校帰りに何してるの?」
「・・・・・・」
「ねぇ、東方仗助くん」
「・・・・・・」
「・・・・・・仗助くん、聞いてる?」
グレート
やりゃあーできんじゃん
名前を呼ばれて、おれはやっと足を止めた。
「何・・・もしかして、お前が代わりに付き合ってくれるとか?」
「・・・うん、いいよ私で良ければ」
マジかよ、グレートだぜ・・・
「へぇ・・・・・・んならゲーセンでも行くか」
「は、はい・・・」
「もしかしてゲーセン行ったことねぇの?」
「ううん、そういう訳じゃないけど」
「あ、そ」
一瞬ちょっと喜んだ自分がムカつくぜ。
「んじゃ行こうぜ・・・・・・あ、けど、くれぐれもおれの隣に並んで歩くなよ?隣だけじゃあなく、あんま近くには寄るな。それがお前の身のためだ」
「あ、はい・・・わかった」
ちょっとだけ注意を払うとまだ訳のわかってねぇ雛子と二人、ゲーセンを目指す。
一緒に向かってんのに、そこそこの距離を保って一列に歩くおれたちは、傍から見たら一体どう見えるんだろーな
なんて思ってるうちに、ジョジョだなんだとまとわりついてくる女子がちらほら湧いて来て
その度にそれをテキトーにあしらいながら進むおれ。
最初こそ戸惑っていたものの、今じゃ慣れたのか、雛子は上手に距離をとって知らん顔してやがる。
「東方くんって本当にモテるんだね」
「は?お前知らなかったのかよ」
「まあいいじゃない、ほら、あれでしょゲームセンター!」
そういうと、雛子は一気におれを追い抜いて駆けて行く。
何だ、案外乗り気じゃあねぇか・・・なんて、ボサッとしてたら、周りに聞こえないように口に手を当て「東方くん、早く」なんてコソコソ言いやがる。
「はっ・・・ホント変な奴」
店内でも適度な距離を保ってるから、ゲーム機が犇めく店内だとお互いに姿が見え隠れして忙しない。
雛子が小さいから余計に滑稽で・・・それが何かガキが隠れんぼでもしてるみてぇで思わず笑っちまった。
テキトーな一人用のゲーム機を見繕い、それぞれに腰を下ろすと、雛子はホッとしたように俺を見て笑う。
「こういうゲーム、いつもしてるの?」
「まあ、そん時の気分でな、色々だよ」
全然わかってない風の雛子にテキトーにやらせて、おれも雛子に合わせるみてぇにテキトーに遊ぶ。
わぁとかきゃあとか言いながら、そこそこ本気にも見える雛子
訳がわかってねぇ女子がやるとこうなんのかなぁなんて、出来るだけ他人ぶって目の端で見ながらニヤニヤしちまうおれ
2種類を2回もすれば充分で、気分も何か落ち着かねぇし特にやりたかった訳でもねぇから、俺らはさっさとゲーセンを後にした。
それでも雛子はまだついて来る気らしく、ぶらぶら歩きながらたまに振り向くと、何故か笑顔を返してくる。
それがまたガキの遊びみてぇで面白くて、ついわざと繰り返すおれ。
「ここにもよく来るの?」
商店街の先にある小さな公園で、隣り合うベンチにそれぞれ腰掛けると雛子が尋ねる。
「ああ・・・まあ、そーだな」
せっかく落ち着ける場所だっつーのに、嫌な予感しかなくて、テキトーな相槌を打った。
「・・・・・・東方くんは、私が嫌い?」
他人ぶって目も合わせず、前を向いたまま雛子が言った。
「そんなこと、おれ言ったかよ」
「言ってないけど、何となく」
「しいて言うなら・・・雛子のその、何でも億泰中心みたいな物言いが大嫌ぇだな」
「・・・なるほど」
「おれと話してても、どーせぜーんぶお前の頭ん中じゃいっつも1回億泰通してんだろ」
「・・・本当だ・・・そうかも・・・」
「って、怖ぇな無自覚かよ」
「・・・・・・ごめんね、東方くん」
「別に、謝るよーなことでもねぇだろ」
「ううん、そうじゃなくて。億泰くんのこと」
「・・・・・・何が?」
「私、億泰くんを盗っちゃったから。だから私が嫌いなんでしょう?」
・・・
・・・・・・は???????????????
・・・
「マジか」
そんな風に思われてたなんて、仗助くん一生の不覚なんすけど!!!!!!
絶望的な会話を進める気にもならねぇが
このまま絶望的な勘違いが定着する方が数倍やべぇから
「んな訳あるかボケ!!!!!!」
ちょっとパニクっての全否定
「イイ歳こいてダチに女が出来たくれぇでいちいち拗ねる訳ねぇだろーがっっ!!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・えっ・・・そうなの?」
「あっっったり前だっつーの」
パニクって出たアホみたいなデカい声
だけど、イライラが消えて凄ぇすっきりしてる
「・・・じゃあ、億泰くんとは何があったの?」
「別に・・・何でもねぇのにしつこく心配して来っから邪険にしてやっただけだよ」
「億泰くん、本当に心配してるよ?」
「知ってるよ」
「億泰くんは東方くんのことが大好きだから・・・」
「うげっ」
「東方くん、バカにしないで」
「してねぇーよ!どっちかっつーとバカにしてんのは雛子じゃね?」
「え?私が?」
「言い方な、ストレート過ぎだわ」
「そうかなぁ?そんなつもりはないけど」
「まあ・・・そーいうの嫌いじゃあねぇけど」
「・・・え?」
「・・・だから、そーいうの嫌いじゃあねぇって」
「え?何?嫌い?」
周りで遊び出した小学生が騒がしいせいで、聞き辛そうに雛子がこちらを向いた。
「違ぇって!そーいうのがいいっつってんの!!!」
タイミングがいいのか悪いのか
小学生はとっくに走り去っていて、おれの中途半端な告白は真っ直ぐに雛子へ届いちまった。
「・・・・・・あ、ああ・・・それは、どうもありがとう」
「・・・・・・別に褒めたつもりはねぇーんだけど 」
「それでもいい・・・嫌われてないのなら良かった」
横顔がほんの少し笑う。
こんな顔で笑うのか。
少し聞こえた小さな溜息。
そんなに気張ってたのかよ。
「私・・・東方くんに試されてるのかと思ってた」
「は?」
「億泰くんの彼女に相応しいか、見定められてるのかなぁなんて・・・」
「はぁぁぁぁぁ???・・・おれは何様だよ」
完全に呆れ返るおれを見て、雛子はぷっと噴き出した。
「笑ってんじゃあねぇ、笑われるべきはお前だぞコラ」
「あはは、本当にね」
「億泰以上のバカだな」
「バカだね」
「由花子以上の思い込みの激しさもやべぇ」
「やべぇですか」
「ああ」
目が離せないっつーのは、そうか
こーいうことを言うんだな。
「それに凄ぇ面白くて・・・・・・おれは好きだぜ」
まるで息を吐くように自然に口にした台詞
たぶん自然過ぎて雛子にはきっと何も聞こえていないだろう
よぉ、億泰くん
こいつはマジにグレートな放課後デートだったぜ