最初から、許してる/④億泰
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仗助side┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
見てはいけないモノを見ちまった。
その一
今、目の前にいるのはクラスメイトの女子とダチ
お互いに見つめ合う雛子と億泰
突如現れたおれに驚きこそすれ
おれなんかどーでも良さそうなその態度
抱き合ってる訳でも、ちゅーしてる訳でもねぇのに
二人が放つラブラブムード
ああああああ
間に合わなかったか!!!!
と激しく衝撃を受けたおれ
あの日から1週間。
あの日から付き合い始めた億泰と雛子。
あの場に居たんだ
もちろん体良くきちんと説明された。
億泰はデレデレしながらも事の次第を話してくれたし、雛子もちゃんと、幸せそうに笑ってた。
だから疑ってる訳じゃねぇ
だから疑ってるとかじゃあねぇんだけど
どうもスッキリしねぇんだ
その二
見てはいけないモノ。本当はこっちが先。
それは4日前の放課後のこと。
呼び出しくらったおれが、教室で待ってる億泰のトコに戻った時のこと。
「おーーー億泰ぅ、待たせたなぁ・・・」
そう呼びかける直前に、おれは見ちまった。
雛子が億泰に抱きついていたのを。
内心??????????????????
何が起きたかわからねぇ大パニック
しかし喋ろうと準備してたおれの身体は、めちゃくちゃ普通に「おーーー億泰ぅ、待たせたなぁ・・・」なんつって、
おれの気配に慌てて逃げ出す雛子と難なくすれ違った。
本当はパニクってて何もできなかっただけだけど。
億泰が雛子を気にしてんのは知っていた。
雛子と話してると明らかに態度が違うし、
その癖、知らねぇフリみたいな顔するから、妙だなーとは思ってた。
だから告白するとかそーいうのとは違うのかななんて思ってた。
雛子が億泰を気にしてるのも知ってたし。
最初は当然みたいにおれ見てんのかと思っちゃったけど
雛子が時折目で追って遠くから微笑む、本当の相手は億泰だった。
まさか。もしや。
雛子こそ、億泰に本気なのか???????
おれの中に膨らんだ疑惑。
グルグルと渦巻くそれがどーにも気持ち悪い。
こいつら、放っておいたらどーにかなっちまう
て・・・・・・いや、別にいーんだけど・・・
てか、どーにかなるってどーいうこと?
・・・・・・・・・あ、やっぱり何か気持ち悪ぃーかも
とか何とか思いながら居たんだが
こいつら、本当にどーにかなっちまう
その二でおれは悟ったんだ。
しかしおれの悟りを知ってか知らずか
あの時から億泰の様子がすっかりおかしくなっちまった。
億泰は雛子に惚れてるはずで
どー見ても雛子は億泰に抱きついてた訳だから
普通に考えたら「好き!」とか言われてそうなのに
教室に残されてた億泰は魂が抜けたみてぇに凹んでた
何か怖過ぎてビビりながらちょっと聞いても何でもねぇの一点張り
次の日からの億泰は、雛子が近寄る度に逃げ出すし、おれはますます謎だった。
だけど、二人の間に何かあったのは間違いねぇ
どう見ても雰囲気は悪いのに、おれの中の何かが
ずっと警報を鳴らしてるみたいだった。
変な焦燥感を抱きながら億泰のそばに居る。
雛子から逃げる億泰のそばにもおれは居て、
できるだけ億泰から離れないようにしてた。
そうすりゃ、良くも悪くもこれ以上二人がどーにかなっちまうこともないって、何か必死だったんだ。
そんな感じで迎えた4日目。
もちろんその日もおれはずっと億泰にくっ付いてた。
それが昼休み、急に現れた由花子に捕まった。
億泰から引き剥がされたと思うと、康一の様子が変だとか浮気してるんじゃないかだとか涙目で訴えられ、しまいには帰りに尾行に付き合う羽目になったのだ。
口の軽い億泰くんには言わないでと念押しされて、仕方なく黙って学校を後にした。
由花子について一緒に尾行するおれ。
康一が浮気なんてするかよ、人間的に有り得ない
ましてや由花子みてぇなヤバい奴が居んのに浮気なんて絶対ぇないだろ・・・とは言えねぇから仕方なく付き合って・・・
結果、もちろん康一は浮気なんてしてなくて
あちこち歩き回って見てたのは店頭に貼られたバイト募集で、電話を頻繁にしてたのはどうやらバイトを探してるせいだった。
何で由花子に秘密にしてるのかまではわからなかったが、浮気じゃないと納得したのか、由花子はスッキリした顔で礼を言うとそそくさと帰って行った。
「はぁ・・・・・・やれやれだぜ」
どっかの誰かさんみたいな台詞が口をついてから
ハッとする。
ーーーーーーーやべぇ
一気に身体中に犇めく嫌な予感。
鳴り止まない頭ん中の警戒音。
一心不乱に目指して辿り着いた学校。
真っ先に下駄箱を確認すると、存在をバッチリ示す億泰の靴。
雛子が部活で残ってるのはいつものこと。
やべぇ
やべぇやべぇやべぇ
教室には居なくて、次におれが思い付いたのは呼び出しの定番屋上。
体育館の裏なら靴がなくなってるはずで
それに屋上は億泰が気に入ってる場所だから
そこしかないと狙いを定めて駆け昇って辿り着いた屋上。
時すでに遅し・・・・・・
おれの目の前には
すでにデキちまった二人がいたと言う訳だ。
やべぇって一体何がやべぇんだ?
おれだってわからねぇ
ただ何となく駆られる不安
普通によくある恋愛とか恋愛して付き合うとか
はたまたその先の結婚とか
とにかくそーいう普通のってのがピンと来ねぇ
おれはそーいう親を知らねぇし、身近にそーいう大人が居なかったから、愛し合う二人的なモノは正直とても落ち着かねぇ
自分と同じように訳アリな家庭環境の億泰がしている
おれにとってそれはやっぱ異常事態なのかもしれねぇ
康一と由花子には感じたことがねぇのにな
ただ恋愛を理解できないだけなのかもしれないし、それは幻だと二人に警告したいだけなのかもしれない。
おれは一体どうしたいんだ?
本当に何がしたいのか自分でもよくわからねぇ
ただ、これだけはわかった。
おれは
〝見てはいけないモノを見ちまった〟んじゃあなく
〝見たくなかったモノを見ちまった〟んだってこと
きっとそうなんだって。
康一×由花子┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「ねぇ、康一くん」
「なあに、由花子さん」
前を歩くぼくの服の裾を、彼女が掴んで引き留める。
振り返ると、ぼくよりずっと背の高い彼女が
心細げにとても深刻な顔でぼくを見下ろしている。
「貴方・・・どう思う?」
「・・・え?何?」
「何?じゃあなくて!・・・あの東方くんの視線よ・・・」
「あっ・・・ああ・・・」
由花子さんの見つめる先には、恋人同士の億泰くんと雛子さん、そして・・・仗助くんがいる。
「康一くんも気付いていたでしょう?東方くんの、あの只ならぬ視線」
「うーん、いや、まあ・・・」
「あの視線の意味する所は一体何なのかしら?」
「ええと、由花子さん、あのさ・・・」
「虹村くんと雛子さんがお付き合いを始めてからよね、こんなの・・・」
「うん・・・って、由花子さん、ちょっと・・・」
「虹村くんと雛子を見つめる時の東方くんはちょっと所じゃあなく異常な雰囲気があるわ」
「あんまり深く考えない方が・・・」
「やっぱりアレかしら・・・」
「アレ・・・?」
「ええ・・・やっぱりあの視線は嫉妬なのかしら?」
「しっ・・・と・・・」
「あの敵意に満ちたような視線を見てご覧なさいよ」
「ゆ、由花子さん、これ以上はちょっと・・・!」
「そもそも虹村くんが東方くんに優し過ぎるのが良くないんだわ」
「えっそうなの?」
「そりゃあそうよ、帰りだってしょっちゅう3人で居るじゃない、東方くんが一人だからって甘やかし過ぎだわ」
「えー?ダメなの?そういうもんかなぁ・・・」
「じゃあ、康一くんはどう思うの?」
「いやーぼくはよくわかんないけど・・・」
「いいえ、康一くんの意見が聞きたいわ」
「うーん、そうだなぁ・・・仗助くんがどんな目で見てようと、仗助くんはきっと2人の仲を裂こうとか2人を本気で傷付けるようなことはしない、それだけは間違いないんじゃあないかな・・・」
「・・・・・・康一くん」
「由花子さん、だからさ・・・」
「甘いわよ、甘過ぎるわよ康一くん!」
「げっっ」
「雛子さんに忠告しておいた方がいいわね」
「えっ!ちょっと待って、忠告って何を!?憶測で他人の気持ちを伝えるなんてダメだよ!」
「そんなこと言ったって・・・それじゃあ本人に警告する?それとも虹村くんに忠告すればいいのかしら?」
「えええ!億泰くんには絶対言っちゃあダメだよ!」
「・・・そうかしら、東方くんに惑わされず虹村くんさえしっかりすればいいことだわ」
「仗助くん格好良いからなぁ〜〜〜」
「格好良いから何?格好良かろうが良くなかろうが女だろうが男だろうが恋をしたら関係ないわ」
「え、あ、うん・・・でも雛子さんの気持ちが移ったとしたら仕方がないよね、その時は」
「・・・・・・・・・え?」
「・・・・・・・・・ん?」
「東方くんが見ている相手は・・・雛子さんなの?」
「え!?そういう話じゃあないの?って憶測だけどね」
「いえ・・・確かにそう見る方が普通だわね」
「・・・・・・えっ!まさか由花子さん!!!!」
「ええ、虹村くん狙いかと思っていたわガッツリと」
「んなアホな」
「・・・・・・だって面白くてつい」
「仕方ないなぁ、本当に思い込みが激しいね、由花子さんは」
「・・・・・・ごめんなさい」
「どちらにしろ、僕らの出る幕じゃあないよ」
「・・・・・・ええ」
「仗助くんをもっと信用して、治まるまで待ってあげようよ」
「・・・・・・康一くんがそう言うなら・・・わかったわ」
「ありがとう由花子さん、ぼくの友達を心配してくれて。ぼくも本当は少し気になってたから・・・話せて楽になったよ」
「ええ、それなら良かったわ」
「それに、由花子さんの洞察力と正義感はとても素敵だと思うよ。だけどね、君に何かあったら嫌なんだ・・・だから、これからも何かに気付いたら、先ずはぼくに教えてくれると嬉しいな」
「ええ、もちろんだわ」
そう言って力強く頷く彼女のバラ色に染まる頬を見て安堵すると、ぼくはそっと彼女の手を握り絞めた。
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