おれの名前を呼んでくれ/④億泰
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「虹村億泰」
初めてきちんと彼を認識したのはあの時だった。
先生にクラス全員分のノートを集めて提出するように言われてて、あと一人。
出していないのは「虹村億泰」という男子だった。
名簿で名前を見ても顔はとりあえず思い出せる程度。
それなのに、素敵な名前だなぁなんて、何となくでも感じてしまったのは、きっと運命だったのかもなんて、これまで何度も思ってきたこと。
その頃は東方くんとも仲良くなくて、殆ど一人でいることの多かった彼は、なかなか見つからなかったっけ。
ほんのちょっと苦労して、やっと見つけたのは屋上だった。
つまらなそうに紙パックのジュースを飲みながら、置きっぱなしになって古ぼけたイスに逆向きに座ってぼんやりしてた。
「・・・・・・虹村、億泰くん?」
遠慮がちに初めて口にした名前。
自分でもびっくりする程に胸が高鳴った。
そして、私の呼びかけに驚いてイスから転げ落ちそうになった彼が、少し慌てた様子でめちゃくちゃ照れ臭そうな顔をしてたこと。
誰だって問われて、自分の名前と彼を探していた理由を話すと、驚く程すんなり受け入れて「わざわざ悪かったな」って、ボソリと言ってくれた。
「虹村くんの名前・・・億泰って、いい名前だね」
ホッとして思わず私がそう言ったら、億泰くんの険しかった顔がほんの少し緩んだから、調子に乗った私はそのまま、普段の自分では考えれないようなとても大胆なお願いを口にしたんだ。
「億泰くん・・・て、呼んでもいい?」
穏やかな丸い瞳が真ん丸になって、すぐに視線は逸れたけれど
「別に・・・構わねぇけど」
億泰くんはぶっきらぼうでもそう言ってくれて嬉しかった。
一見強面で眉間に皺を寄せて素っ気なくしていても、本当は優しい人なんだって、少し経てばすぐにわかった。
「億泰くん」
そう呼ぶのが心地好くて好きなんだ。
そう呼んで、こちらを向いた彼と目が合う度にドキドキが止まらなくなったのはいつからだろう。
「何だよ」って面倒臭そうな顔するくせに、逃げもせずにちゃんとこちらを向いて話を聞いてくれる優しい瞳も好きなんだ。
東方くんと仲良くなってからはよく笑うようになって、いつも二人してふざけたりして楽しげに笑う姿だって、いつもいいなって見てたんだ。
悪ふざけばかりに見えて、友達想いで情に厚いのも知ってるよ。
どれも学校に居る時の彼で、そういう姿しか知らないのに、それでもこんなに大好きで
もっとたくさんお喋りをしてみたくて
東方くんみたいに無邪気に笑い合ってみたいんだ
たまには部活で作ったお菓子をプレゼントしてみたいし
本当はノート以外のお世話だって焼いてみたい
億泰くんに、もっと私を知って欲しいけど
私が、億泰くんをもっと知りたいの
今、何を考えてるの?
今、どこで何してるの?
せっかく億泰くんが言ってくれた言葉
億泰くんはなかったことにしたかったのかもしれない
だけど、そんなのダメに決まってる
私だって億泰くんに惚れてるの
本当の気持ちが言えなくて物凄く後悔してるのに
億泰くんにあんな悲しい想いをさせたままなんて嫌なのに
だから、逃げてしまった次の日からずっと億泰くんを追ってたの
避けられて、悲しくて怖くてどうしたらいいかわからなかった
あんな風に離れてくのが、寂しくて悔しかった
最初で最後でいい。
何か蟠りがあるのなら解いてしまいたい。
あれは気の迷いだって、勘違いだって言われてもいい。
バカだって笑われたっていいの。
億泰くんが前みたいに笑えるようにしてあげたい。
それが叶うなら何でもいいの。
億泰くん
バカなんて言ってごめんなさい。
億泰くん
大嫌いなんて言ってごめんなさい。
億泰くん
私、みっともなくてごめんなさい。
億泰くん
もう、名前で呼べなくなっても構わないから。
何百回、何千回、何万回だって謝るから。
神様・・・・・・
どうかお願いだから、
私の所に早く
億泰くんを連れて来てください・・・・・・
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
雛子にはもう届かない
なんて、ちょっと格好付けて言っても結果は同じだ
てか、届かないって何がだって話だけどな
別に、最初っからどーしても自分のモノにしてぇとか思ってた訳じゃあねぇし
誰かの女になったって、優しくしてやりてぇのはきっと変わんねぇ
・・・っと、おれ、今ちょっと格好良いこと言ったかもな
あああ、こーいう時に限って仗助も康一もいねぇーとかマジでついてねぇ
って、そーでもねぇか?
今居られたら相当弄られる方が濃厚だな?
なら、やっぱ一人で良かったぜ
雛子ははっきり言ってただろ
〝もう知らない〟〝大嫌い〟
アレは本気でアウトのやつだった
だから、あんな所からわざわざ別れ際に吹っ掛けて来たんだろ
優しくきちんとお断りしてくれようとしてたのかもしれねぇけど
度胸がないばっかりに余計な気遣いとやらをさせた上、棒に振って悩ませて怒らせて・・・
泣かせちまったのかもしれねぇ
なんて、泣いたのはおれのせいみたいに思ってんのがそもそも未練がましいっつーか、惨めっつーか
きっとあの涙はもっと大事などっかの誰かのモンだろう
それにしたって雛子は全く忙しない奴だぜ
他の野郎を想いながらおれなんかの面倒まで見るとか器用過ぎんだろ
挙句の果てに、うっかりおれに抱きついたりなんかして
退けって言ってんのに退かなかったのもアイツだし
よく考えたらおれはそんなに悪くねぇだろ?
実際アレ位のケガでどーのこーのなるおれじゃねぇし
アレはただの心配性だ世話焼きだ
普通、毎回いちいちノートなんか取りに来るかよ
あん時からずーっと毎日毎日おれの額見て心配そうにしてんなよ
惚れた男のことだけ追っかけとけよ
てか、さっきのアレ、見られてたらどーすんだよ?
普段のお前と全然違ぇから
普通の奴なら引いちまうかもしれねぇぞ?
まぁ、おれならアレくらいどってこたーーーねぇけどよ・・・
ちくしょーーーーーーーーーーー!!!!!!
どんだけ悪いよーに持ってっても全っ然上手く行かねぇー!!!!!!
雛子・・・
すでにお前に会いたくて堪んねぇ・・・
・・・お前の名前を呼びてぇ
・・・そんでおれを見つめて欲しい
・・・おれの名前を呼ぶお前の、あの可愛い顔が見てぇ
・・・あの可愛い声が聞きてぇ
雛子
雛子
雛子
雛子
おれが親から貰ったたった一つのこの名前を
誉めてくれたのは世界でたった一人、雛子だけだ
雛子に名前を呼ばれると、何故だかあったけぇ気持ちになっちまう
惚れた理由はそれかもしれねぇ
こんなのダサくて絶対ぇ誰にも言わねぇだろうけどな・・・
雛子に名前を呼ばれなくなったら、おれは死ぬほど寂しいだろうな
仗助や康一、その他の世界中の人間全部ひっくるめて、どいつが呼んだって、全員が呼んだって、
きっと雛子が呼ぶのにはかなわねぇ
やっぱ、あん時もっとちゃんと言っときゃ良かったかなぁ・・・
抱きしめられた時だって、もっとこう・・・いい感じに口説けてたら良かったんだけどよぉ・・・・・・
なーんて、帰る気にもなれずウダウダ考えながらぶらぶらしてたら、足は勝手に屋上に向かってた。
頭ん中で躊躇ったのは一瞬だけ。
そのまんま、足を泳がせて屋上までの階段を昇る。
身体はだりーし、足が凄ぇ重いな。
何かいつもより遠かった気がするぜ。
それでもおれはここに来たかった。
あ。
そーいや、ちょっと死にたくなった時もあったなぁ
けどまさか、死にたいなんて本気で思ってる訳もなく
思い出に浸りたかったとか。
気持ちにケリ付けたかったとか。
まあ、そんな所だろう。
「・・・・・・よっこらせ」
辿り着いたドアノブに手をかけ、分厚い扉を思い切り開く。
・・・・・ばんっ・・・・・
久しぶりに出た明るい場所に目を細めながら屋上に出てみればそこにはーーーーーー雛子が居た。
初めてきちんと彼を認識したのはあの時だった。
先生にクラス全員分のノートを集めて提出するように言われてて、あと一人。
出していないのは「虹村億泰」という男子だった。
名簿で名前を見ても顔はとりあえず思い出せる程度。
それなのに、素敵な名前だなぁなんて、何となくでも感じてしまったのは、きっと運命だったのかもなんて、これまで何度も思ってきたこと。
その頃は東方くんとも仲良くなくて、殆ど一人でいることの多かった彼は、なかなか見つからなかったっけ。
ほんのちょっと苦労して、やっと見つけたのは屋上だった。
つまらなそうに紙パックのジュースを飲みながら、置きっぱなしになって古ぼけたイスに逆向きに座ってぼんやりしてた。
「・・・・・・虹村、億泰くん?」
遠慮がちに初めて口にした名前。
自分でもびっくりする程に胸が高鳴った。
そして、私の呼びかけに驚いてイスから転げ落ちそうになった彼が、少し慌てた様子でめちゃくちゃ照れ臭そうな顔をしてたこと。
誰だって問われて、自分の名前と彼を探していた理由を話すと、驚く程すんなり受け入れて「わざわざ悪かったな」って、ボソリと言ってくれた。
「虹村くんの名前・・・億泰って、いい名前だね」
ホッとして思わず私がそう言ったら、億泰くんの険しかった顔がほんの少し緩んだから、調子に乗った私はそのまま、普段の自分では考えれないようなとても大胆なお願いを口にしたんだ。
「億泰くん・・・て、呼んでもいい?」
穏やかな丸い瞳が真ん丸になって、すぐに視線は逸れたけれど
「別に・・・構わねぇけど」
億泰くんはぶっきらぼうでもそう言ってくれて嬉しかった。
一見強面で眉間に皺を寄せて素っ気なくしていても、本当は優しい人なんだって、少し経てばすぐにわかった。
「億泰くん」
そう呼ぶのが心地好くて好きなんだ。
そう呼んで、こちらを向いた彼と目が合う度にドキドキが止まらなくなったのはいつからだろう。
「何だよ」って面倒臭そうな顔するくせに、逃げもせずにちゃんとこちらを向いて話を聞いてくれる優しい瞳も好きなんだ。
東方くんと仲良くなってからはよく笑うようになって、いつも二人してふざけたりして楽しげに笑う姿だって、いつもいいなって見てたんだ。
悪ふざけばかりに見えて、友達想いで情に厚いのも知ってるよ。
どれも学校に居る時の彼で、そういう姿しか知らないのに、それでもこんなに大好きで
もっとたくさんお喋りをしてみたくて
東方くんみたいに無邪気に笑い合ってみたいんだ
たまには部活で作ったお菓子をプレゼントしてみたいし
本当はノート以外のお世話だって焼いてみたい
億泰くんに、もっと私を知って欲しいけど
私が、億泰くんをもっと知りたいの
今、何を考えてるの?
今、どこで何してるの?
せっかく億泰くんが言ってくれた言葉
億泰くんはなかったことにしたかったのかもしれない
だけど、そんなのダメに決まってる
私だって億泰くんに惚れてるの
本当の気持ちが言えなくて物凄く後悔してるのに
億泰くんにあんな悲しい想いをさせたままなんて嫌なのに
だから、逃げてしまった次の日からずっと億泰くんを追ってたの
避けられて、悲しくて怖くてどうしたらいいかわからなかった
あんな風に離れてくのが、寂しくて悔しかった
最初で最後でいい。
何か蟠りがあるのなら解いてしまいたい。
あれは気の迷いだって、勘違いだって言われてもいい。
バカだって笑われたっていいの。
億泰くんが前みたいに笑えるようにしてあげたい。
それが叶うなら何でもいいの。
億泰くん
バカなんて言ってごめんなさい。
億泰くん
大嫌いなんて言ってごめんなさい。
億泰くん
私、みっともなくてごめんなさい。
億泰くん
もう、名前で呼べなくなっても構わないから。
何百回、何千回、何万回だって謝るから。
神様・・・・・・
どうかお願いだから、
私の所に早く
億泰くんを連れて来てください・・・・・・
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
雛子にはもう届かない
なんて、ちょっと格好付けて言っても結果は同じだ
てか、届かないって何がだって話だけどな
別に、最初っからどーしても自分のモノにしてぇとか思ってた訳じゃあねぇし
誰かの女になったって、優しくしてやりてぇのはきっと変わんねぇ
・・・っと、おれ、今ちょっと格好良いこと言ったかもな
あああ、こーいう時に限って仗助も康一もいねぇーとかマジでついてねぇ
って、そーでもねぇか?
今居られたら相当弄られる方が濃厚だな?
なら、やっぱ一人で良かったぜ
雛子ははっきり言ってただろ
〝もう知らない〟〝大嫌い〟
アレは本気でアウトのやつだった
だから、あんな所からわざわざ別れ際に吹っ掛けて来たんだろ
優しくきちんとお断りしてくれようとしてたのかもしれねぇけど
度胸がないばっかりに余計な気遣いとやらをさせた上、棒に振って悩ませて怒らせて・・・
泣かせちまったのかもしれねぇ
なんて、泣いたのはおれのせいみたいに思ってんのがそもそも未練がましいっつーか、惨めっつーか
きっとあの涙はもっと大事などっかの誰かのモンだろう
それにしたって雛子は全く忙しない奴だぜ
他の野郎を想いながらおれなんかの面倒まで見るとか器用過ぎんだろ
挙句の果てに、うっかりおれに抱きついたりなんかして
退けって言ってんのに退かなかったのもアイツだし
よく考えたらおれはそんなに悪くねぇだろ?
実際アレ位のケガでどーのこーのなるおれじゃねぇし
アレはただの心配性だ世話焼きだ
普通、毎回いちいちノートなんか取りに来るかよ
あん時からずーっと毎日毎日おれの額見て心配そうにしてんなよ
惚れた男のことだけ追っかけとけよ
てか、さっきのアレ、見られてたらどーすんだよ?
普段のお前と全然違ぇから
普通の奴なら引いちまうかもしれねぇぞ?
まぁ、おれならアレくらいどってこたーーーねぇけどよ・・・
ちくしょーーーーーーーーーーー!!!!!!
どんだけ悪いよーに持ってっても全っ然上手く行かねぇー!!!!!!
雛子・・・
すでにお前に会いたくて堪んねぇ・・・
・・・お前の名前を呼びてぇ
・・・そんでおれを見つめて欲しい
・・・おれの名前を呼ぶお前の、あの可愛い顔が見てぇ
・・・あの可愛い声が聞きてぇ
雛子
雛子
雛子
雛子
おれが親から貰ったたった一つのこの名前を
誉めてくれたのは世界でたった一人、雛子だけだ
雛子に名前を呼ばれると、何故だかあったけぇ気持ちになっちまう
惚れた理由はそれかもしれねぇ
こんなのダサくて絶対ぇ誰にも言わねぇだろうけどな・・・
雛子に名前を呼ばれなくなったら、おれは死ぬほど寂しいだろうな
仗助や康一、その他の世界中の人間全部ひっくるめて、どいつが呼んだって、全員が呼んだって、
きっと雛子が呼ぶのにはかなわねぇ
やっぱ、あん時もっとちゃんと言っときゃ良かったかなぁ・・・
抱きしめられた時だって、もっとこう・・・いい感じに口説けてたら良かったんだけどよぉ・・・・・・
なーんて、帰る気にもなれずウダウダ考えながらぶらぶらしてたら、足は勝手に屋上に向かってた。
頭ん中で躊躇ったのは一瞬だけ。
そのまんま、足を泳がせて屋上までの階段を昇る。
身体はだりーし、足が凄ぇ重いな。
何かいつもより遠かった気がするぜ。
それでもおれはここに来たかった。
あ。
そーいや、ちょっと死にたくなった時もあったなぁ
けどまさか、死にたいなんて本気で思ってる訳もなく
思い出に浸りたかったとか。
気持ちにケリ付けたかったとか。
まあ、そんな所だろう。
「・・・・・・よっこらせ」
辿り着いたドアノブに手をかけ、分厚い扉を思い切り開く。
・・・・・ばんっ・・・・・
久しぶりに出た明るい場所に目を細めながら屋上に出てみればそこにはーーーーーー雛子が居た。